コードギアス・フロントライナー   作:なべを

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12.告白

エリア11の軍施設の俺に割り当てられた部屋。そこはいつもとは違う緊張感が支配していた。

 

「なんで呼ばれたかは、わかってるよね?」

 

椅子に座り机の上で手を組んで、上官として振る舞っている俺。

その横で副官として控えているヴィレッタ。

そして、机の前で直立不動で立っているのが、今回の主役である枢木スザク。

 

「はい、理解しています」

「では、もう一度初めから聞こうか。なぜ錯乱状態に陥ったのか」

「それは……」

 

スザクは言い淀む。

 

「自分でもよく解っていません。ゼロを追い詰めたところまでは覚えているでのすが……」

「それ以降は覚えていない、と」

「はい」

 

そう言い、俺と視線を合わせる。

視線からは嘘を言っているようには感じない。スザクは本当の事を言っているのだろう。

だが、ここは軍なのだ。

規律ある行動が出来なかった者には処罰が与えられる。

今回のスザクの行動を見過ごす事が出来ない。

 

「あの行動を見る限り君には前線はまだ早いようだ。次回の作戦では外れてもらう。さらに、医師の鑑定を受けること」

 

いいね? と、上官として返答する。

 

「……了解しました」

 

話は以上だ、というように手を払う動作をする。スザクは敬礼して部屋から立ち去って行った。

部屋には重い空気と、俺とヴィレッタだけが残った。

椅子を回してヴィレッタの方に向き直る。

ヴィレッタは腕を組んで体をこちらに向けてはいるが、顔はスザクが出ていった扉を見ている。

 

「甘い。と言いたげだね」

「あたりまえだ。あの錯乱状態を見たならば、戦場に出せるものか」

「そうだけど、ね」

 

そう言って、左手にある窓から空を見る。その青さは無言の圧力を掛けられているようだ。

重い沈黙が部屋を支配する。

 

「……何か言いたい事があるんじゃないのか?」

 

ヴィレッタは扉に視線を向けたまま聞いてきた。

その声色には、今までにない不安と優しさが感じられた。

だからだろう、俺は胸のうちにある迷いであり、不安を口に出してしまった。

 

「最近思うんだ。俺って何がしたいんだろうって」

 

ここ最近、いろんな事がありすぎた。

ユフィと出会い、シンジュク・ゲットーでの一連の事件。

先日のナリタでの立ち回り。

なんか全部が空回っているように感じる。

 

自分の心が周りに対して置いていかれている気がして、たまらなく不安になってくる。

 

俺は何をしたいんだろう。

俺には何が出来るんだろう。

俺ってなんなんだろう。

 

って。

 

「だから思うんだ。何かが出来てるようで、本当は何も出来ない人間なんじゃないかって」

 

それは俺が今抱えている悩みの告白だった。

誰も答えてくれない自分に対する迷い。それがじわじわと俺を蝕んでいく。

 

ヴィレッタは腕を組み、視線は扉に向けたまま俺の弱音を聞いている。

弱音を吐ききった部屋の空気はさらに重く冷たいものになった。

だって、その問い自分では答えられない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その重苦しい沈黙を破ったのはヴィレッタだった。

 

「6年前。私が騎士候になって初めて実戦に出た時の話だ」

 

そういって、ヴィレッタはポツリポツリと過去を語りだした。

 

 

私はその時、初めての実戦だったので後方支援組だった。

が、緊張ためか間違えて最前線まで進んでしまったのだ。

そのため私は孤立し、更には敵機に囲まれた。

初めて敵と出会った恐怖で何もすることが出来なくて、敵の銃口がこちらを向いた時、もう駄目だと思った。

 

