コードギアス・フロントライナー   作:なべを

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3.救出

アッシュフォード学園で行われる俺の歓迎会が明日へと迫った日の夜、俺はコーネリア様から呼び出しを受けた。

政庁のコーネリア様の執務室に続く廊下を歩き、執務室までたどり着くと扉を、こっこっこっ、とノックする。

 

「入れ」

 

中にいる人から応答が返ってきたので扉を開けて、執務室の中へ足を踏み入れる。

相変わらずこの部屋の空気は澄み切っている感じがするな。

 

「失礼します」

 

入り口で礼をした後、机の前まで歩きコーネリア様に向き直って立ち止まる。

それを見たコーネリア様が机の上で腕を組み本題を告げてくる。

 

「来週、新しい副総督がこちらへ来ることになった」

「どなたですか?」

「皇位継承権87位のナナリー・ヴィ・ブリタニア、我が妹だ」

「ナナリーが副総督、ですか」

 

その返答にコーネリア様は、少し驚いたような顔をしてこちらに質問してきた。

 

「面識があるのか?」

「本国にいた時にお茶をしたりと、仲良くさせてもらいました」

「そうか。その護衛として枢木卿が付くことになっている」

「スザクが? という事は特派が護衛ですか」

「そうなる。なにも起きないと思うが、備えておいてくれ」

「イエス・ユア・ハイネス」

 

するとコーネリア様は軽く息を吐き、若干の不機嫌さを眼に表しながら俺を見ると、こう言った。

 

「お前、ナナリーにまで手を出していたのか」

「まるで、俺がタラシみたいな言い方しなくても……」

 

俺が全部を言いきる前に、コーネリア様が断言した。

 

「タラシだろ、お前は」

 

納得いかない。

 

 

日が沈み、アッシュフォード学園で執り行われる俺の歓迎会というか祭りは今、終盤を迎えていた。

校庭に作られた、ゆらゆらと舞うキャンプファイヤーの火を中心として、皆が集まっていた。

キャンプファイヤーの周りを踊っている人もいて、この場にいる皆が楽しそうだ。

 

そんな、俺にとっては眩しすぎる光景に見惚れていた俺は、ふと学園の屋上の方に視線を向ける。

そこにはルルーシュが屋上の手すりに寄りかかって、携帯に向かって話しているのが見えた。

ルルーシュに話があるので俺も屋上へと向かう。

 

屋上には一人、ルルーシュが手すりに寄りかかっていた。俺はルルーシュに向かって歩き声を掛ける。

 

「やぁ、ルルーシュ」

「ああ、カイ。主役はメインステージにいてくれよ」

 

声をかけると、こちらへ振り向いて応えてくれる。

ルルーシュに歩み寄りながら、屋上の手すりから眼下に見える景色を見る、

 

「皆楽しんでいるみたいだから邪魔するのも悪いかなと持って。そういえば、ルルーシュ」

「どうしたんだ?」

「ルルーシュと話したいって人がいるんだ、来週赴任されるエリア11の副総督なんだけど」

「おいおい、そんな人物と何を話せっていうのさ」

 

困り顔のルルーシュを放おっておいて、俺はポケットから携帯を取り出し相手にコールする。

数回のコールの後、携帯の向こうから可愛らしい少女の声が聞こえた。

 

『はい、ナナリーです』

「やぁ、こんばんは」

『ああ、カイさん! 電話してくれたって事はお兄様がいるんですね!?』

「ああ、眼の前に。今変わるよ」

 

そうして、ルルーシュに携帯を渡す。

困った顔をしながらも携帯を受け取ったルルーシュは、俺に背を向けると携帯の向こう側にいるナナリーと話をしようとした。

 

……

……

……

 

「あの、ただの人違いではないかと。はい……。はい……。では、失礼します」

 

気付いたら会話が始まっていた。

短い会話が終わると、ルルーシュは振り返り俺に携帯を俺に渡してきた。

 

「人違いだったみたいだよ」

「そっか」

 

渡された携帯に耳を当てて、ナナリーに確認する。

 

「ナナリー。どうだった?」

「……どうやら人違いだったようです。雰囲気が似ていたのでお兄様だと思ってしまったみたいです」

「……解った、ありがとう。それじゃ、またね」

 

俺は携帯の通話を切ってポケットにしまった。

 

「悪かったね。急に変な事頼んで」

「いや、いいんだ」

 

そういって、ルルーシュは俺の脇を通り過ぎて屋上から姿を消した。

……演技かどうかまだ判断がつかないな。本当に記憶が戻っているのか?

まだ判断材料としては少ないな。もっと圧を掛けるべきか?

