遠き星エイリア、もといお日様園では一妻多夫が認められている(詭弁)   作:\コメット/

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他小説のモチベが低下している中、イナV購入を機にイナGO全視聴した者です。
全人類見た方がいいですよ、イナズマイレブンGOは...!




第1話 喜べ、この私が娶ってやる。

 

 

ひたすらに、ただひたすらに、目の前のサッカーボールを追う。

 

「どうした、この程度か?」

 

不適な笑みで罵りの言葉を受け、洗練された最小限の動きに翻弄されようと、

 

「そらっ!」

 

「ぐぅ!?」

 

ボールをぶつけられようと、がむしゃらになってボールを奪いにかかる。

大勢が見守るグラウンドで、二人の勝負は行われていた。

 

十年前、フットボールフロンティアインターナショナルを制して世界一となったイナズマジャパン。

そのキャプテンであった円堂守を始めとしたメンバーの多くが在籍していた私立雷門中学は、弱小と呼ばれていた過去も久しく、名門と呼ばれるまでに名を轟かせていた。

その威光と、幼少の頃に自分を救ってくれた恩人のイナズママークに導かれ、少年───松風天馬は雷門中へとやってきた。

 

希望を胸に門を潜った彼を待ち受けていたのは、謎の黒い少年にボロボロにされた雷門サッカー部の部員達。

剣城京介と名乗った彼は、中学サッカーを管理する組織、フィフスセクターからの刺客。

サッカー部の廃部を謳う彼を止めるべく、天馬は両者の間に割って入り、剣城から勝負を持ち掛けられた。

俺からボールを奪ってみろ、おまえが勝てば部は存続。負ければ廃部と。

理事長がこの勝負を認め、一騎打ちは開始されたのだが、

 

「ゼェ...ゼェ...」

 

「そんな実力で、よくサッカーを知っていると大口が叩けたな...やはりおまえは、俺が一番嫌いなタイプだ!!」

 

「ぐああ!?」

 

一方的。

ドリブルは得意だと豪語した天馬だったが、勝負内容は相手からボールを奪うというもの。守備に関しては素人な上に、相手はフィフスセクターのシード。実力の差は歴然であり、天馬は剣城がボールを蹴るごとにボロボロにされていった。

 

「そろそろ終わりにするか」

 

片膝をつく天馬の前で、シードの少年は必殺技の構えを取る。

雷門サッカー部を蹴散らした、禍々しく恐ろしいシュート技の構えを。

宙に浮かせたボールに、強烈な蹴りを喰らわせた直後、黒いオーラがボールを侵食するように纏われ、

 

「デスソードッ!!」

 

剣を振るうかのような右手の振り下ろしが号令となり、脅威の速度をもってシュートが放たれた。

勝負を見守る殆どが目を背け、危険だと声を上げる中、監督である久遠道也は天馬に何かを期待する、信じるような眼差しで彼を見つめる。

 

「ふむ...」

 

そして、野次馬の中で混じってその光景を傍観する一人もまた、興味津々にグラウンドへ視線を向けていた。

 

「俺はッ!サッカーをやるためにここへ来たんだ!そう決めたんだ!あの日からずっと...!」

 

思い出される、あの日の光景。

小さかった愛犬のサスケに倒れ掛かる木材、庇おうと覆い被さる自分、自分の未来を決定づけた...炎の蹴り。

 

「サッカーやるんだ!やると言ったら絶対に、やるんだあああああッ!!!」

 

夢、気迫、熱意をのせた咆哮が、松風天馬に変化をもたらした。

湧き上がる衝動、サッカーに対する想いの力が形となり、彼の背中に一瞬、巨人を模る影が現れる。

 

「だああああっっ!!」

 

迫る必殺技を、ヘディングで迎え撃つ。

ドンッという重い衝撃音ののち、弾かれ、威力の霧散したボールは天馬の足元に落ち、それをよろけながらもなんとか収めた。

 

「...やった、やったぁ!」

 

誰もがあり得ない、と驚愕のあまり目と口を大きく開けている。

 

「なんだと...?」

 

それは、シュートを打った剣城も同じく。

 

「───良い」

 

