くたばり損ない魔法少女わたしの独りゴト   作:土縁屋

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【速報】二つ名が“暴君”に決まってしまう件

 わたし、華亥ムラクモ♡ ここ掘れワンワン! そこ掘れワンワン! やったぜザクザク金貨だ! ブルジョワ系美少女♡

 

 

 ちょっと前にキモ虫討伐したでしょ。あれのね、報酬もらったの。金貨三枚なんだって。

 ふへあへ。すんげェ大金だぁ……。あかん、語彙力消失してまう。

 

 ムラクモタワーinゴールドコイン。いらっしゃいませ、金貨くん♡ なんて男前なのかしら。ギラギラに輝くゴールドが素敵ね! ふっ、よしてくれムラクモちゃん……君のミステリアスな銀髪の方が可愛いぜ。いやんっ、照れちゃう。

 特に使い道なんてないけども、お金ってなんか眺めてるだけで幸せな気分になれちゃうから不思議ね。意味もなく磨いちゃうし、意味もなく祭壇だって作っちゃう。

 おーそれみおー、おーそれみおー。美しい……。何日だって眺め続けてられるぜ……。

 

 

 なんてね。

 そんな風にいい気分になってたらねぇ、メガネさんのところから呼び出しされたの。

 ちょっとムラクモちゃんを呼び付けるなんて何様のつもり? 今のわたしお金持ちなんですケド? くっ、成金圧制者ムラクモだ! 殺せ殺せ! ざくーっ。

 ……うん。人は常に謙虚でいないとね。

 過ぎたお金は人を変える……ふぅ。ムラクモ、お前には大事なことを教えられたぜ。全額寄付しよ。

 

 赤貧の気持ちで、メガネさんギルドに向かいましょうね、プレハブ所有配信者わたし。……うむむ、しっくりこない。

 ……空き地ホームレスの二つ名、語呂がいいから捨てるには惜しいわね。これからも名乗ろ。身分詐称系魔法少女わたし。

 

 

 さておきさておき、メガネさんギルドのホームにムラクモちゃんがご到着。そんで受付の人に「何用でおじゃるの?」って聞いてみたら、あなたの階級に関することですって。なんや階級って。

 今回はけっこう大掛かりな話し合いをしますから、参加する人が集まるまで待っててね、って。

 ……貴公、こっちが話を把握してる前提で話すのおやめなさいよ。「お、おう。」ってなっちゃうでしょ。

 ……うーん。わたしに関することっぽいのに、当人にまったく情報共有されてないんですケド……。

 

 まぁいいや。

 待合のところでジュースもらお。なんか飲むと頭パチパチして面白いんだよね。口の中じゃないよ、頭の中パチパチするの。……非合法なブツ混入してそう。しかしムラクモちゃんはためらわない!

 おかわりしちゃうもんね! おいマスター! もう一杯だ! ……うん、さんくす! ぐびーっ! うぃーひっく! げらげらげら! ……何やこの酔っ払い。

 

「よう、嬢ちゃん。隣いいかい?」

 

 ちょっと! 酔っ払いごっこ中のムラクモちゃんにいきなり話しかけるなんて、失礼じゃないの!

 オシャレなバーで一人飲んでる女性に話しかけるのはナンセンスだって習わなかったの? ちなみにわたしは習ったよ! ……ドラマで。

 

「……ん。好きにすれば」

「おう。どっこいしょ、と。おう店主! 俺にもなんかくれや」

「た、ただいまお持ちします!」

 

 ん? なんかバーテンの人、急に慌ただしいわね。トイレ我慢してんのかな? まー! ムラクモちゃんったらお下品なんだから! へへへ、すいやせん。

 

 ……隣に座った人。

 強いなって思う。この人、わたしから見てもまぁまぁ強い。……ま。ムラクモちゃんは最強なので、戦って負けることはないだろうけど。

 ピットブルっているじゃない。ヤクザみたいなワンちゃん。隣おじさん、ピットブルの擬人化なんじゃないかって見た目しとる。

 ……ははーん。さてはバーテンの人、この見た目にビビっちゃったのだわね? なんてこった天地明察! すごい推理だ! 君には異世界探偵モノの主人公を任せたい! 異世界ホームズわたし。

 

「……聞いたぜ。あんた、未確認のモンスターを丸ごと滅ぼしちまったらしいな?」

「……うん。だってわたし、虫嫌いなの」

「ほう?」

 

 ちょ、なぁに。そのおもしれー女を見るまなざし。……やめてよね! アンタなんかに俺様系ヒーローは荷が重いんだから!

