遠き星エイリア、もといお日様園では一妻多夫が認められている(詭弁) 作:\コメット/
評価お気に入りありがてぇ...ありがてぇ...。
やあ、私だ。愛星愛花だ。
早速だが皆に聞きたい。
ズバリ、暇潰しですることといえば?
今時でいえばスマホだろうが、そこはやはり人それぞれだろう。オーソドックスなものだと読書、時短で出来るお菓子作り、ヨガやカラオケ、昼寝なんてのもいい。
私はこれでもサッカー好きなので、暇さえあれば天馬や信助、葵、京介を誘ってグラウンドでボールを蹴り合っているぞ。
京介が来た試しは無かったが、最近は若干角が取れたというか、こちらに付き合う気概も見せ始めている。これも私の愛ゆえだろう。
ん?とてもそんな風には見えないって?試合中に妨害されてただろうって?
実は万能坂の試合から結構時間が経っているのだ。
「いくぞ、剣城!」
「こい!」
私の視線の先で、程々に打ち解けた天馬と京介が必殺技の特訓に勤しんでいる。
ディフェンス技の開発、加えて京介が天馬の中に眠る潜在能力を引き出してやりたいと円堂監督に直談判。
そうして、今の特訓風景は実現しているのだ。
「入学初日のことを思うと、考えられないよね」
私の隣で、葵がスポドリを準備しながら笑う。
「そうだな。だが、こうなることは必然だった。なにせ私の婿候補の二人だ。私を奪い合う中で友情が芽生えるのは当然だろう」
「あはは...まぁ1割は関係してなくもないかな」
「私も早く混ざりたいところだが」
「その前に、ちゃんと脚を治さないとね」
包帯の巻かれた私の右足を見て、葵は安静を促してくる。
万能坂との試合で磯崎に熱烈なアプローチを食らった私。吹っ切れた京介のシュートで勝ち越したものの、戦力的に劣勢なのは変わらないのでプレイを続行。
相手の化身シュートやその後も後を絶たない反則スレスレのプレイには肝を冷やしつつ、太一のビッグセーブや私と京介による化身シュートに対してのツインブロック、天馬と信助、拓人のフォロー、そして何より覚悟を決めた他雷門メンバーの奮起により、試合は4-2で雷門が勝利。見事二回戦突破となった。
因みに、得点は私、京介、京介の化身ランスロット、拓人の必殺技フォルテシモによるものである。
地区大会準決勝の相手は帝国学園。
鉄壁の守備が売りの軍隊的サッカーを崩すべく、雷門はアルティメットサンダーという必殺タクティクス───自陣へボールを連続で蹴って威力を高め、最後に強烈なシュートを打ち出し相手陣地へ着弾、守備を吹き飛ばすというもの───を敢行。
キッカーは京介...といきたいところだったが、試合会場に現れず、婿のケツは嫁である私が拭こうと役目を買って出た。
試合が始まり、チャンスが訪れたところで拓人が指揮を振い、実行。
結果は成功。天馬の新技であるマッハウィンドも飛び出し、先制ゴールが生まれたのだが、
『よし!この調子でもう一点...』
『すまない、今ので足やった』
『え』
というわけである。
怪我を自分での処置に留めたまま練習を重ね、本番でのアルティメットサンダーがトドメの一撃だったらしい。
私を欠いたことで攻め手を無くした雷門は同点に追いつかれ、勝ち越しもされて前半を終え、士気は低下の一方と満身創痍。
そこへ、京介が自分を出せと現れた。
婿の失敗を取り返すのが嫁の役目ならば、その逆もまた然り...というわけか。
後半、京介による怒涛のアルティメットサンダー二連発。
信助の必殺技ぶっとびジャンプ、京介のデスドロップも炸裂し、試合は3-2で雷門の勝利に終わった。
試合後、円堂監督から怪我に気がつけなくてすまないと謝られたが、非は確実に黙っていた私にあるのでこちらも頭を下げた。
そして相手監督である鬼道さんがフィフスセクターに対するレジスタンスとして、響木正剛氏を筆頭に動いていると告白。道也さんとの再会、革命の風になってくれという彼らの願いを受け、現在私達は地区大会決勝となる海王学園戦に向け、練習に励んでいる。
「...暇だ」
ベンチから少し離れた場所に椅子を設け、見学。
冒頭の暇つぶしの話題とは、つまり、動けない今何をすればいいのか、ということだ。
