くたばり損ない魔法少女わたしの独りゴト   作:土縁屋

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【朗報】ベアおばと屋台デートしちゃう件⋯⋯あと、人生初の友達

 わたし、華亥ムラクモ♡ 色気より食い気な、孤高の知性派美少女♡

 

 

 たったかたー♪ たった、たったかたー♪

 ビッグベアおばさんと、お肉のイノシシ君。お供二人を連れて串焼きヶ島へ向かうわたしはさながらクモ太郎。⋯⋯ムラ太郎。⋯⋯うん。ムラクモちゃん太郎。

 迷宮都市ご在住の皆様から向けられる「なんやアイツ⋯⋯」的な感じの視線を受け止めつつ、受け止めつつ。

 ベアおばは気まずそうな顔してるけど、ムラクモちゃんは気にしない! 何故なら最強だから! 見つけたぜ! 今日こそてめェをヤッて俺がナンバーワンだ! ふっ、甘いな⋯⋯未熟者めが。キンキンキーン。無念、がっくし。ムラクモは死んだ。

 ⋯⋯ああ無常。最強の消費期限って短いのね。

 

「あら。ごきげんよう、ムラクモさん」

 

 んで、美女と野獣二匹パーティで目的地を目指してたの。そしたら、おじょー様とばったり出会っちゃった。⋯⋯これって、運命!? けっ、何が運命じゃい、セレブがよ。戦ったらムラクモちゃんの方が強いんだからね! 俺が上でお前が下だぁっ! パンチパンチ、シュッシュッ⋯⋯いや、何の勝負?

 

「レイラちゃんじゃないかい! 迷宮帰り?」

「ごきげんよう、ベンさん。いつもお世話になっておりますわ」

「よしておくれよ! あたしゃ商売してるだけさね!」

 

 ちょっと! ムラクモちゃんを差し置いて会話を進めないでよね! “協命機関”にいた頃に、ちり紙仲間の魔法少女達から遠巻きにされてた記憶蘇っちゃうでしょ!

 「なんか……ムラクモさんって怖いよね……」「わかる。何言ってるか意味わかんないし……」って、ボソボソ話してたの聞こえてたんだからね! ゔっ、おえっ。

 

 まあいいや(震え声)。

 せっかくだし、おじょー様も誘ってあげよう。ムラクモちゃんは誰に対しても分け隔てない、聖人君子なのだ!

 

「……来る?」

「あら、ご一緒してもよろしいんですの?」

「いや、アンタはもっと人に通じる言い方を──って、通じてるっ!?」

「うふふ。フィーリングってヤツですわ」

 

 フィーリングとは? 「ん」チャラリラリーン! 「ムシケラ全滅ビーム発射ですのね。わかりましたわ」ってこと? 以心伝心、二人で一つの命ってこと? いやんっ。ムラクモちゃんったらいつの間にかとんでもねぇファンを生み出しちゃってたのね。

 

「……ムラクモちゃん太郎様って呼んでいいよ」

「それなら、わたくしのことはレイラ姫と呼んでよろしくってよ」

「なんだァ、こいつら……(困惑)」

 

 なんだい、なんだい! 意外と話のわかるおじょー様じゃないのよ! ムラクモちゃんゲージが貯まってきたよ、これ!

 友情の印にムラクモちゃんコインを贈呈してあげよう。見てこれ! すっごい自信作。結構前にお鍋にしたトカゲくんの骨から作ったやつなのよ。特に表面に掘った絵がさぁ、いいでしょ。ピースしてるムラクモちゃん。

 

「うわっ。不格好だね。かろうじてコインとはわかるが……」

「とても真心の籠もったデザインですわ。これ、掘ってあるのは雄叫びをあげてる熊ですの?」

 

 失敬だな、こいつら!

 見た目も完璧だけど、性能だって凄いんだぞ!  持ってるだけで、くたばりにくくなる優れものなんだから! まぁ、最強のムラクモちゃんからすれば誤差って程度のモノだがな……ふっ。

 

 

 そんなこんなの、それってどんな? うるさいわねっ。話の腰を折るんじゃないの! ……えっ? お前の話はいつも脱線してるだろって? まぁ、そんな日もある。

 言ったそばから逸れちゃった。

 で、屋台おじさん。

 

 ムラクモちゃんが来店すると「こいつまた来たよ……早く帰ってくれ」ってあからさまに顔へ出したけど──ご覧になってご覧になって!

 ドデカイノシシくんを担いでることに気付いたとたんに顔面を真っ青にして腰抜かしちゃった。

 やったね! ちょっと早めのハロウィンだよ! トリックオアポーク! 串焼きくれなきゃパンチしちゃうぞっ。なんつって。……いや、やんないよ。やんないからね。さすがに。

 

「あらまぁ。……なんというか、風情のあるお店ですわね」

 

 おじょー様ったら串焼き屋台が珍しいの? おっくれてるぅ〜。ここは人生の先輩として、ムラクモちゃんがセオリーってやつを指南してあげちゃおうかな。串焼きの食べ方の作法。知ったかぶり先輩面わたし。

 

 そうと決まればさっそく行動! プリティキュートなムラクモちゃんヒップがオンボロ座椅子くんを襲う! うわー! どっすーん! ……いや、その擬音は失礼でしょ。我、女の子ぞ。ミステリアス系知性キャラ女の子。

 

「いつもの」

「はいよ。鳥串詰め合わせね……。ってそこはイノシシだろ!」

「うん。お肉千切ってあげる?」

「やめてくれ! 頼むから、やめて!」

 

 むむむ。そこまで申すなら仕方がない。武士の情けじゃ、腹を切れ! へへー! ざしゅざしゅーっ。イノシシくんはおいしいコマ肉に進化した!

