白上縁起恋灯絵巻 ミオしゃ√【完結】   作:DX鶏がらスープ

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二兎追うものは一頭も得ず
だけど、例え無理でも追わなきゃ走り出せないじゃないか



それでも

 

ーー冥界の扉マガツトボソの封印を解いてくれませんか?

 

その言葉に白上さんは一瞬意味が分からず唖然とする

だがそれも当然の事だろう

何故なら僕らはこれまで冥界の扉マガツトボソの封印を守る為に戦って来たのだ

その大前提を覆すような発言に対して混乱してしまうのも無理はない

 

だけど

 

「な、何をバカな事を言ってるんですか!?

気でも狂ったんですか!?」

「いいえ、僕は正常です」

「そんな訳がないでしょう!

だったらそんな事絶対に言えるはずありません!!

もしそれを聞いてしまったら、今までの白上達の戦いは何だったんですか!?」

「白上さん」

「いいえ!言わなくて良いです!!

海斗くんは自棄になってるんですよね!?

ミオが死んだ腹いせに、世界を滅ぼそうとしている!

皆死ねば良いって思ってる!!

そうなんですよね!?」

「白上さん」

「もしそうだとしたら見損ないましたよ、海斗くん!

あなたがそんな人だとは思いませんでした!!

あなたみたいな人を助けて死んだと知ったら、ミオだって悔やんでも悔やみ切れませんよ!!

今すぐどこかに行ってください!

もう二度と顔も見たくーー…」

 

「白上さんっ!!」

 

「~~っ!!」

 

そこで一度僕は白上さんの目を真っ直ぐに見つめる

 

「落ち着いて下さい、白上さん

僕は別に世界を滅ぼそうなんて考えていません」

「なら…どうして…」

「ミオさんを助けるためです」

 

その言葉に、白上さんは先程とは別の意味で目を丸くする

 

「ミオを助ける?

一体どうやって!?

もうミオは死んで…ーー!」

「いいえ、まだミオさんは死んでません

冥界の扉マガツトボソの向こう側に行っただけです」

「同じ意味じゃないですか!」

「いいえ、違います

冥界へ行くことは死と同義ではありません

だってミオさんは生身で冥界の扉マガツトボソに落ちたんですから

死んで行ったのでなければ、しばらくはあちらの住民にはならないはずです」

「だとしても、ミオを連れ戻す手段がありません!!

結局戻って来れないのならミオは…ーー」

 

そこまで言って、白上さんはまさかと言わんばかりに僕を見た

 

「まさか…冥界の扉マガツトボソから直接冥界に乗り込んでミオを連れ戻すつもりですか!?」

「その通りです」

 

だが白上さんは首を横に振る

 

「不可能です!

確かに冥界に行ったからといって即死する訳ではありません

それでもあそこは人間が長く滞在できる場所ではありませんし、広大な冥界において特定の個人を見つけ出すのはほぼ不可能です!!」

 

ーーそれに、そもそもどうやって帰ってくるつもりなんですか!?

と白上さんは更に畳み掛ける

 

「入った場所から戻れば良いというものではありません

文字通り世界の法則が違うんです!

生きて帰れるかどうかすら分からないんですよ!?」

 

そう言って捲し立てる白上さんの言葉は全て正しい

確かにミオさんを連れ戻す事は理論上可能ではあっても、それはあくまでも現実的なあらゆる要素を無視した場合の話

実際には針の穴を通すような確率の奇跡を何度も起こし、それでようやく達成出来るかどうかの話であり、とても現実的な話ではない

 

だけど

 

「…諦めたくないんです」

 

それでも

 

「少しでも確率があるのなら賭けてみたい

それが例え小数点の先にあるものであっても、そこに活路があるのなら挑みたい

何もせずに引き下がりたくない!」

 

ーーそれに何より

 

「僕はミオさんと生きたい!

だってあの人の事が好きだから!

一緒に生きる未来を諦めたくないんです!!」

 

だから僕は白上さんに懇願する

力の限り頭を下げる

 

「だからお願いします白上さん!

冥界の扉マガツトボソの封印を解いて下さい!!」

 

そうだ、何だかんだ言っても結局のところこれは僕のワガママだ

ミオさんが死んだなんて認めたくない僕のワガママ

 

だけど、それでも僕はそれを貫き通したい

だって僕はミオさんの事が好きだから

そしてミオさんが諦めない僕が好きだって言ってくれたから

 

だから絶対にミオさんを連れ戻してみせる

何度断られても、協力してくれるまで懇願し続けてやる

そんな覚悟を僕が決めた時だった

 

「ーー解いてあげたら?フブさん」

「!、その声は…!!」

 

気付くと僕らの周りにはみこさんとホロックスの人達がいた

 

いつの間にここに来ていたのだろうか…

全員傷だらけで無事なところを探すのが難しいくらいのがボロボロだ

それでも全員なんとか五体満足であり、何よりその中には鷹嶺さんに体を支えられながらではあるが、元に戻ったラプラスさんもいる

 

だからあっちはあっちで上手くいったんだと僕が理解すると共にみこさんが続ける

 

「そこまで言うなら海斗にも何かあてがあるんでしょ?」

「みこさん!」

「それにどのみち他にミオちゃんを助けられる手段もない

みこは賭けても良いと思うけどな?」

「ですが…!

