遠き星エイリア、もといお日様園では一妻多夫が認められている(詭弁)   作:\コメット/

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ホーリーロード編、最終回。
前半は決勝の前日譚、後半は熱いものに仕上がっております。
天までとどけっ!スタンバイ!




最終回 第11話 私の、自慢の、婿達だ。

 

 

ホーリーロード全国大会決勝戦、その前日に時間は遡る。

 

神童の離脱、慣れない天馬のキャプテン指示、それにより合わないチームの連携。これらを加味し、雷門サッカー部は監督である円堂の提案で校内合宿を開くことになった。

なんでも、10年前のフットボールフロンティア決勝を目前に彼自身がマジン・ザ・ハンドを習得できない焦りを響木前監督が鑑み、今回と同じようなことを催してくれたのだとか。

 

この、円堂監督の粋な計らいによりチームの実力は飛躍的に向上。

天馬の指揮にも磨きが掛かり、士気も上々、聖堂山との戦いに向けての追い風は強くなる一方であった。

 

(...腹減った)

 

日付も変わった深夜、試合まで残すところあと一日。

気合を入れて練習に打ち込んだせいか朝まで待てぬという腹の虫により、剣城は目を覚ました。

 

「えへへ...まだ食べたいです.........嘘です監督...奥さんのご飯は...もういいです...」

 

腑抜けた面を浮かべたと思えば急に青白い顔で魘される天馬を尻目に、宿泊施設として使っているサッカー部室を抜け出し、食堂へ向かう。

炊飯器に米が残っていないか、あれば塩でも振って塩むすびにでも、と思案する一方で、決勝戦に対する熱意も忘れない。

 

(松風の指示は様になってきた。チームの輪もまとまってきている...だが)

 

だが、だ。

あの技が、まだ完成していない。

神童がいない今、雷門の得点力が下がるのは必然。神のタクト、奏者マエストロ、魔帝グリフォン、そのどれもが使えなくなる。

だから、チームの攻撃力を上げるべくある人物に師事し、方法を教わり、全体練習後に天馬とその技の実現に励んでいるものの、モノにできていないのだ。

難易度は分かっていたし、時間をかける覚悟も二人にはあった。それでも、明日が本番ということもあり焦燥は増す一方。

 

(ファイアトルネードDD...どうすれば成功するんだ)

 

壁に前を塞がれることが諦める理由にはならない。

どう乗り越えるか、どう砕くか、考えるのを辞めずに試行錯誤を続ければ、光明は見える筈だ。

 

(今日も練習終わり、松風を誘うか...ん?)

 

足音を鳴らさぬよう摺足気味に廊下を歩いていた剣城は、食堂を目前にしてその入り口から灯りが漏れていることを確認した。

消し忘れか、とも思われたが、最後に使ったのは自分と天馬で、後者が消してから退出したのをこの目で見ている。

時刻は3時過ぎ、自分と同じで軽食目当てに誰かいるのかと中を覗いてみると、そこには予想を裏切る人物が厨房にいた。

 

(...愛星?)

 

小学校高学年、裁縫の時間に作成するドラゴンエプロンと三角巾を身に纏ったチームの問題児は、広いキッチンを活用して何やら料理に励んでいた。

 

「スキになったキモチ♪誰にも隠せない♪」

 

(隠してないだろ)

 

「このトキメキ どうしたら伝えられる♪」

 

(いつも伝えまくってるだろ)

 

これほどまでに青春おでんを歌う姿が似合わない女がいるのか、と内心でツッコんでいると、

 

「お、京介」

 

視線を感じたのか、愛星は剣城の方を振り向いた。

 

「...おう」

 

「夜食か?暫し待て。余りの米があるから一つ握ってやる」

 

ちょいちょいと手招きをしたのち、コンロの火を止め、愛花は炊飯器へと向かう。

 

「ラップは必要か?直で触ると嫌な者もいるからな」

 

「いや、別に気にしないが」

 

