白上縁起恋灯絵巻 ミオしゃ√【完結】   作:DX鶏がらスープ

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別の小説の執筆が上手くいかず、せっかくのなのでゆるい構想だけあった別ルートを書いてみました
本当は本編の後日談などのコーナーに入れようと思ってたんですが、思ったよりボリュームが出てきたので独立させています

楽しんで頂けたら幸いです!


発掘

 

ーーこの世に生まれたその瞬間から、うちの生き方は決まっていた

 

何故ならうちは神様だから

人にかくあれと乞い願われ、生まれてきた存在だから

 

…まぁ、厳密にはうちを産んだのは先代様かあさんなんだけど…それでもそもそも神様という存在からして始めからそういうものだ

だからこそ、うちは自分が生まれた理由を最初から知っていたし、今まで一度たりともそれを疑った事はない

 

守り神として磐ノ戸の地の平和を守る事はうちの存在意義だ

そして、冥獣ケガレを倒し村の皆の笑顔を守れるのなら、こんなにも嬉しい事はない

 

見方によっては窮屈で不自由な人生に見えるかもしれないけど、それでもうちはこの村が好きだし、神様としての自分に誇りを持っている

祭神の座こそフブキに譲ったけど、それでもうちだってこの村の守り神なんだって自信を持って言える程度には長い間この地を守ってきた実績がある

 

だから、うちは自分のこれまでの神様としての人生に恥じるところなんて全く無いし…今でもあの時の事を間違いだとは思っていない

 

だって、あの時のうちは白上神社の次代の祭神という立場だったから

もしあの戦いで先代様かあさん達が敗れていたら、冥界の扉マガツトボソから大量の冥獣ケガレ達が溢れ出し、甚大な被害が出ていただろうから

そしてそんな時、この磐ノ斗の地の人々を守れたのは

そして、その後に始まったであろう反抗作戦の旗頭になれたのは、白上神社の祭神の正当な後継者だったうちだけだったから

 

だから、うちはあの時の自分の選択が間違っていたとは思ってない

皆が最後の戦いに赴く中で、それで一人だけ村に残ってそれを見送った事は正しかったと今でも信じている

戦えない人達を守る事もまた、大事な事だったんだとちゃんと理解している

 

だけど…

 

(「…それでは行ってくる」)

 

そう言って最後の戦いに赴く先代様かあさんに付いていけなかった事を

 

(「我々は大丈夫だ

だから、皆の事よろしく頼むよ」)

 

度重なる冥獣ケガレとの戦いでボロボロになりながらも、それでも笑顔でそう言ってくれた優しい神主達に何も出来なかった事を

 

そして…

 

(「ミオしゃ・・・・」)

 

そして、何より…

 

(「絶対に帰ってくるから!」)

 

そう言って太陽みたいに笑ってくれた少女に行かないでと言えなかった事を

かけがえのない大切な友達の背を、それでも見ている事しか出来なかった事を

 

 

 

(「………うん、いってらっしゃい」)

 

 

 

そう言って皆を送り出す事しか出来なかった事を

みんなと一緒に戦えなかった事を

 

うちは今でも…

 

(………!)

 

今でも…

 

(…ぇ!)

 

 

「ねぇってば!!」

 

!!

 

「うわっ!?」

 

目を覚ます

ガバッと体を起こすも、そこはいつもの神社の境内

苔むした石灯籠に、本殿の古い木の柱

特に代わり映えのない日常の風景に、ようやく今のが夢だった事に気が付いたうちはホッと胸を撫で下ろす

 

だけど、どうやら何もかもがいつも通りという訳でもないらしい

 

いたたた…という声にうちが横を向くと、そこには一人の少年がいる

そして、その少年が明らかにうちの事が見えている・・・・・事に気が付いた時、うちは自分の失敗を悟った

 

(ヤバッ!うちは会わないようにしてたのに!!)