そんな時だ。その最前線に一騎のKMF(ナイトメアフレーム)が飛び込んで来たのは。

あっという間だった。そのKMF(ナイトメアフレーム)は敵を殲滅し、呆気に取られる私を残して、また最前線に戻っていった。

次の戦場でもそのKMF(ナイトメアフレーム)は最前線で戦い、味方の血路を開いた。

それはまさに理想の騎士の姿だった。その姿に私は強烈に憧れた。

 

私はそのKMF(ナイトメアフレーム)のデヴァイサーに会いたくなった。

誰かの下士官になるなら、あのように最前線を駆け向ける人の下に付きたかったからだ。

 

しかし、あの最前線にいたKMF(ナイトメアフレーム)の情報は何処にも無かった。存在しなかった。

……お前達、存在しない部隊を知ったのはずっと後になる。その頃にはもう出会う手段は無かった。

 

それからしばらくたった時だ、噂話が聞こえてきたのは。皇族とナイト・オブ・ラウンズの後援を受けてナンバーズが騎士候になったと。

私は直感した。あの時のKMF(ナイトメアフレーム)に乗っていた人物だ、と。

 

そうして私はその人物に会うため奔走した。そして3年前、私はお前と出会った。

その時の衝撃たるや。そこにいたのは年端もいかぬ少年だったのだ。

だが、戦場を共にして理解した。誰よりも最前戦に出て戦うその少年こそが、あの時のKMF(ナイトメアフレーム)に乗っていた人物だったと。

 

 

そう言ってヴィレッタは俺の椅子の前まで歩いてくると、

椅子の肘掛けに上から手を置き、身を乗り出して俺と顔を突き合わせる。

ヴィレッタは想いが届くようにと、胸の内にある感情を強く吐き出してきた。

 

「私にはお前が何よりも眩しかった! 誰よりも最前戦に立ち、誰よりも味方のために戦っていたお前が!」

 

言葉を吐き出した後、ヴィレッタは顔をガクリと下に向けた。

今の自分を見られたくないようにと。

が、心の叫びは止まらない。

 

「だから、そんな弱音は吐かないでくれ……。その背中を追わせてくれ……。私の()()()()()()()()……」

 

足にポツリポツリと涙が落ちてくる。その涙は熱かった。

 

……ヴィレッタには俺がそんな風に見えていたのか。

当時の俺にはそんな事、考える余裕なんて無かった。

ただ、機械のように眼の前の敵を倒していただけだったのだが、他人にはそう映らなかったようだ。

 

機械的に戦うのは楽だ。何も考えなくていい。

だから出来た事もある。

 

でも、今の俺には心がある。高く飛べる翼がある、強い剣もある。

心を持てたからこそ、萎縮していたのかもしれない。

 

そう、今必要なのはあの頃のように()()()()()()()()()()()

翼を生やし、剣を持ち、誰よりも前で戦うこと。戦闘の一番前で皆に背中を見せること。

それが俺のようだ。

 

その答えは、胸にストンと落ちた。

 

自分で自分を正しく理解しているものはいない。()()の方が()()を理解しているものだ。

一番近くで見てくれた他人であるヴィレッタがそういうなら、そうなのだろう。

 

ヴィレッタ、と声を掛ける。

その声は俺が出したとは思えないくらい優しい声だった。

その声に反応して、ヴィレッタは涙混じりの顔を上げて見せてくれる。

 

「出来るか解らないけど、君が憧れるようなフロントライナーとして頑張ってみるよ」

 

そうして、言葉を一度区切り、

 

「ありがとう、ヴィレッタ」

 

その顔は年相応の柔らかい男の子の笑顔だった。

 

その顔にヴィレッタは一瞬見惚れていたようだが、はっと気がついて、俺から距離を取った。

赤ら顔になり手でポニーテルの先をいじりながら、

 

「別にお前の事が心配だったとかそういうのではないというか……」

 

ごにょごにょと、小声で言い訳をしている。

 

改めて、窓から空を見上げる。

その空はさっき見た時より青く、どこまでも飛んで行けそうに高く見えた。

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