空いた左手は葵の裾を掴んで離さない。因みに足を触ろうとしたらちょっと恥じらっていたのがGOODキタ。尻を触ったらチョップをくらった。これには勝って泣いた気がした。
「握力でも鍛えるー?」
カメラを常に持ち歩いている、マネージャー兼神童拓人大ファンである山菜茜先輩が筋トレ器具を差し出してきた。
断るのもあれなので、にぎにぎしておく。
「握力ってあまりサッカーに関係ないんじゃ...」
「ゴールキーパーは結構重要みたい」
「けど愛花はFW...」
「まぁ、鍛えておいて損はない。万が一、太一が負傷したら替えのGKがいないわけだからな」
「そんなことあるかなぁ」
何が起こるのか分からないのが、サッカーだ。
相手選手が薬物を使用していたり、突然宇宙人が襲来したり、戦争をおっ始めようと画策する輩が今後出てきて、怪我などをさせる妨害工作、具体的には鉄骨を落とす、乗り込んだバスを事故らせる、黒いサッカーボールで破壊を仕掛けてくるやもしれないので、準備は念入りにしておこう。
宇宙人が身内だと判明することも想定しておかなければ。
「仕方ない。私の婿達の練習風景を、今はこの目に刻むことで我慢するとしよう。両手に花で観戦というのも乙なものだ」
「花って、なんだか照れるね」
「最も世界で愛される花は、私だがな」
「はいはい」
「よしよし〜」
「お、なんか面白いことやってんな。あたしも混ぜろ!」
わちゃわちゃ。
茜と水鳥も加わり、三人から頭を撫でられる。玩具扱いされてるようにも感じるが、これも悪くない。
人肌は良いものだ。
どさくさに紛れて尻を触ったらチョップされた。解せない。
「最有力婿候補三人(天馬、京介、久遠さん)有力者もちらほら、おまけに嫁候補もいるとは。やはり雷門に来たのは正解だったな」
「...ん?」
「なんだ、何かおかしいことを言ったか?」
「普段の言動からしてだいぶおかしいのはわかってるんだけど...その、嫁候補って?」
「ふっ、まさか自覚がなかったとは」
「もしかして、私たちのこと〜?」
「大いに正解だ、茜」
「おいおい、女同士だろ?」
「言っていなかったが、私は同世代女子も守備範囲だ。音無先生ぐらいの歳の差も全然ありだな。ゆくゆくは婿と嫁に囲まれた隠居生活というのが私の将来設計なのだが」
「壮大」
「日本じゃ無理だよそれ...」
「無理と諦めをつけていたらそれまでだ、やると言ったらやる。天馬も言ってただろう?やればなんとかなると。だから、先ずは始める努力さ」
「天馬の名言が俗っぽくなっちゃった...」
婿のポリシーに共感し、実行する。これもまた嫁の務め。
「よーし、一旦休憩!全員水分補給しておけよー!」
『はいっ!!』
ぞろぞろとイレブンがベンチに集まり、葵達が用意したボトルに手を伸ばす。
二人での練習に勤しんでいた天馬と京介は、ボトルを持ってこちらに近づいてきた。
「くあーっ、疲れた〜!」
「休憩終わったら、もう一度やるぞ」
「うん!愛花、そっちから見ててこうしたら良いってある?」
「手が寂しい...もう少し葵の足を触っておくべきだったか...」
「それは愛花の改善点かな...そして流れるように俺の尻を触るのもやめて欲しいな...」
「ふふっ、地球にはこんな言葉がある。嫌よ嫌よも好きのうちと」
「愛花が女の子じゃなかったら犯罪だよ...」
「訴えたら勝てるだろ」
「その時は、私の兄お抱えの顧問弁護士の出番だ」
「ダメだこいつ無敵すぎる...」
財閥の社長なだけあって、名うての面子を揃えているらしい。勝ったな。
「冗談はいいから、何かアドバイスない?」
「冗談を言った覚えはないが、ふむ...天馬が思い浮かべている技の完成系とはなんだ?」
「それは...うーんと、自分が竜巻になって、竜巻で飲み込んだ相手を吹き飛ばしてボールを奪う!みたいな感じかな」
「なら、動く竜巻の動画を見て、イメージの質を上げるというのはどうだろう。何事も手本を見て始まるものだ。私のブレイキング・コメットも、その上で成り立っている」
十年前のFFIアジア地区予選決勝の韓国戦は何度も見返した。
なぜか晴矢兄と風兄が相手チームにおり、神っぽい人とトリオで必殺技を放っていたのには笑ったが。
「お手本かぁ...帰ったら秋姉にパソコン借りよっと!」
「要はイメージの問題だ。こうなりたい、こうやりたい、と理想を抱くのは前提だからな」
