東の空から太陽が昇る。
黒の騎士団による一斉攻勢は夜に始まったが、いつの間にか朝を向かえていた。
トウキョウの海を2騎の
その内の1騎、ランスロットのコックピットの中で、俺は体を強張らせていた。
いくらゼロを追い詰めたと行っても、俺がギアスに掛かれば場の優勢は一気に覆る。
スザクがどれだけ優秀でも、2対1の構図を覆すのは難しいだろう。
そう、俺がキーマンになる可能性が高いのだ。
ランスロットの操縦桿を握っている手が汗ばんでいるのが解る。
そんな緊張をしている中、編隊を組んでいるランスロット・トライアルのスザクから通信が掛かってきた。
その声にはいつもより緊張が滲んでいた。まるで、秘密を暴露する時の様に。
『カイ、君はゼロの正体が誰か知っているのかい?』
「いや、理解ってないよ。スザクは当たりが付いているのか?」
返ってきたのは沈黙だった。その沈黙は肯定を意味している。
「……誰か聞いてもいいか?」
『……おそらくだけど、僕はゼロがルルーシュだと思っている』
「ルルーシュ……。あの学園祭で合った子だな?」
『あれほどの知略。そして、ユフィが信頼していた事も含めると可能性は高い』
「なぜ、ユフィの信頼が関係するんだ?」
俺は既に知っている答えを、答え合わせするかのようにスザクと会話する。
『……ルルーシュの本名は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと言って元皇族なんだ』
「なるほど、元皇族で顔見知りだったから信頼をしていた、と」
スザクの方も自分が持っている疑念を、誰かに補強してほしかったのだろう。
声には緊張も含まれていたが、時々弱音を吐くような声色もあった。
スザクの複雑な心境はわかるが、実際問題としてやるべきことはしておかないといけない。
「スザク、ゼロを捕まえる算段だけど、俺はゼロのギアスに掛かってしまう可能性がある。防ぐ方法はあるとは思うけど」
『うん』
「もし、そういう状況になった場合、スザクがゼロを押さえて欲しい。その方が確率が高いから」
『イエス・マイ・ロード』
そうして、算段をつけて改めて2騎の
先程の会話から30分ほどたった頃だろうか、俺のランスロットのコックピットのモニターに島が映った。
あれが神根島だろう。俺はスザクに通信を飛ばして確認する。
「スザク、ゼロが行きそうな場所に心当たりはあるか?」
『ああ、ある。島の山中に洞窟がある。おそらくそこだと思う』
「了解だ、先導を頼む」
『イエス・マイ・ロード』
スザクが乗るランスロット・トライアルが俺の前に出て先導し始めた。俺はそれに付いていく。
神根島に到着した俺達は洞窟を目指した。
その洞窟は神根島にある山の東側に位置していたので、洞窟の前までは飛んで移動できた。
が、そういえば、黒の騎士団の黒い
あの大型機動兵器も見当たらない。もう、全部終わった後なのだろうか。
スザクにも確認する。
「敵の
『別の場所で待機しているのかもしれない』
「まぁ、居ないならその方が好都合だ。洞窟前に降下して中に入ろう」
『イエス・マイ・ロード』
俺達は、ランスロットとランスロット・トライアルを洞窟の前に着地させた。
コックピットのシート下に付けている銃を取り出し、動作を確認してからコックピットから降りる。
心臓はずっと激しく動きっぱなしだ。
地面に降りると、同じ様にスザクもコックピットから降りてきたところだった。その手には銃を持っている。
お互いに目線を合わせて頷きあうと、洞窟の中に足を踏み入れる。
洞窟の中は遺跡だった。ただ、廃棄された遺跡だった。
入口から奥へと続く道には、かつては豪華な柱が立っていたのだろうが、今がいくつかが残っているだけで他は崩れて地に堕ちている。
視線を奥に向けると、一番奥は日光が当たっていたのではっきり見えた。そこは祭壇の様になっていて大きな扉が見える。
その祭壇に今まさに、人が足を踏み入れるのが見えた。
あのシルエットはゼロだ。
その姿を確認してスザクと頷きあうと、小走りで近づいていく。
ゼロが扉の前に立って開け方を探っている時、俺達も祭壇に達した。
先に祭壇に昇ったスザクは、ゼロに向かって躊躇なく銃を撃った。
その弾はゼロに当たらず、壁に当たった。牽制のつもりで撃ったのだろう。
俺はそれに続いて祭壇に昇る。ゼロの姿を見て俺の緊張はさらに高まっていった。
それに対して、スザクは銃を向けたまま、感情を押さえた抑揚のない声でゼロに向かって告げた。
「こちらを向け。ゆっくりと」
その言葉に反応しないゼロに向かってスザクは再度、同じ口調で告げた。
「聞こえなかったのか? こちらを向くんだ、ゆっくりと」
ゆっくりと振り向いたゼロに対して、スザクは容赦なく銃弾を放った。
その銃弾はゼロの仮面に当たり、仮面を真っ二つに割った。
その下から出てきた、ゼロの素顔は学園祭で見たあのルルーシュだった。
そのとき、祭壇にいる俺に気づいたのか、ルルーシュは俺に目線を向けて言い放ってきた!