手すりに近寄り、眼下でフォークダンスを踊っている皆を見ながら、考えを巡らせる。今他にできることは何か? と。

 

 

ナナリーが赴任する当日。

俺は中華連邦の総領事館から、報告したい事がある、と言われ総領事館へ軍用車で向かった。

総領事館前では黎 星刻(リー・シンクー)が待ち受けていた。

軍用車から降りて星刻と向きあう。

 

「こんにちは、星刻どの。本日は何か報告したいことがある、とのことでしたが」

「ええ、実は当領内にいた黒の騎士団が姿を消しました」

「……本当ですか? KMF(ナイトメアフレーム)もですか?」

「ええ、そのようです。これで我が国はブリタニアに敵意がないことは解っていただけましたかな?」

「……解りました。では、失礼します」

 

星刻に簡単に挨拶だけすると、振り返りさっさと軍用車へと乗り込む。

出せ、と俺が言うと車は発進した。

発進して総領事館から離れたことを確認すると、軍用車に乗っている下士官に向かって命令する。

 

「すぐに高速の飛行機を用意させろ。それとアヴァロンと通信を繋げ」

「イエス・マイ・ロード」

 

海上にいるアヴァロンとは通信はすぐに繋がった。

通信先ではセシルさんが応対してくれた

 

『カイくん。どうかしたの?』

「セシルさん。黒の騎士団が姿を消しました。そちらに向かっている可能性が高いです」

『本当ですか!? 解りました、体制を整えておきます』

「気をつけてくれください。これはスザクとアシュレイにも伝えて下さい。俺もすぐに向かいます。ランスロットの準備を」

『了解しました』

 

そうして短い通信は終わった。

 

軍用車はそのまま軍施設の滑走路へと直行し、飛行機に横付けされた。

俺は軍用車から降りて飛行機に乗り席に着くと、すぐさま発進の合図を出す。

飛行機は速度をぐんぐん上げ、地上から離れて空へと舞い、ナナリーが乗っている海上の船団へ向けて舵を切った。

 

1時間後、飛行機が海上の船団を捉えるとすでに開戦の狼煙は上がっていた。

俺は旗艦後方にいるアヴァロンとアシュレイに回線をつなぐ。

 

「ロイドさん。ランスロットの準備は?」

『何時でもできてるよ』

 

「アシュレイ、状況を」

『相手は旗艦に取り付いて、副総督の誘拐を試みているみたいだぜ』

「目的はナナリーか」

『しかも、旗艦のフロートエンジンが停止して、このままだと海上に墜落するってよ』

「解った、アシュレイは戦艦に取り付いているKMF(ナイトメアフレーム)の掃討をしろ。俺はナナリーの救出に向かう」

『了解っと』

 

スザクにも通信しようと思ったが、あいつは自由に動いたほうがいいだろう。

 

飛行機は旗艦を通り過ぎ、そのままアヴァロンへ着艦した。

俺は着艦後すぐさま外に出て、更衣室でパイロットスーツに素早く着替える。

その後、格納庫へ向かいランスロットのコックピットへと滑り込む。

 

ランスロットはフロートユニットを搭載した状態で、飛行甲板に送られていく。

その間にキーを差し込みランスロットを起動させると各モニターが点灯していく。

 

飛行甲板に着くと外が見える。旗艦の高度はだいぶ下がっていた。

時間がないな、急がなくては。

 

ガコンッと、ランスロットに外部ユニットが装着される音がコックピット内に響く。

そして、コックピット内のモニターに「ランスロット・コンクエスター」の表示がされた。

まだカタログスペックしか見ていないが、ロイドさんとアンナによって思っていた以上にランスロットの基本性能は上げられていた。

 

耳に付けた通信器からアヴァロンに乗っているロイドさん、セシルさんの声が聞こえてくる。

 

『まぁ、このままいくと皆で仲良く海水浴って事』

「俺は副総督の救出を優先します。現在位置がわかったら共有願います」

『了解しました』

 

ランスロットに火を入れスロットルを踏み、出力を最大まで上げていく。

準備は整った。

 

『ランスロット・コンクエスター! 発艦!』

「発艦!」

 

飛行甲板を最大加速で駆け抜けていき、空へと飛び出す。

フロートユニットを展開し、腰にマウントされたヴァリスを右手に持ち、旗艦に向かって最速で近づいていく。

 

旗艦の甲板に一番厄介な紅いKMF(ナイトメアフレーム)、紅蓮が見えた。

先制攻撃として、紅蓮に向かってヴァリスを撃つが輻射波動で防がれてしまう。

 

「悪いが時間がないんでね」

 

外部ユニットに付けられた、ハドロンブラスターを展開しヴァリスと接続する。

これでハドロン砲が単体でも撃てる。

 

照準を紅蓮に定めて、ハドロンブラスターを撃つ。

紅蓮は輻射波動で迎え撃とうとするが、こちらは魔改造されたランスロット。以前とは出力が違う。

ハドロンブラスターを相殺出来なくて、被弾した紅蓮は眼下の海へと転げるように落ちていった。

それを確認した所で、俺は状況を確認するべくスザクに通信を繋げる。

 

「スザク!」

『ああ、こちらは一通りの排除は出来た。紅いKMF(ナイトメアフレーム)は?』

「海に落ちていったよ、フロートがない以上、上がってはこれないだろう」

 

