遠き星エイリア、もといお日様園では一妻多夫が認められている(詭弁)   作:\コメット/

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投稿時間が大幅にズレたこと、投稿期間が空いたこと、重ねてお詫び申し上げます。

弁明をしますと、10話はすでに出来上がっておりました。
しかし、ふと思いついちゃったんです。あれ入れたい、これ入れたい。その要素を入れるとしたら、10話だけじゃ足らないし加筆も必要だと。
よって、執筆期間をいただいた次第であります。今日まで待って下さった方々、ありがとうございました。
この辺盛り上がりだなと思いましたら、お好きなOPを肴にお読みください!




第10話 私は、愛されている。

 

 

拓人が倒れた。

 

 

新雲との試合が終わった直後のことだった。決勝進出の喜びを雷門イレブンが分かち合っていると、彼奴は意識を失いその場に伏した。

即刻病院へ運ばれ、緊急手術。原因はこれまでの疲労の蓄積、太陽の化身に吹き飛ばされたことによる右脚の怪我。意識は回復したものの、決勝戦には出場できないという診断であった。

絶望に打ちひしがれる天馬達。私もまた、かけがえのない婿候補の離脱に動揺を隠せずにいた。

 

そこへ一筋の光明。

円堂監督が、ゴッドエデンから調査を終えて帰還したのだ。

監督は、拓人や太一達3年生からの意見、他メンバーの推薦を考慮して新キャプテンに天馬を指名。

決戦目前ではあるが、チームは新体制として再スタートを切った。

 

慣れない指示、フィールドの俯瞰、試合の流れの読みに慣れない天馬を、私達は全力でサポート。

三年生は声出しや指示出しのノウハウを教え、二年生は改善点を指摘し、一年生は励ましをかける。

ゆっくりとではあるが、時間をかけることでなんとかチームとしての形の構築には成功。

 

それぞれの想いを胸に、決勝戦当日を迎えた。

 

 

 

相手は、今大会圧倒的な実力を見せつけてここまで登り詰めた強豪中の強豪、聖堂山中。

イシドシュウジ氏の掲げる管理サッカーの集大成、彼ならではの発想で繰り出される戦術に、雷門は苦戦。しかし、天馬が導き出した攻略法でなんとか食らいつき、2点を決められたもののこちらも京介のデビルバーストG3、龍馬の武神連斬で同点に追いつき、現在、試合は後半が始まろうというところ。

 

「なんか揺れてね?」

 

後半戦に向けての準備を終え、整列してグラウンドへと向かう途中、マサキがスタジアムの異変に気づく。

此奴を筆頭に、私を含めた他のメンバーも決勝の舞台であるアマノミカドスタジアムが地響きを起こし、内部からでも姿形を変えているのを察知できた。

 

「おっと」

 

「おいっ」

 

揺れでバランスを崩したところ、後ろにいた京介に腕を掴まれ、転倒を阻止された。

 

「おお、悪いな京介」

 

「気をつけろ...なんなんだ一体、何が起こっている?」

 

そういえば、ここまで共に戦っていた聖堂山の選手が見当たらない。

何かあったのか、と思えば後方から複数人の気配が。

 

「黒裂さん!...あ、あれ?」

 

姿を見せたのは聖堂山の面々、ではない。

不適な笑みを浮かべた、白と黒のユニフォームに身を包んだ選手達が、私たちと並列に並ぶ。

 

「黒裂さん達は...聖堂山の人達は?」

 

天馬の問いに、キャプテンマークを巻いたGKの男が答える。

 

「知らんな。俺たちはドラゴンリンク、フィフスセクターの最高位に君臨する、究極のイレブンだ」

 

「ドラゴン、リンク..?」

 

『こ、ここで!選手交代の情報です!なんと聖堂山は、監督、選手、全てを入れ替えてきました!これは、如何なる時点でもフィフスセクターはルール変更ができるという、少年サッカー法第5条に基づくメンバーチェンジ、とのことです!』

 

「前半戦とは次元の違うサッカーを見せてやる。覚悟しておけ」

 

そんなの有りかよ、俺たちには何としてでも勝たせたくないみたいだな、と身内から声が上がる。

 

「偉く動揺してるな。そんな調子で後半を戦えるのか?」

 

「前半で消耗した私たちを、後半からハイエナする愚者共には丁度いいハンデだろう」

 

「...あ?」

 

