コードギアス・フロントライナー   作:なべを

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5.力と強さ

手術室に現れたその少年は、自らをV.V.(ブイツー)と名乗った。

少年の口から語られたのは、超常の力「ギアス」というものについてだった。

 

なぜ、ユフィは人が変わったような行動を取ったのか?

なぜ、スザクは自分の命の危機が迫った状況であんな行動をとったのか?

 

つまり、「ギアス」とは人を強制的に操り、その記憶を失わせる力。

ゼロがそんな力を持っている事を教えてくれた。

そのことを俺達に伝えるとV.V.(ブイツー)は話す事は終わったとばかりに振り返り、手術室の扉の向こうに消えていった。

 

V.V.(ブイツー)が去った後、俺とスザクはそのとんでもない内容に呆然としていたが、やがて一緒に手術室の外に出た。

手術室の外の廊下には、ヴィレッタ、セシルさんとロイドさんが待っていた。

誰もV.V.(ブイツー)に関しする話をしてこないので、ヴィレッタに尋ねる。

 

「さっき、ここを少年が通らなかった?」

「いや、見ていないが」

 

V.V.(ブイツー)は幻だったかのように消えていた。これも「ギアス」の力だろうか。

……実際に「ギアス」の力が働いた所を見たとしても、その超常の力を理解するのは難しい。

 

俺がそう思案していると、皆が俺を見ているのに気がついて顔を上げた。

この次にどう動くか、俺の判断を待っているようだった。

 

「……セシルさんとロイドさんは、先にブリッジに行って情報を集めてもらえますか?」

「わかりました」

 

セシルさんはロイドさんを伴って、ブリッジの方に歩いていった。

 

「スザクと、ヴィレッタはパイロットスーツに着替えてからブリッジだ」

「「イエス・マイ・ロード」」

 

俺はヴィレッタに肩を借りながら、スザクと一緒に更衣室へと向かった。

 

更衣室に着くとスザクとヴィレッタは無言で自分のロッカー前まで行って着替え始めた。

俺も自分のロッカーに向かう。

その間は、パイロットスーツに着替える布が擦れる音だけが響いている。

 

俺は自分のロッカーを開けてペットボトルと常備薬から鎮痛剤を取り出して、鎮痛剤を口に含むと水と一緒に流し込んだ。

鎮痛剤で頭がぼーっとするかも知れないが、今は体を動かせるようにするのが先決だ。

 

そうして、パイロットスーツに着替え始めていると、心が少し落ち着いたのか自問自答が頭を支配する。

 

なぜ、俺はあそこで強引にでもに動いて2人きりになるの止めなかった?

なぜ、何も起こらない事を祈っているだけだった?

 

なぜ?

なぜ?

 

着替えは終わったが、胸の中は重いまま。

自問自答が止まらず、俺はロッカーに頭を打ち付けた。金属の鈍い音が鳴った。

 

動かなかった? 違うだろ、()()()()()()()()()()()()()()

自分が起こした行動に対する責任。

その行動が歴史をも動かせるものだとしたら? それを背負うことを恐れてしまったのだ。

 

改めて思った、「強さ」が欲しい。

世界を変える責任を負える「強さ」が欲しい。

 

そう、俺は「力」と「強さ」が欲しい。

それじゃ、何処まで行けば「それ」が手に入ったと言えるのだろうか?

「力」と「強さ」なんて物質的なものじゃない。際限がない。

なら、解るようなものに置き換えるしかない。

 

【ナイト・オブ・ラウンズ】

 

目指すべきは帝国最強の騎士か。

たどり着けるなら「力」は手に入る。「強さ」が手に入るかは解らないが。

そこまで考えて、頭を振り一旦考えるのを止めた。

まずはコーネリア様を守ること、それに注力しよう。

 

ロッカーに額を付けたまま、深く呼吸をする。

ロッカーから額を引き剥がし周りを見渡すと、スザクもヴィレッタも着替え終わって俺を待っていた。

 

「行こうか」

 

そうして、着替えた俺達はブリッジへと向かった。

 

ブリッジに入ると俺達はブリッジ中央まで移動した。

中央のスクリーンにセシルさんが纏めてくれた情報が映っているので、それを皆で見ている。

それによると、

 

「各地で起きている暴動の勢力を吸収しながら、黒の騎士団はトウキョウ租界に向かっていると思われます」

「こちらの装備はどれくらいありますか?」

「ランスロットの予備パーツがあるので、ランスロット・トライアルに一騎だけフロートユニットを付けることは出来ます」

 