 

なのに今日に限って、どうして本殿の軒下で居眠りなんてしちゃったんだろう、などと内心で自身の不注意に頭を抱えるが…目の前の少年にそんなうちの思惑なんて分かるわけがない

だから一瞬不思議そう顔をしていた彼は、「お姉さんうなされてたよ?」と心配そうにしながらも自分の名前を名乗った

 

つまり

 

 

 

「僕は海斗、風守海斗

お姉さんは誰?」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

・・・

 

 

 

「ーー…大神さん?」

「!

あぁ、ごめんごめん

ちょっとぼーっとしてたよ」

 

そう言って手元にあった古い冊子を閉じる大神さん

そんな彼女は持っていたそれを近くの棚の上に置くと、改めて僕に用件を聞く

 

「それで、何だっけ?」

「これってどこに置けば良いですか?」

 

そう言って僕が手元の箱の中身を見せると、大神さんは鷹揚にうなずく

 

「あぁ、それね

それはあっちの方に置いといてくれれば良いよ」

「あっちですね、分かりました」

 

そう言いながら僕が持っていた箱を指定された場所に置いている間に、白上さんも大神さんに「ミオ~、これってどこでしたっけ?」と尋ねる

すると大神さんは「それはあっちだね」と答え、白上さんがその指示に従っている間に本棚から何冊かの本を取り出して別の場所へと移し替える

そうやって、部屋の中で僕らは互いに声を掛け合いながら再び自分の作業に没頭していくのだが、そもそも何故こういう状況になったのか

それは今日僕が学校で一つの宿題をもらってきた事に起因する

 

『自分の住んでいる地域の事について調べてレポートにまとめなさい』

 

これが学校から出された宿題なのだが、生憎と他の多くの生徒達と違って僕はこの磐ノ戸の地の出身ではない

だから、僕にはそもそも何から調べれば良いのか、またどうやって調べれば良いのかという宛がほとんど無い…と当初は思っていたのだが、考えてみれば僕には白上神社との繋がりがある

そして、流石に白上さん達に直接インタビューする訳にはいかなくても、それなりに古そうなあの神社なら昔の村の記録や地図なんかが残っているのではないか

そう考えた僕は放課後に白上神社を訪ねてその話を白上さん達にして、その結果として神社の倉庫の整理を手伝うのと引き換えに資料を貸してもらえる事になったのだ

 

「それにしても、やっぱり男手があると何かと助かるねぇ」

 

埃っぽい木製の小屋の中で、そんな言葉と共に本棚の整理が一段落したらしい大神さんが額の汗を拭う

そしてそのまま、「今日は手伝ってくれてありがとね」とお礼を言ってくれる彼女に対して、僕も「このくらいならいくらでも」と笑って返す

 

「そう?

でも今日はこのくらいにしとこうか」

 

そんな言葉と共に、少し離れた場所で作業をしていた白上さんにも声をかける大神さん

すると少し離れた場所で祭具の整理をしていた白上さんが戻ってきた

 

「ふぃ~、結構片付きましたね

残りはどうしますか?」

「また明日かな

今日はそろそろ良い時間だし、あんまり遅くなると海斗くんに悪いし」

 

その言葉にうなずく白上さん

そして、そのまま彼女は大神さんと続きの片付けの段取りについて話し合っていたのだが、それが一通り終わった後、ふと思い付いたようにこちらへと目線を向ける

 

「せっかくなので、家に帰る前にお茶でも飲んでいきませんか?

海斗くんにはたくさん頑張って貰いましたしね」

「良いんですか?

それではお言葉に甘えても?」

「はい!

じゃあちょっと待っててくださいね!!」

 

そう言って倉庫から出ていこうとする白上さんだったが、そんな彼女に大神さんが慌てて待ったをかけた

 

「待ってよフブキ、お茶ならうちが入れてくるよ

だからフブキもここで休んでてーー」

「いえいえ

別にこのくらい何でもないですよ、ミオ」

「でも…」

「それに、ずっと白上達に指示出ししながら働いてたミオだって結構疲れてますよね?

