遠き星エイリア、もといお日様園では一妻多夫が認められている(詭弁) 作:\コメット/
タイトルはキャプテン今日の格言的なアレです。
ホーリーロード。
数年前まではフットボールフロンティアと呼ばれていた、中学サッカーの頂点を決める大会。
一回戦は覚悟を決めた拓人の指揮、太一のビッグセービングもあり、危なげなく勝利した。
私?私はベンチだった。円堂監督曰く、温存ということらしい。
密かに大会得点王を狙っていた私としては不服だが、私がいては楽勝過ぎて、拓人の奏者マエストロは完全顕現しなかったかもだし、太一の心変わりも起こらなかったかもしれない。
必要な控え期間だったと、納得しておこう。
「愛星、今日はスタメンだ!どんどん点とってこい!」
「ふっ、了解」
今日行われる二回戦、万能坂戦では京介とのツートップをご所望された。
私の公式戦初お披露目が婿との初めての共同作業となる。監督は演出と粋を心得ているらしい。
「京介、いくら自分に黄色のユニフォームが似合わないからといって、個性を出すために襟を立てる必要は無いんだぞ」
「おまえは少し黙ってろ」
なんだか妙にイラついている。
どうやら私と上手く連携できるか緊張と不安でいっぱいのようだ。仕方ない、ここは頼れる嫁として献身的にサポートしてやろうではないか。
「愛花、公式戦スタメンおめでとう!」
と、もう一人の婿候補からの賛辞だ。
「うむ、ありがとう天馬。その様子だと、悩みは晴れたようだな」
試合前日、典人...倉間からサッカーを奪っているのはおまえだと罵られていた天馬。
そのことについて考え、ひどく落ち込んでいたのだが、今日はなんだか清々しい。吹っ切れたみたいで何よりだ。
「うん。俺、やっぱり本当のサッカーをしたい。でも、それには俺だけじゃなくて、全員の力が必要なんだ。全員で、サッカーをやりたい...だからフィフスセクターと戦うよ」
「その心意気や良し。流石私の婿になる男だ。褒美に撫でてやろう」
「うう、尻じゃなかったらまだ許容できるんだけど...」
よしよし。筋肉の張りは好調を指し示しているな。
天馬のドリブルは、既に経験者の中でも上澄の位置にある。ここにもっと熟練度と他の基礎的なステータスが加われば、更に化ける筈だ。
「盛り上がってるところ悪いが、先に忠告しておく。おまえらが勝とうとしたら俺が止める。俺は、俺のサッカーを守る」
スキンシップに興じていた私と天馬だったが、ここで典人が割って入ってくる。
「倉間先輩...」
「好きにするといい。今の典人に、私を止められるとは思えんがな」
「なんだと...?」
「典人や、私たちに賛同しない者達も聞け。おまえ達の言うサッカーとは、ただフィフスセクターに管理されるためのものだ。そのためだけの練習をしているおまえ達に、私たちが劣る道理はない」
「テメェ...!」
「私から言わせれば、毎日身にならない鍛錬ご苦労、と言ったところだ。やる気がないなら、隅で指を咥えて見ているといい」
「...言われなくても、そのつもりだ!」
舌打ちを残して、典人は自身のポジションへ。
他の部員達も、足取り重くそれに続く。
「惜しいな、典人...彼奴も私の婿になり得る素質を持っているというのに...先日去った篤志も惜しかった...」
「まだ婿候補増やすんだ...」
「お、天馬は増やして欲しくないのか?まさか嫉妬か?愛い奴め」
この雷門サッカー部は、その宝庫だったりする。
天馬は愛嬌と成長速度、京介は技術とクールさ、拓人は指揮者を思わせる戦術勘と華麗なルックス、蘭丸のディフェンス力は並外れているし、太一はキーパーとしてのセーブやコーチング、あと何より作るご飯が美味しく、信助はジャンプ力が高い。
「愛星、天馬。他のみんなの助けが期待できない以上、ボールは攻撃時はおまえ達二人に回す。必ず点に結びつけろ、いいな?」
「はい、キャプテン!」
「了解だ、拓人」
「信助、霧野、ゴール前はおまえ達に任せる」
「はい!」
「ああ。三国さん、いざという時は頼みます」
「任せておけ!」
期待できる戦力は、私を含め六人...ということらしいが、私は期待しているぞ、京介。おまえが前線で活躍する様を。
私の婿候補に恥じない、FWとしての役目を果たしてくれることを。
『ご、ゴーーールッッ!!なんと先取点は、剣城のオウンゴール!?雷門、まさかのミスで失点してしまったー!』
「なん...だと...?」
ついに始まった二回戦。開始早々、万能坂からボールを奪った京介。
だが、ハーフライン近くから放たれた強烈なシュートは、まさかの自陣のゴールネットを揺らす。
「...っ!」
キッと、京介は私や天馬、拓人達を睨みつける。
