ユフィの行政特区「日本」設立の宣言から幾日。
その宣言を受けて、ブリタニア政庁、ブリタニア軍共に慌ただしく動く事になったみたい。
コーネリア様も聞いていなかったようで、その対応に追われてかなり大忙しなようだった。
申し訳ないが、俺達に出来ることは無いので大人しく待機しようと思っていた。
が、とある事を思いついた事ので、それを実行するためにあちらこちらへと駆け回り、ヴィレッタにもとある仕事をお願いした。
そうして、俺達のもろもろが準備が出来た日。
俺とヴィレッタは、行政特区「日本」の入居管理センターへと来ていた。
ここに、ユフィがいると聞いたからだ。
開設以来から入居申請者は途切れることがなく、受付には今も多くの人が並んでいる。
そんな、入居申請者の列を眼下に収める窓がある場所で、ユフィはスザクと話をしていた。
その場所に俺は足を踏み入れて、
「こんにちは、ユフィ、スザク」
片手を上げて挨拶をしながら2人に近づいていく。
その挨拶に気づいたユフィとスザクは、こちらへ体を向けて挨拶を返してくれる。
「こんにちは、カイ。いらしてたんですね」
「こんにちは、カイ」
俺達は歩いて近づき、2人の前に立つと会話を始めた。
「ああ、2人というか、ユフィに用事が合ったからね」
「
頭をコテンと横に倒した様子から、頭の上に疑問符が見えるようだった。
その愛らしい様子を横目に、窓から見える入居申請者の列の方を眺める。
「凄い人数だね」
「入居申請は20万人を超えたそうです」
「そりゃ凄い」
行政特区というよりもはや一つの都市だな。
それほど「日本人」で在りたいということか。難しいな。
「それで、用事とはなんでしょうか?」
「ああ、ユフィはこれから、行政特区『日本』でイレブン……、日本人とブリタニア人の共存を目指すわけだ」
「はい、難しいことだとは思っていますが、やり遂げてみせます」
「もし、それを実現している場所があったら行ってみたくないか?」
「そんな場所があるのですか!?」
驚きを隠せない様子で、ユフィはこちらに身を乗り出してくる。
「ああ、エリア11にはあるんだよ」
「それは何処でしょうか!?」
「ホッカイドウ・ブロック」
*
そうして、皇族専用機に乗って俺達は空からホッカイドウ・ブロックへと目指している。
皇族専用機が使えてよかった。軍の輸送機とは比べ物にならない位に居心地がいい。
室内の向かって右側の席にユフィとスザクが並んで座り、テーブルを挟んで反対側に俺とヴィレッタが並んで座っている。
「ユフィはホッカイドウ・ブロックの事を何処まで知っている?」
「恥ずかしながら、ほとんど知りませんでした」
「じゃぁ、簡単に説明するね」
現ホッカイドウ・ブロックの統治者である
その後、ブリタニア帝国の侵攻時に
「と、まぁこんな感じかな」
「
「まぁ、トウキョウ租界とは地理的にも離れているから、あまり気が付かないよね」
「そんなお方がいらっしゃるのなら、ぜひお話を聞いてみたいです!」
「だろうと思ってもう話は通してあるよ。これから行くことも先方には伝わっている」
このためにいろいろと奔走したのだ。
コーネリア様にも動いていただいた。とても忙しい時期だったがちゃんと話を通してくれたので、流石としかいいようがない。
ヴィレッタに声を掛けると、彼女は一枚のタブレットを机に置いてユフィに渡した。
ユフィはそのタブレットを受け取って、表示されている内容を見る。
タブレットには
「
ユフィはタブレットを持ったまま俺の方を向いて
「ありがとうございます!」
と返事をして、タブレットの内容を確認しだした。
*
皇族専用機がホッカイドウ・ブロック政庁の発着場に着くと、
停止した皇族専用機の扉が開き、開いた扉はそのまま階段になる。
俺達が先に降り階段の横で待機してから、最後にユフィが皇族専用機から降りてくる。
「ようこそ、ホッカイドウ・ブロックへ。ユーフェミア皇女殿下。この地の統治を任されております
「お初にお目にかかります、
ユフィもスカートをつまみ挨拶を返した。
挨拶が終わると、
「もしかして、あなたがアサト卿ですか?」
と、俺に向かって質問してきた。
「はい。お初にお目にかかります。
「おお、お噂はホッカイドウ・ブロックまで響いておりますよ!」
