ブリタニア軍による周辺の封鎖と住民の退避。
それによって戦争が確実に行われる。ということがナリタ山周辺を緊張に包む原因になっていた。
すでにナリタ山をブリタニア軍が包囲しているのが、日本解放戦線にも解ったのだろう。
山中には日本産の
が、ブリタニア側の圧倒的な数からすれば、頼りない数としか見て取れない。
俺は展開している「無頼」の様子を、山の麓で待機している特派のトレーラー前から双眼鏡で見ている。
横には、ヴィレッタが同じように双眼鏡で見ている。スザクはその隣で待機していた。
「抵抗しようとする気概は見えるが、あれじゃ頼りないな」
「こちらが展開している数をみたか? あれでは降伏した方がまだマシだ」
双眼鏡を下ろして、ヴィレッタとスザクに向き合う。
ヴィレッタも双眼鏡を下ろして、スザクと同じようにこちらを見てくる。
「ヴィレッタとスザクはコーネリア様の部隊に入ってくれ。俺はいつも通りに最前戦にでる」
「一人で行くのかい?」
俺の実力に半信半疑なスザクが質問してくる。
まぁ、単騎で最前線に突っ込むなんて頭がおかしいやつのすることだ。
だが、俺はそれの部類に入る。それが日常だった為、当たり前になってしまった。
その辺り、ヴィレッタはよく解っている。
「こいつに付いていくのは相当大変だぞ」
人差し指をこちらに向けて、呆れた顔でスザクに教える。
「まぁ、そんな感じ」
一度、咳払いをして空気を変えてから、
「今回は黒の騎士団の関与も想定されている。そうなった場合、頭であるコーネリア様を押さえられるのが一番まずい」
俺の言葉を2人は真剣に聞いている。
「それを想定するとコーネリア様の部隊を厚くしたほうがいい。それを2人に頼む」
史実とは離れていってるため、本当に不測の事態が起こりかねない。
そのため、ユフィに頼んでコーネリア様が前線に出ないように説得もお願いした。
が、無駄だった。あの方、頑固だからな。
ギルフォード卿にも頼んでみたけど、あの人そもそも俺の事嫌いだから伝えていないかもしれない。
「今回の作戦では君たちが鍵になるかも知れない。頼んだよ」
「「イエス・マイ・ロード」」
作戦中だからか、2人ともきちんと軍式に倣った返礼を返してくれる。
これで、打てる手は打ったはずだ。あとは野となれ山となれ、だな。
そうしていると、耳につけた無線機からダールトン将軍の声が流れてきた。
『作戦開始時刻まで残り10分。各員、搭乗開始!』
その合図で、俺達はそれぞれの
俺はランスロットが待機しているトレーラーへと足を向けた。
ランスロットは念のため、ヴァリスに
念には念を入れておく。
コックピットへ座ると、座席が前にスライドし後ろが閉じられる。照明が付いてコックピット内を明るく照らす。
キーを差し込みランスロットを起動させると、各モニターが点きコックピット内は更に明るくなった。
最終確認のシーケンスを実行しているのが無線機から伝わってきた。
ふー、と一息ついてから操縦桿を握りしめる。
『ランスロット、出撃準備完了』
無線機からセシルさんの最終確認の合図が聞こえた。
その合図を聞いてMEブーストを起動させる。
そして、開始時刻になり無線機にダールトン将軍からの合図が聞こえた。
『総員、作戦開始!』
その合図と共に、MEブーストと使い最大戦速で山を駆け上る。
当然、他の隊は付いてこれないので俺が一番槍になる。
その速度に驚いたのか、山の中腹に展開していた3騎の「無頼」が慌てて発砲してくる。
敵の銃弾をジグザクに動いて躱す。高速で動きながらヴァリスで狙いを定めて一番近い敵に狙いを定め発砲する。
発射された弾丸は真っ直ぐ飛び手前の「無頼」をあっさり爆散させた。
それに慌てた二騎の「無頼」が散開しようとするが、スラッシュハーケンを利用して上に飛び上がり「無頼」の後ろを取る。
そうして、各隊が順調に行動しているときだった。
急に地震が発生し土砂崩れが発生した。その流れは敵、味方騎を問わず無慈悲に飲み込んだ。
戦場は一気にパニックになり、無線では情報が錯綜している。
『状況はどうなっている!? 我軍の被害は!』
『信号の返りは20%を切っています!』
ダールトン将軍の声が無線から聞こえ、絶望的な状況に一気に追い込まれたことがわかる。
俺も動こうとしたその時、山の裏手から五騎の「無頼」が戦場に飛び込んできた。
「新手…。藤堂達か!」
よりにもよって、ここで藤堂と「四聖剣」を鉢合わせるとは。
更に最悪なのは、「四聖剣」を藤堂を含む五騎の狙いは俺だった。隙のない陣形攻撃で俺は完全に足止めされた。
そして、最悪はさらに最悪を連れてくる。
無線機からヴィレッタの声が響いた。
『カイ! こちらコーネリア様の隊がゼロの主力部隊と交戦した! 相手の新型が止まらない!』
ということは、紅蓮弐式にカレンが乗っているということだ。
「四聖剣」の連中が纏わりついてきて、回避でこちらの手もいっぱいだ。イライラが募る。
どうする。あっちもこっちも対応しないといけない。
手が塞がれた状況で、俺はシンジュク・ゲットーのことを思い出していた。
俺はあの時、自分の「未来」に「期待」した。
その「期待」をもう手放すのか?
