コードギアス・フロントライナー   作:なべを

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4.感謝

「さて、君の名前を聞こうか」

 

互い向かいになっている品の良い長椅子に腰掛けている、ナイト・オブ・ナイン。ノネット・エニアグラムが訪ねてくる。

隣には、コーネリア・リ・ブリタニア座り、紅茶を嗜んでいる。

その長椅子の後ろに、ものすごい眼で俺を睨んでいる、ギルバート・G・P・ギルフォードがいる。

そして、その向かいで借りてきた猫のように縮こまっている、俺。

 

ここは、基地にある総督室。

大きな窓に重厚な机。そして、ふかふかした紅いカーペットが敷かれている。

本来、俺なんかが来れる場所ではないが、何故こうなったかは少し時間を遡る。

 

 

ボロボロの格納庫でいつものようにKMF(ナイトメアフレーム)の整備をしていたときだ。

 

「ここか!イレブン・スリーという少年がいるというのは!」

 

入口に一人の女性が大きく、だが、通る声で現れた。

背が高く白い軍服を着た短い髪の女性は、ブリタニア軍で高い位置にいる人だと一目でわかった。

俺達は全員、直立不動の姿勢を取った。

ここまで高い位の人物がここに来たことがないので、どうしたらいいのか解らなかった。

 

「で、誰がイレブン・スリーなのかな?」

 

再度問われ、俺はおずおずと手を挙げる。

 

「イレブン・スリーは自分ですが…」

「そうか。そうか。着いてきたまえ」

 

そう言い、紫のマントを翻して歩き出していく。

それを慌てて追いかける。それを見ている皆の視線が雄弁に語っている。

 

『お前は何をしたんだ』

と。

 

 

そうして、話は冒頭に戻る。

 

「さて、君の名前を聞こうか」

「……」

「ああ、まずは私から名乗るべきだな。ノネット・エニアグラム。気安くノネットさんと呼んでくれ」

「ノネットさん…ですか」

 

そう呟いた瞬間、ギルフォードがキッと睨み付けてきた。

怖っ!

その視線に気付いたのか、

 

「止めないか、怯えているじゃないか」

「エニアグラム卿を気安く呼ぶなど、ナンバーズには烏滸がましすぎます」

「私が良いと言っているんだから良いのだ」

 

そう言われると大人しくなったが、こちらへの視線はきついままだ。

その視線に耐えながら、返答する。

 

「…名前はカイ・アサトです」

「カイか。いい名前だな」

 

うんうんと、頷きながら名前を褒めてくれる。

ナンバーズになってから、上官に怒鳴られることしか無かったから、こういった雰囲気にどうしたら良いか戸惑っていると、ノネットさんが教えてくれた。

 

「なぜ自分はここに呼ばれたのか、と思っているのだろう?」

「はい…」

「それは簡単だ。君はコーネリアを救った。だから呼んだんだ」

 

頭にハテナが浮かぶ。

助けただけで呼ばれる?ナンバーズである俺が?

いやいや、それだけで呼ばれることなんてないでしょう?

 

「うん、まるで理解ってないな。そう、君はコーネリアの命を救った。だから礼を言われる。当たり前のことだろう?」

「ですが、自分はナンバーズですよ?そんなのに皇族の方が礼を言うなど前代未聞ではないでしょうか?」

「妙に大人だな、君は」

 

そんな中、渦中の人が口を開いた。

 

「普通ならば無い。が、エニアグラム卿が『命を救ってくれたのだから礼を言うべきだ!』と言って聞かなくてな…」

 

そう言って、コーネリアはこちらに体と視線を向けてくる。眼と眼が合う。

「おまえに助けられた、礼を言う」

そういって、頭を下げた。

 

その言葉を聞いた時、俺の胸に熱いものが込み上げてきた。

 

この世界で「俺」を思い出してから、心が休む暇なんて無かった。

親が死んでいたから、生きるのに精一杯だったし、戦場の最前線で敵を誰より倒しても、感謝すら無かった。

命がけでやってきたことに、ようやく意味が出来たみたいで、胸に空いていた穴が埋まっていくようで。

 

声を殺しながら、俺は泣き出してしまった。が、その涙は熱かった。

ようやく、この世界に認められたみたいで嬉しかった。

 

いきなり子供が泣き出したので、コーネリアはおろおろと焦っていた。

隣では、ノネットさんがよく言った、と満足げに頷いている。

 

俺が落ち着くのを待ってくれていたノネットさんが、質問をしてくる。

「さて、本来聞くべき質問をしようか。なぜ、君のような子供があんな最前線にいたのかな?」

 

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