昼下がり、俺とヴィレッタは政庁の応接室に呼び出された。
廊下を歩き応接室の扉の前まで着いたのでノックしようと扉に手とかざした所で、後ろにいるヴィレッタに「ちょっと待て」と、止められた。
ヴィレッタは鏡を取り出して、髪型や服のシワなど悪く見えるところがないかチェックしている。
それを微笑ましく思いながら横目で見る。
「そこまで気にしなくても大丈夫だと思うよ?」
「お前は慣れているかもしれんが、私にとっては初めてお会いする位の方なのだ。失礼があってはならない」
そう言いながらも、髪型や服を整えることに余念がない。
数分経った後、ようやく納得したのか鏡を仕舞い「いいぞ」と合図をくれた。
それを合図に応接室の扉をノックする。
ノックをすると「どうぞ」と返事があり、「失礼致します」と声を掛けながら扉を開けて中に入る。
応接室の中にはお付きの人が部屋の隅に立っていて、俺達を呼び出した人物、「ユーフェミア・リ・ブリタニア」がソファーに座っていた。
その時、雲間からの強い日差しが少女を一際明るく照らした。それが全身を赤く染めているように見えてしまい、俺は固まってしまった。
入り口で固まっていると、ヴィレッタが背中を小突いてくる。
それで正気に戻り、部屋の中ほどまで進み敬礼を取り挨拶をする。
「お初にお目にかかります、ユーフェミア皇女殿下。騎士アサト、参上致しました。こちらは部下の騎士ヴィレッタになります」
挨拶を聞いたユーフェミア様は、華が咲いたような笑顔を浮かべ挨拶を返してくれる。
「初めまして、アサト卿、ヴィレッタ卿。
「いえ、皇族の方からのご指名であれば何処にでも参ります」
定型的な固い挨拶を交わす。身分が違いすぎるので仕方がない。
挨拶を交わし終わると、ユーフェミア様が向かいの席に座るように手で勧めてくれた。
それを受けて向かい側のソファーに向かうが、ヴィレッタはソファーの後ろに向かった。
皇族の方と会うのが初めてなためか、緊張しているのを隠すために立っているつもりなのだろう。
傍から見れば、肩に力が入っているので緊張していることは丸わかりだが。
ユーフェミア様と対面する形で座ると、お付の方が紅茶を差し出してきてくれた。
お付の方が下がったのを見て、一口飲んだ。
カップを置いたのをきっかけにユーフェミア様が声を掛けてきた。
「アサト卿の事はコーネリア姉様からよく聞いています。優秀なデヴァイサーがいると」
「コーネリア様がですか? 本人からはあまりお褒めの言葉を聞きませんが」
「お姉様は人前で褒める方ではありませんから」
口に手を当ててくすくすと笑う。そういった仕草も絵になるから高貴な方は凄い。
すると、ユーフェミア様は意を決したよう姿勢を正し、強い意思を持った視線をこちらへと向ける。
その視線を受けて身構えるようにこちらも姿勢を正す。
「アサト卿、一つお願いがあります」
「なんでしょうか?」
「
胸に手を当てて、とんでもないことを言った。
「友達……ですか?」
「はい。これから
「友達でなくても、力はお貸し致しますが……」
「そんなのつまりません! せっかく同じ場所に同い年の人がいるのですから、お友達になりましょう?」
年齢相応の可愛らしい笑顔で言われてしまっては、断るとこちらが悪者になってしまうようで居心地が悪い。
「……解りました」
「ありがとうございます! まずはその口調からですね。もっと砕けた話し方にしましょう!」
ふー、と一度深い溜息をついてから、ユーフェミアへ顔を向ける。
「……わかったよ。殿下」
「そうそう。後、殿下ではなく、ユフィと呼んでください」
もうどうにでもなれ、という開き直りに近い感情になったので、
「わかったよ、ユフィ。これでいい?」
「はい!」
今まで以上の満面の笑みで答えるユフィを見て、こういうのを人たらしって言うんだろうなと思った。
後ろではヴィレッタが信じられないものを見たように口をぽかんと開けたままだ。
「それで、改めてお願いがあります」
「お願いとは?」
「シンジュク・ゲットーへの護衛をお願いします」
今、ブリタニア人がもっとも憎まれているであろう場所をユフィは口にした。