遠き星エイリア、もといお日様園では一妻多夫が認められている(詭弁) 作:\コメット/
もう一人のお日様園出身者、入部のお話。
海王学園との死闘を制し、雷門中は全国の舞台へと駒を進めた。
チームの絆も深まり、抜けていた青山と一乃の再入部、天馬の化身発現、愛花の足も治りと全国初戦に向けて助走をつけていたある日のこと。
「どうしたんだろ、愛花」
登校時も、授業合間の休みも、昼休みにも顔を出さなずに放課後を迎えた天馬は、暇があれば押しかけてくる少女のことを考えていた。
『おはよう天馬、いい朝だな...ふむ、おまえも快調なようで私も嬉しい。なに?一々尻を触るな?ふっ、今に始まったスキンシップでもないだろう。私はその照れ隠しもセットで、この行動に意味を見出しているがな』
『天馬、10分間の休みで何ができると思う?次の授業の準備、クラスメイトとの談笑、テスト前の予習、色々あるが私とおまえが求めるものには当てはまらない。では何か、そう、サッカーだ。サッカーができる。10分という限られた時間で何をやるか、何を実行し、何を思考するか、人は限定されることで未知の力を発揮することができる。さぁ、今日はドリブルに磨きをかけるぞ』
『私特製の愛妻弁当だ。天馬、京介、信助、これを食べて力をつけろ。重箱3つはやり過ぎだと思ったが成長期だからな、これぐらいは食ってもらわんと困る。葵はこっちだ』
『お、来たか天馬。私を迎えにくるとは、そろそろ婿候補としての自覚が出てきたと見える。京介、窓際で黄昏るのもそこまでだ。その冠婚葬祭で使う気のない改造制服など脱いで、ユニフォームかジャージに着替えちょ、いだい、アイアンクローをするな京介、最近見境が無くなってきてるぞ京介、距離が縮まったのは喜ぶべきことだが痛いのは好きくないぞ京介』
物静かなように見えて台風のような騒々しさの彼女が姿を現さなかった。
良く言えば賑やか、悪く言えば騒々しい普段の来訪に慣れていたせいか、
「少し、寂しいな」
「毒されてるよ天馬」
「あはは...」
真顔でツッコむ信助、苦笑いの葵。
「なになに、何の話?」
そして、今日転校してきた新参者。
狩屋マサキ、革命を始めた雷門サッカー部にこれから入りたいという、天馬たちからしたら熱意を持った、他から見れば変わり者と取れる転校生。
「ああ、狩屋。他クラスに俺たちと同じサッカー部がいるんだけど、いつもなら休みの合間に来るのに今日は全然来なくてさ」
「それって、なんか全体的にツンツンしてて改造制服着てる人のこと?」
「剣城くんだねそれ」
「他クラスのサッカー部で他と違うってのは合ってるっちゃ合ってるけども」
あの形はやはり目立つのだろう。
愛花も愛花でフード付きだったり他の女子があまり履かない黒タイツを履いたりと、若干差異はあったりする。
「へぇ、他にもいるんだ」
「ああ。愛星愛花、サッカーがすごい上手いんだ!」
「...ふーん?」
興味ありげな声を出す狩屋。
「元シードだった剣城と同じくらい、もしかしたらそれ以上に上手いかもしれないよね!」
「シードって?」
「フィフスセクターから派遣された精鋭のこと。前にドリブルをブロックしてたし、あながち愛花が上ってのも間違いじゃないかも」
「オフェンス仕掛けて追い回してたもんなぁ」
練習試合や公式戦を通して、未だに成功率0%な愛花のプリマドンナ。理由はお察しである。
「...割と上手くやってんだ、アイツ」
「ん?」
「いや、すごい人がいるんだと思って。もっと知りたいな、愛星サンのこと」
「うーん...サッカー以外のことだと、結構モテてるみたい?」
「当たり屋気質でも、見た目は良いから愛花は。前も登校が重なって靴箱見たけど、ラブレター入ってたし。『ふむ、直接持ってこないのは減点だが、気持ちは受け取った。今後のご活躍を願っている、といったところか』って」
「目線が面接官」
「あとは天馬、あれじゃない?文化祭の」
「文化祭...あー、あれかぁ。あんまり思い出したくないな...」
「あれって?」
「雷門中って、入学早々に親睦を深めるために文化祭やるんだけど、クラスの出し物を決める時、女子と決起して男装女装喫茶やろうって触れ回って...」
一年全クラスで、というトチ狂った凶行に出た愛花とその他大勢の女子。
ただ天馬と剣城を女装させたいだけという愛花の願望と男装したい女子の思惑が合致し、一年生全体を巻き込む事件となった。
議論の末、天馬と信助、葵の所属するクラスと剣城、愛花のクラスだけがやることになり、二人は逃げられなかった。
『うう、なんだってこんな目に...』
『...俺に聞くな』
『安心しろ二人とも、これでもメイクには自信がある。男子が欲情し、女子が羨む完璧な仕上がりにすると約束しよう』
『不安が募る一方だよ』
『おまえがやりたいだけだろうが』
『そうだが?』
『開き直らないでよ』
『さて、盛るとするか。天馬はCにしとこう、私の好みだ。京介は...Gぐらいいっとくか?』
『なにがだ!』
迎えた文化祭当日、男子の性癖は愛花の戯れにより破壊された。
愛嬌全開元気系メイド(乗り気ではない)とツン全開冷徹系メイド(無論乗り気ではない)にかかれば、それは容易かった。
「新しい扉を開いた男子は数知れず」
「結局女装してたの天馬と剣城の二人だけだったし」
「2クラスで看板娘って言われてたものね」
「やめてよ折角忘れかけてたのに...」
「こういう時なんて言うんだっけ...お婿に行けない?」
「それなら愛花がいるじゃない?貰い手」
「着実に逃げ道を塞がれてる...」
「大変だなぁ天馬くん」
笑い事じゃないよ、と机に伏せる天馬。
「振り返ってみても愛花は結構破天荒だね」
「大人しそうに見えて意外とアグレッシブよね〜」
「...同じ一年として会うのが楽しみだよ」
一瞬、ほんの一瞬、狩屋の目つきが鋭くなった気がしたが、それは気のせいだろう。
「じゃあそろそろ行こうよ、天馬。流石にサッカー棟には行ってるだろうし」
「...よし、そうだね信助!過去のことは忘れて目の前のことに取り組もう!」
(弄れるネタができたな...)
