総帥は何だかんだ言っても、締めるところはキッチリと締めてくれるイメージ
「ーーなぁ、いろは?」
その言葉と共に、ホロックスの面々が一斉に風真さんを取り囲む
そこには先程の和気藹々とした雰囲気など一切ない
ただ冷たい目で風真さんを見つめる彼女達に僕らは戸惑うばかりだが、そんな僕らを置いて状況は進行していく
「ら、ラプラスさん!?一体何をーー」
「沙花叉」
「うん、みこさん達は白だね
多分本当に何も知らないと思うよ」
「こより」
「さっきこっそり髪の毛抜いて調べてみたけど、いろはちゃんのものじゃないねこれ
完全に黒だよ」
「…だそうだが、何か申し開きはあるか?」
そんなラプラスさんの言葉に、突然包囲された風真さんは呆然としている
しかし
「ーー驚いた、いつから気付いてたんだ?」
「最初からだ
まだ知り合ってから日が浅いフブキさん達ならいざ知らず、我らホロックスが同胞を見間違えるとでも思うか?」
その言葉に風真さん…の姿をした何者かは頬の端を吊り上げる
それを見てラプラスさんの言葉が正しい事に気が付いた僕らは息を呑む
「本物のいろははどこだ?」
「さてね?
どこかその辺で二度寝でも決め込んでるんじゃないか?」
「こいつ…!」
「落ち着いてこんこよ
ここで取り逃したら、それこそ水の泡だよ」
「くっ!」
悔しそうに顔を歪める博衣さん
だがそんな彼女には目も触れず、風真さんの偽物はラプラスさんを真っ直ぐに見つめる
「しかし、流石だな
ワタシが偽物だと看過するや否や、こっそりと部下達にその裏取りをさせた上で、ワタシが逃げられない最高のタイミングで取り囲む
噂に違わぬ慧眼だな」
ーーだがっ!
瞬間、風真さんの偽物がラプラスさんに向かって突進する
咄嗟に僕らはホロックスの面々と一緒にそれを迎撃しようとして…ラプラスさんに目で止められる
そしてそのまま両者の影が交差して…
「ーー我輩はさっき聞いたはずだ」
その言葉と共にラプラスさんは自身の手を振って血を払う
「いつまでこの茶番に付き合えば良いのだ?、と」
ドッ、と風真さんの偽物が膝を着く
見ると彼女の腕からはかなりの血が出ており、ひどいあぶら汗をかいている
それに比べてラプラスさんはまったくの無傷
勝負あり
誰から見ても明らかなその状況でしかし、次の瞬間何か重い物が地面に落ちる音が聞こえた
見ると金細工の奇妙な形の鍵と、ラプラスさんが首に着けていた輪っかが落ちている
そして、それを見た鷹嶺さんが悲鳴のような声を上げる
「ラプラス!枷が!!」
瞬間、周囲にドクンッという心臓の鼓動のような音が響く
それと共にラプラスさんの表情が苦しげに歪み、あたりにプラズマのような光が帯電する
「き、貴様…!?」
「悪いが…足止めになって…もらおうか」
苦しそうな表情でそれでもニヤリと頬の端を吊り上げる偽物に、ラプラスさんは必死に手を伸ばす
しかし、間に合わない
ラプラスさんの体から発せられる力の波動はすぐに臨界点へと達し
「………っ!
があああああぁぁぁっっ!?」
次の瞬間、閃光と衝撃と共に僕らはその場から吹き飛ばされた
・・・・・・
「ぐっ!?」
気付いた時には地面に叩きつけられていました
身体中を鈍い痛みが貫き、擦りむいたのであろう額からポタリと血の雫が地面に垂れます
(一体何が!?)