ドラゴンリンクの誰かが挑発してきたので、私も対抗。

余程癪に触ったらしい、目頭がピクついている。

 

「フィフスセクターは究極という言葉が大好きらしいな。事あるごとにとってつけて使いたがる。語彙に関してはおまえたちの大好きな牙山某からゴッドエデンで学べなかったのか?」

 

「滅茶苦茶煽るじゃん、愛花」

 

「マサキ、おまえも舌の一つぐらい出しておけ」

 

「りょーかーい」

 

「テメェら...言わせておけば!」

 

「フィフスセクター最強たるもの、堂々としていなさい」

 

大人の声。

現れたのは、ドラゴンリンクのキャプテンに酷似した容姿の男性。

恐らくは、あの人が替わった監督か。

 

「あの人は...」

 

「松風、知ってるのか」

 

「前に、会ったことがある...」

 

「久しぶりだね、松風天馬くん。私は千宮路大悟、フィフスセクターの創始者だ」

 

語られるのは、いかにしてフィフスセクターは作られたのか、サッカーには管理が必要、というもの。

 

「知るといい、雷門。世の中には抗えない事実があるということを」

 

 

 

選手入場。

一新されたメンバーの紹介が済み、ポジションに選手がつく。

 

「相手は4-4-2...京介」

 

「ああ、前衛と中盤に選手が集中している。突破すればシュートへは即持っていけるだろうが、あれだけ自信満々に出てきたんだ。そう簡単にはいかないだろうな」

 

「開幕ボール奪ったら飛ばすぞ、剣城、愛星。余裕綽々なアイツらの鼻っ面、へし折ってやる」

 

典人の強気な発言に頷く私と京介。FWを筆頭に、雷門はメンバーチェンジの動揺はあれど前半の勢いは残っているらしい。士気に関しては問題ない。

 

剣城 愛星 倉間

浜野 天馬 錦

車田 霧野 天城 狩屋

三国

 

控え 速水 青山 一乃 影山 西園

監督 円堂

 

前半に引き続き、雷門はこの布陣。

やはり拓人のいない穴は大きいが、これが今のベストなメンバーであり、現実的なフォーメーションだ。

 

「みんな、勝とう!勝って、本当のサッカーを取り戻すんだ!」

 

『おう!!』

 

ドラゴンリンク...聖堂山のキックオフで、後半開始───その直後、目を疑うことが起こった。

笛が鳴ったと同時、敵はこちらの陣地へ向けて大きくボールを蹴り放ったのだ。

 

「何...?」

 

ボールは蘭丸が確保。それを尻目に自陣へと戻るドラゴンリンク。

 

『おっとミスキックか!?霧野がボールを受けたのを見届けて、聖堂山は同点でありながら守りを固める!どんな策略が隠されているのでしょうか!?』

 

「舐めやがって...!」

 

「ちゅーか、行くしかないっしょ!」

 

「上がりましょう!霧野先輩、浜野先輩へパスを!」

 

「おう!」

 

攻め上がる雷門、対して微動だにしない聖堂山。

不気味だが好機と捉え、私達は走る。

 

「錦!」

 

「よし、勝ち越しの一点はワシが決めるぜよ!」

 

「ここは通さんぞ」

 

ドリブルで切り込む龍馬の前に、FW四人が立ちはだかる。

前半に正規の聖堂山が使っていた、前目でボールを奪う戦法か?と思われたが、奴らの狙いはそれ以上のものだった。

 

「「「「精鋭兵、ポーン!!」」」」

 

シンプルな造形の甲冑を纏う化身が、同時に四体出現。

 

「なに!?」

 

「FW全員が、化身使い!?」

 

「くらえ!」

 

「のあああ!?」

 

四体の同時攻撃を食らい、吹き飛ばされる龍馬。

 

「錦先輩!?」

 

「剣城、愛星、戻るぞ!」

 

「はい!」

 

「わかった!」

 

相手のカウンターが始まる。

化身の圧力を発揮しながら、雷門を薙ぎ倒すように攻め上がっていくドラゴンリンクの攻撃陣。

 

「先ずは勝ち越させてもらうぜ...!」

 

「くっ、こい!」

 

DFも突破し、太一と四対一。

 

「そらッ!!」

 

精鋭兵ポーンの拳が振るわれ、増強された威力のボールがゴールへと迫る。

 

「フェンス・オブ・ガイアッッ!!」

 