「そうか。あちち、ほいほいっと」

 

手を水で濡らし、少量のご飯を乗せ、米の熱さに耐えながら近くにあった焼き鮭の切れ端を中へと詰め、塩を振り、握る。

 

「...これ全部、おまえが?」

 

全部、というのは厨房に広がる大量の惣菜等のおかずのことを指す。

唐揚げやコロッケなどの揚げ物に、アスパラガスのベーコン巻きやピーマンの肉詰め、生姜焼き、焼き魚各種や中華料理とエトセトラエトセトラ。

平日の昼は重箱の弁当を持ってきて食わされていたことで愛花が料理できることを剣城は知っていた。だが、まだ日も登っていないこんな深夜に早起きし、量からして恐らく雷門イレブン全員分の惣菜を作っている。並の仕事ではない。

 

「応とも、おまえ達の昼ご飯だ。沢山食べて沢山力をつけろよ、ほらこれ」

 

「あ、ああ」

 

ホカホカのおにぎりを渡された。

改造制服は着ていても育ちは良い剣城は、小さくいただきますと呟いてから一口頬張る。

 

「...美味い」

 

「むふん、たんと食え。ほら、これとこれと...あとこれも食べておけ。少し減ったところで、おかずはまだまだあるからな」

 

紙皿に乗った三種類の昼用のおかずと割り箸を渡し、愛花は調理へと戻る。

小気味の良い包丁の音、ガスが焚かれてコンロに火がつき、鍋に切った食材が入れられ、次いで香る味噌の匂い。

 

「もぐ...この香り、味噌汁か」

 

「そうだ。これと魚系のおかずと冷蔵庫に冷やしてあるサラダは朝ご飯用で、他は昼用。ベーコンエッグは食べる前に提供するぞ」

 

「朝昼っておまえ...かなりの手間だろ。何時からやってる?」

 

「大体1時頃だな」

 

「いち...!?」

 

「20時には練習疲れで寝たからな、ある程度の睡眠は取れている。問題ない」

 

こいつ全く寝てねえ、と顔に出ていた剣城を安心させるべく、そう宣う愛花。

 

(それでもたった5時間しか眠れていない...疲労もあるだろうになんて奴だ)

 

魚の骨をピンセットで抜く、豆つき大豆の先端を切る、鶏肉を漬け込んでいたのかゴミ箱にあるジップロックにはタレが付いている。

大人数にかける手間暇で無いのは、見て明らかだ。

 

「ふふふ、私の愛する婿候補達の喜ぶ顔が目に浮かぶ。今日の昼が待ち遠しいな」

 

心の底からそんなことを思い、口に出している愛花を見て、気づく。

 

(こいつは、いつでも本気なんだ)

 

普段の婿勧誘も、スキンシップも、今この状況も、そしてサッカーも。

全てにおいてこの少女は全力で、本気で、フルスロットルなのだ。

 

(会って数ヶ月、ようやくだが...少しだけ、こいつが分かった気がする)

 

変な女、という評価は変わらない。

けれど、彼女が抱く想いは純粋そのもので、露骨に煙たがる必要性は無いのだと、今知れた。

 

「...」

 

腕捲りをし、剣城は溜まっている洗い物を片付け始める。

 

「あ、おい京介。食べ終わったのならもう寝ておけ。直ぐに布団に入れば2、3時間はまだ...」

 

「おまえが寝不足でチームの足を引っ張るのが目に見えてるんだよ。料理ってのは二人で分担すれば直ぐに終わるものだ。さっさと終わらせて、即寝るぞ」

 

「...ふっ、愛い奴め」

 

その愛花の微笑が、自分の鼓動を少し、ほんの少し早くしたのは、恐らく気のせいだろう。

 

「玲名姉以外では初めてだ。こうして他人と厨房に立つのは」

 

「初めてって、両親は...いや、すまん」

 

言いかけて、剣城は愛花がお日様園という施設の育ちだということを思い出す。

 

