コードギアス・フロントライナー   作:なべを

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7.ゼロ

東の空から太陽が昇る。

黒の騎士団による一斉攻勢は夜に始まったが、いつの間にか朝を向かえていた。

 

トウキョウの海を2騎のKMF(ナイトメアフレーム)が編隊を組んで飛んでいる。

その内の1騎、ランスロットのコックピットの中で、俺は体を強張らせていた。

 

いくらゼロを追い詰めたと行っても、俺がギアスに掛かれば場の優勢は一気に覆る。

スザクがどれだけ優秀でも、2対1の構図を覆すのは難しいだろう。

そう、俺がキーマンになる可能性が高いのだ。

ランスロットの操縦桿を握っている手が汗ばんでいるのが解る。

 

そんな緊張をしている中、編隊を組んでいるランスロット・トライアルのスザクから通信が掛かってきた。

その声にはいつもより緊張が滲んでいた。まるで、秘密を暴露する時の様に。

 

『カイ、君はゼロの正体が誰か知っているのかい?』

「いや、理解ってないよ。スザクは当たりが付いているのか?」

 

返ってきたのは沈黙だった。その沈黙は肯定を意味している。

 

「……誰か聞いてもいいか?」

『……おそらくだけど、僕はゼロがルルーシュだと思っている』

「ルルーシュ……。あの学園祭で合った子だな?」

『あれほどの知略。そして、ユフィが信頼していた事も含めると可能性は高い』

「なぜ、ユフィの信頼が関係するんだ?」

 

俺は既に知っている答えを、答え合わせするかのようにスザクと会話する。

 

『……ルルーシュの本名は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと言って元皇族なんだ』

「なるほど、元皇族で顔見知りだったから信頼をしていた、と」

 

スザクの方も自分が持っている疑念を、誰かに補強してほしかったのだろう。

声には緊張も含まれていたが、時々弱音を吐くような声色もあった。

スザクの複雑な心境はわかるが、実際問題としてやるべきことはしておかないといけない。

 

「スザク、ゼロを捕まえる算段だけど、俺はゼロのギアスに掛かってしまう可能性がある。防ぐ方法はあるとは思うけど」

『うん』

「もし、そういう状況になった場合、スザクがゼロを押さえて欲しい。その方が確率が高いから」

『イエス・マイ・ロード』

 

そうして、算段をつけて改めて2騎のKMF(ナイトメアフレーム)は神根島へと加速していった。

 

先程の会話から30分ほどたった頃だろうか、俺のランスロットのコックピットのモニターに島が映った。

あれが神根島だろう。俺はスザクに通信を飛ばして確認する。

 

「スザク、ゼロが行きそうな場所に心当たりはあるか?」

『ああ、ある。島の山中に洞窟がある。おそらくそこだと思う』

「了解だ、先導を頼む」

『イエス・マイ・ロード』

 

スザクが乗るランスロット・トライアルが俺の前に出て先導し始めた。俺はそれに付いていく。

 

神根島に到着した俺達は洞窟を目指した。

その洞窟は神根島にある山の東側に位置していたので、洞窟の前までは飛んで移動できた。

が、そういえば、黒の騎士団の黒いKMF(ナイトメアフレーム)と遭遇しない。

あの大型機動兵器も見当たらない。もう、全部終わった後なのだろうか。

スザクにも確認する。

 

「敵のKMF(ナイトメアフレーム)が見当たらないな」

『別の場所で待機しているのかもしれない』

「まぁ、居ないならその方が好都合だ。洞窟前に降下して中に入ろう」

『イエス・マイ・ロード』

 

俺達は、ランスロットとランスロット・トライアルを洞窟の前に着地させた。

コックピットのシート下に付けている銃を取り出し、動作を確認してからコックピットから降りる。

心臓はずっと激しく動きっぱなしだ。

 

地面に降りると、同じ様にスザクもコックピットから降りてきたところだった。その手には銃を持っている。

お互いに目線を合わせて頷きあうと、洞窟の中に足を踏み入れる。

 

洞窟の中は遺跡だった。ただ、廃棄された遺跡だった。

入口から奥へと続く道には、かつては豪華な柱が立っていたのだろうが、今がいくつかが残っているだけで他は崩れて地に堕ちている。

視線を奥に向けると、一番奥は日光が当たっていたのではっきり見えた。そこは祭壇の様になっていて大きな扉が見える。

その祭壇に今まさに、人が足を踏み入れるのが見えた。

あのシルエットはゼロだ。

 

その姿を確認してスザクと頷きあうと、小走りで近づいていく。

 

ゼロが扉の前に立って開け方を探っている時、俺達も祭壇に達した。

先に祭壇に昇ったスザクは、ゼロに向かって躊躇なく銃を撃った。

その弾はゼロに当たらず、壁に当たった。牽制のつもりで撃ったのだろう。

 

俺はそれに続いて祭壇に昇る。ゼロの姿を見て俺の緊張はさらに高まっていった。

それに対して、スザクは銃を向けたまま、感情を押さえた抑揚のない声でゼロに向かって告げた。

 

「こちらを向け。ゆっくりと」

 

その言葉に反応しないゼロに向かってスザクは再度、同じ口調で告げた。

 

「聞こえなかったのか? こちらを向くんだ、ゆっくりと」

 

ゆっくりと振り向いたゼロに対して、スザクは容赦なく銃弾を放った。

その銃弾はゼロの仮面に当たり、仮面を真っ二つに割った。

その下から出てきた、ゼロの素顔は学園祭で見たあのルルーシュだった。

 

そのとき、祭壇にいる俺に気づいたのか、ルルーシュは俺に目線を向けて言い放ってきた!