地面から巨岩を発生させ、太一はシュートをブロック。なんとか弾くことに成功し、そのルーズボールへ私は飛んだ。

 

「よしっ」

 

「ナイスだ愛星!」

 

空中で確保し、パス相手へ視線を向ける。

 

「天馬...」

 

「させねえよ!」

 

「...っ!?」

 

だが、私の動きを読んでいたのかFWの一人が化身を使いボールを奪う。

直ぐにパスが出され、

 

「はああッッ!!」

 

再度、シュートが放たれる。

 

「止めて見せる...無頼ッ」

 

赤く、黒く光る稲妻のエネルギーが形となり、巨大な両手を形成。

 

「ハンドッッ!!」

 

白竜とシュウのゼロマグナムをも防いだ実績のある、太一の奥義。

拮抗は一瞬、勢いは弱まり、太一の手に収まった。

 

「なんてパワーだ...次はこっちの番だ、カウンター!」

 

「天馬くん!」

 

「ああ、剣城!」

 

太一、マサキ、天馬、京介へと細かくパスが刻まれ、ボールは前線へと押し上げられる。

流石のドラゴンリンクも、前線が手薄になったからか中盤、終盤と守備に回ってきた。その練度は前半の聖堂山以上、フィフスセクター最強を謳うだけはある。

 

「松風!」

 

「よし!」

 

「行かせるか!」

 

しかし、こちらも負けてはいない。

 

「そよかぜステップ!」

 

「なに!?」

 

ホーリーロード開始から、より洗練され華麗さを増した天馬のドリブル技が炸裂。

 

「いける...愛花!」

 

パスは、フリーの私へ。

 

『ここでFWの愛星へボールが渡る!雷門、決定的なチャンスだァッ!」

 

ペナルティエリアより手前、GK───千宮路大和と一騎打ち。

 

「こいよ」

 

煽りの手招き。

ならばご期待に添えようと、私はボールを天高く打ち上げる。

空を星々が多い、落下してきた流星に右足を合わせた。

 

「ブレイキング・コメット!!」

 

超新星の爆発の如き光と轟音がスタジアムを支配し、必殺シュートは千宮路へ一直線に飛んでいく。

地区二回戦以降、放てば必ず得点となっていた私のブレイキング・コメット。味方の誰もが、ゴールネットを揺らすのを疑わない。

 

「───この程度か」

 

「...なに?」

 

ボソリと相手が呟いたのを、私は聞き逃さなかった。

そう豪語した理由は、

 

「ふんッッ!!」

 

必殺技も使わず、ただの両手で私のシュートを止めたことで、証明された。

 

「な...っ!?」

 

「愛星の必殺技が...」

 

「あんな簡単に...!?」

 

周りも驚いているが、一番驚いているのは私だ。

オサーム兄でも止めるのに苦労するシュートだぞ?

それを、恐らくは力をセーブした状態で止めるとは、異常事態だ。

 

「入場前の強気な発言といい、少しは期待してたんだがな。疲れでもしてたか?」

 

「言ってくれるな...!」

 

いつもの私であればこの千宮路大和という男を婿候補認定しているが、生憎とそのような余裕が今はない。

 

「そら、次だ!」

 

「まだ、だ!」

 

千宮路からの中盤まで伸びるロングパス、それを戻っていた京介がカット。

 

「愛星、まさかシュート止められて落ち込んだとか言うなよ!?」

 

ビシッと指を刺される。

ふっ、京介め。おまえは違うベクトルで言ってくれるじゃないか。愛い奴め。

当たり前だと頷き、尚もこちらの攻撃は続く。

 

「アクロバットキープ!...天馬!」

 

颯爽と、アクロバティックな動きで相手を翻弄する龍馬のドリブル技から、今度は天馬へとボールがつながった。

 

「こい、俺の化身...魔神ペガサスアーク!!」

 

海王学園との試合で発現、ゴッドエデンで進化し、太陽との戦いでモノにした化身が、降臨。

 

「化身か...何度やっても無駄だ」

 

「やってみなくちゃ、わからないだろ!」

 

気合一喝、両翼を羽ばたかせ、天馬は飛んだ。

 

「ジャスティスウィング!!」

 

空を舞い、遠心力で体の動きを最適化させ、ペガサスアークの剛腕をボールへと叩きつける、化身シュート。

今度こそ、とイレブンが行方を追う中、千宮路大和はその期待を絶望へと変える。

 

「頭に乗るなよ...虫ケラ共がッ!」

 

