白上縁起恋灯絵巻 ミオしゃ√【完結】   作:DX鶏がらスープ

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ちなみに退魔師としての大空スバルさんの才能は一族の中でも平均か、何ならそのちょっと下くらい
落ちこぼれって程ではないけれど、別に優秀でもないって感じです

とは言え、これはあくまでも退魔師としての才能だけの話
戦場で生き延びる才能に関しては図抜けていたので、何だかんだで最後の戦いまで生き延びたという設定です
例えるなら〇クアカのグレン先生みたいな感じ


Small Memory

 

あの日から一ヶ月程の時間が経った

 

初めてこの世界に来た時の怪我はすっかり完治し、体調も万全

だからこそ、今しかないと思ったスバルは改めて決意を固めると、この一ヶ月甲斐甲斐しく世話をしてくれた恩人に別れの言葉を告げる

 

つまり

 

「世話になったなロボちゃん!」

「…本当に行っちゃうの?」

 

心配そうな顔をするロボちゃんに、だけどスバルは頷く

 

「あぁ、決めた事だからな」

「でも元の世界に帰れるかどうかは分からないんだよ?

下手をすれば二度と帰れないかもしれないし、最悪死んじゃうかもしれないんだよ?

それでも行くの?」

「大切な人を待たせてるからな」

 

そう言って泣きそうな顔で笑って送り出してくたあの子の事を思い浮かべる

狭い村の中でお役目に縛り付けられて窮屈そうな親友の事を想う

 

「必ず帰るって言ったんだ

そんでもって、全部が終わったら一緒に旅に出ようって約束したんだ

だから帰らないと

スバルはミオしゃに広い世界を見せてやりたいんだ」

「そっか…本当に大切な人なんだね?」

「あぁ、親友だ」

 

スバルが頷くと、ロボちゃんは心底申し訳なさそうに食料や消耗品がパンパンに詰まった鞄を渡してくれる

きっとなけなしの貴重な資源をかき集めたのだろう

それを見てスバルは少しだけ申し訳ない気持ちになるが、そんなスバルにロボちゃんはもっと申し訳なさそうな顔で謝る

 

「ごめんね、本当ならボクが送ってあげられたら良かったんだけど…」

「仕方ないさ

もう資源がほとんど残ってないこの時代じゃ、次元潜航艦の修理は不可能

それでも何とかこの旧型の亜空間転送ゲートを修理してくれただけでも十分過ぎる位だぜ」

 

ーーそれにきっとロボちゃんが助けてくれなかったら、スバルはこの世界で死んでたと思う

 

だから

 

「本当にありがとう、ロボちゃん

感謝してる」

 

改めて頭を下げるスバルに、ロボちゃんは微笑む

 

「いいよ、ボクも久しぶりに人間と過ごせて楽しかったし

それよりほら、そろそろ行った方が良いんじゃない?」

「あぁ、そうだな

それじゃあ俺はそろそろ行くよ

元気でな、ロボちゃん」

 

その言葉共に、スバルは異次元ゲートへと足を踏み入れる

 

「頑張ってね、スバル

応援してるから」

 

そんな言葉を背に、スバルはまた新しい異世界へと足を踏み入れる

 

(待ってろ、ミオしゃ

必ず無事にそっちの世界に帰るからな)

 

その思いを胸にスバルの元の世界に戻るための旅が始まる

 

だけど、この時は思ってもみなかったんだ

まさか、この旅があそこまで過酷なんて

結局5年も時間がかかってしまうなんて

 

そして、そこまでして得た結果があんなものだなんて、その時のスバルには予想だに出来なかったんだ…

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

あの後、近くのショッピングモールで軽くウィンドウショッピングをした僕らは、映画館で映画を見る事にした

 

「何か見たいものとかありますか?」

「うん、みこちがオススメしてくれた奴があるんだ

あぁ、あれだね」

 