 ムラクモちゃんを攻略したかったら、せめてドデカ宇宙ゲジゲジを消し飛ばせるくらいの戦闘力は身につけてよね!

 「わたし軽い女じゃありません」的視線をビシバシ送ってあげるけど、ブルおじは柳に風って感じ。←かしこい言い回し。

 

「ふむ……なるほどな。タイラントロリってのも、言い得て妙だなぁ」

 

 なんか勝手に納得しとる。

 ここに来てからこっち、ムラクモちゃんったら置いてけぼりにされっぱなし宇宙なんですケド? 待てよお前ら! ムラクモちゃんを置いていくな! けっ、テメェがノロクサやってんのが悪いんだぜ! きーっ! 何よその言い草! 許すまじ! 

 はい。

 

「しかし、悪くねぇ動機だ。俺好みだぜ、あんた。ぜひともウチのギルドに入ってもらいてぇところだが……」

「ナンパはノーサンキュー」

「ハハハッ! フラれちまったか!」

 

 だからムラクモちゃんを攻略するなんて無理なんだってば!

 れ、恋愛なんてね! 死の原因になるんだからねっ! 国を滅ぼすんだからね! わたし知ってるんだからっ!

 ……いけない、取り乱しちゃった。こんなブルおじに口説かれたくらいで。キャッ、恥ずかしぃ……。ムラクモ、チョロインの素質アリ。うっせぇ!

 

「……誘いに来たの?」

「んにゃ、見に来ただけだ」

「ふーん」

「見るもん見たし、俺はもう行くぜ。……“後で”な」

 

 お酒をね、こう……グビーッて感じに一気飲みして、ブルおじは颯爽と去っていった。背中越しに手をね、フリフリしとる。

 きゅんっ、かっこいい。……今度わたしもあんな感じの去り方してみよ。

 

 

 ───

 

 

 そんで、ムラクモちゃんWITH会議室。

 カンコンカン!

 なんだろうね。なんか、叩くやつ。それが入室の合図だよって教えられたので、相分かった! 拙僧に任せられよって感じで突入、突入。

 どうも、どうもー! 野に咲く薔薇の花よりプリティでキュートなムラクモちゃんがやってきたよ! うおっ、なんて可愛いんだムラクモ! 我ながら惚れ惚れする美貌だぜ……ナルシー検定一級クラスの自画自賛だわね。素晴らしい! 大合格!

 

「あれが……」

「まだ幼い少女ではないか……」

「とても伝え聞くような力を持つようには見えんが……」

 

 ヒソヒソ。ヒソヒソ。

 何やねんこれ。熱血教師系ドラマのオープニングシーン? 今日から2年B組に赴任したムラクモちゃん先生が陰湿な不良おじさん達を愛と勇気と暴力でわからせる青春ドラマはじまってしまうのん?

 できればお色気枠の美人教師役でお願いしたいんですケド……。自惚れるな! この貧弱ボディが! ……それは言いすぎだろ!

 

「──以上の戦績を鑑みて、当該者の階級(ランク)をSとし……」

 

 んでね、お話。てな感じなのん。メガネさんとこの幸薄おじさんマスターがぺちゃらこ喋っちょる。

 これがねぇ、めちゃんこ長い。しかも、小難しくって何言っとるかガチのマジでわからんちん。

 なんかもにょもにょしたこといっぱい話されちゃってさぁ。やめて! もうやめてよ! ムラクモちゃんに何の恨みがあって長話するのん?

