ダンジョンへ拉致してきた美少女ケモミミ幼馴染がしっとり激重感情抱えてた件~ドロップアウトガールRのばあい~   作:IXAハーメルン

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 あつい。

 なんだかとっても、あつい。

 

 ボクはソファーの上でもぞもぞと動き、寝ぼけた腕で布団を押しのけようと……して、なんだか重いものが横にいることに気付いた。

 

「んぁ……?」

「えへ、おはよ」

 

 きらがすりすりと抱き着いてくる。

 

 なんだきらか。

 きらなら……なら――

 

「――ええい! あつい! うっとおしい!」

 

 わざわざベット貸してあげたのにこっちに入ってくんな!

 

 

「ひどい……ずっと寝てるから起こしに行ってあげたのに……」

 

 さめざめ泣いたふりをする輝良が、インスタントのコーンスープをカップへと開けていく。

 

「いや布団の中入ってくるの意味わからんし」

「……空いてたから?」

 

 なにも空いとらんが。

 

 ボクは手早くベーコンエッグを皿へ並べていき、焼きあがったトーストを二枚輝良の皿へ、一枚は自分のへとおいてリビングへと戻る。

 鼻歌混じりにマーガリンを塗っている彼女をしり目に、昨日の夜纏めておいた予定帳へと視線を送った。

 

「今日はダンジョン行く前に協会でレベル測ってからね」

「レベル?」

「ふふん、昨日の夜色々調べてね」

 

 すちゃりと伊達眼鏡をかけ、呑気にピーナッツバターを広げている生徒へ鼻を鳴らす。

 

 レベル、ゲームなどでおなじみの要素だが現実ではちょっと違う。

 この本によれば、体内に存在する魔力量を単純に表した数値らしい。

 ダンジョンで戦ったりすると体内に魔力が蓄積され、単純にこれだけで測ることは出来ないものの、身体能力が上がったりなどある程度の目安にはなる。

 大半のダンジョンをめぐる人間、つまり探索者は大方のレベルを常に把握し、自分の実力に合ったダンジョンをめぐるのが基本だそうな。

 

「へー」

 

 イチゴジャムをぬりぬりしながら輝良が適当に頷く。

 

「興味なさ過ぎ! あとあんたパンに色々塗り過ぎでしょ!」

「ちょーアルティメットサンド、たべる?」

「一回食べたらそれで十分だよ……」

 

 昔一口貰って以降口にしたいと思ったことはない。

 

 おいしいのに、なんて悲し気な顔で二枚のパンを合体させかぶりつく輝良。

 端っこから漏れたジャムとピーナッツバターの混合物が、口紅の様に口元へとくっついている。

 

「まったくも―……」

 

 子供か。

 

 濡らした布巾で軽く拭ってやりながら、ボクも自分のスープへと口をつける。

 

「それで、どうやってレベル測るの?」

「それはね――」

.

.

.

 

「これで測れます! ばばん! 魔力レベルチェックメーター!」

「血圧計じゃん」

「魔力レベル! チェック! メーター!!」

 

 そこそこ広い協会の壁際、十数台がずらりと並んでいるうちの一つへとボクは駆け寄った。

 見た目はまあ……確かに? 輝良の言う通りドラッグストアに置かれてるような血圧計然としているが、堂々と吊り下げられている看板を見ればわかる通りこれがレベルを測る装置だ。

 

 半信半疑で見ている輝良を横目に意気揚々とボクは腕を突っ込み、横の説明欄通りに操作を進めていくと……ミチミチ、という音と共に腕に伝わる圧迫感。

 こ、この感覚は……!

 

「血圧計だコレ!」

「だからそういってるじゃん」

 

 文句を言いつつ輝良もボクの横へ座り同じく装置をいじる。

 十秒もすると腕の圧迫感から解放され、液晶の上には計測された数値がゆっくりと浮かび上がってきた。

 

「レベルはえーっと……3だって」

「ん、わたしは13」

「へー……」

 

 13か。

 

「13!? ボクの4倍以上っていくらなんでも高すぎでしょ!?」

 

 同じ時間、同じダンジョンに潜ってたのにこんなに差がつくことある!?

 

「輝良アンタ本当にこの前が初めてのダンジョンなんだよね!?」

「はじめて」

「えぇ~! なんかズルくない?」

 

 確かに輝良は最初の方スライム結構倒してたらしいけどさぁ。

 それでもこんなに差がつくことなんてある? いったいこの差は何だっていうんだ、才能?