そう言って、最近話題の恋愛映画のポスターを指差すミオさん

その作品のチケットを二人分買い、ポップコーン片手に二人で席に着くが、少し早く来すぎたようで周囲はまだ明るい

そこで映画が始まるまでお喋りをしていた僕達だったけど、ふと気になった事があったのでミオさんに聞いてみた

 

「今日はちゃんと普通に付けてるんですね、そのネックレス」

 

そう僕が指摘するのはあのブルートパーズのネックレス

以前ミオさんが自分には似合わないと言っていたネックレスだ

 

「うん、前に海斗くんが褒めてくれたから折角だしね

どうかな?」

「えぇ、似合ってると思いますよ」

「ふふ、ありがとう

そう言ってくれるなら、たまにはこういう格好も悪くないかもね」

 

そう嬉しそうに笑うミオさんの服装は普段の黒い巫女服のような不思議な服ではなく、同じくらいの年頃の女の子が着るようなお洒落なものだ

 

白いホルターネックに明るいベージュのカーディガン

履いている黒いスカートには赤いラインが一本入っており、それがミオさんの髪と同じで統一感を感じさせる

そして首もとには例の小さなブルートパーズのネックレス

 

全体的に違和感なく纏まっており、件のネックレスもワンポイントなら宝石の小ささも相まって別にそこまで変には見えない

 

そこまで考えて、やっぱり綺麗な人は何着ても似合うな~とそのままミオさんを見ていると、ふとそんな彼女と視線が合う

そしてそのちょっと恥ずかしそうな表情を見てハッとした僕は、慌てて謝った

 

「す、すみません!ミオさん!!

ジロジロと見すぎました!」

「う、ううん、別に良いよ

…それより、もしかして本当は変だった?」

 

今度は不安げな顔で尋ねるミオさん

だけどそんな訳がない

だから、僕は全力で首を横に振る

 

「そ、そんな訳ないじゃないですか!

ミオさんはかわいいですよ!!

今日の格好だってすごくお洒落ですし、似合ってます!

さっきだってミオさんは綺麗だから何着てもかわいいなって思ったら、遂じっと見ちゃっただけで、別に他意は…ーー!!」

 

そこまで言いかけて、慌てたように大神さんが僕の口を塞ぐ

それに驚くも、すぐに必死な顔で大神さんが僕の耳元でささやいた

 

「か、海斗くん、ストップストップ!

声が大きい!!

周りの人が見てるから!!」

 

ハッとして周りを見ると、周囲の人がこちらを見ている

しかもその目線は何だか生暖かくて…

 

「す、すみません…」

「も、もう

気を付けてよね…」

「はい…」

 

自分の顔が恥ずかしさで真っ赤になってるのが分かる

でも、隣のミオさんも同じように顔が真っ赤になっていて

 

「…」

 

「…」

 

「「………」」

 

その時ちょうど時間になったのか周囲が暗くなる

そして幾つかCMが流れた後に映画が始まったのだが、当然その時の僕らに呑気に映画を楽しむ余裕なんてなくて…

 

 

 

「………本当にすみませんでした」

 

映画が終わってすぐに入ったカフェで、開口一番僕は頭を下げる

理由はもちろんさっきの事

はっきり言ってあれは完全に僕の失態であり、だからこそどんな事を言われても甘んじて受けようと覚悟してたのだが…

 

「あ、頭を上げてよ、海斗くん!

うちは全然気にしてないから!!」

「で、ですが…!」

「…と言うか、うちからしたらむしろちょっと嬉しかったと言うか…」

 

照れ臭そうに自分の髪を指でくるくると巻き付けるミオさん

そんな彼女の予想外の言葉に戸惑う僕だったが、それを見たミオさんは呆れたようにため息をついた

 

「当たり前でしょ

好きな人からかわいいって言われて、悪い気なんてしないよ」

「え、えっと…」

「勿論目立っちゃったのは恥ずかしかったよ?