つまり先行できる機体は2騎しかないようだ。

すると、ロイドさんが俺達の話しに割り込んできた。

 

「でも残念でした。うちら特派は出撃命令も受けてないから、動くことはできませーん」

 

そう言って、ランスロットの起動キーをこれみよがしに見せつけてくる。

その態度が気に食わなかったのか、スザクが怒りをあらわにした。

 

「ふざけるな!」

 

今にも殴りかかりそうなスザクを手で制する。

 

「だろうと思ってましたよ。なので」

 

そう言って俺は、ロイドさんへ銃を向けた。

 

「俺はこの船をハイジャックします。俺の命令に従って下さい」

 

越権行為なのは解っているが、そんなのに構っている余裕は物理的にも精神的にも無かった。

ロイドさんは笑いながら、両手をあげて降参のポーズを取った。

セシルさんは驚いた顔をしている。

この場に置いては俺のワガママを通した。

 

先発組として俺とスザクが出ることになった。

アヴァロンはその後からついて来る。ヴィレッタはその後詰に回ってもらう。

 

格納庫へスザクと向かっている最中に、

 

「カイ、申し訳ないが僕はゼロを追う。やつを絶対に許しはしない」

「……解った。そっちは任せる。俺はコーネリア様を」

 

お互いに頷きあって、それぞれのKMF(ナイトメアフレーム)へと乗り込んでいく。

準備が完了すると、アヴァロンの飛行甲板にランスロットが上がっていく。先ずは俺から出撃する。

外に出て、ランスロットに火を入れて最大出力まで持っていき、

 

『ランスロット、発艦!』

「ランスロット、発艦」

 

最大戦速で飛行甲板を駆け抜け、空に飛び出す。

フロートユニットを展開し、ジェットエンジンに火を入れて加速を掛ける。

その衝撃で胸が軋むが薬が効いているのか痛みは無かった。

 

その後ろから、フロートユニットを付けた、ランスロット・トライアルが発艦して俺を追い抜いていく。

そのエンジンから見える炎に怒りを感じるのは、俺だけだろうか。

 

たどり着いたトウキョウ租界はひどい有様だった。

外縁部のプレートが崩壊して、街がめちゃめちゃになっている。

その廃墟から、黒の騎士団が政庁へ向かっているのが見えた。

先に付いたスザクは黒の騎士団のKMF(ナイトメアフレーム)MVS(メーザーバイブレーションソード)で斬りつけながら叫んでいる。

 

『ゼロはどこだ!』

 

俺もその後に続き、黒の騎士団の数を減らしながら政庁を目指す。

政庁周辺は親衛隊が展開していて、黒の騎士団を抑え込んでいるようだった。

 

政庁付近に到達すると、コーネリア様から専用通信が飛んできた。

 

『カイか!』

「コーネリア様、ご無事で?」

『ああ、お前も無事なようだな』

「なんとか。で、どんな手筈ですか?」

『増援が来る情報をリークした。それにおびき出されたゼロを打つ』

「了解です、俺もそれに加わります」

『では政庁上の庭園で待機だ』

「イエス・ユア・ハイネス」

 

ランスロットを政庁直上に移動させると、そこには空中庭園があった。

空中庭園に着陸すると間もなく、コーネリア様のKMF(ナイトメアフレーム)が現れた。

その機体に近づいて、コックピットを開けて外に出る。直に話すためだ。

こちらの行動の意図が解ったのかコーネリア様も同じ様に外に出てきた。

 

「どうした?」

「内密な話です。……ユフィは生きています」

「何!?」

「申し訳ありません。死を偽装させてもらいました」

「それで今は何処に!?」

「アヴァロンに収容中です。これが終わったら秘密裏に運び出して、ホッカイドウへ向かわせます」

「そうか……、承知した。ありがとう、カイ」

 

コーネリア様がこちらに向かって頭を下げてくる。

 

「これが精一杯でした……」

「生きていると知っただけでも良かった。だが、それでもゼロは許さん」

 

そう言って、幾分晴れた顔でコーネリア様はコックピットに戻っていった。

俺もランスロットのコックピットへと戻る。

 

すると、政庁上空をハドロン砲が通過してくのが見えた。

ゼロが増援部隊を焼き払っているのだ。

 

決戦の時は近い。

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