短くそう呟いた人物は、天馬と剣城の双方を見てのことだった。

 

「これでサッカーができる...!」

 

「サッカー、サッカー、うるさいんだよ!!」

 

勝負は天馬の勝ち、にも関わらず、納得のいかない剣城は彼の顔面に向けてシュートを放った。

 

「わぁ!?」

 

反応はできたが避けられない───、

 

 

 

その時、野次馬から飛び出した影が両者の前に躍り出た。

 

 

 

正体は、少女。

薄く紫がかったセミロングの黒髪、小柄な体躯ながらも俊敏な動きで天馬の前に降り立った彼女は、

 

「その技術と根気、気に入った!喜べこの私が娶ってや」

 

ドパァンッッ!!

 

「あべしっ!?」

 

剣城のシュートをカットしようとしたところ、別方向から飛んできたボールがシュートの軌道を変え、少女の顔面を捉えた。

 

「な...っ」

 

「え...」

 

「き、効いた...益々良い、ぞ...ガクリ」

 

情けない断末魔を最後に、正体不明の乱入者は頭上に星を浮かべ、鼻血を出しながら気絶した。

 

(なんなんだこいつ)

 

(誰なんだこの人...)

 

一瞬に起きた出来事が多すぎて情報を処理しきれない当事者二人の思考は、奇しくも一致していた。

 

 

 

********************

 

 

 

私の名前は愛星愛花(あいせまなか)

星の数の愛を受けるべく生まれた愛の花のような女、そう覚えてくれて構わない。

 

早速で悪いが───いや、なんで悪いんだ。私が何か悪いことをしただろうか。私の思想に耳を傾けさせてやることの何が悪いというのか。

そんなわけで、私は悪くない。うん。

 

話が逸れた。

私は愛に飢えている。

恋なんてそんな生っちょろいもんじゃない。愛したい、愛されたい、相手を愛でてやりたいし相手からも愛でられたい。

名前を体現するかの如く、思想も愛に塗れてるのがこの私、愛星愛花だ。

 

しかし聞いて欲しい。いや、聞け。聞くのだ。

愛に塗れているからには私の容姿は相当整っている。幼少の頃から兄的姉的存在達から『愛花は将来美人さんだな』と頭を撫でられるオプション付きで褒め称えられるくらいには、私は自分のビジュアルに自信があった。

 

だが、私の見た目と抱擁力、可憐さや儚さその他etcが災いしたのか男子は愚か、友人になり得そうな女子まで私から距離を置いてしまう。

確かに、私といると自らが劣っているように思えてしまうのは仕方のないことだと思う。何せ比較対象が私なのだから。けれどそれは諦める理由にはならない。

私は愛したいし、愛されたい。

斯くなる上はと鏡の前で自分を他人として愛してみようと試みたが、あの虚言癖クソ野郎に見られたおかげで我に返り取りやめた。その後クソ野郎は追い回した。

 

やはり、愛のためには他人が必要不可欠。

かと言って、周囲が私のレベルを許容できるようになるまでには時間が必要だ。

 

そこで思いついた。

 

環境を変えようと。

 

地元の小学校を卒業した私は、園長に頼んで雷門中への入学を直訴。

雷門といえば、全国に名だたるサッカーの名門であると同時に、勉学のレベルも高い私立中学。

ここでなら思う存分に愛す愛されるの関係を築けるのではないかと、智慧溢れる私は考えたわけだ。

 

「ふむ...」

 

そして、校内に入って早々いるじゃないか私が与え、私が受けるべき寵愛対象が。

グラウンドで勝負を繰り広げている二人。

一方は粗さが目立つもののボールを追い続ける根気と意志の強さ、おまけに成長速度には目を見張る。

もう一方はその場から殆ど動かない最小限の動作で前者のディフェンスを翻弄し、強烈なシュートで吹き飛ばしている。

極め付けは後者による強力な必殺技に、前者が起こした例の前兆。

 

「───良い」

 

やはり、ここに来たのは正解だった。

この学校でなら私は愛することができる。愛されることができる。

そうと決まった私の足は早かった。

勝負の結果に納得いかない黒い彼がシュートを放った直後、茶髪の彼の前に降り立つ。

サッカー部への入部、それは私も考えていた。廃部は困るし、負けたのにいちゃもんをつけるのはナンセンス。

それに、部の存亡をかけて戦ったということは私の今後の居場所について争った。つまりは私のために戦ったと同義。

 

直訳するならそう、私のために争うのはやめろ、ということだ!