「邪魔はしてくると思ってたけど、まさかここまで...」
「あいつはやはり敵だ。練習に参加してたのも奇跡みたいなもので、本質は間違いなく、シードなんだ」
波乱の幕開け、思いもよらぬ失点は焦りを伝播させる。
「京介...」
私を除いて。
「おまえ...」
ゆらりと、私は彼に近づく。
いつもより声音が低い私を妙に思ったのか、京介はなぜかニヤリと笑って相対する。
なんてことだ。
なぜ気づいてやれなかった。私はあいつの嫁だろうに。いや、気づいていたのに放置したというのが正しいか。
普段の京介と雰囲気が違うのは察知していたにも関わらず、私はそれを些事だと断じ、結果悲劇は起こった。
間違いない、京介は───、
「さては...滅茶苦茶緊張しているな!!??」
「...は?」
素っ頓狂な声を上げ、間抜けな表情を晒す京介。
「すまない。私という嫁がいながら、気づけなかった。おまえは不器用なりに異常を発していたというのに...クッ、なんという失態だ!これでは嫁失格だ!」
「何を、言ってるんだ?おまえ...」
「先程の笑みも、今知らないふりをするのも、私を安心させるためのものだろう?京介、おまえは相手のゴールを間違えるほど極度の緊張、悪寒や吐き気、腹痛に眩暈を訴えていた。それらを押し殺して、ピッチに立っていた。そうなんだろう?いや、きっとそうだ」
「...」
絶句。
ふっ、言い当てられて言葉も出ないか。無理もない。
私の観察力や推理力は幼少期から兄や姉に褒められてきたからな。
密かに『起きてる時の毛◯小五郎』と讃えられていたほどだ。名探偵コナ◯は履修していないが、寝ている時に推理力が跳ね上がるなんてそんな馬鹿なことあるわけないだろう。
「安心しろ、京介。婿候補の失敗は私の失敗でもある。そして、それを挽回し夫を持ち上げるのは嫁の仕事だ」
私は審判からボールを受け取り、キックオフ位置に置く。
「天馬、京介の代わりに私へ蹴ってくれ」
「う、うん」
ホイッスルが鳴る。
こちらの失態により生じた1点に浮き足立ってか、万能坂イレブンは気が抜けている様子。
ならば、それを利用しない手はない。
「はい、愛花」
「うむ」
狙うはゴール、穿つは相手の慢心、油断。
想像するは星の一撃、あの日テレビの前で見ていた流星の輝き。
「さぁ、食らうといい」
天高く、私の蹴りによりボールが打ち上げられた。
『流星ブレード』という技がある。
かつて私が憧れ、私が欲した必殺技だ。
これから放つのは、その改悪版。
モーションは大きく、ボールの落下に合わせて蹴りを入れなければ従来の威力が出せない、オリジナルと比べればお粗末なクオリティ。
(将来的には、過程を省いた本物を打ちたいところだが....生憎と私にはヒロト兄のようなキックの威力全てをボールに注ぎ込む技術は持ち合わせていない)
こればかりは、練習でどうにかなるものではなく、天性や才能の話になってくる。
「え?」
「なに...?」
天馬が、京介が、敵を含め、フィールドにいる全てのプレイヤーが呆気に取られ空を見る。
そこには、宇宙があった。
青空を斬り裂くかのような星々が、グラウンド上空を覆っていた。
やがて、ボールが一筋の巨大な流星となって私の元へと返る。
「はっ!」
跳躍。
本来の威力が出せない、故に飛んだ最中に回転を挟み、遠心力による威力UP、更にはボールの落下加速に渾身の右足を合わせる。
極光を伴い放たれた私の必殺技。
その名も、
「ブレイキング・コメット!!」
神速と光速、破壊と災厄の一撃。
ハーフラインからの超ロングシュート、普通であればシュートの威力は減衰するだろうが、速さとは強さ。スピードが落ちなければ威力が落ちることもない。
私が試行錯誤の末に編み出した工程と蹴りにかかれば、その距離は有って無いようなもの。
巨大な質量を持って飛来する流星に相手ゴールキーパーは反応できず、ゴールを数センチ動かすほどの衝撃を持って、雷門の一点となった。
『ご、ゴーーールッッ!!キックオフから正に一瞬、一瞬の出来事でした!なんと一年の愛星愛花、天と地を揺るがす程の必殺シュートで、剣城のミスを帳消しにする同点ゴールを決めましたァ!』
実況の声で我に返ったのか、観客からは今までに無い程の大歓声が鳴り響く。
反対に、フィールドに立つ選手達は私を除いて唖然としている様子。
「婿の失敗は1秒で取り返す、それが私のモットーだ」
得意気に胸を張る私を、京介が見ている。
(随分前から思っていたことだが...間違いない)
さぞかし良妻賢母さに惚れ惚れし、今日の夜あたり布団の中で私の勇姿を思い出して枕を濡らすことだろう。
(こいつは、馬鹿なんだ)
ことだろう!
