照明が落ちている格納庫中には、いくつかの光源があった。
その内の一つであるタブレットは、紅蓮聖天八極式の操縦方法やスペックを映している。
俺はその内容を確認しているが……、これおかしくないか?
カタログスペックだけで、第七世代のランスロットなんて目じゃないぞ。
アンナも関わっているからか? それでもここまで差が出るのか?
俺は隣にいるロイドさんに確認する。
「ロイドさん。これ本当に
「あはぁ、それをなんとかするのが
話が噛み合ってそうで噛み合っていない。
一旦の確認はできたので、俺はロイドさんにタブレットを渡す。
受け取ったロイドさんはニコニコだ。
俺は紅蓮聖天八極式の前に立つ。
充電式なのか照明が点いていて、その様相を浮かび上がらせている、
やはり紅蓮聖天八極式はかっこいいなぁ。
これに乗るのも憧れたものだ。本当に乗れるとは思ってなかったけど。
俺はキャットウォークに登り、紅蓮聖天八極式のコックピットへと滑り込む。
コックピットは二輪車に乗るような形になっていて、ブリタニアとは設計思想が違うのが伺える。
あまり余白を感じないので少し窮屈な感じもするが、すぐに慣れるだろう。
キーをセットして、紅蓮聖天八極式を起動させる。
正面モニターに日本式OSが起動した後に、キャメロット式OSが起動する形になっている。
中身からゴリゴリにいじっているようだった。
上部ハッチを閉めると、内部モニターが点灯する。
外でアシストをしてくれているセシルさんに、外部マイクを使って起動の確認をする。
「起動確認をお願いします」
『……起動、確認しました』
「みなさんも準備が出来たら避難を開始して下さい」
『解りました』
モニターを見るとランスロットが先に発進してくのが見えた。
スザク、本当にフレイヤを持ったまま出るんだな。尻込みするかと思ったが。
俺も紅蓮聖天八極式のランドスピナーを路面に下ろして、滑走路まで移動させる。
外部マイクでセシルさんへ報告する。
「発進準備、完了」
『了解。……許可出ました。紅蓮、発進!』
「発進!」
エナジーウィングを展開し、スロットルを全開にして滑走路を加速していく。
加速が一定以上になるとランドスピナーが地を離れ、ブリタニア側の勢力として紅蓮聖天八極式が空へと飛び出していく。
戦場に飛び出した紅蓮のモニターに映ったのは、暗闇に落とされたトウキョウ租界と各地で上がっている戦闘の火花だった。
俺はまず、ヴィレッタとレイラに無線を飛ばした。
相手がゲフィオンディスターバーを使ってくることは想定しているので、部隊の装備もそれに対応している。
「ヴィレッタ! レイラ!」
『カイ!』
「ヴィレッタ! 状況は!」
『我々は今、政庁の防衛を担っている! 今、動けるのが我々くらいしかいないからな!』
確かに俺の部隊の
しかし、政庁にいるのか。もしフレイヤが爆発したら危ないな。
レイラにも確認する。
「了解だ。レイラ、そっちは!?」
『こちらは軍施設より指揮を開始しています!』
こっちも政庁に近い。
注意をしておこう。
「解った。レイラ達はトレーラーに移動して外縁部まで下がれ。ヴィレッタ達も何時でも動けるようにしておけ」
『了解しましたが、なにかあるのですか?』
「不安要素があるから、それの対応だ。急げよ!」
「「イエス・マイ・ロード」」
通信をしながら俺は、高速航行をして敵の
思っていた以上にレスポンスがいい。第九世代は伊達じゃないな。
これならもっと本気を出してもいいな。
まずはメイン武器である、輻射波動の確認からだな。
俺は一番近い敵の
それに連動して紅蓮の右腕が前に出て相手の頭を鷲掴みにし、輻射波動用コントローラーのボタンを押す。
輻射波動が叩き込まれて、敵の
