遠き星エイリア、もといお日様園では一妻多夫が認められている(詭弁) 作:\コメット/
気に入らないアイツと、という話。
マサキの入部という恐れていた事態を防ぐことはできなかったが、雷門イレブンは順調に練習と調整を重ねていった。
鬼道さんのコーチ就任もあり、個々の実力の伸びは顕著だ。
「つくづく、マサキの加入が無ければ...」
「まだ言ってるし」
全国大会開会式を終えた翌日、私達はスタジアムへの移動手段、ホーリーライナーへの搭乗を目指していた。
ホーリーロードが聖帝選挙も兼ねてるとはいえ安直すぎやしないかと思ったが、ただの列車にホーリーを付け足すネーミングセンスにも脱帽する。
「どこぞの輩に通ずる安直さだな、マサキ」
「うるせえ。おまえの厨二臭いセンスに比べたら100倍マシだろ」
「おまえら、本当は仲良いのか?」
「「良くない(です)」」
「そうか...?そうか...」
なんだ典人、その納得できないといった顔は。転入初日から今日にかけてのやり取りを見ていれば、私たちの犬猿の仲は充分察せられただろうに。
「そら、あっち行け。私は天馬と京介の隣に座るからな」
「どうせ一年生で固まるんだから近いだろ。まぁ愛花と離れられるのは願ってもないけど。はしゃいで乗り物酔いすんなよ」
「誰がするか」
「あっそ。おーい天馬くん剣城くーん、一緒に座ろうよー」
「なぁ...!?」
「わかった!ほら、剣城も来いよっ」
「別に構わないが...」
「じゃ、そういうことで」
「貴様ァ...」
勝ち誇った顔で婿候補二人の元へと去ったマサキを、私は下唇を噛み締めながら目で追うことしかできなかった。
「ぐぬぬ...の、典人ぉ...」
「こっちくんな、そして名前で呼ぶな」
「飴ちゃんか?飴ちゃんだな?しょうがない奴だ、今出してやる」
「懐柔すんな」
弟や妹をあやすにはこれが手っ取り早い。私も幼い頃、ヒロト兄からよく渡されたものだ。
『愛花は黙っているとお人形さんみたいで可愛いな。だから、今日は偉い人と話があるからこれでも舐めて大人しくしていてくれ。頼むから相手を口説いたりしないでくれ。本当に』
きっと、私が嫁に行ってしまうのを危惧してのことだろう。ヒロト兄の愛情は充分感じているが、妹はいずれ兄の元を離れるもの。お義父さんが牢にいる以上、バージンロードを共に歩くのは彼なのだから、今のうちに心構えをしてもらわなければ。
「典人」
「なんだよ」
「お色直しは二回やりたいな」
「本当になんなんだよ」
ホーリーライナーは、目の前だ。
********************
「なん...だと...?」
相手チームとガラス越しに対面して座るという、中々に攻めたデザインの列車内。
天馬の隣を信助、マサキ、京介の隣を拓人に奪われた私は、道中と同じく典人と共に着席───したところで、信じられない光景を目の当たりにする。
「篤志...!?」
「南沢さん...!?」
地区予選一回戦後にサッカー部を辞め、転校してしまった南沢篤志の姿が、月山国光のメンバーの中にあった。
「なんで...南沢さんが...」
在校時は同じFWとして彼を慕っていた典人にとっては、衝撃的だろう。
かく言う私も、この状況を受け入れ難い。
なにせ、
「他校に篤志を寝取られた...っ」
「南沢さんはおまえの何でもないだろ」
隣で典人が何か言っているが、悲しみに打ち震えている私の耳には入らない。
「雷門で過ごした私たちの仲睦まじき青春と愛と情欲に塗れた日々はまやかしだったというのか...!?」
「そうだよ」
なんということだ...離れ離れになったとはいえ、私と彼奴の絆は不変のものだと信じていたというのに...。
こうなっては仕方ない。篤志という婿候補の損失は大きいが、何事も切り替えが大事だ。
「そうと決まれば...」
「何やってんだ?急にスケッチブックなんて取り出して。というかなんで持ってんだよスケッチブック」
「一つ手を打とうと思ってな」
カキコカキコ。
「よし」
『婿候補募集中!こちら私のLINE』
「すんな」
月山国光のメンバーに向けて、プラカードのようにスケッチブックを掲げる。
険しく雷門の面々を見つめていた彼らは、私の行動に面食らって目をパチパチさせている。