********************
あの馬鹿───愛星が得点し、同点に。
流れは雷門へ移るかと思われたが、そう上手くはいかなかった。
勝敗指示を破ったことへの報復、万能坂の元々のプレイの荒さもあって、反乱分子たちは徐々に消耗していく。
(当然だ...向こうが万全に動ける十一人に対して、雷門はその半分。おまけに霧野の負傷退場。引き分けなのが奇跡だ)
いつまで無駄な足掻きを続けるのかと、剣城は呆れた様子でボロボロにされていく雷門イレブンを見つめる。
だが、引き分けなのは単に痛め付けることを優先している訳ではない。
未だに士気を下げず、ボールを蹴るのを止めない者たちがいるからだ。
「テメェ...さっきからしつこいんだよ!」
「磯崎と言ったか?私好みではあるがいかんせん膿が溜まり過ぎているようだ。どうだ、私がセラピーフレンド、略してセフレにでもなってやろうか」
「その略し方絶対合ってねえからな!?」
起点は愛星愛花。
ふざけたことを吐かしながらも、その足捌きは万能坂を手玉に取るほどに冴え渡っている。
彼女が今相対している磯崎という選手は、シード。
その彼でも手を焼くのだから、やはりあれのサッカーセンスは凄まじいのだろうと剣城は再認識。
「天馬、上がれ」
「わかった!」
そして、松風天馬。
動きの拙さを運動量でカバーし、得意のドリブルで相手を翻弄、愛星とワンツーを挟むことで相手陣内へ駆け上がる。
(...こいつらだ)
この二人が、剣城は邪魔で仕方がなかった。
前者はご都合主義の化け物、後者はサッカー馬鹿。声を聞くだけでも億劫になるのに、ボールを蹴っている姿まで見ようものなら沸々と奥底から苛立ちが沸いてくる。
「くらえ!」
「...っ!」
「愛花!?」
厳しいタックルが天馬に迫るも、それを愛星が間に入って庇う。
「なんだおまえ、そんな熱烈にアプローチしてきて。さては私のことが好きだな?」
「ど、どうしてそうなるんだ!?」
「好意を向けてくれたところ悪いが、私の好みとは少し違う...ふん!」
「なにィ!?」
一瞬表情が苦悶に歪むも、即座に痛みを振り払い───ついでに見当違いな憶測を語りながら───体格に似合わないパワーで相手を押し返した。
「...緩いんだよ、やり方が」
先ほどからボールをぶつける、審判の目を盗んで肘を打ち込む、スライディングでカットついでに足を削るなどの行為に及ぶ万能坂イレブンだが、この二人に対してはまるで効果がない。
いや、確実にダメージは蓄積されているのだろうが、それも微々たるものだ。
めげず、萎れず、倒れず、尚も彼らは攻撃を止めない。
(だが、それも時間の問題だ)
天馬以上に、愛星は動き続けている。
それは今し方天馬を庇う動きを見せたように、彼のミスをカバー、空いているポジションを見つけては縦横無尽に走り回り、天馬がノビノビとプレイできるように、過度な接触をさせないためだ。
均衡の崩壊という、最悪なケースまでの時間を犠牲にして。
(神童と西園はまだ立てそうにない。辛うじて三国はまだ仕事ができそうだが、このままいけば勝ち越されるのは目に見えている)
ハナから無理な話だったのだ。
部員全員の意思が一致しないまま、しかも自分というシード、邪魔者を抱えて試合に臨むなど。
「いい加減、他の奴らみたいに寝てろよ!鬱陶しい、目障りだ!」
「嫌だ!ここで俺が止まったら、サッカーを裏切ることになる!それだけは絶対に嫌だ!」
「この、ガキがァ!」
「天馬、こっちだ」
「ああ!」
パスを受け取る愛星。
そして、
「京介!」
「...っ!?」
ボールは、剣城へ。
「直ぐ!」
「な...っ」
身体が勝手に反応していた。
愛星の声に従うより先に、ダイレクトで決まるワンツー。
「いいパスだ、京介」
「テメェ剣城、何やってやがる!?」
「...チッ、クソが...!」
悪態を吐きながら、剣城は愛星を追いかけた。
そして、タックル。
同じユニフォーム同士の選手がぶつかり合うという、珍事が発生した。
「なんなんだ、おまえは...!」
「私とおまえの仲だ、その質問は不要だろう。だが特別に答えてやる。愛星愛花、この世で最も愛されるべき人間だ。これはその兆候か?こんなに密着して、ようやく素直になってきたということか、京介」
「コケにするのも大概にしろ!なぜそうまでして続ける!?おまえも!あいつも!何がおまえ達をそうさせる!」