いくら皆には海斗くんしか見えてないと分かってても、すっごく恥ずかしかった

…それはそれとして、海斗くんがうちの事をベタ褒めしてくれたのは普通に嬉しかったというか…

服の事とかも褒めてくれた時、頑張っておめかしして来て良かったって思って…その…」

 

言いながらもミオさんの顔が赤くなっていく

 

「と、とにかく!

うちはさっきの事はまったく気にしてないし、海斗くんも気にしなくて良いの!」

「わ、分かりました!」

 

ミオさんが強引に話を終わらせる

それに対して僕は首を縦に振るしかない

だから僕らはそれから少しの間黙っていて…

 

「………でも、ありがとね」

 

「………はい」

 

 

 

そんな一幕の後、僕らは少し休んでからカフェを出る

そして折角だから何かお土産を買おうという話になり、近くにあった雑貨屋に入ったのだけど、店内を物色していると一つのマグカップが目に留まった

 

(そう言えば、ミオさん一昨日お気に入りのコップを割っちゃったって言ってたな…)

 

まだあれから日も経ってないし、折角だから僕からプレゼントしようと考えた僕はそれを買い物かごに入れる

そして、ミオさんと合流した僕は彼女の分の買い物も含めて支払いをしたのだが、その時ミオさんがマグカップに気が付いた

 

「あれ?かわいいマグカップだね

どうしたのこれ?」

「ミオさん確かコップ壊しちゃったんですよね?

折角だから僕がプレゼントしようと思いまして」

 

その言葉にミオさんは目を丸くする

 

「わぁ、ありがとう!

でもどうして水色のマグカップを選んだの?

うちが前使ってた奴赤いのだったのに」

「?

青系統の色好きなんですよね?

たまに白上さんの服羨ましそうに見てますし」

 

確かにミオさんの持ち物は赤系統のものが結構多い

実際さっき本人が言っていた通り、前のコップは赤いコップだったし、他の持ち物も赤いものが大半だ

 

でもこれも先に言った通り、たまにミオさんは白上さんの水色のスカーフを羨ましそうに見ているし、スバルさんから貰った大事なトパーズを入れていた巾着袋が青かったように、ミオさんにとって大事なものは青色のものが多い

 

それにあの日記・・・・にもミオさんは青っぽい色が好き、みたいな事が書いてあったので今回は水色のコップにした

勿論、色を分けてるのは同じく青系統が好きな白上さんのものと間違えないようにという理由もあると思うので、白上さんのコップと明確に見分けられるデザインにはしているのだが…

 

「えっと...もしかして赤い物の方が良かったですか?」

 

今さらのように不安になって来てミオさんに聞いてみるが、ミオさんは首を横に振る

 

「…ううん、これで良い

これが良いな

ありがとね、海斗くん!」

 

そう言って大事そうにコップを抱き締め微笑むミオさん

そんな彼女を見ていると、ふと冥界で会ったスバルさんの言葉が頭を過る

 

(《だからミオしゃの事、よろしくな?》)

 

(言われる間でもないですよ…)

 

だって、こんなちょっとした事でこんなにも喜んでくれる人なのだ

本当常々思うが、僕には勿体無い程良い人だと思う

 

それに…

 

「?

どうかしたの、海斗くん?」

「…いいえ、何でもありませんよ」

 

不思議そうに首を傾げるミオさん

だけど、そんな彼女になんでもないと誤魔化しながら僕は思う

 

(それに、きっとわざわざ意識する必要なんてないですよ…

だってスバルさん、僕はあなたの...)

 

とそこで、いよいよ心配そうにミオさんがこちらを覗き込んで来た

 

「…本当に大丈夫?」

「えぇ、心配させてしまってすみません

でも僕は大丈夫です」

 

ーーですから行きましょう、まだまだ時間はあるんですから

 

そう言って差し出した僕の手を、少し心配そうな顔をしながらも、ミオさんは握ってくれるのだった

 

 

 





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