手術室に現れたその少年は、自らを
少年の口から語られたのは、超常の力「ギアス」というものについてだった。
なぜ、ユフィは人が変わったような行動を取ったのか?
なぜ、スザクは自分の命の危機が迫った状況であんな行動をとったのか?
つまり、「ギアス」とは人を強制的に操り、その記憶を失わせる力。
ゼロがそんな力を持っている事を教えてくれた。
そのことを俺達に伝えると
手術室の外の廊下には、ヴィレッタ、セシルさんとロイドさんが待っていた。
誰も
「さっき、ここを少年が通らなかった?」
「いや、見ていないが」
……実際に「ギアス」の力が働いた所を見たとしても、その超常の力を理解するのは難しい。
俺がそう思案していると、皆が俺を見ているのに気がついて顔を上げた。
この次にどう動くか、俺の判断を待っているようだった。
「……セシルさんとロイドさんは、先にブリッジに行って情報を集めてもらえますか?」
「わかりました」
セシルさんはロイドさんを伴って、ブリッジの方に歩いていった。
「スザクと、ヴィレッタはパイロットスーツに着替えてからブリッジだ」
「「イエス・マイ・ロード」」
俺はヴィレッタに肩を借りながら、スザクと一緒に更衣室へと向かった。
更衣室に着くとスザクとヴィレッタは無言で自分のロッカー前まで行って着替え始めた。
俺も自分のロッカーに向かう。
その間は、パイロットスーツに着替える布が擦れる音だけが響いている。
俺は自分のロッカーを開けてペットボトルと常備薬から鎮痛剤を取り出して、鎮痛剤を口に含むと水と一緒に流し込んだ。
鎮痛剤で頭がぼーっとするかも知れないが、今は体を動かせるようにするのが先決だ。
そうして、パイロットスーツに着替え始めていると、心が少し落ち着いたのか自問自答が頭を支配する。
なぜ、俺はあそこで強引にでもに動いて2人きりになるの止めなかった?
なぜ、何も起こらない事を祈っているだけだった?
なぜ?
なぜ?
着替えは終わったが、胸の中は重いまま。
自問自答が止まらず、俺はロッカーに頭を打ち付けた。金属の鈍い音が鳴った。
動かなかった? 違うだろ、
自分が起こした行動に対する責任。
その行動が歴史をも動かせるものだとしたら? それを背負うことを恐れてしまったのだ。
改めて思った、「強さ」が欲しい。
世界を変える責任を負える「強さ」が欲しい。
そう、俺は「力」と「強さ」が欲しい。
それじゃ、何処まで行けば「それ」が手に入ったと言えるのだろうか?
「力」と「強さ」なんて物質的なものじゃない。際限がない。
なら、解るようなものに置き換えるしかない。
【ナイト・オブ・ラウンズ】
目指すべきは帝国最強の騎士か。
たどり着けるなら「力」は手に入る。「強さ」が手に入るかは解らないが。
そこまで考えて、頭を振り一旦考えるのを止めた。
まずはコーネリア様を守ること、それに注力しよう。
ロッカーに額を付けたまま、深く呼吸をする。
ロッカーから額を引き剥がし周りを見渡すと、スザクもヴィレッタも着替え終わって俺を待っていた。
「行こうか」
そうして、着替えた俺達はブリッジへと向かった。
ブリッジに入ると俺達はブリッジ中央まで移動した。
中央のスクリーンにセシルさんが纏めてくれた情報が映っているので、それを皆で見ている。
それによると、
「各地で起きている暴動の勢力を吸収しながら、黒の騎士団はトウキョウ租界に向かっていると思われます」
「こちらの装備はどれくらいありますか?」
「ランスロットの予備パーツがあるので、ランスロット・トライアルに一騎だけフロートユニットを付けることは出来ます」
つまり先行できる機体は2騎しかないようだ。
すると、ロイドさんが俺達の話しに割り込んできた。
「でも残念でした。うちら特派は出撃命令も受けてないから、動くことはできませーん」
そう言って、ランスロットの起動キーをこれみよがしに見せつけてくる。
その態度が気に食わなかったのか、スザクが怒りをあらわにした。
「ふざけるな!」
今にも殴りかかりそうなスザクを手で制する。
「だろうと思ってましたよ。なので」
そう言って俺は、ロイドさんへ銃を向けた。
「俺はこの船をハイジャックします。俺の命令に従って下さい」
越権行為なのは解っているが、そんなのに構っている余裕は物理的にも精神的にも無かった。
ロイドさんは笑いながら、両手をあげて降参のポーズを取った。
セシルさんは驚いた顔をしている。
この場に置いては俺のワガママを通した。
先発組として俺とスザクが出ることになった。
アヴァロンはその後からついて来る。ヴィレッタはその後詰に回ってもらう。
格納庫へスザクと向かっている最中に、
「カイ、申し訳ないが僕はゼロを追う。やつを絶対に許しはしない」
「……解った。そっちは任せる。俺はコーネリア様を」
お互いに頷きあって、それぞれの
準備が完了すると、アヴァロンの飛行甲板にランスロットが上がっていく。先ずは俺から出撃する。
外に出て、ランスロットに火を入れて最大出力まで持っていき、
『ランスロット、発艦!』
「ランスロット、発艦」
最大戦速で飛行甲板を駆け抜け、空に飛び出す。
フロートユニットを展開し、ジェットエンジンに火を入れて加速を掛ける。
その衝撃で胸が軋むが薬が効いているのか痛みは無かった。
その後ろから、フロートユニットを付けた、ランスロット・トライアルが発艦して俺を追い抜いていく。
そのエンジンから見える炎に怒りを感じるのは、俺だけだろうか。
たどり着いたトウキョウ租界はひどい有様だった。
外縁部のプレートが崩壊して、街がめちゃめちゃになっている。
その廃墟から、黒の騎士団が政庁へ向かっているのが見えた。
先に付いたスザクは黒の騎士団の
『ゼロはどこだ!』
俺もその後に続き、黒の騎士団の数を減らしながら政庁を目指す。
政庁周辺は親衛隊が展開していて、黒の騎士団を抑え込んでいるようだった。
政庁付近に到達すると、コーネリア様から専用通信が飛んできた。
『カイか!』
「コーネリア様、ご無事で?」
『ああ、お前も無事なようだな』
「なんとか。で、どんな手筈ですか?」
『増援が来る情報をリークした。それにおびき出されたゼロを打つ』
「了解です、俺もそれに加わります」
『では政庁上の庭園で待機だ』
「イエス・ユア・ハイネス」
ランスロットを政庁直上に移動させると、そこには空中庭園があった。
空中庭園に着陸すると間もなく、コーネリア様の
その機体に近づいて、コックピットを開けて外に出る。直に話すためだ。
こちらの行動の意図が解ったのかコーネリア様も同じ様に外に出てきた。
「どうした?」
「内密な話です。……ユフィは生きています」
「何!?」
「申し訳ありません。死を偽装させてもらいました」
「それで今は何処に!?」
「アヴァロンに収容中です。これが終わったら秘密裏に運び出して、ホッカイドウへ向かわせます」
「そうか……、承知した。ありがとう、カイ」
コーネリア様がこちらに向かって頭を下げてくる。
「これが精一杯でした……」
「生きていると知っただけでも良かった。だが、それでもゼロは許さん」
そう言って、幾分晴れた顔でコーネリア様はコックピットに戻っていった。
俺もランスロットのコックピットへと戻る。
すると、政庁上空をハドロン砲が通過してくのが見えた。
ゼロが増援部隊を焼き払っているのだ。
決戦の時は近い。