「別に気にしないぞ。時々思いはするがな、私の両親はどんな人だったのか、と。父親は分からず、母親は私を生んで直ぐに亡くなったらしいが」

 

「...」

 

「でも、父は兎も角として、母は絶対に良い人だったと思う。私を愛花と名付けたんだ。絶対そうに決まっている」

 

「...そうだな」

 

愛の花、愛される花。自認する彼女は自身の名前を誇りに思い、気に入っている。それが答えだ。

愛星愛花は、きっと母に愛され、祝福を受けて生まれたのだろう。

 

「それにな?私が5歳の頃に小児がんの手術を受けてた時、優しい声が聞こえたんだ。頭を撫でてくれて、おでこにキスもしてくれて...目が覚めたら無事手術は終わっていた。きっと母が私を守ってくれたのだろう」

 

「おまえ、がんだったのか」

 

「ああ。少し分かり辛いと思うが...ほらここ、縫い目が」

 

「見せなくていい」

 

「そうか?」

 

髪を掻き分けて生え際近くの傷を晒そうとするのを、制止。

 

「まぁ完治はしたものの、後遺症か身体の成長が思ったより遅くてな。身長は伸びてあと5cm、体型もちんちくりんなままだろうな...チラッ」

 

「なんだ」

 

「京介はグラマラスが好みか?それとも薄いのが好みか?」

 

「ば、バカなこと聞くな!」

 

「婿の要望を叶えるのも嫁の務めだ。たとえ望みは薄かろうと、相応の努力は欠かさないつもりだぞ。なんならおまえが揉んで育ててくれても...」

 

「誰がやるか誰が!」

 

「ふむ、他人の力は借りずに自分でどうにかしてみろ、ということだな?あいわかった、努力しよう。そしてそう言う京介は恐らく巨乳好きなのだろう」

 

「見当違いな自己解釈だよクソ...!」

 

「お、なら今の私が好きなんだな?むふん、仕方がない。京介がそこまで言うなら体型維持に努めるとしよう」

 

「...」

 

剣城は沈黙を決め込んだ。

これ以上余計なことを言うと、揚げ足を取られてひたすらに愛花にいらんことを言われると理解したからだ。

 

「悪い悪い、揶揄いが過ぎたな。京介の反応が新鮮でつい勤しんでしまった。さて、暗い話も京介の性癖の話もこの辺にして、話題を変えよう」

 

味噌汁の味に満足した愛花はコンロの火を弱火にし、剣城の横に並んで洗い物を手伝う。

 

「将来の話だ、京介」

 

「...将来?」

 

「私は、多分高校でサッカーをやめると思う」

 

いきなり、とんでもない話題をぶっ込んできた。

 

「おまえ程上手い奴、女子ではそうそういないだろ。どうしてやめる必要があるんだ」

 

「今がそうでも、今後の成長曲線が上向きになることを望めないんだ。さっきも言った通り、これ以上身体は大きくならない。サッカーはフィジカルのスポーツだからな、現時点で通用していようとも、来年再来年、高校では全く通じなくなる筈...もう私は頭打ち、というわけだ」

 

「...」

 

そんなものやってみなければわからない、なんて天馬のようなセリフを剣城は吐けなかった。

あのお気楽新キャプテンに絆される前の現実思考な頭が、愛花の言い分を肯定しかけている。

 

「高校は雷門の高等部に進学して、大学は都内、入学金や他の費用は園長が出すと言っていたからそれは甘えるとして、単位を取りつつアルバイトしながら貯金をして、就職といったところか」

 

「...おまえって、恋愛事以外はリアリストなんだな」

 

「リアリストだからこそ、その類でロマンを求めることができる。大学を卒業したら迎えに行くから、待っていろよ」

 

「勝手にしろ」

 

「京介はプロ志望か?」

 

「.........まぁ、な」

 

「おまえならきっとなれる。そろそろFFIもあるだろうし、そこで選考されれば将来は確約されるだろうな」

 

いきなり海外、いや先ずは国内でキャリアを積んでからがいいか?と他人の将来設計について考える愛花。

それを鬱陶しく...いや、違う。別にそういう感情は抱いていない。ただ、そう。

 

(イラつくな...)