 

「カイ・アサト! スザクを拘束しろ!」

 

その言葉が言い終わる前に、俺は体を強張らせて眼を思いっきり瞑った。

言葉は耳に届いているが俺の体は動いていない、と思う。ギアスは不発に終わったようだ。

 

「何!?」

 

対策されるとは思っていなかったルルーシュは驚愕して、一歩後ずさる。それが隙だ!

俺はスザクに事前の打ち合わせ通り命令する!

 

「スザク! ゼロを取り押さえろ!」

「イエス・マイ・ロード!」

 

目を強く瞑ったまま、外の世界を音だけで判断する。が、それ以外に心臓の音も強く聞こえる。

誰かが飛びかかる音と誰かが倒れ込む音、そして、もみ合う音が聞こえてくる。

いくらか時間がたった頃だろうか、

 

「カイ、もう眼を開けて大丈夫だ」

 

そう、言われて眼を開ける。

目を開けたその先には、ルルーシュをうつ伏せでを組み伏せているスザクの姿があった。

そうして、俺の緊張の糸は一気に緩んだ。

 

「スザク。ゼロの眼は隠したままにしろ」

「イエス・マイ・ロード。この後はどうするつもり?」

「太平洋にシュナイゼル様が艦隊を展開しているはずだ。まずはそこに連絡して指示を仰ごう」

「イエス・マイ・ロード」

 

今後の話をしている時だ、視界の隅で誰かが遺跡奥に走っていくのが見えた。おそらくカレンだろうか。

今の俺達に干渉しないなら何もしないでおこう。

 

ここでやるべき事は終わったので、遺跡の外に向かう。

俺が先頭を歩き、その後ろからスザクはルルーシュを拘束しながら着いてくる。

俺が後ろだと、万が一ギアスを掛けられるかも知れないからな。

 

遺跡を出て、俺はランスロットのコックピットに乗り込む。

スザクはランスロット・トライアルの前でルルーシュを地面に押さえつけている。

通信範囲を広げて、太平洋にいるシュナイゼル様の艦隊と通信を試みる。

 

「こちら、カイ・アサト。識別IDは1128441‐4758165。太平洋に展開中のブリタニア艦隊、応答せよ」

 

しばらくして応答が返ってきた。

 

『こちら、シュナイゼル様配下のブリタニア艦隊。再度名を名乗れ』

「カイ・アサト。識別IDは1128441‐4758165」

『確認しました。内容をどうぞ』

「シュナイゼル殿下と専用回線で話がしたい」

『了解しました。しばしお待ちください』

 

しばし待つと専用回線でシュナイゼル様と繋がった。

 

『やぁ、アサト卿。専用回線まで使ってどうしたのかな?』

「シュナイゼル様、単刀直入に申します。ゼロを捕縛しました」

『……本当かい?』

「はい、今後の判断を仰ぎたいので、シュナイゼル様と合流したいのですが」

『わかった、アヴァロンもこちらに呼び寄せる。式根島で合流しよう』

「イエス・ユア・ハイネス」

 

シュナイゼル様との通信は終わったので、スザクに通信を繋げる。

 

「シュナイゼル様と連絡が取れた。隣の島、式根島に向かうぞ」

『イエス・マイ・ロード』

 

スザクはルルーシュを拘束したまま、ランスロット・トライアルのコックピットに入っていった。

そうして、俺とスザクはシュナイゼル様と合流するため、式根島を目指すことになった。

 

式根島には先にこちらが着いたので、港で待機することになった。

その間ずっとスザクにはルルーシュを押さえてもらっている。

 

1時間ほど経った頃だろうか、シュナイゼル様の艦隊が見えてきた。

さらにはアヴァロンが近づいてくるのも見える。

 

シュナイゼル様と合流した俺とスザクは、アヴァロンへKMF(ナイトメアフレーム)で着艦した。

格納庫には先にスザクに降りてもらい、ルルーシュを捕虜部屋に連れていってもらった。

 

それをランスロットのモニター越しに確認した後で、俺はコックピットを降りてブリッジへと向かう。

ブリッジに入ると、既にシュナイゼル様が指揮席に座っていた。

シュナイゼル様の前まで行き、俺は拝礼を取った。

 

「再度お目に掛かります、シュナイゼル殿下」

「アサト卿。ゼロを捕まえるとは言葉も出ないよ」

「感謝の極み」

「しかし、ゼロの正体が彼とは……」

「シュナイゼル様なら、当たりが付いていたのではないでしょうか?」

「買いかぶりすぎだよ。もしかしたらという程度さ」

 

椅子の手すりに右手を預け頬杖を付きながらそう言うが、まるで確信があるような口ぶりだった。

そして、話はこれからの事に移る。

 

「ゼロに関してなんだが、本国に報告したら驚きの内容が来た」

「その内容とは?」

「父上、シャルル皇帝陛下が君達に会いたいそうだ」

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