「ようやく見つけましたよ、レイラ・マルカルさん」
旅芸人一座の馬車が川辺で食事の用意をしながら止まっている。
そこに俺とヴィレッタは私服姿で近づいていく。
だが、思いっきり警戒されたのだろう。旅芸人の男衆が俺達の前に立ちふさがった。
その中でも一番ガタイがいい男が、メンチ切りながら俺を威嚇してきた。
「なんだ、おまえ? なんか用か?」
「ええ。そちらにいらっしゃる、レイラ・マルカルさんに」
俺はその男、佐山リョウの威嚇に内心ビクつきながらなんとか笑顔で返す。
その威嚇に対して、後ろに備えているヴィレッタが動きそうだったので手で制する。
今はこちらの印象が悪くなることはなるべく避けたい。
が、佐山リョウの威嚇は止まらない。にべもなく帰れ、と手を振ってきた。
「こっちはお前なんかに用はないだよ。帰んな」
「そこをなんとか出来ませんかね?」
「ああ?」
そんな無難な返しが苛立たせてしまったのか、更に顔を近づけて威嚇してくる。
怯えを隠して必死に笑顔を崩さない様にしていると、
「待って下さい、リョウ」
制止する声が飛んできた。
その声の主こそが俺が会いたかった、レイラ・マルカルである。
レイラさんは、男衆をかき分けながら俺達の方に近づいてきた。
「しかし、よぉ」
佐山リョウは体を引き俺達から一歩離れた。
代わりにレイラさんがこちらに近づく。
「ここまで来られたという事は、相当な内容なのでしょう」
そう言って佐山リョウを嗜めると、レイラさんは俺達と向き合った。
胸に手を当てて応えてくれる。
「私がレイラ・マルカルです。あなた方はどちら様でしょうか?」
ちらっとレイラさんの後ろを見ると、全員が聞き耳を立てて俺の発言に注目している。
この状況はあまり好ましくないので提案する。
「できれば、2人きりで話がしたいのですが。そのときに俺の事も話します」
俺がそう返すとレイラさんは、俺の眼を真っ直ぐ見つめてきた。
俺も見つめ返す。俺を信じてもらうために。
「……解りました。近くに川がありますので、そこで話をしましょう」
「ありがとうございます」
その合意に待ったが掛かった。
男衆の一人が前に進んできて、レイラさんの隣まで歩み寄ってきた。
「レイラ、流石に一人では危ない。俺も連れて行ってくれ」
その彼は、護衛を申し出た。
確かに名乗らない人物と2人きりにさせるのは不安だよね、日向アキトくん。
「護衛を付けてもらっても大丈夫ですよ、こちらにも一人いますから」
ヴィレッタに手を向けて、こちらから譲歩する。押しかけたのはこっちだからね。
そして、お互いに護衛を連れた状態で近くに川辺に向かう。
川辺まで来ると、俺とレイラさんは護衛の2人とは少し距離を置く。
話が聞かれるが、まぁ問題ないだろう。後で共有されるだろうし。
俺はレイラさんに向き合う。レイラさんもこちらに向いてくれる。
「では、改めて自己紹介を。俺はカイ・アサト。ナンバーズですがナイト・オブ・イレブンを拝命しています」
俺の自己紹介にレイラさん、そして、護衛で来ている日向アキトも驚愕の顔をしている。
まぁ、E.U.の領土にブリタニアの要人がいればそんな反応になるよな。
普通の軍人なら敵地のこんな奥に入っては来ない。
「ラウンズ。あの帝国最強の騎士がなぜ危険を犯してまでこちらに? そもそも、なぜ私の事を知っていたのですか?」
驚愕から落ち着いたのだろうか、矢継ぎ早に質問が飛んでくるが想定内だ。
「なぜ、あなたの事を知っているか? については機密事項なので言えませんが」
もちろん、そんなものはない。知識として頭に入っているからだ。
「なぜ、俺がここにいるのか? それは簡単です。あなたを、正確には『貴方がた』をスカウトに来たのです」
「私たちをスカウト……?」
「そう、いろいろ調べさせていただきましたが、あなた達、wZERO部隊が行った作戦内容はどれも素晴らしかった。それが欲しいのです」
腕を広げて見せてアピールしてみる。大げさだなと自分でも思う。
だが、レイラさんには響いていないようだ。
「……そう評価していただけるのは嬉しいのですが、なぜ私たちなのですか? 他にも候補はいたと思いますが」
そう言われた俺は、レイラさん、そして、アキトにとって忌まわしい言葉を告げる。
「ギアス」
「っ! それは!」
その言葉でより警戒したのか、身を捩って俺から離れようとする。
アキトも臨戦体制に入って何時でも俺に飛びかかれるような格好をとった。
そんな2人に対して諭す様に俺は語る。
「これまでも、ですが、これからも『ギアス』の力は使われていく。その時、その力を知っている者が近くにいて欲しいんです」
これは嘘偽り無い言葉だ。
ギアスというものが知っている人間がいるのといないのでは、そもそも作戦立案の段階から違ってくる。
「後は月並みですが、世界平和のためでもあります」
「世界平和……?」
「俺みたいなナンバーズがラウンズならないと何も出来ない世界を壊すためにも、力が欲しいんです」
俺はレイラさんに向かって手を伸ばす。
「だから、あなた達が欲しいんです」
「……欲しい、ですか。まさにブリタニア的な考え方ですね」
「もう染まりきっていますから」
上手く笑顔を浮かべられただろうか?