そ、それに冥界の扉マガツトボソが開いている間の事はどうするんですか!?

湧き出し続ける冥獣ケガレに世界を滅ぼされたら、仮に海斗がミオを連れて帰れても本末転倒なんですよ!!」

「それはみこ達が何とかすれば良いじゃない

幸いここにはみこ達の他にも戦える人達がたくさんいる

協力すれば大丈夫だよ」

 

だよね?とホロックスの面々へと振り返るみこさん

そして、そんな彼女の言葉にラプラスさんが答える

 

「ふむ…

状況はよく分からんが、お前は我輩達を無料タダ働きさせるつもりか、さくらみこ?」

無料タダじゃないでしょ?

神社の修繕費に、元に戻すのを手伝ってあげた借り

その他諸々、まとめて耳を揃えて全部返せって言ってるんだけど?」

 

そう返され、一瞬ラプラスさんはキョトンとする

だか次の瞬間には痛快そうに笑い出し、心底楽しそうに頷いた

 

「ははっ!良かろう!!

さくらみこ、お前の顔に免じて協力してやろう!!」

「ラプ!まだ体が…」

「良い、幹部

我輩としても、まんまと出し抜かれた鬱憤をぶつける先…ようは八つ当たりの相手が欲しくてな」

 

ラプラスさんが獰猛な顔で笑う

 

「それにどのみち彼女達にはいろはが世話になっている

その恩も込みでと言うのなら良い機会だ

…お前達もそれで良いな?」

 

その言葉に残りのメンバー達も一斉に賛同する

 

「当然!

沙花叉も不完全燃焼でモヤモヤしてたんだよね!」

「こよもOKだよ!

むしろ、気兼ねなく新薬の臨床試験が出来る相手なんて最高だよ!」

「勿論、風真も手伝うでござる!

一宿一飯の恩義、ここで返させてもらうでござる!!」

 

そんな頼もしい言葉にラプラスさんは笑う

 

「だそうだが…ルイ?」

「はぁ…ほどほどにして下さいね?」

「うむ、善処する」

 

そんなホロックス達の様子に、みこさんはうんうんと頷くと、改めて白上さんに向き直る

だけど、既にこの場の空気は一色に染まっている

それが分かっているのか、何も言えない白上さんの手をみこさんがそっと握る

 

「大丈夫だよ、フブさん

きっとフブさんが恐れている事にはならないよ」

「…」

「本当は怖いだけなんだよね?

ミオちゃんに続いて海斗まで失っちゃったら耐えられない

だから危ない事をして欲しくないだけなんだよね?」

「……」

「だけどきっと大丈夫

海斗は強いし、何よりあのミオちゃんが選んだ人なんだよ?

だからみこは安心して任せられるし、なんとかなるって信じられる

きっとミオちゃんを取り戻せるよ」

「みこさん…」

「………」

 

長い沈黙

だが、結局それを破ったのは白上さんだった

 

「………分かりました」

「フブさん!」

「いいえ、まだです

最後に海斗くんに聞きたい事があります」

 

そう言って白上さんは僕の正面に立った

 

「…どうしても、行くんですね?」

「…はい」

「生きて帰って来れないかもしれませんよ?

それでも行くんですね?」

「はい」

「勝算はあるんですね?」

「はい」

 

「………」

 

そうして、しばらくじっと僕の目を見ていた白上さんは、やがてふっと表情を緩めた

 

「………30分です」

「!」

「30分戻ってこなかったら、冥界の扉マガツトボソをもう一度閉じます

それで良いですね?」

「はい!ありがとうございます!!」

「お礼なんていりませんよ

その代わり約束してください」

 

そう言って白上さんは深々と頭を下げた

 

「し、白上さん!?」

「必ず、ミオを連れて戻ってきて下さい

二人で生きて帰って来て下さい」

 

その時気付いた

白上さんの声が震えている事に

その足元に、小さな水溜まりが出来ている事に

 

「白上さん…」

「私の、大切な家族を…お姉ちゃんを、助けてください…!」

 

だから僕は頷いた

 

「………分かりました、任せてください」

 

 

 

かくして準備は整った

 

「行くぞヤロウ共!

ホロックスの底力を見せてやれ!!」

「「「「Yes, My Dark !! 」」」」

「地上はみこ達に任せるにぇ!」

「良いですか、海斗くん!

白上達が冥獣ケガレ達を食い止めます

その間にあなたは冥界へ潜りミオを連れて帰って下さい!

ご武運を!!」

「了解です!」

「それでは封印を解きますよ!!」

 

その言葉と共に、白上さんが封印を解く

そして、開いていく冥界の扉マガツトボソと、その奥から溢れてくる背筋が凍るような邪悪な気配

あの夏、相対した懐かしい冥界の空気に思わず拳を握りしめる

 

だけど

 

(恐れるな!前を向け!!)

 

自身に渇を入れる

震える足をそれでも一歩踏み出す

 

だって決めたから

必ず取り返すと

もう絶対に諦めないと

 

だから

 

「今です!行ってください海斗くん!!」

 

乱れ狂う冥獣ケガレの濁流

それを白上さん達が足止めしている間をすり抜け、その先へと…本物の死の世界へと、僕は飛び込むのだった

 

 

 





次回は大神ミオさん視点からスタートです
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