「おい、下げろって」
「あ、通知来た」
「マジかよ」
物好きがいるもんだと戯ける典人と画面を覗き込む。
友達登録されたのは、こちらがよく知る人物。
「南沢さん...」
「ふむ」
『まだそんな巫山戯たことをやっているのか』
チラリと正面を見ると、携帯を弄りながらこちらへ不適な笑みを浮かべる篤志が。
「よかった...少なくともおまえに気があるわけじゃないみたいだぞ」
「いや、これは強がりだな。私という嫁力の塊に萎縮して、本来の自分を出せていないらしい」
「おまえってよく節穴って言われないか?」
「よく言われる。他と違う視点を持っていることを意味するのだろう?そして可愛いとも美人さんとも言われる」
「ダメだコイツ」
『息災のようで安心した。私が婿候補を増やすのが気に食わないのか?』
『そうやって戯言を抜かせるのも今のうちだ。俺が現実ってのを分からせてやる』
視線が強まり、篤志のものと重なる。
笑みの裏には、何かに対しての怒りが感じられた。
その感情が意味するものを、私は嫁ながら分からない。だが、分からないなりにそれらを受け止め、許容してやることは可能だ。
「ふっ」
私は微笑んだのち、メッセージを送った。
『私に抱かれたくなったらいつでも言え。常に胸はフリーにしてある』
『くたばれ』
『メッセージが受信できません』
なぜなのか。
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剣城 倉間
愛星 神童 速水
天馬
狩屋 霧野 天城 車田
三国
これが今日のスタメン。
巨大プロペラが天井に幾つも配備されたサイクロンスタジアム、それが一回戦の舞台だ。
篤志は私との対話を拒否、他に連絡先を送ってくる月山国光メンバーがいなかったのは予想外だが、この試合で私の力を示せばプロポーズの一つや二つしてくる輩が現れる筈。
最初が肝心、先制点でも演出してチームを勢い付けると共に、名前を売り込むとしよう。
「と、思っていたのだが」
「のああああ!!??」
相手陣地中央、巨大竜巻が典人を巻き上げている。
何を言っているのか分からないだろうが、私も何を言っているのか分からない。
試合開始早々、こちらが攻め上がっていたのだが月山国光は両端に寄って進路を譲り、おまけにその場に座り込むと来た。
その途端、竜巻が発生。まさかサイクロンスタジアムってそういうことなのか?
「倉間!?」
「倉間先輩!」
「典人ォ!安心して落ちてこい、私の腕の中にィ!」
「ぜってえ地面に着地してやるからなあああっ!!」
風が止み、竜巻が消える。自由落下になった典人は空中で一回転したのち、間一髪私の手前で着地に成功した。
「10点。胸に飛び込んできていたら100点はやっていたぞ」
「言ってる場合か!守るぞ!」
溢れ玉を敵にカットされ、攻守は一転。
「弍の構え、炎の陣!」
再度発生した竜巻を盾に、月山国光は陣形を保ちながら上がっていく。
「一番槍は我が...!」
「させっかよ!」
「邪魔立て無用!」
シュート体勢に入った相手の前に躍り出たのは、マサキ。
「ハンターズネット!」
「ぐぅ!?」
怪しく光る弾力性の高い網が作り出され、敵を弾き、ボールの奪取に成功。
「...ふんっ、まぁこれくらいはやってもらわんとな」
「上から言ってんじゃねえよ!霧野先輩!」
「おう、神童!」
「よし、竜巻が止んでいるうちにみんな上がれ!」
パスが繋がり、拓人が指揮棒を振るう。
変化の絶え間ない状況に困惑するメンバー等だったが、拓人への信頼は絶大。彼の指揮を信じ、迷いなくその足を動かす。
「愛星!」
「よしっ」
「参の構え!」
拓人から私への愛のあるパスが通り、左サイドを使い攻め上がっていると、相手キャプテン兵頭司の指示が飛ぶ。
フィールド全体に通る威勢の良い声が響いている。どっしりとした物腰といい、婿候補に加えてやっても良いかもしれない。
「む?」
司の命令なのか、左サイドがガラ空きとなり先ほどのように皆その場に片膝をついている。
自由に攻めさせてくれるのは嬉しいが、これは恐らく罠。
(さては此奴ら、竜巻の発生するタイミングを分かっているな?)