右拳が高々と掲げられ、奴はその名を口にする。

 

「賢王、キングバーン!!」

 

正しく王の称号に相応しき威厳を持った、赤が基調の多腕化身が顕現。

瞳が紅に光り、同時に四本の腕に紅蓮の炎が纏われる。

 

「キングファイアッッ!!!」

 

過剰なまでの豪炎がジャスティスウィングに浴びせられ、勢いは死に、いとも簡単に止められてしまった。

 

「そんな...!?」

 

強い。

恐らく、これまで出会ったどのGKよりも、あの男は強靭で、強固で、強大な敵だ。

 

「やってみるまでもなかったな...愚かなおまえたちは、何もわかっていない。俺たちドラゴンリンクは全員が...」

 

化身使いだ。

 

千宮路の一声が合図となり、聖堂山全員が化身を発現させる。

チームゼロの総数すら上回る量の、正に化身の軍隊。

 

「ドラゴンリンクの力、思い知るがいい!!」

 

千宮路はシュート...いや、これはシュートではない。天馬を挟んだ先にいる、味方へのパスだ。

 

「あ...っ」

 

「天馬、危ない!」

 

反応に遅れた新キャプテンを庇おうと、典人が間に割って入る。

ボールは彼奴の腹を直撃し、内臓を揺らした。

 

「ぐあ...っ」

 

「倉間先輩!?」

 

溢れたボールは敵が確保。そこから化身の力を利用したパスが全方位で行われ、私を含めた雷門イレブンを吹き飛ばす。

 

「化身のシュートを、パスに使うだなんて...!」

 

「があっ!?...こいつら、無茶苦茶だ...!」

 

「おまえたちに、我々を止めることはできん!」

 

一気に、太一の守るゴールへ。

 

「超攻撃的サッカー軍団、フィフスセクターの最終兵器」

 

「それが俺たち、ドラゴンリンクだァ!!」

 

鉄騎兵ナイトの化身使いが、シュート体勢に入る。

 

「ギャロップバスターッ!!」

 

騎兵の槍の一撃、木戸川の使用者とは比較にならない威力が、雷門ゴールを襲う。

 

「アトランティス...ウォール!!...ぐ、ああ!?」

 

「無頼、ハンドッッ!!」

 

大地が古代神殿を模した聳え立つ壁でシュートの威力を弱めようとするも、拮抗すらせず。

奥義でソレを迎えた太一も、徐々に押されていき、

 

「...う、うわあああ!!??」

 

虚しくも、槍兵の一撃はゴールに突き刺さった。

 

『ゴーーールッ!!驚異的な力を見せつけながら、聖堂山が勝ち越し!雷門イレブンなす術なしか!?』

 

一度本気を出し、攻め上がっただけでこの有様。

絶望の時間は、続く。

 

 

 

2-4

 

典人、太一の負傷退場により輝、信助が投入されたその後も、ドラゴンリンクによる猛攻は終わらなかった。

 

(どうする...?)

 

化身の進行を食い止めることができず、先の3点目に続いて許してしまった4点目のスコアボードを見ながら、私は考える。

向こうの戦法は開始前と変わらず、自陣について化身でボールを奪い、蹂躙を始めるというもの。

隙という隙が見当たらないし、このままではジリ貧だ。

 

「さぁ、5点目だ!!」

 

「うわぁ!?」

 

輝が吹き飛ばされ、ボールは聖堂山へ。

3、4点を取った時となんら変わらない光景が、このままでは展開されてしまう。

そうは、私がさせない。

 

「京介!」

 

「なんだ!?」

 

「確かに相手の化身は驚異だが、瞬間の火力だけで見れば雷門の化身が上だ!であれば、こちらの必殺技でも対応できる筈...私が絶対にボールを奪う、おまえは上がれ!」

 

「...わかった、頼む!」

 

「天馬、錦、おまえたちも上がれ!」

 

「わ、わかった!」

 

「おう!」

 

策略、とは格好良く言えない穴だらけの無茶で無謀なやり方。

しかし、今はそれしか方法がない。

他のメンバー、婿たちの消耗を抑えるためにも、ここは私が人肌脱ぐ場面だ。

 

『あっと!?雷門、剣城を先頭に松風、錦の三人が聖堂山陣内深くへ切り込んでいく!対してDFは愛星一人!賭けに出たのか!?』

 

「行かせない!」

 