そうじゃない! まだ始まってすらいない!
そうだ! 全部倒せば終わりだ!
そう心が決まった瞬間、自己破損を考えずヴァリスを足元に向けて撃った。
爆風があたりに広まり、俺の行動が読めなかったのか「四聖剣」が一旦距離をとる。
その隙を狙って、スラッシュハーケンで飛び出し「四聖剣」の一騎の後ろを取り
陣形は崩れた。
焦った相手の混乱が収まらないうちに残り3騎も倒そうとするが、それは指揮機の「無頼」に防がれた。
敵と俺との間に距離が出来た。
その隙を見逃さない。
俺はその隙に森に向かってヴァリスを発射した。
敵が対応する前にヴァリスがこじ開けた道を最大戦速で駆け抜け、コーネリア様の所に向かうまでヴァリスで障害物を壊しながら一直線に向かう。
ヴァリスの弾丸が木ではなく岩を破壊したのを見て、スラッシュハーケンを使って飛び出し「紅蓮弐式」とコーネリア様の間に割って入る。
「無事ですか!? コーネリア様!」
『カイか! そちらは任せた! 私はゼロを倒す! 2人とも付いてこい!』
『『イエス・ユア・ハイネス』』
ヴィレッタとスザクの声が無線機から聞こえる、2人とも無事だったようだ。
「紅蓮弐式」は俺をターゲットにしたようで、こちらに向かって突っ込んでくる。
ヴァリスを連射して牽制するが躱しながらこちらに近づいてくる。流石、もう一つの第7世代ナイトメアフレーム。「無頼」とは大違いだ。
至近距離までたどりつかれ右手を突き出してきたので、反射的に足を出してしまい右手に掴まれる。
まずい! 輻射波動だ!
そう思い、サンドブースターを放棄してなんとか逃れる。
カレンのデヴァイサーとしての素質はかなりのものだ。相手の右手に注意を払いながら、代わる代わる攻防を繰り返す。
相手はこちらの攻撃を巧みに避け続ける。が、まだ経験が浅いな。
崖の方に誘導されていることに気付いていない。
止めた反動を崖が耐えられなくなり、「紅蓮弐式」は崖下に落ちていった。
こちらの件は片付いた。すると、次の問題が発生した。
無線機からヴィレッタの声が響いてくる。
『おい、枢木! どうした! 応答しろ!』
「どうした! ヴィレッタ!」
『枢木が暴走している! 手が付けられない!』
「そっちに向かう! ヴィレッタ、コーネリア様は!?」
『途中でエナジーフィラーが尽きて止まっている!』
「スザクは俺に任せて、コーネリア様の退却を優先しろ!」
『イエス・マイ・ロード!』
そうして、スザクが暴れている箇所まで来たがひどいものだった。手当たり次第に周りを破壊している。
「セシルさん! スザク機の緊急脱出装置を起動してください!」
『今、やってるけどもう少し時間がかかるわ!』
くそっ!それまで相手をするしかないのか。
「スザク! 聞こえるか! すぐに停止してコックピットから降りろ!」
反応はない。それどころかこちらを標的にしてきた。
量産機とはいえ、ランスロットに載ったスザクを相手にしなくてはならないとは!
が、なんというか正気を失っているからか動きが単調で躱しやすかった。グズをこねている子供が操作しているみたいだ。
そうしてるうちに遠隔での脱出機構が働いたのか、コックピットブロックが機体から離れて、ランスロット・トライアルは停止した。
その後だった、コーネリア様から無線が飛んできた。
『カイ、撤退しろ。全軍も撤退させる。……悔しいが今回は私の負けだ』
「イエス・ユア・ハイネス」
後はこちらの後始末をしなければならない。
スザクの回収だ。コーネリア様を旗艦に送り届けたヴィレッタはこちらに合流した。
『ヴィレッタはコックピットの確保を頼む。俺は機体を』
「イエス・マイ・ロード」
俺は後片付けをしながら、特派のトレーラーまで戻った。
スザクが暴走した原因は解らないが、ギアスが関連しているのだろう。
こうして、ナリタ山攻防戦はゼロの撤退を持って一旦の終結をみた。
はたから見れば、黒の騎士団が、ブリタニア軍を追い詰めたと見えるだろう。
ここからは政治の時間になりそうだ。
ため息を突き、今後の不安を抱えながら撤収していく。