ミオの方こそ、ここでゆっくり休んでてください!」

 

そんな言葉と共に一人詰所へと駆けていく白上さん

その様子を何となく見ていると、ふと倉庫に残った大神さんと目があった

 

「良い人ですね、白上さん」

「…自慢の妹だよ」

 

そう言って呆れたように肩をすくめる大神さん

でも、その表情は態度とは裏腹にどこか優しげだ

その眼差しはまるで母のような、あるいは姉のような…

例え直接血が繋がっていなくても、心の底から白上さんの事を慈しみ、大切に思っているのがよく分かるような笑みを浮かべている大神さんを見ていると少しだけ羨ましくなる

 

それは僕が一人っ子で、兄弟間の絆ようなものに無縁だから…というのはもちろんある

別にそれを不満に思った事はないけれど、そういうのを見てちょっと羨ましいな位に思う時はたまにある

 

でも、本当はそんな理由よりも…ーー

 

「………さて、それじゃあ白上さんが帰ってくるまでに、僕はもう少しだけ片付けておきますね」

「えぇ!?

いいよいいよ、そんなに頑張らなくても!

今日はもう十分に手伝ってもらったし!!」

「大丈夫ですよ、これだけですから…ってうわっ!」

 

近くにあった手頃な箱に手を掛けるも、意外な重さに思わずよろめく

そしてそのまま横にあった棚に体が当たってしまった僕の上に、その棚の中身が降ってきた

 

ドサドサドサッ!!

 

「だ、大丈夫、海斗くん!?」

「いたた…えぇ、何とか…」

 

幸いにもそんなに重いものは入ってなかったらしく、ほとんど怪我らしい怪我はない

とは言え、これは紛れもなく僕の不注意が引き起こした事故であり、「無茶しちゃダメでしょ!」という大神さんの言葉に対しても返す言葉がない

だから僕は甘んじて大神さんの説教を受け入れ、半ば呆れながら棚から落ちたものを拾う大神さんを手伝うのだが…

 

「…ん?」

 

ふと床に落ちた小さな布の袋に目が止まる

ちょっとした小物入れサイズの古い青い巾着袋

何となくそれを拾い上げて中を確認してみると、中には梅干くらいの大きさの水色の石が入っている

 

まるで晴れ渡る大空のように透き通った美しい石

思わずそれに見とれていると、横合いから「どうしたの?」と手元を覗き込んできた大神さんが驚いたように声をあげた

 

「あぁっ!

それどこにあったの!?」

「え?

床に落ちてたので、多分そこの棚にあったんじゃないかと…」

 

そう答えながら石を渡すと、大神さんは「ずっと失くしちゃったって思ってたんだ!」と嬉しそうにそれを受け取った

 

「そっか~…こんなところにあったんだねぇ…」

 

そう呟きながらどこか感慨深げに石を見つめる大神さん

その表情から、大神さんにとってこの石が本当に大切なものという事が分かるが…だからこそ見ている僕としてもそれが何なのかは気になるところ

と言う訳で、直接本人にそれを聞いてみたところ、大神さん曰くこの石は昔友達から貰った宝石の原石らしい

 

「黄玉…最近だとトパーズって名前の方が分かりやすいかな?」

「え?

でもトパーズって確か黄色の宝石だったような…?」

「ふふ、そう思うよね?