 

将来の婿候補二人の前、ここは派手にトラップを決め、ド派手に自己紹介でもしておこう。

 

「その技術と根気、気に入った!喜べ私が娶ってや」

 

瞬間、シュートは別方向から飛んできたボールによってあらぬ軌道を描き、

 

ドパァンッッ!!

 

「あべしっ!?」

 

私の顔面にクリーンヒットした。

中々にえげつない快音がグラウンドに響き渡り、鼻血もとい鮮血を撒き散らして仰向けに倒れ伏す。

頭に強い衝撃を受けると本当に星が回るんだと学びを得て、広がる痛みと薄れていく意識の中で私は一言。

 

「き、効いた...益々良い、ぞ...ガクリ」

 

二人に対し親指をおっ立て、私は思考と全身の感覚を手放した。

 

 

 

 

 

 

「...ハッ!」

 

「気が付いたか」

 

目を覚ますと知らない天井と、知らない布団、髭を生やした知らないナイスミドルが私を迎えた。

 

「今まで私を巡って争っていた婿候補二人は!?」

 

「何を言っているんだ」

 

ポロリと誰かが処置のためにしてくれていた鼻栓が落ちる。

錯乱しキョロキョロと状況を飲み込めずあたりを見回す私に、まだ安静にしていろと布団に押し込むナイスミドル。

 

「あれだけの威力のシュートを顔面に食らったんだ。今日は保護者の方が来るまで、ここで寝ているといい」

 

「...ご結婚はされているだろうか」

 

「本当に何を言っているんだ」

 

中学生がませたこと言うんじゃないと、額と鼻の間あたりに氷嚢を置いてくれる。

左手の薬指に指輪が無いあたり、既婚者の線は薄い。仕事の時に外しているとかなら話は別だが。

 

(でも、なんだかお義父さん(星二郎パパ)みたいな温かさも感じる...)

 

不思議な人だ。養子でもいたのだろうか。

まぁ歳の差があろうとパパみがあろうと息子娘がいようと関係ない。こちらの御仁も婿候補だ。

 

「話せるなら自己紹介だけでもしておこう。私は久遠道也、この雷門中でサッカー部の監督を務めている。先程は騒ぎに巻き込んでしまいすまなかった」

 

律儀に頭を下げてくれる彼を見て、テンション振り切りながらボールにぶつかりに行った私は申し訳が無さすぎた。

 

「い、いやいや。元はと言えば私が首を突っ込んだのが悪い。道也さんが謝る必要無いさ」

 

「そうは言って...待て。なぜ下の名前呼びなんだ?」

 

「ふふ、照れなくてもいい。将来私の夫になるかもしれないのだから、これくらい慣れていただかないと」

 

「キミはとても愉快だな」

 

「よく言われるよ。可愛いとも美人さんとも言われる」

 

「...そうか」

 

あ、少し笑った。こういう普段は鉄仮面な人が笑うとこっちまで嬉しくなるんだよなぁ。

 

「私、愛星愛花。今日からピカピカの一年生にして、この学校で愛す愛されるの関係を築き上げるためにやってきた次第で」

 

「そうか。なら、今日はその美人顔は安静にしておくといい...そろそろ私はお暇させてもらおう。保健室の先生がもうすぐ来るだろうから、何かあれば彼女に」

 

「了解。そして今あなたに伝えたいことが」

 

「なんだ?」

 

「サッカー部、入部希望です」

 

懐から取り出した入部届を、紋所のように掲げる。

道也さんは少し目を見開いてからすぐさま普段の表情に戻り、

 

「わかった、一週間以内に入部テストがある。それに合格したなら、キミの入部を認めよう」

 

期待している。

私からの入部届を受け取り、隣のベッドで寝ているこれまたイケメンな少年とそれの見舞いに付き添っていた中性的なピンクな少年の二人と一言二言交わしたのち、道也さんは保健室を後にした。