 

自分の将来を半ば諦め、他人の将来を考えるその様が、ムカついた。

 

「おい」

 

「ん?」

 

「おまえが俺の将来を語るなら、俺からも言わせてもらう」

 

「なんだ?もしかしてプロポ」

 

「高校に上がっても、サッカーは続けろ」

 

初めて、本当に初めて、剣城に対して愛花は目を見開き、ギョッとした表情を見せた。

 

「いや、でも...」

 

「フィジカルを言い訳に、サッカーから逃げるな。まだ13歳、身体の成長は望めなくとも、技術は伸ばせる。体格が小さくとも世界で活躍する選手は何人もいるんだ。その一人におまえもなればいい」

 

男子に混ざって一線級でプレイできているのも、いずれ強みになる。この環境に揉まれ続けた末に、高校から女子サッカーで力が発揮される。

 

「俺は、それを見てみたい」

 

慰めや情けだとか、そんな感情は一切無い。

本心から剣城はそう思っているし、そう願っている。

 

「───」

 

ぽえーっと、愛花は半ば放心状態で彼の瞳を見つめ返す。

宇宙を漂う紫雲、見る者を引き込むパープルアイと、切れ長で鋭利な刃にも似た三白眼の二つの視線が重なり、二人の間の時が止まった。

 

ジュウウウウ

 

「「ん?」」

 

そんな二人の耳に届く、何かの音。

コンロの方からで───、

 

「...あ、み、味噌汁!...あづっ!?」

 

味噌汁が沸騰し、蓋の穴から泡が漏れ出ていた。

泡のついた手のままコンロの火を消し、一安心。

 

「ふぅ、危ない危ない」

 

「無事か?」

 

「ああ。少し沸かしただけだから味噌汁は...」

 

「違う、おまえの怪我の方だ」

 

「え...あ、これか」

 

噴き出した汁に当たったのだろう、左手の薬指が、淡くはあるが赤くなっていた。

 

「直ぐに冷やせ。救急箱を持ってくる」

 

「わかった、すまん」

 

「気にするな」

 

幸い、救急箱は食堂に備えてあった。

ワセリンを持って、座らせた愛花の元へ。

 

「左手を出せ。塗ってやる」

 

「いや、自分で」

 

「いいから見せろ」

 

「お、おう」

 

剣城は自身の左手で、愛花の左手を取り、右の指にワセリンをつけ、彼女の薬指の患部に塗る。

火傷の具合は大したこと無さそうで、これなら生活や練習にも差し障ることはないだろう。

 

「あとの片付け、あまり左手は使うなよ。最後まで手伝ってや...おい、なんか赤いぞ」

 

「あ、いやその」

 

「熱か?体温計を」

 

「ち、違う。大丈夫、大丈夫だ...」

 

「そうか」

 

こんなもので、と第二関節ぐらいまでしっかりと塗り、処置は完了。

 

「京介」

 

救急箱へと薬を直すべく立ち上がる剣城を、愛花は呼び止めた。

 

「なんだ?」

 

「さっきの件...卒業してもサッカーをやれという件だ」

 

「ああ」

 

「...他でもない婿からの頼みだ。頑張ってみるとしよう」

 

「───はっ、そいつは何よりだ」

 

その日の朝と昼のご飯時、剣城は他の誰よりもおかわりをした。

愛花との距離も心なしか縮まっており、誰もがそんな光景を不思議がっていたとか。

 

 

 

********************

 

 

 

「「ファイアトルネードDD(ダブルドライブ)!!!」」

 

天馬と京介、二人の必殺技が千宮路のキングファイアと衝突。

炎の螺旋と業火、その勝負は───、

 

「「いっけえええええ!!!」」

 