確かに一般的なイメージとしてはそれで正しいけど、実際はこういう青いトパーズも結構あってね

特に日本で取れるトパーズの多くはこの種類なんだよ?」

「へぇ、そうなんですか

と言うか、トパーズって日本で取れるんですね?」

「最近はほとんど採れなくなっちゃったらしいけどね

それでも明治あたりには有名な鉱床がいくつもあったらしいよ!」

 

そう言って目をキラキラと輝かせる大神さん

その後も「それでね!それでね!!」と、トパーズだけでなく色々な石に関する蘊蓄や豆知識を語る大神さんだったが、その様子は今まで見たことがない程に楽しそうで…

普段割と控えめな大神さんにしては珍しい、石への熱意と愛に燃えるその姿は、何だか彼女の知らなかった一面を見ているようでとても微笑ましい

 

しかし、そんな時間もそう長くは続かない

 

「ーーそれで最近のトレンドは「感情結晶体」でね

特にカエラさんって人が作ってるアクセサリーが有名で~…ーー」

「…その辺にしといたらどうですか、ミオ?」

「あ、白上さん」

 

振り向くと、ちょっと呆れたような顔で白上さんが倉庫の入り口に佇んでいる

そして、こちらがそれに気付いたと見るや、持っていたお盆に乗せていた湯呑みを僕らに渡してくれたのだが、心なしか大神さんに対しては半眼だ

と言うのも、大神さんは石の事になるといつもこうなるらしく、放っておくといつまでも話続けるからとの事

 

「まぁ、白上は良いですよ

慣れてますし、ミオが石好きなのは知ってますからね

でも、いきなりあんな熱量で語られたら、何も知らない海斗くんはびっくりしちゃいますよね?」

 

「うぅ…確かに…

ごめんね、海斗くん」

 

珍しく白上さんに怒られて小さくなる大神さん

もちろん白上さんだって本気で不快に思っている訳ではないだろうけど、それはそれとして一人ではしゃぎすぎないのと諭され、大神さんは僕に謝罪の言葉を述べる

 

とは言え…

 

「ーーいえ、別に謝る必要なんて特にないですよ?」

「で、でも、うちは一人で自分だけ盛り上がっちゃって…」

「僕も楽しかったですから大丈夫です

大神さんの話、とっても面白かったですよ?」

 

それに…

 

 

 

「大神さんの話からは大神さんの石に対する想いと言うか…凄く大切にしているんだなっていうのがよく伝わってきました

そんなの聞いたら途中で遮れないじゃないですか

素敵な趣味ですね、大神さん」

 

 

 

 

 

その後、僕らは白上さんが入れてきたお茶を飲んで少し休憩したのだが、飲み終わったお茶を白上さんが下げに行ったタイミングで大神さんが話しかけてきた

 

「…ね、ねぇ

さっき君が言ってた事だけど…」

 

ーー本当にうちの話は迷惑じゃなかったの?

海斗くんにとって楽しい時間だったの?

 

そう不安そうに尋ねてくる大神さん

だけど僕としては、ただ思った事をそのまま口にしただけで特に裏なんてない

だから、特に含むところなく素直にその言葉にうなずいた

 

「?、えぇ」

「………そっか」

 

僕の言葉に嘘や誤魔化しがないと分かったのだろう

返事を聞いた大神さんはどこか安心したかのように胸を撫で下ろし…

 

(ーーー)

 

「?

今、何か言いましたか?」

「………ううん、何も?

それより海斗くん、もし良かったらまた時間がある時にうちの話を聞いてくれないかな?

実はうち、あの石以外にも結構たくさんコレクションがあるんだ」

「えぇ、良いですよ

僕で良ければ」

 

そう頷くと、大神さんは「やった!」と喜ぶ

 

その姿は見た目相応の普通の女の子のように見えて

どうしてか、いつも見ている大神さんよりもかわいらしく見えて

 

「ふふ♪

楽しみにしててね、海斗くん!」

 

そう嬉しそうに微笑む大神さんの笑顔が、家に帰った後も何故か忘れられないのだった

 




ちなみに、分岐条件は本編第二章開始時までに大神ミオさんとの好感度が一定以上に達している事です

一応本編からして仮想「ふぶにゅ~~む」として書いていたので、最初から分岐条件だけは設定してるんですよね
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