「カイ・アサト! スザクを拘束しろ!」
その言葉が言い終わる前に、俺は体を強張らせて眼を思いっきり瞑った。
言葉は耳に届いているが俺の体は動いていない、と思う。ギアスは不発に終わったようだ。
「何!?」
対策されるとは思っていなかったルルーシュは驚愕して、一歩後ずさる。それが隙だ!
俺はスザクに事前の打ち合わせ通り命令する!
「スザク! ゼロを取り押さえろ!」
「イエス・マイ・ロード!」
目を強く瞑ったまま、外の世界を音だけで判断する。が、それ以外に心臓の音も強く聞こえる。
誰かが飛びかかる音と誰かが倒れ込む音、そして、もみ合う音が聞こえてくる。
いくらか時間がたった頃だろうか、
「カイ、もう眼を開けて大丈夫だ」
そう、言われて眼を開ける。
目を開けたその先には、ルルーシュをうつ伏せでを組み伏せているスザクの姿があった。
そうして、俺の緊張の糸は一気に緩んだ。
「スザク。ゼロの眼は隠したままにしろ」
「イエス・マイ・ロード。この後はどうするつもり?」
「太平洋にシュナイゼル様が艦隊を展開しているはずだ。まずはそこに連絡して指示を仰ごう」
「イエス・マイ・ロード」
今後の話をしている時だ、視界の隅で誰かが遺跡奥に走っていくのが見えた。おそらくカレンだろうか。
今の俺達に干渉しないなら何もしないでおこう。
ここでやるべき事は終わったので、遺跡の外に向かう。
俺が先頭を歩き、その後ろからスザクはルルーシュを拘束しながら着いてくる。
俺が後ろだと、万が一ギアスを掛けられるかも知れないからな。
遺跡を出て、俺はランスロットのコックピットに乗り込む。
スザクはランスロット・トライアルの前でルルーシュを地面に押さえつけている。
通信範囲を広げて、太平洋にいるシュナイゼル様の艦隊と通信を試みる。
「こちら、カイ・アサト。識別IDは1128441‐4758165。太平洋に展開中のブリタニア艦隊、応答せよ」
しばらくして応答が返ってきた。
『こちら、シュナイゼル様配下のブリタニア艦隊。再度名を名乗れ』
「カイ・アサト。識別IDは1128441‐4758165」
『確認しました。内容をどうぞ』
「シュナイゼル殿下と専用回線で話がしたい」
『了解しました。しばしお待ちください』
しばし待つと専用回線でシュナイゼル様と繋がった。
『やぁ、アサト卿。専用回線まで使ってどうしたのかな?』
「シュナイゼル様、単刀直入に申します。ゼロを捕縛しました」
『……本当かい?』
「はい、今後の判断を仰ぎたいので、シュナイゼル様と合流したいのですが」
『わかった、アヴァロンもこちらに呼び寄せる。式根島で合流しよう』
「イエス・ユア・ハイネス」
シュナイゼル様との通信は終わったので、スザクに通信を繋げる。
「シュナイゼル様と連絡が取れた。隣の島、式根島に向かうぞ」
『イエス・マイ・ロード』
スザクはルルーシュを拘束したまま、ランスロット・トライアルのコックピットに入っていった。
そうして、俺とスザクはシュナイゼル様と合流するため、式根島を目指すことになった。
式根島には先にこちらが着いたので、港で待機することになった。
その間ずっとスザクにはルルーシュを押さえてもらっている。
1時間ほど経った頃だろうか、シュナイゼル様の艦隊が見えてきた。
さらにはアヴァロンが近づいてくるのも見える。
シュナイゼル様と合流した俺とスザクは、アヴァロンへ
格納庫には先にスザクに降りてもらい、ルルーシュを捕虜部屋に連れていってもらった。
それをランスロットのモニター越しに確認した後で、俺はコックピットを降りてブリッジへと向かう。
ブリッジに入ると、既にシュナイゼル様が指揮席に座っていた。
シュナイゼル様の前まで行き、俺は拝礼を取った。
「再度お目に掛かります、シュナイゼル殿下」
「アサト卿。ゼロを捕まえるとは言葉も出ないよ」
「感謝の極み」
「しかし、ゼロの正体が彼とは……」
「シュナイゼル様なら、当たりが付いていたのではないでしょうか?」
「買いかぶりすぎだよ。もしかしたらという程度さ」
椅子の手すりに右手を預け頬杖を付きながらそう言うが、まるで確信があるような口ぶりだった。
そして、話はこれからの事に移る。
「ゼロに関してなんだが、本国に報告したら驚きの内容が来た」
「その内容とは?」
「父上、シャルル皇帝陛下が君達に会いたいそうだ」