と、俺の前まで近づいて両肩を叩きながら褒めてくれた。
「ありがとうございます。自分がそこまで有名だとは思ってもいませんでした」
「何をおっしゃいますか、最前戦を駆け抜ける日本人。このエリア11では有名にもなりましょう!」
そう言って、褒めちぎってくれるが、褒められる事に慣れていないので、ものすごく照れる。
そいういうやり取りが終わると、俺達は発着場から政庁の応接室へと通された。
応接室は質素ながら洗練された場所で、その中央にある豪華なソファにユフィと
俺はユフィの席の後ろ立ち、他の2人は壁際で待機している。
そうして、話し合いが始まろうとした時、応接室の扉が開き2人の少女がお茶を運んで来た。
「お父様、お茶を持ってまいりました」
「おお、ありがとう、サクヤ、サクラ」
そう言った
「これは娘のサクヤと、従姉妹のサクラです」
「初めまして、
「初めまして、
まるで双子のようだ。少女達の整った容姿、声、髪の長さまで同じに見える。
年相応とは思えないほど、礼儀正しく少女達はお辞儀をして、お茶をユフィと
その時、一人の少女と俺は眼が合った。
そのまま俺を見続けているので、軽く首をかしげると、はっとしたようにお辞儀をして、2人とも部屋から出ていった。
「君の事が気になったのかな? 娘はやれんぞ?」
「まさか」
その声は
そうして話し合いが始まる前に、ユフィが俺達のことを気遣ってくれた。
「アサト卿、それと2人とも。楽にして構いませんよ」
「イエス・ユア・ハイネス」
ユフィに返礼して、俺達は応接室の外に出る。
が、流石に護衛がいないのはまずいので、スザクとヴィレッタには扉の前で待機を言い渡した。
俺は応接室から少し離れた所にある中庭に来ていた。
そこは小さな日本庭園になっており、池に鯉までいる。
その池に掛かっている小さな橋の上で池の鯉を見ていると、先程お茶を運んできた少女がこちらに向かってくるのが見えた。
「こんにちは、サクヤちゃん」
その言葉にびっくりしたようで、立ち止まり固まっている。
「私がサクヤだとわかるんですね」
「一応、人を見る目はある方だと思っているから」
当てられた衝撃から立ち直ったのか俺の隣まで近づいてきた。そして、サクヤちゃんは顔を上げてこちらを見て質問してきた。
「あなたは、なぜ騎士になろうと思ったのですか?」
「力が欲しかったからだよ。これは後付になるが、やりたい事も見つかったから」
「それだけですか」
「それだけ」
そうすると沈黙が流れるが、俺はそれを破る。
隣に居るサクヤちゃんの方を向き、前にかがみ目線を合わせ話をする。
「今の君には難しいかも知れないが、これから世界は変わっていく」
「行政特区の話しでしょうか?」
「君は頭がいいね。それもあるが、いい意味でも悪い意味でもこれから世界は変化する」
そういって、懐から取り出したお守りをサクヤちゃんに渡す。
ロイドさんに作ってもらった特別製のお守りだ。
「これは……」
「これは、俺に直接合図が届き、現在位置を知らせる機械が入っているお守りだ。今後どうしようも無い事が起こった時、これを使うといい」
「使うことは無いと思いますが、ありがとうございます」
サクヤちゃんはそういって、お辞儀してくれた。
そんなサクヤちゃんの頭に手を置いて
「それじゃ、縁があったらまた会おうね」
「子供扱いしないで下さい。……縁があればまた会いましょう」
そういうと、サクヤちゃんは俺から離れて中庭から出ていった。
……最悪には備えとかないといけないからね。
しばらくして、ホッカイドウに滞在できる時間が来たので、中庭から応接室へ戻る。
応接室に入り、ユフィの後ろまで近づき耳打ちをする。
「ユフィ、そろそろ時間だ」
その行為で
「おっと、もうそんな時間かな」
「ええ、そのようです。もっとお話をお聞きしたかったのですが」
「いえ、これからも機会はあるでしょう。まずは行政特区『日本』に注力してくだされ」
「有難うございます」
ユフィと、
そうして俺達は皇族専用機でホッカイドウ・ブロックを後にした。
ユフィはトウキョウ租界に戻ると政庁に籠り行政特区「日本」の構想を再度、練っていった。
そして、行政特区「日本」開設式典が始まる日が訪れた。
奪還のロゼ、面白いですよ