「なんだ、この力は...!?」

 

二人に、軍配が上がった。

キングバーンを打ち消し、ゴールネットへシュートが突き刺さる。

 

『ゴーーールッッ!!雷門、試合時間も僅かというところで、一点差に詰め寄ったァ!決めたのは、新キャプテン松風とエースストライカー剣城の必殺技、ファイアトルネードDD!炎のストライカー、豪炎寺修也が日本代表の際、一度しか見せたことのない伝説のシュートだァ!!』

 

4-5

 

落ち度はあった。

化身に化身で迎え撃つという天馬の策が悪手となり、チームは疲労困憊。

千宮路の化身シュートで再び点差をつけられ、絶望に一時は打ちひしがれた。

しかし、そこへ病院から拓人が駆けつけ、天馬へ激励を飛ばす。

円堂監督の問いかけも重なり、やるべき事、掲げるものを再認識した天馬と私たちは、ドラゴンリンクと再び対峙。

士気は高まり、練習していた二人の必殺技が決まり、今に至る。

 

「剣城!」

 

「───ああ、天馬」

 

入学式の事件からは考えられない、二人の意気のあったコンビプレイ、そしてハイタッチ。

後半も残り僅かだが、今の勢いで行けば...勝てる。

 

(それには、もう一押しだな)

 

観客席、私を応援しにきてくれたお日様園の関係者。園長やヒロト兄、リュウジ兄、オサーム兄と正規の聖堂山の面々、その側に座る...青い髪の女性、玲名姉と目が合った。

こちらの視線に気づいて、玲名姉は優しく微笑んでから頷き、私もそれに頷いて応えた。

今なら、あれができそうだ。

 

「龍馬、輝、耳を貸せ」

 

「なんじゃ?」

 

「愛星さん、何か考えが?」

 

「ああ」

 

今の私は、きっと悪い顔をしているのだろう。何かを企んだ表情を、輝は読み取ったのだ。

 

「二人とも、皇帝ペンギン2号...できるな?」

 

 

 

試合再開。

 

「おおおおッ!!」

 

これ以上の抵抗は認めない。

そんな気迫を感じ取れる突進で、精鋭兵ポーンの一団が雷門ゴールへと迫る。

その行手を遮るのは、マサキ。

 

「ハンターズネット!!」

 

敷かれた網はポーンの進行を受け止め、

 

「V2!!」

 

「なに!?」

 

進化した弾力で、弾いてみせた。

湧き上がる雷門イレブンの高揚が、マサキの必殺技を進化へ導いたのだろう。

 

「天馬くん!」

 

「よしっ!」

 

奪ったボールを、マサキは天馬へ。

 

「行かせるか!!」

 

「そよかぜステップ、V3!!」

 

吹き荒れる、そよ風。

化身のブロックなどものともせず、天馬は更に磨きをかけたドリブルで相手のディフェンスを突破する。

 

「白竜!」

 

「スプリントワープ!!」

 

神速と呼ぶべき速さで、相手を翻弄する白竜。

ゴッドエデンで見せたあの頃よりも、技のキレと速度も上がっている。

彼奴もまた、天馬に感化された一人。

差し詰め、スプリントワープG2といったところか。

 

「奴らの必殺技が、俺たちの化身に打ち勝っている!?ふざけるなァ!!」

 

「愛花!」

 

「龍馬、輝、いくぞ!!」

 

「おう!」「はい!」

 

ゴール前、パスを受け取った私は龍馬と輝の三人で構えを取った。

二人が跳躍、その間に私は両脚に力を込め、地面より彼らを顕現させた。

現れたのは、宇宙服を身に纏った五羽の皇帝ペンギン。

 

「受けてみろ、これがお日様園の最強シュート!!」

 

紫のオーラに包まれたボールを、ペンギン達と共に天へと打ち出す。

そこには、ツインシュートの体勢で待っていた龍馬と輝がいる。

 

「「「スペースペンギン!!!」」」

 