「ハッ!しゃらくせえ!」

 

精鋭兵ポーンの乱雑な拳が、私に迫る。

数回の攻防を見て、体感してわかったことがある。それは、ドラゴンリンクの化身の練度は計り知れないこと。

これだけならばだからなんだという話になるのだが、次がかなり重要だ。

向こうは、そのスペックにかまけた大雑把で力任せなオフェンスしか仕掛けてこないのである。

 

「吹き飛べッ!」

 

「七ツ星!!」

 

であれば、搦手を交えれば勝機は消えていない。

自慢のDF技を発動。七つの星が飛来し、拳を遮り、本体に着弾させ、動きを怯ませる。

 

「ちっ、邪魔が...」

 

「そこだ!」

 

「なに!?」

 

七つ目の直撃と共に私はボールを奪い、即仮想の宇宙空間へと消え、技の名を唱えた。

 

「グン、グニルッ!!」

 

体勢を崩しながらの簡易版。従来の威力は出ないが、

 

「いけえ!!」

 

「ぐお!?」

 

0距離ならば、相手の化身を打ち消すには事足りる。

 

『愛星、二つの必殺技を使い化身を打ち破った!そしてこれは...!』

 

ボールは放物線を描き、前線───京介へと向かっていく。

 

『愛星から剣城への、ロングパスだァ!!』

 

「はあああ───ッ!!」

 

京介の背後で、巨人の影が蠢く。影は形を整え甲冑、盾、剣となり、主人の後ろに君臨。

フィフスセクターに反旗を翻した、裏切りの騎士───その名は、

 

「剣聖...ランスロット!!」

 

天馬と龍馬が引き付けたことにより、ゴール前にDFはいない。

あとは力勝負、雷門のエースストライカーと、ドラゴンリンクの守護神、二人の一対一だ。

 

(絶対に決める!流れを変えるため、何より...ここまで必死で運んだ、愛星のためにも!)

 

「必ず、決める───ッ!」

 

「来いよ、三流シード!」

 

紅のマントを翻す騎士。ボールに光と闇、両方のエネルギーが注ぎ込まれ、そこへ京介の右足が炸裂する。

 

「ロスト...エン、ジェルッッ!!!」

 

裏切りの剣聖、必殺の一撃。

黒く輝く弾丸となって、相手ゴールへと突き進む。

 

「賢王キングバーン!!」

 

千宮路も化身を展開。次いで、天馬の時同様四つ腕に炎を灯し、解き放つ。

 

「キングファイア!!!」

 

直進していく騎士の剣と、紅蓮の業火が激突。

技を受けて初めて、千宮路の表情が一瞬苦悶に歪む。

 

「行けえええッッ!!」

 

「チ...ッ!」

 

普段の京介を想像すれば、似合わない咆哮。それだけ、この一撃に全てを込めているのだ。

 

「調子に、乗るなァ!!」

 

「な...がぁ!?」

 

しかし、その想いすらドラゴンリンクは打ち破る。

ランスロットの優勢かに見えた攻防は、キングバーンに軍配。剣は焼却、消滅し、ボールは千宮路の手に。

 

『止めたアアアッッ!!剣城渾身の一撃を、GK千宮路大和がガッチリとキャッチ!流れを変える、詰め寄る一点には成らず───ッ!』

 

それは、こちらの絶望を更に加速させる敗北だった。

チームで一番キック力のある京介ですら得点できなかったという事実が、重く私たちにのしかかる。

 

「...褒めてやるよ。俺をここまで苦戦させたのはおまえが初めてだ。だが、やはりドラゴンリンクの敵ではない!!」

 

「ぐっ!?」

 

千宮路のキックしたボールは、京介を吹き飛ばしながら前線へのパスに。

 

「京介!」

 

「さっきはよくもやってくれたな、女ァ!」

 

「くっ、うあっ!?」

 

「愛花!?」

 

「おまえもだ!」

 

「うわぁ!?」

 

またも化身同士のパスが開始され、私と天馬は吹き飛ばされてしまう。

攻守の立場は一転、数秒でボールは雷門のゴール前に。

 

「トドメを刺してやる...食らえ!」

 

「決めさせない!雷門のゴールは、僕が守るんだ!!」

 

意気込む信助の熱意に、彼奴の化身も応える。

 

「護星神、タイタニアスッ!!」

 

自らの体躯とは似ても似つかない、巨躯と巨腕が特徴の青い巨人が、精鋭兵ポーンのシュートに立ちはだかった。

 