そう思い咄嗟に周りを見回す白上でしたが、その瞬間に気が付きます
さっきまで白上達がいた境内がボロボロになっている事に
その破壊の中心に立っているのは一人の少女である事に
そして、その少女はさっきまで風真さんの偽物と戦っていたはずのラプラスさんでした
しかし
「ラプラス…さん?」
その様子は先程までとは明らかに違いました
立ち昇る赤黒いオーラに、背中から木の枝のように伸びる禍々しくおぞましい翼
元々あった角は大きく歪な形に成長し、何よりその目が狂気に呑まれている事が白上でさえ分かります
そして
「■■■■■■~~~ッッ!!」
ラプラスさんが突如咆哮を上げると共に、先程白上達を吹き飛ばしたのと同じ衝撃が走ります
咄嗟に白上は神通力で防ぎましたが、それによって境内の石灯籠が粉々に砕け散り、本殿の建物にも深刻なダメージが刻まれます
それを見て唖然とする白上でしたが、こちらへと走ってきた海斗くん達の言葉に我に帰ります
「大丈夫ですか、白上さん!?」
「え、えぇ
白上は無事です
それよりあれは一体…」
「…あれはラプラスです
ただ見ての通り理性が蒸発してますが…」
戸惑う白上に、ルイさんが説明してくれます
何でも、ラプラスさんは星と同じ寿命と力を持つ種族であり、普段はそのあまりにも強大な力で自壊してしまわないよう、自らの力を封印しているのだとか
「だからこそ、その封印を解く際には常に細心の注意を払っているのですが…あのいろはの偽物は、それを強引に解き放ちました
だからあの様に力に呑まれて暴走しているんです
このままだと、この辺一帯が軽く吹き飛びます!」
そう言ってルイさんは苦い顔をします
「まったくなんて事を…!
ラプラスの枷のスペアキーなんて、一体どこで手に入れたのやら…」
「それで、鷹嶺さん!
あの風真さんの偽物はどこに行ったんですか!?」
「偽物?
あぁ、それなら怪我した腕を抑えながらあっちの方に行きましたが…」
海斗くんの問いかけに、怪訝そうな顔をしながらも答えてくれるルイさん
無理もありません
何も知らない彼女からしたら、ここら一帯が吹き飛びそうな事態なのに、逃げた犯人の事など今はどうでも良いのでしょう
だけど、白上はその方向を見た瞬間に血の気が引きます
だって、そこにあったのは冥界の扉がある広場へと繋がる参道だったから
そして、夏休みの事件のまだ発見されていない犯人
状況的にいろはさんの偽物が誰だったのか、そしてその目的は明白です
そして同じ事に思い至ったのでしょう、慌てて海斗くんがルイさんに状況を説明します
「…成る程、状況は分かりました
それでは海斗さん達はいろはの偽物を追ってください
ラプラスは我らホロックスが止めます」
「そんな、無茶です!
あのラプラスさんを相手に三人で何とかなる訳がない!!
僕らも残って…」
「ーーいや、四人でござるよ」
その言葉に白上達が振り替えると、そこには今度こそ本物のいろはさんがいます
「いろは!
無事だったんだね!!」
「朝の鍛練終わりの不意を突かれて、そこの物置に放り込まれてたんでござる
脱出には手間取ってしまったでござるが…風真も戦えるでござるよ」
ーー足手まといにはならないでござるよ!
そう意気込む風真さん
そしてそれを聞いてか、これまで黙っていたみこさんが、自分もここに残ると言い出しました
「そ、それならうちも…!」
「ダメだよ、ミオちゃん
ミオちゃんも白上神社の神様なんだから
フブさんや海斗の事支えてあげなきゃ」
「でも…」
「それにもし二人に何かあった時、何とか出来るのはミオちゃんだけなんだよ?
だからほら、ここはみこ達に任せてよ!」
「…」
少しの間葛藤していたミオですが、最終的にミオも白上達に着いてきてくれる事になりました
「それではこれで決まりですね
海斗さん、フブキさん、ミオさん
お気をつけて」
「ルイさん達こそ気を付けて」
そんな言葉を交わして白上達は参道へと駆けていきます
目指すは冥界の扉がある広場
きっとそこに、いろはさんに化けて忍び込んだ騒動の犯人がいるはずです
「今度こそ決着を着けましょう、白上さん、ミオさん」
「勿論です!
今度こそ捕まえますよ!!」
だからこそ白上達は、因縁の相手を前にして燃え上がっていて
「………今度は…うちが…」
手の中の何かを見つめながらそう呟くミオの言葉を、白上は聞き逃してしまったんです
ちなみに本作品の風真いろはさんは時系列的に妖刀猫又を所持しています
だから割と本気でおかにゃん込みで出すか迷ったんですが、確実に空気がぶっ壊れるので今回は出さないことにしました
残念…