シンジュクゲットーは地獄そのものだった。
『止めてくれ!』
『なんで私たちが……!』
『消えろ! ブリタニア人が!』
レジスタンスに加担した人はともかく、全く無関係な人物までも殺されている。
クロヴィス総督が発した、「シンジュクゲットー殲滅」。
それに駆り出された俺とヴィレッタはその光景を眼の前にして、何も出来ずにいた。
『どうするんだ?』
無線でヴィレッタがあえて感情を乗せない声で聞いてくる。
ここで何もしなければ命令違反になり、命令を実行すれば殺戮者だ。
……甘かった。
俺が騎士候になれたから、歴史は世界は変わるもんだと思っていた。
よく聞くバタフライ効果というやつで、世界は変わっていくものなんだ思っていた。
だが、現実という世界にはそんなもの関係無かった。
ナンバーズの命なんて路傍の石ころと変わらない、と言わんばかりに散っていく。
これじゃ、あの最前線にいた頃となにも変わっていない。
「……イレブンは殺すな。適当に周りに合わせろ。これは
『イエス・マイ・ロード』
ヴィレッタを俺の命令に従って、適当に建物を撃っている。
「戦争」なら俺も人を殺す。互いに正義があるから殺してもまだ自分を納得させる理由がある。
だが、「虐殺」は畜生にも劣る行為だ。そこまで、連中に合わせる義理はない。
そうやって、第三者的な目線で戦場を見ていたからか、外の様子が変わっていることに気がついた。
「向こうの対応が場当たり的じゃない? 組織化されていってるのか?」
つまり、見つけた相手に喧嘩を売るのではなく、相手にするやつを明確に選んでいるのだ。
ということは、頭が出来たのだ。
……ルルーシュが動き出したのか?
そうして、この状況を把握しようとしていたが、向こうの方が一枚上手だった。
瓦礫の向こうで大きな崩落が発生する音が聞こえ、モニターに映る味方のIFFがどんどん消えていく。
「おい、状況はどうなっているんだ!」
そう、無線に問いかけても要領を経ない回答しか返ってこない。
次のアクションを決めかねていた所へ、落ち着いた女性の声が無線から聞こえてきた。
『はじめまして、アサト卿。一度、旗艦まで戻ってきていただけますか?』
「あなたは?」
『特別派遣嚮導技術部のセシル・クルーミーと申します。あなたのお力を借りたいのです』
*
旗艦へと戻ると、その前に一機のトレーラーが待ち構えていた。
あれが、言っていた特派のトレーラーか。
それに近づき、サザーランドのコックピットから降りる。続いてヴィレッタもコックピットから降りて隣に来る。
コックピットから降りた俺達にトレーラーから、一人の女性がこちらに近づいてくるので、その人に向かって名乗る。
「カイ・アサト。参りました」
「アサト卿。お待ちしておりました。先程、挨拶しました、セシル・クルーミーです」
「まずは、どういう状況か説明をお願いできますか?」
「はい。敵の策略によりこちらの戦力の半分が損失しました」
やはり先程の崩落は、ルルーシュによる策略か。
セシルと話していると、そこに白衣の男性が割って入ってきた。
「そこで、我々のランスロットの出番というわけ」
「ランスロット?」
ん? 俺がランスロットに乗るのか? スザクじゃなくて?
「はい、私たち特別派遣嚮導技術部が所有する、第7世代ナイトメアフレーム。ランスロットに乗って敵組織の殲滅をお願いしたいのです」
そう言うと、トレーラーの後部の拘束具が解放され、布で隠されていた白いナイトメアフレームが顕現した。