「マジン・ザ・ハンドッ!!!」

 

心臓からのエネルギーを集中させた右手を、全力で前に押し出す。

 

「ぐ...うわあっ!!」

 

激突と同時に信助は後退、手は弾かれるが、ボールもゴールポストを大きく越えていく。

 

「ナイス信助!よく止めたよ!」

 

「と、止めた...けど」

 

「...あ、ああ」

 

信助の次に続く言葉を、天馬や私たちは察することができた。

攻め手が足りない。エースのシュートも通じない。相手の動きについていくのがやっと。

この有様で、どう勝機を見出せというのか。イレブンの表情は沈んでいた。

 

「これでわかったろう。力の差は歴然、おまえたちに勝ち目はない」

 

嘲笑が相手から飛び交う。

反論も、強がることもできず、下を向く私たち。体へのダメージ、疲労もある。

心が、挫けかけていた。

 

 

 

「顔を上げろ!!前を向け!!」

 

 

 

その時、ベンチから雷の如き檄が飛んだ。

見れば、声の主は円堂監督。険しくも、それでいて私たちを信じる目つきで、続ける。

 

「まだまだ、試合は終わってないぞ!!」

 

『───っ』

 

ハッとしたように、全員が立ち上がり、表情を変える。

 

「そうだ...まだ」

 

「終わって、ない!」

 

これまで、幾度とない困難にも抗って、革命の風を吹かせてきた。

そう簡単には、私たちは、雷門は止まらない。

 

「───よし!」

 

監督がニカッと笑い、その陽気さイレブン全体に伝播する。

そして、今が好機と踏んだのか監督の指揮が動いた。

 

「選手交代!浜野に替えて、背番号0!」

 

「ぜ、0番の選手?」

 

「そんな奴、ウチにいたか...?」

 

士気は上がるも、困惑もまた広がる。

ベンチにその0番の選手はいない。では、どこに...。

 

「───あ」

 

最初に気づいたのは、私だった。

グラウンドへの出入り口、選手入場のために使われるそこに、雷門のユニフォームを纏った件の選手がいた。

白銀の髪を後ろでまとめ、赤銅色の強く光る瞳、何よりも目を惹く、端正な顔立ち。

 

 

 

フィフスセクター、チームゼロキャプテン、白竜。

 

 

 

「はく、りゅう...」

 

私の視線に気づいたのか、彼は凛々しく微笑む。

 

「待たせたな」

 

ゆっくりとピッチの芝を踏み締め、入場する白竜。

 

『ここで雷門はメンバーチェンジ!浜野に替えて...えー、こちらの選手もドラゴンリンク同様、データの無い選手!登録名は白竜!昨日雷門中へ転校手続きを行なった選手のようです!』

 

「白竜だと...?」

 

監督である千宮路大悟氏を始め、ドラゴンリンクでも彼の名を知っている者は多いらしい。

ゴッドエデン陥落の話は受けていただろうが、まさかそのトップが雷門に与する。向こうにとっては、異例の事態だ。

 

『大会規定、第64条第2項!プレイヤーは試合前に転入手続きを行なっていれば、試合期間中のチーム移籍は可能である!円堂監督の秘密兵器が、ここで登場だァ!』

 

「考えたな、円堂」

 

「この転入は白竜自身が望んだことだ。俺はそれを少し手助けしてやっただけだよ。でも思い出すだろ?10年前を」

 

「ふっ、ああ」

 

何やら円堂監督と鬼道コーチが楽しそうだ。

 

「ちゅーか、やられっぱなしは癪だけど...あと頼むわ!」

 

「任せろ」

 

浜野と白竜がハイタッチを交わし、ついに、白竜が公式戦のフィールドへ。

新加入した彼に、イレブンが駆け寄る。声をかけたのは、京介。

 

「白竜、いいのか?」

 

「借りがおまえ一人だけなら、応援だけで終わっただろうが...二人いては、俺も動くしかないだろう。おまえ達ライバルがいたから、俺は昔の自分を取り戻すことができたんだ」

 

恩は、返すのが筋だからな。

そう言ってのけた白竜により、沈んでいた雷門のテンションはみるみる上がっていく。

 

「白竜...!」

 

「愛花」

 

「式はデカめのチャペルでやろうな...!」

 

「何を言ってるんだ」

 

