コードギアス・フロントライナー   作:なべを

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8.シンジュク・ゲットー

ユフィの無茶なお願いを聞いた後、俺とヴィレッタは一度軍施設へと戻った。

制服のままシンジュク・ゲットーには向かえないから、私服へと着替えるためにだ。

 

更衣室でロッカーから私服を取り出し着替えている俺の後ろで、

ヴィレッタも私服に着替えている。が、なんとか理性を保ちそっちを見ないようにしている。

布が擦れる音が気になってしまうのは許してほしいと思う。年頃の男の子なのだ。

私服に着替えながらヴィレッタは愚痴をこぼす。

 

「皇族というのは、ああもワガママなものなのか?」

「いや、ユフィが別ってだけじゃないかな。コーネリア様はお願いする前に自分で動くタイプだし」

 

そう言い返す頃には俺の着替えは終わったのだが、ヴィレッタの着替えはまだ終わっていない。

自分のロッカーの扉を見るだけの時間が出来てしまい、少し気まずいので話題を振る。

 

「護衛が俺達2人だけって言うのは少し不安かな」

「お前はこの手の任務には向いてないからな。人を増やすか?」

「難しいね。場所が場所だけに大勢で行くのもイレブンを刺激しかねない」

「やはり、我々で動くしかないということか」

 

着替えの音が聞こえなくなり、「いいぞ」と声を賭けてくれたので振り返ると、ヴィレッタは動きやすいジャケット姿に着替えていた。

「……変な所で律儀だな、貴様は」と言ってきたので、「……流石に礼儀は弁えているよ」と反論して2人で部屋を出る。

 

次に向かったのは武器庫だ。流石に丸腰での護衛はありえないので拳銃を借りる。

怪しい手つきで渡された拳銃の動作を確認していると、

 

「本当に使えるのか?」

 

とヴィレッタは訝しんだ目つきで聞いてきた。

 

「苦手だけど仕方がない」

 

そう言って、腰の後ろにホルスターを装備した。

 

本当にKMF(ナイトメアフレーム)以外の事は苦手なのだ。

……そうか、KMF(ナイトメアフレーム)か。

顎に手を当てて考え込む俺に対して、ヴィレッタが聞いてくる。

 

「どうした?」

「思いついた事があるから、ちょっと寄り道をしよう」

 

そうして、寄り道を終えた俺達は政庁に戻り、ユフィと合流した。

ユフィも豪華なドレス姿ではなく、市井の人達が着るようなシンプルな服に着替えていた。

 

「待たせたかな?」

「ちょうどです。こちらの準備もさっき出来たところでした」

 

ヴィレッタに目配せをすると、頷きが返ってくる。

出来る準備はした。

 

「それじゃ行こうか」

 

こうして、俺、ヴィレッタ、ユフィはシンジュク・ゲットーへ向けて足を向けた。

外に出た所で見覚えが有る男性が歩いているのが見えた。枢木スザクだ。

これ幸いにと、俺は駆け寄って声を掛ける。

 

「枢木スザクくん」

 

その声に反応したスザクは振り返り、俺だと気付くと敬礼を返してきた。

 

「アサト卿! なにか御用でしょうか?」

「もしかして、軍事法廷の後かな? どんな判決がでたの?」

「判決は無罪放免となりました。一体何がどうなっているのか……」

「なるほど、『オレンジ』の事があるから君に構ってる余裕が無くなったってことか」

 

そうして、私服姿のスザクを上から下へと見る。スザクは困惑しながら

 

「あの、アサト卿?」

「カイでいいよ。口調もラフでいい。それより君、これから暇かい?」

 

スザクは意図が見えないため困惑しているが「はい」と答えたので、道連れにすることにした。

 

「スザク。これからあるお方の護衛をするので、君も一緒に来てくれるかい?」

「護衛? わかったよ」

 

そうして、ヴィレッタとユフィにスザクを紹介する。

ユフィは歓迎してくれたが、ヴィレッタはスザクの事を知っているので「大丈夫なのか?」と確認してきた。

 

「護衛として後一人くらいは欲しかったし、彼はイレブンだから。これから行く所にもちょうどいい」

 

というと渋々ながら納得してくれた。

 

そうしてスザクも加わったが、租界を抜けるまでが大変だった。

ユフィは租界に興味を持って、あちらこちらと動き回るので付いていくので精一杯だ。

女性とのショッピングってこんな感じなんだろうか、と幾分現実逃避しながらそれに3人で付いていく。

 

それでも、なんとか誘導してシンジュク・ゲットーに建てられた慰霊碑の前まで来た。

周りは瓦礫だらけでビルも崩れたままだが、そこだけ更地になっている、それがかえってその場所を際立たせている。

慰霊碑にはいくつか花や蝋燭が置かれていた。

 

ユフィは途中で購入した花束を慰霊碑に捧げ黙祷をしている。

何に対して黙祷しているのだろうか? クロヴィス殿下の事? それとも、虐殺された罪なきイレブンの事?