「うん、ありがとう愛花!」
「礼には及ばん。代わりに近う寄れ」
「このスキンシップさえ無ければ良いんだけどな...」
「天馬ー!円堂監督が呼んでるよー!」
「わ、わかった!ごめん愛花、俺行くね!」
信助の声。
天馬の尻、もとい天馬が離れていく。
「おのれ監督...私と天馬のまぐわいを邪魔するか...」
「まぐわい言うな」
ったくしょうがない奴だ、という風に見られたのち、自身のボトルとは違う、もう片方で持ち腐れていた方のものを、京介は渡してきた。
「飲んどけ」
「おお、気が利くな。感謝感謝」
今日は暑い。見学だけとはいえ喉は乾く。有り難くいただいておこう。
「...調子はどうだ」
「足か?向こう一週間は安静だ。決勝の海王戦は無理だが、その次の全国一回戦なら出れるだろう」
「雷門が負けるとは微塵も思ってないんだな」
「当たり前だ。奮起したこのチームは強い。伊達に前回準優勝していないだろう。天馬に信助も立派な戦力、そして何より京介、おまえがいるだろう」
「おだてても何もねえよ」
「それはそうだ。嫁が婿を褒めて見返りを求めることは無いからな」
「...変な奴だ」
あいも変わらず一匹狼のような男ではある。
しかし、以前まであった他者を拒絶するトゲは無くなったと思えた。
舌打ちが無くなったのが、その証拠だ。
「「...」」
沈黙。
入学してからそういえば体感することが濃くなったそよ風を受けながら、離れたベンチで話す雷門イレブンの声をBGMに虚空を見つめる。
京介も私と同様、正面を見ていた。
「...」
「...」
「...」
「...」
「...(さわ...)」
「おいごら」
「いだいいだい」
尻を触った代償は大きく、私のキューティクルな頭にアイアンクローが炸裂する。
肉体的接触を受け入れるには、まだ早かったようだ。
「ち、沈黙に耐えられなくてな。なにかアクションでも起こそうかと」
「それでよくセクハラを選べたな」
「婿なのもそうだが、優一さんから京介をよろしくと言われているからな」
「またふざけたことを───待て、今なんて言った」
「婿」
「その後だ」
「優一さんに京介をよろしくと」
「なんでおまえが兄さんと面識あんだボケェ!?」
「うおううおう」
両手で頭を掴まれ、荒波に曝される外航船の如く揺らされる。
「病院へ足の治療に行った時、サッカーで遊ぶ子供を見て黄昏ている車椅子の御仁を見つけてたんだ。雰囲気も似ていたしもしかしたらと思ったら...」
どしたん、話聞こか?から会話は始まり、その中で雷門サッカー部に在籍していることを話すと、京介が自らの弟であることを告白。これからも仲良く頼むよ、と爽やかイケメンスマイルを貰い、LINEも交換したというわけだ。
「ツーショットも撮ったぞ。優一さんはいいな...父性を感じるしこちらに庇護欲も抱かせる。将来私が養うのもありか...」
「本当に見境ないなおまえ...言っとくが、兄さんに手を出したら承知しない」
「だろうな。だから諦める。そもそも、元々の婿候補はおまえだ。外堀は埋めるに越したことは無い」
「クソ...ッ、どうしてよりにもよってこいつなんかと出会ってしまったんだ兄さん...!」
頭を抱える京介。
きっと、私という類稀なる嫁となる女性と、自身の兄である優一さんの巡り合いに対して、感涙に咽び泣いているに違いない。
私は満足げに頷き、苗字は愛星と剣城のどちらがいいか模索し始めた。
愛花:スペ体質というわけではないが怪我で療養。幼少期に死にかけるレベルの病気を患ったことはあるが、完治して以降天真爛漫元気溌剌に。体躯は小柄で女性的な発達はほぼ皆無なので、おそらくその病気が原因。
剣城:天馬と同様外堀を埋められ始めた男。愛花が鬱陶しいのは変わらないが、クラスで話す際のレスポンスは増えた模様。笑うことも増えた。
天馬:今日もセクハラされる男。突っ込んだらもう負けな気がしてきているので、そろそろ触られても何も言わなくなる。だがそれが本当の敗北に繋がることを彼はまだ知らない。
葵:女子間では一番仲が良い。カラオケやゲームセンターで休日一緒に遊んでいる。携帯ストラップの多さは愛花も『おお』と声が出た。
おもしれー女は書いていても楽しい。次回もお楽しみに!