 

「久遠道也...良い」

 

「おまえすごいな...」

 

ポカーンとしている、という表現が正しいだろうか。

私が道也さんの横顔と声を脳内に刻んでにまーっと笑みを深めていると、隣にいた男子二人が私を見ていた。

 

「ふふふ、よく言われる。可愛いとも美人さんとも言われる」

 

「すごいってのは字面通りじゃないんだが...」

 

「通りじゃなくとも、その三文字は他よりも秀で、抜きん出ていることを意味する。どのような意が含まれていようと、私にとっては全て賞賛だ」

 

「剣城といいアイツといい、とんでもない奴がうちにきたな、神童」

 

「ああ...」

 

頭を抱える、神童と呼ばれた男子。見たところ彼がサッカー部の主将なのだろうか、証である赤いバンドが腕に巻かれている。

茶化すようなピンク髪の少年の声に上の空で返事をする彼の表情は、暗い。

 

「浮かない顔だ。どしたん、話聞こか?」

 

「なぜ急に関西弁...キミは、グラウンドでのやり取りの時にいたな。あのシュートの軌道を逸らしたのは俺だ。そのせいでキミに怪我を負わせてしまった。すまない」

 

「む、そうか。顔を上げて欲しい。別に気にしてないし、そもそも介入した私の落ち度だ。謝る必要はないさ」

 

「いや、しかし」

 

「そして、私はこういった暗い雰囲気が嫌いだ。この辺でそれはおしまいにして、どうだろう。抱えている悩みを打ち明けるというのは」

 

布団を捲り、ポンポンと傍らを叩いてこっちへ来いと誘う。

 

「これでも抱擁力には自信がある。義兄や義姉には、冬場に湯たんぽとして重宝されたくらいだ。そこにいるピンクの先輩も来るといい。私は1対多も心得ている。一人増えたところで問題はない」

 

「ピンクの先輩って...俺は霧野蘭丸だ」

 

「そうか。恥ずかしがらずに私の元にこい、蘭丸」

 

「言葉は通じるのになんだ、この得体の知れ無さは...」

 

「...気遣いには感謝するが、悪いな。俺たちはもう行かないと」

 

「し、神童。まだ安静にしてろって」

 

「そうだ。なんなら人肌で癒すのも手だと思うが」

 

「おまえはちょっと黙ってろ...神童は責任感強過ぎなんだよ。もう少し気を抜けって」

 

「キャプテンなんだぞ、俺は!?こんなところでジッとしていられない...今すぐ、部室にみんなを集めてくれ。話がある」

 

何やら揉めている。

時計を見るとグラウンドにいた時から数時間が経過しており、その間に何かあったと考えられた。

 

「愛星だったか」

 

「愛花でいい」

 

「...愛星、サッカー部には来るな。来ても入部はさせない。いくぞ、霧野」

 

「お、おい神童!...ったく、取り敢えずお大事にな!」

 

早足で去るキャプテンを、蘭丸は追いかける。

一人残された私は、

 

「ふっ、照れ屋さんめ」

 

神童という少年の責任感の強さやサッカーの技量に、惚れ込んだ。

 






愛星 愛花 (あいせ まなか)

雷門中一年生
ポジション:FW、MF
属性:火

趣味:婿探し、嫁探し
好きなもの:牛乳、温かいスープ
嫌いなもの:暗い空気、抹茶ソフト

・当たり屋。隙あらば当たる。
・物静かな印象だが、よく喋る。口調は女子らしさがなく堅苦しい。
・自意識過剰で、ナルシスト。同年代の男子は総じて自分のことが好きだと思っている。
・実際容姿は良いので言い寄ってくる男はいるが、大半がお眼鏡に叶わないので自ら探している。
・恋をしたい、というより愛したい。
・両親はおらず、お日様園出身者。相手を求めてるのは温もりに飢えているから。
・お日様園関係者には求婚しない。虚言癖クソ野郎とは仲の悪い兄妹のようなもので、こいつは無い、と思っている。


とんだ化け物が入部しちまったぜ...雷門は大丈夫なのか...?

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