レイラさんは俺が差し出された手を握り返してはくれなかったが、
「……考える時間をいただけませんか? 他の人達にも確認しないといけないので」
「もちろんです。理想を言うなら、あの城で戦っていた全員が来てくれると嬉しいです」
「……それも含めて確認します」
握手の代わりに、懐から直通で繋がるアドレスを書いたカードを渡す。
これは受け取ってくれた。
それがこの話し合いの終了の合図だった。
4人は旅芸人の一座のところまで戻り、俺とヴィレッタはそこから離れた。
出来ることはやった。後は心変わりを待つしか無い。
*
連絡があったのは、あの話し合いから2ヶ月後だ。
ブリタニアの首都ペンドラゴンで、俺が借りた屋敷の書斎でくつろいでいる時に来た。
「お久しぶりです。レイラさん」
『お久しぶりです』
「それで、答えは出ましたか?」
『……あなたの提案に乗ります。これは私たち全員の総意になります』
「ありがとうございます。では、この後の手筈を説明します」
この後の手順を伝えて会話は終了した。
手順は簡単だ。
まず、近くのブリタニア基地に向かってもらい、軍用機でペンドラゴンまで来てもらう。
俺の名前を出せば通すようにしておくのを忘れないようにしないと。
後は、名誉ブリタニア人のライセンス発行か。
やることが多いな。ヴィレッタに丸投げしよう。
会話から1週間後には、レイラさん達はペンドラゴンに到着し諸々の手続きも終わった。
事務作業を丸投げされたヴィレッタからは文句が飛んできたが、ちゃんとやってくれたようだ。
今日は軍施設でレイラさん達、wZERO部隊との顔合わせ日だ。
今後関係があるだろうから、特派の皆も呼んだ。
特派が占領している軍施設の格納庫で全員が揃った。
俺、ヴィレッタ。特派、そしてwZERO部隊だ。
レイラさんの後ろにはwZERO部隊の全員が揃っている。
俺はレイラさんに向かって歩み寄り、手を差し出す。今回は握手に応えてれた。
握り返してきた手は力強かった。
「ようこそ、俺の部隊に」
「どこまで出来るかわかりませんが、全力を尽くします」
「まずは、口調を直すところからですね」
「口調ですか」
「お互い砕けた口調で話しましょう。その方が楽でいい」
「出来る限りはそうします」
「ええ、そうしてください」
その後、wZERO部隊の一人一人に挨拶をしていく。
パイロット組は態度が悪かったが、オペレーター組や支援組は緊張した様子で挨拶を返してくれた。
そして、目当ての人に挨拶をする。
「初めまして、アンナ・クレマンさん。来ていただいて感謝します」
「は、はい」
「それで、ぜひあなたに会って頂きたい人がいるんですよ」
そう言って、後ろに待機させていた特派の中から目当ての人を呼ぶ。
その人はなんで呼ばれたかわからない様子を見せながらも歩み寄ってくる。
「ロイドさん、こちらアンナ・クレマンさん。E.U.で
「はっはー! E.U.の
俺がやりたかったのはこれだ。
アレクサンダを開発したアンナさんと、ロイドさんを引き合わせることでランスロットの改造を歴史とは違った方向で行ってもらうためだ。
どういった魔改造がされるか楽しみだ。
……今、思いついたんだけど、紅蓮聖天八極式も魔改造される可能性がある……?
カイの部隊構成はこうなります
ナイト・オブ・イレブン:カイ・アサト
副官:ヴィレッタ・ヌゥ
特派:セシル・クルーミー
特派:ロイド・アスプルンド
wZERO部隊
指揮官:レイラ・マルカル
副官:クラウス・ウォリック
パイロット:日向アキト
パイロット:佐山リョウ
パイロット:成瀬ユキヤ
パイロット:香坂アヤノ
パイロット:アシュレイ・アシュラ
パイロット:ヨハネ・ファビウス
パイロット:クザン・モントバン
パイロット:シモン・メリクール
パイロット:フランツ・ヴァッロ
パイロット:ヤン・マーネス
パイロット:ルネ・ロラン
オペレーター:サラ・デインズ
オペレーター:オリビア・ロウエル
科学者:ソフィ・ランドル
科学者:ジョウ・ワイズ
科学者:ケイト・ノヴァク
科学者:フェリッツ・バルトロウ
機体開発:アンナ・クレマン
機体開発:クロエ・ウィンケル
機体開発:ヒルダ・フェイガン
警備隊長:オスカー・ハメル