くたばり損ない魔法少女わたしの独りゴト   作:土縁屋

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【悲報】飛ばされた先がダンジョンな件

 わたし、華亥ムラクモ♡ 雑談するのが大好きな、異世界追放系魔法少女♡

 

 

 まあ、ひどいよね、って気持ちはそんなにない。なぜって、わたしが最強だからなのだ! わははーっ。……いや、本当にこれなの。

 わたしってば生きてるだけで周囲を威圧しちゃう系のプレデターなので、“協命機関”のヘタレおじさん達にとってはガチのマジで目の上のタンコブだったんだろうね。

 

 ま、過ぎたことはどうでもいいや。

 次元追放刑だって光をキュイーンされた先は、なんか石畳系。けっこう狭苦しい感じで、イメージとしては……うーん。あれだ、ダンジョン。

 青っぽくテラテラ光ってるのがアリンコ系侵略者を思い出させてキモ! ってなった。虫はやーなのよ。足がたくさんあるし、なんか表情ないでしょ。もっとニコニコーってすれば愛嬌あんのにね!

 

 おっと、話逸れちゃった。

 ダンジョンの話に戻るけど、内装はけっこう近代的な感じ。天井なんかに埋め込まれてる光源から、うっすらした光が降ってきてる。

 ──こういうのって普通たいまつとかが灯りになるってもんじゃないの? って、ロマンをぶち壊しにされた気分だけど……。この分だと、内政系とか知識チートとかできなそう。……まあ、どっちにしてもわたしの学力って虫けら並なんだけどね。

 

 ドゴッ!

 ゴゴゴ……

 

 とりあえず、記念にダンジョンの石をもらってこう。

 そう思って、軽く壁を叩いてみたら、穴が開くどころか、木っ端みじんになっちゃって……崩落しちゃった。

 落っこちてきた天井が立てる土煙を吸っちゃって……こほんこほんっ。お鼻がムズムズしちゃう。……こらえ性のない壁だなぁ。

 

「ん……。いい感じの石落ちてる。いいね」

 

 怪我の功名ってヤツ?

 崩落した天井の破片の一つが手のひらサイズだったので、これを持って帰ることにした。……いや。今のところ、帰る場所ないけど。石拾いホームレスわたし。

 

 そんなこんなでのんべんだらりしてると、音を聞きつけたのかな?

 あっちこっちから、盛りのついたワンちゃんみたいに危ない吐息が聞こえてくる。なんだろうね? わたしのあまりのかわいさにクラっと来ちゃったファンの人達かな? かわいいって……罪ね。

 なんて、冗談を頭の中でこねくり回していたら、

 

 ドンッ!

 

 と轟音。

 

「グゥァア……」

 

 下手人は……うん。でっかいおっさん。緑の肌のおっさん。なんか健康に良さそうな肌の色してますね。

 潰れたお鼻をひくひく、濁ったお目めをぎょろぎょろ。石拾いホームレスの先輩かしら? ……そんなわけないでしょって。

 

「グォオオオーッ!」

「くちゃい……」

 

 いや、ホントに臭い。

 大口を開けて雄たけびを上げるおっさんなんだけど、全力で叫んでるからか口臭がムラクモちゃんのプリティフェイスへダイレクトに直撃しちゃう。

 

 消臭しよ。

 

 バゴッ。

 軽くこぶしを握って、えいやっ、とパンチ。クソデカホームレス先輩はきったない肉片をまき散らしながら死んだ。

 かわいそうに、ご冥福をお祈りしときますね。

 

 

 ───

 

 

 けっこうダンジョンの中って快適なのね。

 ワサワサ近づいてくるミニマム緑おじさん(多分ゴブリンとかそんなんでしょ)をデコピンで消し飛ばしながら、悠々自適に観光しちゃう。

 でも、景色が一定で代わり映えしないから、次第に飽きてくる。……というかわたし、そもそも何で観光してたんだろ。こういう場合って普通、地上を目指すもんじゃないの?

 わたしは天才だけど、知能が虫けらレベルなので、うっかりしちゃうこともある。

 

 「んー。……とりあえず、適当に歩き回ってみよ」

 

 

 ───

 

 

「ん?」

 

 どんくらい歩いたかな? 