相変わらず面白い奴だ、と呟いたのち、白竜は私を真っ直ぐ見据える。

 

「愛花、おまえは元チームゼロの一員、俺と肩を並べて戦った女だ。そんなおまえに、こんなところで停滞する姿など似合わない。もっと高く、もっと速く、おまえは翔べるはずだ」

 

「も、もっと...」

 

「俺が手伝う。手始めに一点返すぞ」

 

「白竜の言う通りだ!みんな、先ずは一点取ろう!」

 

『おう!!』

 

天馬の号令により、コーナーキックからゴールを守るべく自陣へ移動する私達。その中で、私は思案する。

 

「...ふむ」

 

凡ゆる技を極めて、もっと上に。

オサーム兄から習っていた時と、変わらない。

FWの腕を磨き、MFの腕を磨き、DFの腕を磨き、GKの腕を磨いた。これは、その延長線上にある問題。

 

(───なあ、愛星愛花)

 

おまえは、数十数百の技術を体得して、どうなった。

 

(...サッカーが、上手くなった)

 

兄や姉達から滅茶苦茶に褒められるまでに、至った。

 

(そして、どうなった)

 

その先、私は何を得たのか、何になったのか───答えは、既に己の中にある。

即ち、

 

(サッカーが、もっと好きになった)

 

ドクンと、心臓が高鳴る。

今なら何でもできそうな気がする。全能感が、身体中を満たしている。

 

「...よしっ」

 

両頬をバチンと叩いて、配置についた。

 

『さぁこのメンバーチェンジが功を奏すのか、聖堂山のコーナーキックで試合再開です!』

 

笛が鳴り、ゴール前に敵味方が殺到。

 

「はああっ!!」

 

先に触れたのは、京介。

ヘディングで競り勝ち、ボールを弾いた。

転がった先には、白竜。

 

「さぁ、上がるぞ!」

 

雷門のカウンター。

白竜を筆頭に、私が追従する形で前線へと駆け上がる。

しかし、やはり聖堂山は侮れない。瞬時に白竜の前に立ち、行手を遮った。

 

「裏切り者が...まさかここまで堕ちていたとは!」

 

「堕ちた?違うな、間違っているぞ。俺は元々底にいたんだ。その事実を知って、空へ翔んだだけだ!」

 

「くたばれええ!!」

 

精鋭兵ポーンが四体、白竜へと殺到。

振るわれる拳を嘲笑うかのように上へ飛ぶことで回避した白竜は、自身の魂の具現、精神の表れの名を告げる。

 

「来い、聖獣シャイニングドラゴン!!」

 

地面から出現する、白竜の化身。

白く美しく巨大な体躯を揺らして空へと舞い上がる中でポーン達を蹴散らし、君臨した。

 

『白竜、いきなり化身を出したァ!!しかし、これは...!』

 

実況、角間王将さんが言い淀むのもわかる。

今し方の攻防を見てわかったのだろう。

 

明らかに、化身としての格が違うと。

 

「愛花、ゴールへ走れ!」

 

「わかった!」

 

相手化身を吹き飛ばし続ける白竜を背に、私は走り出す。

早る気持ちに身を任せ、心臓の鼓動を高鳴らせ、芝を踏み締めゴール目掛けて全速力。

 

「───ああ」

 

気分が良い。

 

京介、天馬、拓人、龍馬、信助、そして白竜が感じていたのは、きっとコレのことだ。

 

「───来たれ」

 

私の背後より出現する、影。

影はペガサスアークにも似た翼となり、あやふやだった形を徐々にくっきりと確立。やがて本体である女性的な実体が顕現した。

純白の大翼、戦乙女の甲冑、邪を祓う両手剣、それらを纏った、私の化身。

 

「愛花が、化身使いに!?」

 

「白竜の力に共鳴したのか!」

 

そうだ、もっと驚け。

敵味方関係なく、私を讃えろ。

 

「言っただろう。婿を飽きさせないのが嫁の務めだと。やはりサプライズは用意しておくに限る!」

 

「よく言う!今初めて出したくせに!」

 

京介にしては良いツッコミだ。褒美として後で抱いてやるとしよう。

 

「さぁ、行くぞ。私の化身」

 

───乙女座のヴァルゴ。

 

それが、私が名付けた化身の名。

 

「愛花!」

 

中盤の白竜からパスを受け、ドリブル。

否、

 

「やってみたかったんだ、コレを!」

 