「それは私でなく、天馬に聞くといい。天馬!」
「よっと...!...剣城、俺は諦めない。だって俺、サッカー好きだから!!」
「...っ!」
「だ、そうだ。そのまま持ちこめ、天馬!」
「うおおおおっ!!」
加速。
パスを受け、相手陣内へ切り込んでいく。
「行かせるか!」
「そよかぜステップ!」
風が吹いた。
相手を翻弄する見事なターン、突進をいなし、後ろへ逸らして突破する、天馬にしかできないドリブル技。
「調子に、乗るなよ!」
「ぐあっ!?」
と、もうすぐゴール前というところで、相手のスライディングが彼を襲った。
ボールが溢れる形になり、食らった天馬は地面に倒れる。
「う、うぅ...」
「天馬!」
「あいつら、まさか」
ボールをではない、明らかに天馬の右足を狙ったプレイだ。
「お、俺は大丈夫!愛花、ボールを...!」
「わかった!」
このままラインを割り、攻めの空気を崩すわけには行かない。
剣城のマークから脱出した愛星は、こぼれ球を確保しようと走る。
「(今だ...!)食らえ、馬鹿が!」
愛星がボールを取った直後、磯崎のスライディングが彼女の右足を捉えた。
「うあ...っ」
先ほどのタックル以上に表情が曇り、天馬と同様に倒れるもホイッスルは鳴らない。
主審の目を他の選手が隠していたためだ。
(間違いない...へし折る気だ)
「随分と手を煩わせてくれたが、これで終わりだ!」
ダメ押しとばかりに、磯崎のシュートが愛星の顔面に向けて放たれる。
あまりにも惨い所業に、観客やマネージャー陣が目を背けた。
だが、一向に彼女に当たったような音は鳴らない。
「テメェ...」
磯崎の怒りに震えた声と剣城がシュートを封殺した音だけが、そこにはあった。
両チームが、何が起こったのかわからないというふうに両者のやり取りを見つめる。
「さっきといい今といい、何のつもりだ!」
「これがおまえ達の潰し方か...やり過ぎじゃないのか?」
「...さぁ、なんのことか」
「わかっているはずだ...!おまえたちのスライディングが完璧に決まっていれば、こいつや松風の足は潰れていた!」
「ハッ、だったらどうした?こんなやつら、一生サッカーが出来ない体になればいいんだよ!」
「...あ?」
それは、剣城京介の地雷を踏み抜く言葉だった。
思い出される過去。
幼い頃、木の上に挟まったボールを取るべく無茶をした自分を庇い、兄の足は不自由になってしまった。
患者服を纏い、汗を滲ませながら毎日リハビリに臨む、外へ行く時は必ず車椅子の兄の姿が、脳裏を過ぎる。
「貴様...本気で言ってるのか」
瞬間、剣城の中で何かがキレた。
視線と足先は相手のゴールへ、構えは必殺のソレへ。
「デスソード...ッ」
一撃の後に禍々しいオーラがボールに収束し、
「であァッ!!」
号令となる右腕の振り下ろしと共に、彼のシュートは放たれた。
・ブレイキングコメット 火属性 シュート技
流星ブレードを愛花なりに改造した技。
ボールを天高く打ち上げ、流星の如く落下してきたボールに空中で強烈な蹴りを叩き込む。
・プリマドンナ 山属性 オフェンス技
バレエのような動きで相手を翻弄し、踊りを誘う技...なのだが、愛花の並々ならぬ圧が相手を気圧させ、踊りにまで持っていけない。
愛花:三国先輩のご飯の虜になったヒロト兄大好き女。美味い、ほんまに美味い。ついでになぜか食べるようになったチョココロネも美味い。これに比べたら山岡はんの鮎はカスや。
剣城:練習で愛花に負けたのが余程悔しかったらしく、一人でコソ練している。ゴッドエデンでの感覚が戻ってきた様子。
天馬:木枯らし荘に愛花を招いた結果、木野に愛花を気に入られてしまい外張りがを埋められた。着実に逃げ道を塞がれている可哀想な男。
神童:家まで説得にきた天馬と愛花を家にあげてピアノを弾いた際、持参したバイオリンで愛花が演奏に乱入する事態が発生。変な奴だとは思っているが、天馬同様本当のサッカーを取り戻すためのキッカケをくれたので意外と好感度は高い。
霧野:ロッカーにブルマを入れられていた。即しばきに行った。
三国:練習中やけにアドバイスを愛花から受ける。実際に試したら上達を実感できているのでマジでなんだこいつに拍車がかかる。
評価、お気に入り、感謝です!
こんな感じで書きたいシーンを抜粋してのストーリー展開になります。次回をお楽しみに!