次は有線式の徹甲砲撃右腕部の確認だ。
輻射波動の収束率を上げ、照射基部を高速回転させてドリル状に整形する。
その後、右腕部を前方に射出して、右スティックのボールを動かしながら右腕部をコントロールしていく。
自在に動き回るそれは、モニターに映る敵影をみるみるうちに消していく。
前々から思ってたけど、輻射波動って殺意高いよな。
射出した右腕部を引き戻して、これで一通りの動作確認は出来た。
あとはアドリブで行けそうだな。
スロットルを前に倒して加速しながら、俺は敵影を減らすことに専念した。
そうして敵機を倒すのに夢中になっていたら、外部マイクがゼロにフレイヤの警告しているスザクの様子を拾った。
それと時を同じくして、トウキョウ租界に明かりがつき始めた。各地にあるゲフィオンディスターバーの破壊に成功したようだ。
それを確認すると、俺は紅蓮をゼロ達がいる方へと向かわせる。
その場に着くと、こちらとあちらさんは膠着状態のようだった。
スザクが乗るランスロットと正対するように、紅いランスロット・トライアルが立ちふさがっていた。
その紅いランスロット・トライアルの後ろにゼロが乗っている
そして、ジノが乗っている「トリスタン」は、なぜか味方の
「スザク、状況を教えてくれ」
『……ゼロを追い詰めた所で、カレンが乗っているランスロット・トライアルに阻まれた』
「そっか、カレンはあっちに付いたのか。ジノは手助けが要りそう?」
『いやいや。俺だけで十分さ』
俺が来たことで、この場の戦力は一気に傾いた。
が、スザクはまだ自分の迷いを正せていないようだ。
躊躇いがちにスザクは言った。
『……カレンの相手は僕がする』
「じゃあ、俺の相手はゼロだな」
そうして、スロットルを前に倒して紅蓮を加速させた。紅蓮の加速力なら一瞬で間合いを詰められる。
それに気づいた、カレンがランスロット・トライアルの左腕が持っている
カレンは機体の左腕をパージして、爆発を回避したがその隙に蹴り飛ばしゼロの蜃気楼へと肉薄する。
正面から紅蓮の右腕で輻射波動を放つが、蜃気楼の絶対守護領域に阻まれる。
「久しぶり、ゼロ。いや、そんな久しぶりでもないか」
『くそっ! ラウンズどもが! お前らなんかに構っている暇はない!』
そうやって、俺はゼロを追い詰めているが、モニターに映る別の場所では予想外の事が起こっていた。
スザクのランスロットが、負傷した機体に乗っているカレンに押されているのだ。
フレイヤを持っていることへ逡巡か、それとも別の想いがそうさせているのか、スザクの操縦は精細を欠いていた。
そして、それを見逃すカレンではなかった。
隙を見つけたカレンはランスロットの懐に入って、残った片腕にあるヴァリスをランスロットのコックピットへと構えた。
スザクに死が迫ったその時、スザクのランスロットは奇妙な動きを取った。
ヴァリスを躱したかと思うと、腰にマウントされたフレイヤを構え、躊躇わずに発射したのだ。
フレイヤが放たれ外装が剥がれて中身が露出する。その露出した光がどんどん縮小していく。
俺はオープンチャンネルに向かって叫んだ。
「全員、この場から離れろ!!」
その言葉を聞いた者は、その場から外縁部に向かって動き出した。
俺も紅蓮を操作してその場から離れる。ランスロットを掴むのを忘れない。
ある程度は回避させる事が出来たかも知れない。
しかし、その光は臨界に達すると、大量破壊兵器として爆発し拡大していった。
その光に飲み込まれたものは例外無く光になって消えていく。
光が消えた後、爆心地に向かって暴風が吹き荒れた。
その後には、巨大なクレーターを残し他には何も残っていなかった。
トウキョウ租界に穴が空いたのだ。