 いやいや、レベル上げに才能とかあるの?

 

 ま、いっか。

 レベルが違うからって何があるわけでもないし。

 

「さってと、レベルも分かったし次行くダンジョンでも探そ」

 

 ひょい、っと近くの本棚へ置かれていた冊子を引っこ抜きながらベンチへと座り込む。

 取ったのは初心者向けのダンジョン紹介本だ。ダンジョンは全国各地に存在するが、もちろん中にいるモンスターのレベルはそれぞれ異なる。

 間違ったダンジョンに入れば即死、なんてことも決してありえない話ではないし、こうやっておおよそのレベルや中身が紹介された本も多く存在する。

 

 ボクは自分の住む県のページをペラペラ捲り吟味をしていると、ぴょん、と覗き込んできた輝良がぴしぴしと一ページを生美先でつついた。

 

「りつ、わたしここ行きたい」

「んー『羽兎の箱庭』、か」

 

 ダンジョン紹介を見ると名前の通りで、耳の場所に羽の生えた兎が多く存在するようだ。

 添付された写真もなんだか静謐な森の中といった様子で、少し神秘的ながらもとても雰囲気がいい。

 ここらへんじゃこんな綺麗な自然なんてほとんどない、なんだか結構心惹かれるものがある。

 

「うんうん、なんだかかわいい雰囲気だしいいじゃん!」

 

 推奨レベルは5から20前後、ボクのレベルは少し外れているけど所詮は2。

 スライムをちょっと倒しただけで1から3になったと考えれば全然大丈夫そうだ。

 

「よし、ここ行こう!」

「おー!」

 

 

「死ぬ死ぬしぬしぬっ!?」

 

 弾丸の如き勢いで飛んできた兎がボクの頭上を駆け抜けた!

 

「ひゃぁ!?」

 

 シュパン! っていった!

 いまねえ角にかすめてシュパン! ってヤバい音したって!

 

 ここのダンジョンの兎、見た目は綺麗な翼が耳のところに生えていてかわいいと思ったのは最初だけ。

 一度敵対的になればすっごい勢いで逃げるわ、かと思えば周りの気を蹴って滑空し、常に超立体的な軌道で攻撃を繰り返してくるのだからたまったもんじゃない!

 ボクはここに入って五分で後悔しかもうない! おうちかえる!

 

「ふんっ」

 

 しゃがみ込んだボクの後ろで、まるでバッティングセンターで遊んでるかのように輝良が竹刀を振り回し、次から次へと兎を叩き落としていく!

 一撃で致命傷に届いたのだろう、兎たちはバタバタと地面へ転がりあっという間に魔石へと変わってしまった。

 ケモ耳も尻尾も絶好調だ。ぴょこぴょこふりふりと動き回っているのを見れば、彼女がこの兎叩き落としゲームを相当楽しんでいるのが分かった。

 

 この女、強すぎる。

 剣道全一のポテンシャルをこれでもかと発揮している。

 そしてその横で小さく震えるだけの雑魚ボク、体育の成績はいつも2とかでした。

 

「き、きら! ここヤバい! まだボクには早かったかもしれないなぁって思うワケ!」

「……そっか」

 

 悲しそうに尻尾が項垂れた。

 さっきまであんなに動き回っていたのに、ぴくりとも動かない。

 

 う……、し、仕方ない。

 

「あ、あー、つまりね、戦い方を変えようってコト」

「戦い方?」

 

 ピン、と輝良のケモ耳が立った。

 よしよし。

 

「そう! ボクたちは知性のある人間なんだから、頭を使うんだよ」

 

 

――――――――――――

 

モンスター図鑑

羽兎

学名Lepus alatuslabyrinthum

 

体格 成体で40cm

茶褐色から耳の代わりに翼の生えた兎型の生物

多くは木のうろや地面の穴に住み着き、強い前足で飛び出してから頭の羽で滑空を行う

迷宮型のダンジョンにおいても生息が確認されており、縄張り意識がとても強い。出会ってしまった場合、壁を使っての連続飛び蹴り滑空などで執拗に攻撃を行う。

ただし滑空のため従来の兎と比べても体が軽く、虚弱な体質をしている。

 

 

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