と、思っていた矢先。

海上からこちらに向かって飛行する紅いKMF(ナイトメアフレーム)がモニターに拡大された。

紅蓮可翔式だ。

もう換装が終わったのか。お約束とは言え変身シーンに割り込む余裕は無かったな。

 

その紅蓮可翔式がランスロットへ向かって、ロングレンジで輻射波動を撃ってきた。

俺はその輻射波動を回避する。

 

紅蓮可翔式それでも止まらずにこちらに迫ってくると、後背部からミサイルみたなものを放ってきた。

それはランスロットを取り囲む形で浮遊しながら停止して、ゲフィオンディスターバーを発生させる。

が、対策済みかつ、出力が前より上がっているランスロットには通用しない。

しかし、足が止まってしまった。

 

その隙を着いて紅蓮可翔式が一気に近づいてくる。

俺は左スティックを操作しMVS(メーザーバイブレーションソード)を取り出し、輻射波動を撃たんとする右腕にかち当てる!

MVS(メーザーバイブレーションソード)と輻射波動が近距離で衝突して、ランスロットのコックピットを衝撃が襲い掛かる。

あちらの出力も上がっているが、それはこちらも同じ。ジリジリとこちらが押し返していくと、セシルさんから通信が入る。

 

『総督の現在位置がわかったわ、ブリッジ後方のガーデンスペース! でも時間がない!』

 

その通信を受けて俺左スティックを操作してMVS(メーザーバイブレーションソード)を手離し、紅蓮可翔式に背を向けてガーデンスペースへと舵を切り加速する。

その背中を紅蓮可翔式が追ってくる。

 

時間がない以上手荒な方法で助けるしかないか。

コアルミナスコーン、ブレイズルミナスをフル稼動させて前方に巨大な錐体状のシールドを展開した。

これで旗艦に穴を開けながら吶喊する。

 

スロットを全開にし操縦桿を前に倒し、旗艦に向かって吶喊する。

旗艦に穴を上げながら、ガーデンスペースへと到達することが出来た。

 

そこには、ナナリーとゼロが対面していた。

 

しかし、ランスロットが開けた穴から気密が漏れてガーデンスペースに嵐が舞う。

そんな中をゆっくりとナナリーへ向かって機体を近づけていく。

 

『カイさん!』

 

外部マイクがナナリーの声を拾う。ナナリーは吹き飛ばされないように車椅子にしがみついていた。

ランスロットをナナリーの前に着地させると、マニピュレーターで優しく抱え込む。そして、再度飛び立つ。

 

そのとき、嵐に揉まれているゼロを眼にしたが無視でいいだろう。

今はお前の相手をしている余裕はない。

 

そのままランスロットで開けた穴を逆に戻り外に出た。旗艦は海上近くまで降下していたので、海上すれすれを飛んでいく。

その背後で旗艦は墜落して爆発した。

 

アヴァロンに着艦した俺はランスロットを慎重に操作して、格納庫の床にゆっくりをナナリーを下ろした。

その後、コックピットから外に出てナナリーのもとに向かう。跪いてナナリーと目線を合わせて会話する。

 

「大丈夫かい、ナナリー?」

「はい、怪我はありません」

「そう、よかった」

 

無事なのを確認していると、スザクのランスロット・トライアルも着艦してきた。

コックピットから降りて、スザクもこちらに駆け寄ってくる。

 

「ナナリー! 大丈夫かい!?」

「スザクさん。はい、私は大丈夫です」

「スザク。ナナリーの事、頼んでもいい?」

「ああ、わかった」

 

スザクはナナリーの車椅子を押して、格納庫外の応接室へと向かって行った。

その後、アシュラ隊の面々が次々に着艦してくるのが見えた。全員無事なようだ。

 

その後、俺はブリッジへと足を運んだ。

ブリッジに入るとセシルさんとロイドさんがコンソールに向かっていた。

俺は中央モニターがある位置まで進んで、セシルさんに向かって、

 

「コーネリア様に繋いで貰えますか?」

「了解しました」

 

しばらくして、中央モニターにコーネリア様が映る。

さっそく事務的な話が始まる。

 

『状況は?』

「旗艦は墜落。将軍は死亡した模様。ただ、ナナリーの救出には成功しました」

『そうか。黒の騎士団は?』

「スザクとうちの部隊が相当数落としていたので、しばらくは大人しくしているかと」

『わかった。こちらへは安全を持って帰還しろ』

「イエス・ユア・ハイネス」

 

その通信後、俺は腰に手を当ててふーっと、深い溜息ついて緊張をほぐした。

このイベントがあると解っていたが、実際に体験すると緊張が半端なかった。

 

「お疲れ様でした。カイくん」

「なんとかなったねぇ」

 

アヴァロンから見える海を見ながら考える。

ナナリーが来たことで、ルルーシュは更に追い込まれるだろう。

それが、これまでとは違う答えになるかどうか楽しみだ。

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