間に合わせ、ぶっつけ本番の連携技。

しかし、そう思わせない威力と速度を持って、スペースペンギンはゴールへと突き進む。

対する千宮路も、化身を出現させた。

 

「キング...ファイアアアッッ!!!」

 

衝突する業火と───4羽のペンギン。

 

「な!?もう1羽は...!」

 

「時間差だ!!」

 

意図的に遅らせた最後の1羽はキングバーンの顔面を直撃。

 

「ぐはぁ!?」

 

体勢を崩され、炎の噴出が満足に出来なくなった千宮路はそのまま倒れ、ボールはゴールへと吸い込まれる。

 

『ゴーーールッ!!雷門、ついに!ついに同点に追いついたあああッッ!!!決めて見せたのは愛星、錦、影山の3人によるとてつもない威力のシュート!!最後はテクニックも光りましたァ!!』

 

「よォし!!」

 

「やったぜよ愛花!!」

 

「すごいです愛星さん!こんなシュート、僕にも打てるなんて!」

 

私としては柄にもないガッツポーズをして、二人と喜びを分かち合う。

見ていたか玲名姉、決めてやったぞこの大舞台で!

 

「これで、同点...!」

 

ロスタイムに突入、流れは完全に雷門にある。

しかし、延長に突入すれば基礎能力の高いドラゴンリンクに押し負けるだろう。

決めるならば、この数分。

 

「みんな、もう一息だ!最後の力を振り絞れ!!」

 

『おう!!』

 

「俺のキングバーンが3度も...ありえない!!」

 

これがおそらく、最後のワンプレーとなる。

 

ホイッスルが鳴り、聖堂山のボールで試合再開。

 

「こんな奴らに、負けてたまるかァ!」

 

「まだ慢心が透けて見えるぞ」

 

「なに!?」

 

「真、七ツ星」

 

飛来する、極光を伴った七つの流星群。

相手に化身を出させることもさせず、着弾の衝撃波で私はボールの奪取に成功した。

 

「白竜!」

 

「剣城!」

 

「愛星!」

 

トライアングルを形成。

適度な距離を保ちつつ、相手を上手く躱すパス回しをし、私たちはぐんぐんと上がっていく。

ゴールは、目前だ。

 

「親父の理想のサッカー、止めさせるものか!!」

 

ここを止めて延長へ。自身の敬愛する父親のためにも負けられない。

千宮路なりの信念、魂の躍動に、化身も応えた。

 

「賢王キングバーン...零式!!!」

 

かつてない覇気を放つ、彼奴の化身。

終盤も終盤だというのにこの威圧感、これもフィフスセクター最強チームの矜持が成せるものか。

 

「天馬、もう一度やるぞ!」

 

「わかった!」

 

もう一度、とは再びアレを、ファイアトルネードDDを叩き込むつもりだ。

しかし、それだけで千宮路を打倒できるか...、

 

「白竜、おまえのシュートに俺達が合わせる!シュートチェインだ!」

 

「わかった、任せろ!」

 

「それと...」

 

振り向いた京介と、目が合った。

 

「───愛花(・・)!」

 

名前を、呼ばれた。

 

「おまえも来い!」

 

初めてだ。

初めて、私は...京介に、求められた。

名前を、呼んでくれた。

 

「───ああ!!」

 

いつになく腹に力を込め、叫ぶように了承。

 

「頼むぞ、白竜!」

 

京介の白竜へのパス。

動きを止めた彼を追い抜いて、京介、私、天馬の三人が並んでゴールへ走る。

 

「おおおおおおっっ!!」

 

白竜の右手が振るわれる。

あれは合図であり、号令だ。皮切りに白く輝く竜巻が巻き起こり、アマノミカドスタジアムの上空をテンペストが覆う。

 

「ホワイト...ハリケーンッッ!!!」

 

元シード、その最強の一撃。

黄金の巨大な質量を持った竜巻が、龍が宙を舞うが如く放たれた。

 

