白上縁起恋灯絵巻 ミオしゃ√【完結】   作:DX鶏がらスープ

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本当はこの話は次の話の冒頭だったのですが、終わり方がちょうどよかったので分割しました

ちょっと短いです


残光

あれから…倉庫の片付けを手伝った日から大体2週間ほどが経った

 

あの後、神社から貸してもらった資料のおかげもあり、宿題は無事完遂できた

そして肝心の評価に関してだが、流石はこの村で一番古い神社というか…

そもそもこの磐ノ戸の土地自体が白上神社の建立をきっかけに入植が始まった土地というだけあって、貸してもらった資料にはかなり貴重なものも多く混ざっていたらしい

そして、それを惜しみなく使用した僕の課題の出来ばえは上々どころか、体裁さえ整えればそれなりの学術研究として成立すると先生から絶賛された

 

…まぁ、この評価の9割が貸してもらった資料のお陰だとは自分でも分かっている

それでも良く出来ていると言われた事は嬉しかったし、そもそもこの資料が無ければ宿題が終わらなかった事も含めて、本当に白上神社に足を向けて眠れない

 

「ーーという訳で、先日のお礼も兼ねてケーキを買ってきました

是非食べてください」

「わぁ!

ありがとう、海斗くん!!」

「えぇ~、いいな~ミオちゃん!

ねぇねぇ海斗、みこの分は無いの!?」

 

とある休日の昼下がり

白上神社の詰所にいた大神さんに、借りていた資料の返却ついでに感謝の気持ちとして買ってきたケーキを渡すと、たまたまそこにいたみこさんが「ミオちゃんだけズルい!」と不満の声をあげる

ただ、幸いそのあたりは問題ない

 

「あ、これホールケーキなんだ?

それならみこちにも分けてあげられるね」

「本当!?

ありがとう、ミオちゃん!!」

 

途端に打って変わったように喜ぶみこさん

そんな彼女を「まったく、調子が良いんだから...」と呆れたように見つめる大神さんだったが、ふとこちらを見つめると、彼女はせっかくだからと僕にもケーキを薦めてくる

 

「いえ、いいですよ

これは僕からの大神さん達への感謝の気持ちですから」

 

そう言ってやんわりと断るも、「まぁまぁそう言わずに~」と大神さんは朗らかに笑う

 

「それに、どのみちご相伴に預かる覚悟がある人が一人いるしね

今さら一人も二人も変わらないよ」

「てへっ☆」

「今いないフブキの分は別で取っとくからさ、一緒に食べない?」

 

その言葉に僕は観念する

 

「…分かりました

そこまで言われて断る方が失礼ですよね

ご相伴に預かります」

「うんうん!

それじゃあ待ってて、食器と包丁持ってくるから!!」

 

そう言って台所へと駆けていく大神さん

その後ろ姿を何となく見つめていた僕だったけど、ふと大神が何かを落としたのを見つけて慌てて声をかける

 

「大神さん、これ落としましたよ

…ってあれ?これは…」

「あぁ、ごめん!

また拾ってもらっちゃったね!!」

 

そう言って拾い上げた青い宝石の付いたネックレス

恐らくは以前僕が倉庫で見つけたブルートパーズが使われたそれを僕から受け取り、大神さんは改めてありがとうとお礼を言う

 

「また失くしちゃわないように、加工してアクセサリーにしたんだ!」

「え!?まさか自分でやったんですか!?」

「あんまり難しいデザインのは作れないけどね

うちもこれでも長生きしてるから」

 

驚く僕にそう言いながら、大神さんは首にかけたそれを自分の服の中にしまう

 

「あれ?なんで普通に付けないんですか?」

「あはは、見ての通りうちってあんまり青系統のものが似合わなくてさ

だから残念だけどこれは身に付けてるだけ

装飾としては使わないつもりなんだ」

「それは残念ですね」

 

僕の言葉に大神さんがおや?という顔をする

 

「なになに?

海斗くんはうちがこれを付けてるのを見たかったの?」

「そうですね、折角綺麗な物なのにもったいないなって思いまして」

「!

ふふ、そう言ってもらえるだけで嬉しいよ!