 

 おっさんの手際。……すごいね、ムラクモちゃんびっくり。

 刃物なんかでお肉って切れるもんなんだねぇ。これがカルチャーショックってヤツ? ……いや。まさかこの屋台おじさん、実はとんでもない剣士だったりするとか? クッ。まんまと騙されてしまったよ。このムラクモの目を欺くとは、とんだタヌキじゃないの……。うらぶれ元凄腕剣士屋台おじさん。

 

 おっさんに熱い視線を送るわたしのとなりにおじょー様。さらにその隣にベアおばが座る。なんかちょい狭い。

 そんでそんで。なんかおじょー様がクスクス笑いだしたの。

 ……え? なんで? どぎゃんしていきなり笑っとるんばい? 魔力増強剤でも使った? あれ頭おかしくなって感情壊れちゃうんだよね。……どうしたらいいんだっけ? 魔力成分ひっこ抜いたらいいんだっけ? ちょ、あわわ……。

 

「あ、頭大丈夫?」

「おまっ……言い方ぁ!」

「ふふ。ごめんなさいね、いきなり笑ったりして。……けれどなんだか、楽しくって」

「……わかる。友達といる……たのしい」

 

 ちょ、何よその顔。おじょー様もベアおばも目ん玉真ん丸に見開いてるし、屋台おじさんなんか包丁落っことしてのけぞっとる。は? 

 ……え? 受け取ったよね、ムラクモちゃんコイン。なら、わたし達……ずっ友じゃないの? 刎頸の交わりだよね? 言っとくけど、コインを受け取るってことは、断金の契りを結ぶってことだからねっ! ……なんか妙にここだけ語彙が発達してますわね。べ、べつに友達に飢えてたわけじゃないんだからねっ!

 

「ふふ。それなら、ニックネームでお呼びしてもよろしいかしら? せっかく友達になれたんですものね」

「に、ニックネーム……!?」

 

 串焼きお肉のお店で、あだ名を!? これが本当のニックネーム! なんつって。……なんか寒気がしてきたな。

 いや……まだ早いんじゃないかな、そういうの。ふしだらじゃない? お互いのことよく知りもしないのにベッタベタするなんて。まずはさぁ、お互いの好き嫌いについて知り合って、ご両親に挨拶をして、そこからスタートラインでしょ! ……まあ、わたしの両親は宇宙ムシケラの胃袋に消えちゃったから、もう会えないケド。そもそも異世界追放されてきてるから存命だったとしても会えないケド。

 ええーっ!? それじゃあわたし、どうやってあだ名で呼んでもらえばいいの!? ……いや、最初からおじょー様が呼ぶって言ってるやんけ。

 

「そうですわねぇ……きれいな銀髪ですし、可愛らしいお顔立ちですから……チャーリーなんていかが?」

「いや、犬猫じゃないんだから、そりゃないだろうよ、レイラちゃん」

 

 おっと、ツッコミの速度でベアおばに後れを取ってしまうとは……。不覚。

 つーかおったまげー! なんですケド。普通はムーちゃんとか、クモっちとか、そういうのじゃないのん? え? 犬猫ってなぁに? まさかペット扱いされてるなんてコト……ないよね? ほらほら、チャリクモちゃーん、おいしいおいしいペットフードですよぉー。 わぁーい、今日の献立なんだろな! ネズミだ! そんな馬鹿な! チャリクモちゃんは人権を主張する! 残念! キミはもうセレブの飼い犬なのだ!

 ……いやいや。ないない。うん。ムラクモ・アイは天地神明を見通すからね……。うん。

 

「無難に迷宮都市のビッグベアでいいんじゃないかい?」

 

 ムラクモちゃんの思考が高次元に接続されちゃってる間に、じゃあどんな呼び名がいいのよ、って方向に話が進んだみたい。

 で、ベアおばがこれ。もしや、山でのことを根に持っておじゃるな? 許してたもれ! 何、頭を下げろ? 麻呂は帝から最強魔法少女の位をいただいておじゃるぞ! ベアおばごときにへりくだるものではないわ! ……あ、生意気言ってすいません。

 

「暴君ちびっこ……」

 

 おい。屋台おっさん。いまボソッと言ったの聞こえてるからな。

 というか、お肉まだ? もうお腹と背中が融合合体して超新星爆発起こしちゃうよ。どーんどかーん! 重力崩壊だ! ブラックホールが来るぞ! アイアム・ハングリーアングリー! 

 

「ちゃーちゃん、ちゃーちゃん。わたくしにもお名前付けて?」

 

 いや自由かよ。ゴーイングマイウェイおじょー様ですか? そしてそのちゃーちゃんっていうのはチャーリーからとってるの? ムラクモちゃんはチャリクモちゃんに進化してしまったの? 空き地ホームレス配信者わたしからセレブリティペットドッグ配信者わたしになってしまったの? ……なんか語呂が悪いので、これからも空き地ホームレスの方向でお願いしますね。

 

 あだ名の話。

 実はわたし、おじょー様の名前も覚えてないんだけど……どないしよ。

 

 …………。

 

「じょーちゃんで」

「まあ! なんて可愛らしいニックネームかしら! ありがとう、ちゃーちゃんっ」

「いや……アンタ、それ──」

「じょーちゃんで」

 

 もの言いたげなベアおばと屋台おじさんは、スルーしていくぅ! さすがムラクモちゃんのドリブルだ! ……はい。苦し紛れに、おじょー様からとったあだ名です。

 ま、まあ喜んでるみたいだし、いいよね! うん!

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