「いけ剣城、天馬、愛花!!」

 

「「おう!」」

 

「わかった!」

 

それに合わせて、剣城と天馬は対称となる炎の螺旋を描いて、私も紅蓮を纏い、回転しながら空へと飛ぶ。

これまたぶっつけ本番、繊細で緻密な技に私がしゃしゃり出るという暴挙の上で成り立つ、新必殺技。

DDの二撃に、私の一撃が、合わさる。

 

「「「ファイアトルネード...TC(トリプルクラッシャー)!!!」」」

 

金色の輝きに太陽もかくやという炎が叩き込まれ、今大会最高のシュートが放たれた。

 

「これが俺たちの!!」

 

「本当の!!」

 

「サッカーだああああッッ!!!」

 

革命の風、これまでの全てを詰め込んだ、魂の一撃。

 

「キングファイアアアアアッッ!!!」

 

対するは、管理サッカーの極致。皮肉にも想いの力が進化の一助となった化身による必殺技。

二つの焔が激突、拮抗したかに見えたが───、

 

「なぜ、だ...!?」

 

キングバーンの炎は押し切られ、最後の砦となる四つ腕がファイアトルネードTCを受け止める。

 

「なぜ化身使いの俺たちが...!フィフスセクター最高傑作の俺たちが、こんな奴らに...がはぁ!!??」

 

ドラゴンリンクの守護神が、沈む。

一方は歓喜し、一方は無情にも思える、その結末。

長きにわたる戦いに終止符を討つ炎の螺旋はネットに突き刺さり、ゴールと同時に試合の終わりを告げるホイッスルが鳴り響いた。

 

『ゴーーールッッ!!!逆転、逆転!そして試合終了の長いホイッスル!ホーリーロード全国大会、優勝は...雷門中だあああッッ!!』

 

このスタジアムにいる、サッカーを愛する全ての者達による拍手、大歓声。

皆が私達を、雷門を祝福する。

 

「勝った...勝ったんだあああ!!!」

 

緊張から解放され、喜びに打ち震えるキャプテンの天馬を中心に輪が出来上がり、そのまま胴上げへ。

 

「よーっし、おまえらいくぞ!」

 

太一を筆頭に、掛け声を合わせ、天馬を天へと打ち上げた。

 

「わーっしょい!わーっしょい!」

 

「あっはは!すごい、みんなでやり遂げたんだ!そしてどさくさに紛れて尻を揉まないでね愛花!?」

 

「バレたか」

 

「バレるよ!?」

 

その後はトロフィー授与、新しい聖帝として響木氏の演説、フィフスセクターの解散宣言、サッカーの自由化など、様々なことが執り行われた。

 

「愛花ちゃん、優勝おめでとう!一言いいかな?」

 

やはりと言うべきか、私達はカメラやインタビュアーに取り囲まれ、それぞれ取材を受けることに。

 

「うむ、私でいいなら」

 

「そんな謙遜しないで!女の子でここまでの活躍、全国の女子サッカー選手達を勇気付けることになったと私は思ってる!本当に凄いプレイの連続だったよ!」

 

目をキラキラさせて語るこの人、見覚えがある。誰だったか...あ、そうだ。マサキがファンの富永じゅんだ。

離れたところで羨ましそうに、妬ましそうに私を睨みつけてるのがその証拠だろう。

 

「今度、落ち着いた場所で改めて話を聞かせて欲しいな!だから今日は一言だけ、愛花ちゃんにとって、雷門イレブンとは!?」

 

マイクを突き出された私は、一考。

脳内でまとまるとニヤリと笑い、

 

「え、愛花?」

 

「どうした」

 

「なんだ急に」

 

天馬、京介、白竜を抱き寄せ、宣言する。

 

「私の、自慢の、婿達だ!」

 

 

 

 

ホーリーロード編、完。





愛星 愛花 (あいせ まなか)