それは、その後姿からは計り知ることは出来ない。ただ、悲しんでいるということは伝わってくる。

 

すると、近くの建造物から爆発音がして煙が立ち上った。

慌てて周りを警戒すると、特派のトレーラーが慰霊碑の前に滑り込んできた。

こういうのを見越して、特派にお願いして密かに付いてきてもらっていた。

トレーラーから、セシルさんが身を乗り出し、

 

「ここは危険よ、早く乗って!」

 

と警告してくる。その後ろにいるロイドさんが補足をしてくれる。

 

「どうやら純血派の内ゲバが始まったみたいだよ、さっさと逃げよう」

「そうだな、危険が有るなら引くべきだ。殿下、乗っていただけますか?」

 

ヴィレッタがトレーラーに近づき、ユフィをトレーラーに乗せようとする。

だが、ユフィとスザクは煙の方を見てトレーラーに乗ろうとしない。

 

「ユフィ? 乗らないの?」

 

俺はトレーラーの入り口まで来て振り返り、ユフィに聞く。

返答はユフィではなく、スザクからもたらされた。

 

「カイ、君は見過ごすのか?」

「まぁ。俺達には関係ないからね。ユフィもいるし逃げるのが得策だよ」

「……僕は無用な争いを見過ごすとは出来ない」

「それは正義感から? それは介入する動機にはならないよ」

「僕は争いのない世界を目指したい。それを諦めたくないんだ」

 

スザクの目を見てはっきり言ってやる。

 

「理想論だな。そんなものでは誰も付いてこない」

「でも!」

「君の正義は認めるよ。でも、君には力が無い」

 

スザクはうつむき、悔しさをにじませながらこぶしをきつく握った。

正論がその場を満たし沈黙が流れる中、ユフィが沈黙を破った。

顔をこちらに向けて、俺の目を力ある視線で真っ直ぐに見て、

 

「力なき正義にできる事ありません。正義なき力はただの暴力です。でも、今のあなたはその両方を持っていると思います」

 

ですから、カイ、と

 

「私はあなたに期待します。力ある正義をなせる者がいることを証明できると」

 

はっきりと告げた。

 

なんか、こんな事が前にもあった気がする。

前のは「感謝」だったかな。

でも今度のは「期待」だ。俺の「未来」に「期待」しているのだ。

 

確かに、今の俺はイレブンでありながら騎士であり、ランスロットにも乗ることが出来る。

力はもっている。力が正義だと思っている。

でも「期待」されている正義はきっと違うんだろう。それは眩しい道のことを指している。

 

転生者としてこの世界に来た俺の役割はなんだろう?っていつも考えていた。

ただ、端役の一人でいること? 主人公になること?

違うのかもしれない。「俺」が正しいと思うことをするのが役割なんじゃないだろうか?

 

その場にいる全員の視線が俺に集まっている。俺がどんな答えを出すのかを待っているのだ。

 

長い沈黙の後、

 

「セシルさん。ランスロットの準備をお願いします」

「了解しました!」

 

俺は自分の「未来」に「期待」することにした。

 

崩れた建物の中では、ジェレミアが乗っているKMF(ナイトメアフレーム)を純血派のKMF(ナイトメアフレーム)が囲み粛清が行われるところだった。

その最中にスラッシュハーケンを飛ばし、純血派を牽制する。

 

「そこまでです」

崩れた建物の上にランスロットで姿を表し無線を繋げる。

 

『特派のKMF(ナイトメアフレーム)!? アサト卿か!』

「これ以上戦闘は止め、速やかに帰還してください。もしこの要求が飲めない場合は物理的に止めます」

 

ランスロットに備え付けられた、MVS(メーザーバイブレーションソード)を両手に装備して威嚇する。

が、それに対して純血派のKMF(ナイトメアフレーム)からスラッシュハーケンがこちらに飛んでくる。それが答えか。

 

純血派に向けて飛び掛かり、向かってくるスラッシュハーケンを叩き切る。

着地後、近くのKMF(ナイトメアフレーム)が槍を向けてくるが、それごと腕を叩き切る。

 

その間に、一騎のKMF(ナイトメアフレーム)がジェレミアを狙うがスラッシュハーケンで牽制して近づけないようにする。

そして、ジェレミア機の前に立ちふさがる形で純血派達と間合いをとる。

 

風が両者の間を吹き抜けると、俺達を囲んでいた周りのKMF(ナイトメアフレーム)が引いていく。

訝しんでいると、正面にいるKMF(ナイトメアフレーム)が、腰に付けられた「ケイオス爆雷」をこちらに向かって放り投げた。

 

その時、

 

『おやめなさい!』

 

突如、ユフィが戦場に乱入してきた。

が、ケイオス爆雷はもう放り投げられている。

 

まずい!

 

ランスロットを前に出し、両手でブレイズルミナスを展開しランスロットとユフィを覆い隠す。

瞬間、ケイオス爆雷が爆発し銃弾が雨のように降り注ぐ。

 

それをブレイズルミナスの出力を上げて防ぐ。一発でも後ろにそらしたらユフィが死ぬ。

それだけは、許容できないと言わんばかりにスロットルを全力で倒す。

 

やがて、全弾発射しつくしたケイオス爆雷は地に落ちた。

ユフィには当たっていない。全てを防ぎきったのだ。

 

すると、いつもの華のある声ではなく、皇族としての威厳有る声で、ユフィは

 

「剣を収めなさい! 私(わたくし)はブリタニア第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニア。この場は私(わたくし)が預かります!」

 

その言葉を聞いて自分が攻撃してしまった相手が皇族だとわかったからか、

 

『誠に申し訳ございません!』

 

そういって、純血派のKMF(ナイトメアフレーム)達は矛を収め一斉に臣下の礼を取った。

こうして、ユフィとシンジュク・ゲットーに関する一連の事件は幕を引いた。

 

この場を照らす夕日の赤色を血の赤色にしないためにも、これからあがき続けなけばいけない。

俺は「未来」を「期待」されてしまったのだから。

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