ドリブルではない。

グラウンドを、私は超スピードで滑走する。

 

「魔宰相ビショップ!」

 

「鉄騎兵ナイト!」

 

「邪魔だ、雑兵!!」

 

「「ぐあああ!?」」

 

ヴァルゴの持つ大剣が横凪にされ、相手の化身が一撃を持って斬り捨てられた。

 

「なんだ、あの化身は...?」

 

「───」

 

「なっ!?」

 

余裕綽々の雰囲気だった千宮路と、視線がかち合う。

そういえば、言えてなかったことがあったのだ。この際だし言っておこう。

 

「千宮路大和。おまえ、私の婿候補にならないか?」

 

「婿...な、なんだ?」

 

「ふっ、答える必要はない。今は、この戦いに身を任せよう!」

 

いつもの調子が戻ってきた。やはり私は、こうでなくてはな。

 

「白竜!」

 

追従していた白竜に、パス。

 

「愛花の化身誕生、その祝いだ。景気付けに撃たせてもらおう!」

 

ボールを咥えたシャイニングドラゴンが、再度宙を飛翔。聖なるエネルギーが口元へと収束し、充填完了。

 

「ホワイトブレス...てえええやァッッ!!!」

 

咆哮、或いは吐息、或いは息吹。

規模の違う龍の一撃が、聖堂山ゴールへと襲いかかる。

 

「たかがトカゲの息、捻り潰してやる!賢王、キングバーンッッ!!」

 

「さて、そう簡単にいくかな」

 

「あァ!?」

 

白竜の化身シュート。それに合わせるように、私は翔んだ。

 

「今なら、できそうだ」

 

無駄な回転はいらない。

 

ボールを加速させることも、必要ない。

 

化身を発動させている今なら、従来のモーションでのアレが可能だ。

しかし、いかんせん威力はオリジナルを超えてしまうだろう。

ならば、これにも新しい名前が必要か。

 

流星一迅、乙女座のヴァルゴの大剣による振り下ろし、それに合わせた私の蹴り。

名は───、

 

「大銀河ブレードッッ!!!」

 

流星ブレードを昇華させた、私だけの化身必殺技。

白竜のシュートの威力も合わさり、破壊力は絶大だ。

 

「キングファイアッ!!!」

 

超火力と、超新星爆発が激突。

キングバーンは四つ腕から発生させる紅蓮の炎でヴァルゴの大剣を押し返さんとするが、生憎と私のシュートに注がれたのは星の力だけではない。

龍の息吹が、吹き返す。

 

「...な、にィ...!?」

 

「叩っ斬れ、ヴァルゴ!!」

 

両断。

霧散するキングバーンの残滓を突き抜け、ボールはゴールへと吸い込まれた。

 

『ご、ゴーーールッ!!新加入した白竜と、新たに化身を発現させた愛星のシュートチェインにより、3-4!雷門が一点差に詰め寄ったァ!!』

 

今ならわかる。

私は、愛されている。

 

サッカーに、世界に───この世全てに。

 

万雷の歓声をその身に受けながら、私は優雅にお辞儀をした。

 




乙女座のヴァルゴ
大剣を携えた、天使のような大翼を持つ甲冑を纏う女性型化身。

大銀河ブレード
流星ブレードのモーションで炸裂させる化身シュート技。相手は死ぬ。

愛花:晴れて化身使いになった。滑走ドリブルができるようになってご満悦の様子。ギャグキャラがシリアスに堕とされる回は必要、鬼滅の刃で見た。
白竜:剣城、愛花へ恩を返すために鬼道式FAで雷門に転入した熱い奴。映画のように大人乱入→円堂達参戦の流れを本小説でも、と思い、ドラゴンリンク出現→白竜参戦という構図へ。オマージュはなんぼあってもいいですからね。
剣城:アニメよりも強化されたロストエンジェルで千宮路に抗った。実は決勝前日に愛花とのあれこれが少々あり、今までのような苦手意識は減った。本編を書き終えたら番外編で書きたい。
天馬:アニメでジャスティスウィングを決勝で打たせてもらえなかったので、本小説で打たせた。次回は彼にとって試練の時間、さぁ勝ちに行こう。


ということで、書きたかった白竜参戦&愛花化身発動回でした。
そしてすまねえ、これが最終回じゃねえんだな。次回で正真正銘、ホーリーロード編は終了です。
おもしれー女の行く末を、どうぞ見守ってやってください。
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