雷門中一年生
ポジション:FW、MF、DF、GK
属性:火
背番号:88

薄く紫がかった黒髪に、宇宙の紫雲を思わせる瞳。
体格は幼少期の病気が原因で小柄、どことは言わないがA。


【挿絵表示】


《必殺技》
・ブレイキング・コメット 火属性 シュート技
流星ブレードを愛星なりに改造した技。
ボールを天高く打ち上げ、流星の如く落下してきたボールに空中で強烈な蹴りを叩き込む。

・七ツ星 火属性 ディフェンス技
北斗七星を描く流星を降らせ、相手を吹き飛ばす。または光を辿るようにボールをカットする。

・プリマドンナ 山属性 オフェンス技
バレエのような動きで相手を翻弄し、踊りを誘う技...なのだが、愛星の並々ならぬ圧が相手を気圧させ、踊りにまで持っていけない。

・ユニバースブラスト 林属性 シュート技
狩屋との必殺技。
蹴り上げたボールの周囲に宇宙を発生させ、そこへ二人同時の両足で蹴りを入れるシュート。
一人でも打てるが、その際は威力が減る。

・ワームホール 林属性 キーパー技
オサーム兄直伝第一の技。
あまりにも愛花の物覚えが良すぎるため教えたらできてしまった。

・ドリルスマッシャー 火属性 キーパー技
オサーム兄直伝第二の技。
調子に乗って教えたら覚えてしまった。

・グングニル 風属性 シュート技
オサーム兄直伝第三の技。
自身のエイリア時代の技を完全に継承させた。私の作った最強の妹。

・スーパーノヴァ 火属性 シュート技
白竜、シュウとの三人技。
ゴッドエデンでの試合中、楽しくなってしまいやればできそうだと思ったら、できた。

・スペースペンギン 風属性 シュート技
錦、輝との三人技。
ヒロトの義妹、皇帝ペンギン2号関係者の弟子、血縁という人選。鬼道の教育も効いているかもしれない。

・ファイアトルネードTC 火属性 シュート技
剣城、天馬との三人技。
ファイアトルネードDDに変な女がしゃしゃり出た技。
「京介ェ!ようやく私を求めたなァ!」
「ちね」

《化身》
乙女座のヴァルゴ 火属性 化身
大剣を携えた、天使のような大翼を持つ甲冑を纏う女性型化身。

大銀河ブレード 火属性 シュート技
流星ブレードのモーションで炸裂させる化身シュート技。相手は死ぬ。


愛花:インタビューが生放送だったそうで、発言が物議を醸した。攻撃力が高く、防御力が低いのが食堂でのやりとり、火傷の処置の際に露呈。これを機に剣城に対して今までにないトキメキを感じている。
剣城:上の女への苦手意識は無くなった、女子の左手薬指をイジイジした男。高校は進学か、留学するかも。
天馬:突然のキャプテン抜擢を全うした。暫くして沖縄に渡り、帰ったらサッカー部は無くなるしみんな自分を知らないしと可哀想が過ぎる。
白竜:雷門にはこのまま在籍するらしい。アカン来年のホーリーロードがヌルゲーになって他校が死ぬぅ。
狩屋:なんとハンターズネットをこの段階でV2に進化させた。じゅんじゅんと話してる愛花にご立腹だったが、サインを貰ってきたので許した。


本作品は、数年前に上げていたイナイレ無印女主人公のリベンジでもありました。その際は帝国戦でモチベが無くなり泣く泣く削除という結末になりましたが、今回、ホーリーロードまでとはいえ完走できてよかったと思います。
とてつもなくぶっ飛んだキャラに仕上がりましたが、気に入って貰えていたら幸いです。
クロノストーン編、構想はありますが書くとはまだ決まっていません。あまり期待なさらぬよう、お願いします。

最後に、本作品を最後まで見て下された皆様、お気に入り、評価、感想、誤字報告、ここすきを下さった皆様、私のモチベーションの励みでした。
ありがとうございました!!
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