じゃあ食器取ってくるね!!」

 

ふと視線を感じて振り向くと、そこには何やらニヤニヤとした顔をしたみこさんがいた

 

「…何ですか、みこさん?」

「うう~ん~、別に~?

海斗、何だか最近ミオちゃんと仲良いな~って」

 

そう言ってニヤニヤと笑うみこさん

そんな顔をされる事自体は、どうしてかあまり良い気がしないけど…正直そう言われるだけの心当たりはある

と言うのも、あの日以来何となく大神さんと話す頻度が増えた気がするからだ

 

そう、あの日から僕は白上神社に行く度に大神さんと話すようになったし、その縁で彼女の石トークを聞いたり、みこさんが詰所に置いているゲームで一緒に遊ぶ機会が増えたように思う

 

勿論今までそんな機会がまったく無かったという訳ではない

石トークはともかく、これまでだって大神さんと話す機会は何度かあったし、一緒にゲームをした事もある

ただこの二週間、その頻度が上がったというだけ

本当にそれだけの話なのは、今さら言うまでもない事だ

 

ただ…

 

(「海斗くんはどの石が好き?」)

 

ただ…

 

(「ふふん!

うちの勝ちだね、海斗くん!!」)

 

 

(「海斗くん!!」)

 

 

 

………

 

 

 

「フフフ…、海斗も隅におけませんな~♪」

「…そう言えばみこさん、前に大神さんの秘蔵のカステラこっそり食べてましたよね?

しかも、あれ確か村で一番高い店の奴ーー…」

「調子に乗ってすんませんでした」

 

即座に土下座へと移行するみこさん

そんな彼女に僕はやれやれと肩をすくめるが、そんな時僕の視界にちゃぶ台の上に置かれた一冊の冊子が映った

 

どこか見覚えのある年期の入った紺の表紙

それに対して、果たしてこの冊子をどこで見たのか記憶を巡らしてみると、意外とすぐに答えが出た

あれはそう、確かこの間倉庫の整理の時に大神さんが読んでいた冊子だ

 

「どうしてこんなところに…?」

「ーーあぁ、それはうちが写真を整理しようと思ってたんだ」

 

思わず漏れた疑問の言葉に、しかし即座に返答が返ってくる

振り向くと食器と包丁を持った大神さんが後ろに立っていた

 

「あ、ミオちゃん

お帰り」

「お待たせ、みこち

じゃあ早速ケーキを切ろっか」

 

そう言って、持ってきた包丁をケーキに入れ始める大神さん

だけど、何故だか僕には冊子の中身が気になったので聞いてみた

 

「写真ですか?」

「そう、写真

アルバムなんだよ、それ」

「へぇ~、そうなんだ

ねぇねぇミオちゃん、中身見ても良い?」

「うん、良いよ

…と言っても、古い写真だから白黒のものばっかりなんだけどね」

 

そう言いながらケーキを切り分ける大神さん

そして、アルバムを開いたみこさんもまた、開いたその中身を見て「本当だ!」と驚きの声をあげる

 

とは言え、色が無いだけで内容そのものはそこまで驚くようなものではない

まだカメラが今ほど普及していない時代の写真らしく、そのほとんどは家族の集合写真であり、何十人もの人間が集まって映っているものばかり

数少ないそうでないものも、特に注目すべきようなものは無い

 

それなのに

 

(…どうしてだろう)

 

今まで一度も見たことが無いはずの人達なのに、見覚えがある気がする

自分でも何故なのか分からないけれど、どこか懐かしいと感じてしまう

 

自分でも意味が分からない謎の衝動に僕は戸惑う

だけど、みこさんはそんな僕の様子に気付くこと無く、大神さんに更に尋ねた

 

「ねぇ、ミオちゃん

これって誰の写真なの?」

 

その言葉に大神さんはすぐには答えない

そして、なぜか僕の方を一瞬見た彼女はゆっくりと口を開いた

 

 

 

「ーーその写真はね、白上神社の神主一族の…多分海斗君の遠い親戚達の写真だよ」

 

 

 




この話を書くにあたってちょっと調べてみたんですけど、カラーフィルムの誕生って1935年みたいなんですよね

もちろん、一般に普及するのはずっと後の話ですが、技術だけはそんなに早くあったと知ってちょっと驚きました
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