狩屋へ部活についての説明をする傍ら、一向は部室へ向かうべく教室を出た。
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「ここが部室ね。あれ、剣城。愛花は?」
サッカー棟に到着。部室のソファに腰掛けている剣城を天馬達は呼び止めた。
「...俺とアイツをセットで考えているのは遺憾だが、まぁいい。愛星ならホームルームが終わって直ぐに教室を出て行ったきりだ」
「ここにも来てないって...」
「なんなんだろ...?」
露骨に嫌な顔をしながらそう返した剣城の返答に、首を傾げる。
他のメンバーに聞いてみても、彼女の所在を知る者はいなかった。
「ところで、天馬。後ろの彼は?」
「知らない奴だな」
「あ、そうだ。皆さん!こちら、今日転入してきた狩屋マサキ。入部希望者です!」
「よろしくお願いしますっ」
この時期に珍しいな、賑やかになるな、物好きがいるもんだ、と反応は様々。
「ってことは、今日の練習は入部テストからか」
「そ、そうだった!?ごめん狩屋忘れてて!」
「テストなんてあるんだ」
「どうしますか?監督」
「うーん」
一瞬考える仕草を取り、狩屋へと近づく円堂。
知らない大人、チームの監督ということもあり、彼は若干体を強張らせる。
「狩屋、サッカー好きか?」
「───はい」
数秒の間は、質問の意図に思考を傾けたことによるもの。
真っ直ぐな瞳で質問に対して肯定する狩屋に、円堂は快活な笑顔を向けた。
「よし、合格だ!これから頑張れよ!」
「よ、よろしくお願いします!」
「テストそんだけ〜?」
「円堂監督らしいな」
新しい仲間の加入に、部員達は浮き足立って質問攻めの嵐。
どこのポジション志望か、そもそも経験者なのか、好きな食べ物は、などなどサッカーに関するものもあれば関係ない問いもあり、部室は一気に盛り上がる。
「その加入、ちょっと待った───っ!!」
そこへ、出入り口からよく知る声が響き渡った。先ほどから探していた少女、愛星愛花のものだ。
「あ、愛花!どこ行って...た...」
「どうしたの天...馬...」
早速狩屋を紹介しようと振り返り、言葉を失い硬直する天馬、連れて信助。
他のメンバーも同様に、いつもと違う彼女の形相に困惑と驚愕を露わにする。
「シュコー...シュコー...」
「な、なんかシュコシュコ言ってます...」
怯える速水、無理もない。今の愛花の装いは、普通とはかけ離れているのだから。
某SF映画でお馴染み暗黒卿が付けていそうな黒いマスクに、もしも宇宙からの脅威の侵略者がいたとするならばそのマスターランクチームが着用していると思われるタイツ型ユニフォーム、そして目を引く黒いサッカーボール。全てが常識と程遠い。
「な、なんだよその格好!?何があってそうなったの!?」
「シュコー...これか。これは私の兄や姉が、ここぞという時に用いたと言われている正装だ。持ち出そうとした際は何故か阿鼻叫喚、頼むから人前で晒すのはやめてくれと懇願の嵐だったが、そんなのはどうでもいい」
「どうでもよくないよ」
「全ては、憎き虚言癖クソ野郎を叩き潰すため...大人しくそこになおれ、マサキ!!」
「え、マサキって」
一同、揃って狩屋の方を向く。
愛嬌溢れる人懐こい表情だった彼の顔は、一変、悪童のような不適な笑いへと変わっていた。
「なぁんだ、意外と早かったじゃん」
「我が婿に嫁達、そいつに何もされていないか!?今からでも遅くない、離れろ!そいつと関わると碌なことにならん!」
「碌なことになってないのはおまえがいるからだろ、愛花」
「二人は知り合いだったの?」
「へへ、黙っててごめん。あいつ、俺の妹」
「違う、貴様が下だ愚弟!」
どっちが本当なのか。少なくとも、二人が同郷なのは間違いないらしい。
「きょ、兄妹!?」
「おいなぜ私が妹で話を進める」
「正式な兄妹じゃなくて、義理。俺ら施設育ちで、誕生日は俺の方が先なの」
「加入は私が先だ」
「うーんこれは...」
「どちらとも言えるが...」