だからこうして事前に構えを取り、対策をすることができるのだろう。
フィフスセクターが裏で手を回したのだろうか。
(ま、どうでもいいか)
その策に易々と乗っかってやる程、私は甘くも優しくもない。
「───」
「...(ニヤリ)」
後ろへ合図を送り、私は真っ直ぐ...ではなく、進路を右斜め、つまり相手が鎮座する方へと舵を切った。
「な...っ!?」
私がこう来るとは予想外だったのだろう。驚きの声が聞こえる。
「な、なんの!我らにかかればおまえなんぞ!」
「プリマドンナ...」
「う、うわああああ!!??こっちに来るなあああ!!」
また逃げられた。少し技の挙動と可視化できるハートを出せばこれだ。
突破できるから良いが、技の成功率が今日までで0%なのは目に余る。今度天馬か京介を練習台にでもするか。
「京介!」
「ふっ!」
右へ切り込んでいた京介へとセンタリング。攻撃のリズムを変え、体勢が整っていない敵陣を狙い撃つ。
『雷門、愛星から剣城へ!前線でパスを回す!』
「倉間先輩、シュートを!」
「おう!」
中央へ走り込んでいた典人へ、京介からのパスが通った。
「サイド...ワインダーッ!!」
宙へ放られたボール、それに大蛇によるクロス状の二撃が加えられた必殺シュートが、月山国光ゴールへと襲いかかる。
「見せてやろう、我が化身!巨神...」
「お披露目、出来たら良いな」
典人のサイドワインダー、ゴールを目指していたが一転して軌道を変えた。
「何!?」
勢いあるままに空中へ、そうなることをわかっていた私と、
「遅れるなよマサキ!」
「そっちこそ!」
マサキが走り込む。
「DFがここまで!?」
ボールの行方が変わり、加えてマサキのオーバーラップ。司の反応は一瞬だが遅れた。
私とマサキは跳躍。サイドワインダーに引かれるように互いの背を合わせ、両足をボールへと蹴り込んだ。
「「ユニバースブラストッ!!」」
生み出される宇宙をバックに炸裂する、リュウジ兄直伝の必殺技。
典人のシュートの威力も合わさった、威力に加えて速度も増したシュートチェイン。
「ぐ、おおお!?」
反応は出来ても止めることは出来ず。
ズバシュッと快音を奏で、ボールはネットへと吸い込まれた。
『ゴーーールッ!!先制点は雷門中!倉間の必殺技に愛星と新加入の狩屋が合わせるシュートチェインで、一点をもぎ取ったァ!』
「わあああ!すごい、すごいよ二人とも!でもどさくさに紛れて身体のあちこち触るのはやめて欲しいな愛花!?」
「天馬の方からハグを求めて来たのにか?」
「どちらかというと愛花が突進してきたよね!?ゴールパフォーマンスって普通はコーナー側に行くんだよ!?」
「細かいことは気にするな...私とおまえの仲だ。素直に抱かれていればいいのさ」
「ご、ゴール決めたのは二人なのに、なんで俺が抱き上げられてるの...?」
療養中に行っていた上半身の筋トレが役立ったのか、天馬ぐらいなら両手で抱えて持ち上げることが可能となった。
洗い立てのユニフォームと清涼剤の香り、うむ。良きかな。
「おい愚弟。DF技といい、問題ないようだな」
「いきなり合図出すなよな、ったく。我儘な妹だ」
「嬉しそうだったくせに」
「おまえらってやっぱ仲良いだろ」
「「いや全然まったく」」
「そうか...」
「典人もナイスシュートだったな。どうだ、褒美に私がキスの一つでもやろう。浅いのと深いのどっちがいい?選ばせてやる」
「いらねえ、いらねえから天馬抱えたままこっちに来るな」
「お、降ろして〜!」
「堕ろす!?馬鹿なことを言うな!誰がなんと言おうと私は産むからな!!」
「絶対に拡大解釈してる奴だよこれ〜!」
「既成事実を作るのに余念がない...」
「馬鹿でしょ?コイツ」
「知ってる」
その後、私たちは竜巻に悪戦苦闘しつつも3-1で試合に勝利。
月山国光も本当のサッカーの楽しさの気づき、篤志と雷門の確執も解消───天馬は普通に話してたのに何故か私は避けられた。マサキに笑われた───され、雷門は二回戦進出となった。
・ユニバースブラスト 林属性 シュート技
蹴り上げたボールの周囲に宇宙を発生させ、そこへ二人同時の両足で蹴りを入れるシュート。
一人でも打てるが、その際は威力が減る。
愛花:子供は10代で欲しいと思っている。誰かこいつを止めろ。
剣城:愛花に子供は何人欲しいか聞かれた。回答は控えた。
天馬:11人だよな?と聞かれた。笑うことしかできなかった。
狩屋:もし生まれたら抱っこはさせてやると言われた。どうでもよかった。
倉間:ツッコミのテンポが良い。同じFWなので意外と話す。
ギャラクシー二周目、神童がお労し過ぎる。でもちゃんと教育はしてるの好き。さすが私の婿(愛花のコメント)