 砕いた壁が二十枚を超えたあたりで、かすかに人の気配を感じた。音から察するに、けっこう遠くで戦闘してるみたい。

 ……これ、あれじゃない? 探索者ってヤツ。

 知ってる知ってる。ダンジョンに潜ってモンスターを倒したりして、その素材でお金儲けしてる人達だ!

 そんでたまに手柄の取り合いとかして、謀殺とか起きるんでしょ? ……世知辛いなぁ。

 

 とにかく、第一村人発見! って感じだし、見に行ってみよっかな。

 

 よっとこらどっこいしょ、っとちょっぴりダッシュ。

 ちょっと勢い余ってダンジョンの部屋をいくつか崩落させちゃったけど……まあ、今更か。

 そのまま更に突き進むと、他の部屋よりも広めのところに出た。

 そこにはうじゃらこ、うじゃらこ……いるわいるわ毛むくじゃらーの大集会。

 で、ひときわ大きいトカゲ相手にチョロチョロ動き回っている女の子がいて、その子の近くにはおかしなボールがふよふよ浮いてる。

 そのボールの周りにはさらに半透明の板が浮かんでて、なんか、

 

【ダンジョンスタンビードだなんて! レイラたん! 死なないで!】とか

【レイラたんがんばれ!】とか

【救援まだ!? ギルド何やってんの!?】とかって書いてる。

 

 んんん?

 わたしってば天才だからすぐわかっちゃったけど、これって、配信者でしょ。あのゲームとか料理とかするやつ。

 こんムラクモ! とかやっちゃう系のやつでしょ。知ってる知ってる。

 

【レイラたん、あそこ! 火竜の後ろに人がいる!】

【は? 壁をぶっ飛ばして銀髪ロリが出てきたんだが?】

【新手のコスプレ配信者!?】

【おい、後ろ! 火竜がブレスの予備動作入ってる! 逃げろ!】

【あああ、もう見てられねぇ……】

 

「──あ、あなた! お逃げなさいっ! ここは危険ですのよっ!」

「……んー。あれ、いいかな?」

「ええっ? な、なにが──」

 

 探索者って、ご法度なんでしょ? 獲物の横取り。

 だから横入りすんのもどうかな、人の心がないかなって思ったんだけど……腐っても鯛。死に損なっても魔法少女、ってことで助けに入らせてもらおう。

 戸惑ってんけど、「ええ」って言ったしね。

 

 つーわけで、敵の数も多いし軽く魔法使っちゃう。

 指先で輪っかを作って、ピンっと弾く。すると、わたし渾身のデコピンによって押し出された空気の弾が、トカゲちゃんの頭に直撃して、花火みたいに爆発しちゃった。

 

【え、今、何が起きた?】

【火竜の頭、弾けた……? 爆発系の魔法?】

【火竜だぞ!? Aランク指定のモンスターだぞ!?】

 

 南無南無。君の死体は後で持ち帰ってお鍋にしてあげるからね。 

 

「……は? え?」

 

 親玉だったのかしら?

 トカゲくんがおいしそうな食肉に変わってしまって呆然とする獣くん達へ、とりゃあ、とパンチ。逃げ惑う狼くん達へ容赦のないパンチパンチ。許せ友よ、戦場は冷酷なのだ。あわれ、獣は爆散した。

 

【待って待って、おかしいおかしい】

【衝撃波だけで部屋が崩落してるwww】

【ウルフが消し飛んでんだが……】

 

 ……やりすぎちゃった。

 副菜に狼肉を持って帰ろうと思ったのに、原型残ってるやついないじゃん。はぁーやれやれ。もろいぜ。この世のすべてがもろすぎる……。

 

 仕方ないので、トカゲくんの尻尾を掴んでよいしょ、と担ぎ上げる。……うーん。ちょっぴり引きずっちゃうかも。

 

【ウッソだろお前www】

【俺は何を見せられてるんだ……】

 

「あ、あの……」

「ね。出口どこ?」

「え? ああ、はい。ここから北の方へ行くと階段がありますので、昇っていけば……」

 

 いいね!

 親切な探索者さんに感謝感謝。

 出口さえわかったなら、こんな辛気臭くて、かび臭い場所とはおさらばよ!

 よく考えたらダンジョンってなんか虫の巣みたいでキモいし。さっさと出ちゃお。

 

 背後で引き留めるような声が聞こえたけど、ごめんなすってごめんなすって。ムラクモちゃんは自由な女なのだ!

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