「で、愛星はなんでそんな変な格好してまで狩屋を毛嫌いしてんだよ」
話が平行線になっているのを見越して、倉間が切り込む。
「その愚弟は最低最悪のクズ野郎だからだ。人の揚げ足を取る、虚言を吐く、小馬鹿にする、全てが私の神経を逆撫でする...!よってこの私が、害となるそいつを粛清しにきた!」
「毎度のこと突っかかってきて惨めに敗走してるのはそっちだろ?みんなも見ます?この間、オセロで黒一色にされてボロ泣きしてるコイツの顔」
「やめろぉ!!」
「おわ!?」
鬼気迫った声音で黒いサッカーボール、ではなく傍に転がっていた普通のサッカーボールが狩屋にむけて蹴られた。
それを軽々とかわし、体勢を整えてから手招き。挑発だ。
マスク越しでも怒りで震えてるな、と分かるほどワナワナしている愛花は、鼻息を荒くしながら狩屋との鬼ごっこを開始。
「待てぇ!」
「待つ馬鹿はいないでしょ!あ、助けてください先輩!」
「ちょ、俺の後ろに隠れるな!?」
狩屋は霧野を盾に、舌を出して愛花を煽る。
「蘭丸から離れろ、マサキ!蘭丸は私の婿、いや嫁だ!」
「どっちだよ」
「限りなく嫁に近い婿だ!見ろ、先月天馬と京介の女装にあやかってメイドコスをさせた蘭丸の姿を!」
モニターが点り、身内以外が見れば万人が美少女と解答するであろう霧野のメイド姿がそこにはあった。
一部部員からお〜という感嘆の声も上がった。
「や、やめろおお!!消せ、早く消せぇ!!」
「何故だ蘭丸!恥じらいも謙遜もいらない!いやそれはそれでGOODクルが今は誇れ、其方は美しい!」
「現在進行形で恥かいてるんだよ!!」
「可哀想に、先輩。先輩も被害者なんですね...なら、アイツの恥部を把握しておあいこにしないとですね」
「ふっ、脅しのつもりか?生憎と、生半可な脅しは私に通用しな」
「どうぞ、小6の頃に粗相して泣きべそかきながら布団干してる愛花です」
「お、おわあああああっっ!!!」
「なんのハンターズネット!!」
「ぐべぇ!?」
『お〜...』
怪しく桃色に光る網が作り出され、愛花はボヨンと跳ね返された。
「ま、まだだ...」
「もうやめるんだ愛星!ここは部室、暴れるのもあるが、年頃の女の子がそんな格好しちゃいけない!」
過去にそんな格好をして宇宙人を名乗っていた奴がいたんだよ、と突っ込む者は、残念ながらいない。
円堂と音無は苦笑いで目の前のやり取りを傍観することしかできなかった。
「止めるな拓人!これは私とアイツの...かふっ、がくっ」
「愛星!?」
「マスクしてあんな動くからだバカ!軽いチアノーゼになってんぞ!マネージャー、担架持ってきてくれ!」
「ゆっくり呼吸するど、ゆっくり!」
有事の際の三年生の動きは早い。的確に指示を出し、処世にあたっている。
「で、できれば担架よりもおまえ達...婿の腕に抱かれたいぞ...」
「要望を立てるな!そんな全身タイツ着てる奴、運びたくねえよ!」
愛花の乱心という事件がありはしたが、この日、狩屋マサキという新しい仲間が雷門イレブンに加わるのだった。
愛花:ジェネシスコスが勝負服だと思っている女。10年前のエイリア学園云々はあまり知らない様子。
狩屋:愛花がいるおかげか、原作ほど捻くれてはいないかと思われたが別方向で性格が悪くなっている。義妹を馬鹿にすることに余念がない。愛花との仲は、険悪っちゃ険悪だが二次創作でカップリングが勝手に作られるくらいと思っていただければ。
剣城:狩屋加入によりヘイトが分散されたと思われたが、クラスが別なのであまり変わらない。寧ろ泣きつかれることが増えたので対応を諦めつつある。愛花の弁当は最初は拒否していたが、食べてみたら中々イケたので普通に昼が楽しみ。女装したらアドマイヤグルーヴ風味になった。
天馬:セクハラが減らない。こちらはもう諦めた。愛花の弁当では魚料理が特に好きで、コツを聞くと骨を全部抜いてから調理してると聞き、手間暇丹精込められているのを知り、改めて礼を言った。
霧野:とってつけた理由で女装をせがまれる。今回の騒動で尊厳を破壊された。
次回から全国大会、はっちゃけるぞ!