 お前ら知らんのか? 華亥ムラクモの知能は虫けら級なんだぞ! 難しいこと言われると頭が破裂しそうになるんだ! ゆるちてゆるちて〜。

 

 あんまりお話が長いもんだから、なんだか意識が朦朧としてきちゃった。うーん、綺麗なお花畑と川が見えるよぉ……。綺麗だなぁ。

 川向こうでめっちゃ手振ってんのは──ドデカ宇宙ゲジゲジに頭からぱっくんちょってされちゃったヒゲモジャスキンヘッドくんじゃないかぁ。

 お久ぁ。……え? こっちに来るな帰れって? 冷たいなぁ、もう。ちょ、わかったから。帰るよ、帰りますから。

 

「──聞き捨てならねぇな」

 

 ……。

 何だ夢か。

 

 ところで、ムラクモちゃん的多次元宇宙に意識が接続されてる間にお話が佳境に入ったみたい。

 ブルおじがめちゃくちゃいきり立ちながら、ドチャクソに威圧感放っちょる。こわっ。

 え、なに? 何が起きてますのん?

 ちょいちょい、そこのカンコンカンおじさん。何でこんな爆弾処理解体現場みたいな緊張感漂ってるのか教えてちょ?

 

「あんな小娘が二つ名持ちだと? ふざけるのも大概にしろ! そんな無法はこの俺が許さねぇ」

「……しかしな、ロイ・ロー。彼女の力を証明する映像記録は提出されているし、先の事件とて彼女の尽力がなければ未曾有の危機が訪れていたかもしれんのだぞ」

「馬鹿が、映像なぞいくらでも偽造できるだろうがよ。

 ──なあショーン。いくら見目麗しいお嬢さんと仲良くなりてぇからって言ってもよ。“エコヒイキ”しちまうのは良くねえよなぁ?」

 

 ……。

 ……?

 

 これ。もしかして、わたしディスられてる? ……いやいや、まさかね。まさかそんなことないよね。うん。

 ……え? なんでいきなりそんな態度なの? さっきまではなんか優しかったやんけ! えぇ? わたしなんかやった?

 昔、仲良くなれそうだった子に「ムラクモちゃんにはついてけそうにないよ」って拒絶された過去ががが……ゔ。おろろっ。

 

 

「──ロイ・ローの言う通りだ! そのような矮躯の少女に二つ名を与えるなど過分な処置だ!」

「そもそも、探索者となって日が浅かろう。『英名の剣』の個人的差配で分不相応の地位を与えようとするのは問題ではないか?」

「権力拡大を狙って、実績を偽っているのではないか?」

 

 

「見ろよショーン。他のギルド長連中も、俺の意見に賛成してくれてるみたいだぜ?」

「……くっ。貴様ら……」

「──ふんっ。これほど挑発してやっても、噛み付きの一つもしてきやがらねぇか。……底が知れたな」

 

 なんかよくわかんないけど、やっぱバカにされてるみたい。……イラァ。

 ……くっ。やるなブルおじ。

 精神攻撃でムラクモちゃんを追い詰めようなんて……。アレでしょ。

 まずは冷たく接して、傷ついた所を慰めてモノにしたろうって、高等テク使おうとしてるんでしょ。

 あ、危なかったが、俺には通用しないぜ!

 

「どうやら、本当に腰抜けみたいだな。……けっ。この娘が討伐したっていう未確認モンスターとやらも、存在すら怪しいもんだ」

 

 ──ムッカァ。

 

 別にねぇ。ムラクモちゃんは悪口言われたって怒らないよ。何故なら最強だから。

 そう、最強の魔法少女だもの。

 使い捨て養分だろうと、異世界追放されたって、わたしは魔法少女。だから人間は殴らない。……そう決めてるの。

 

 ……でもねぇ、今のひと言はけっこうムカついちゃったの。

 手柄を誇るわけじゃないよ。キモ虫の尊厳を守ろうとしてるわけでもない。

 でもね、でも今のその物言い……“協命機関”の油ギトギトおじさんみたいでねぇ。

 

 ──すんごくムカついちゃった。

 

「……殴らないよ」

「──ならばどうする?」

「殴らないけど……それ、いい剣だね。……へし折ったげる」

「言ってくれるぜ! このロイ・ロー様を前にしてよ!」

 

 久々ですよぉ。

 温厚篤実で知られる(当社比)このムラクモちゃんをキレさせちゃったやつは。仏の顔も三度までっていうでしょ。でもムラクモちゃんはイラっとしたら割とすぐキレちゃうのん。許してちょんまげ♡

 光栄に思ってよね、君の挑戦を特別に受けたげるんだから。キャッ、ムラクモちゃんったら太っ腹! ぽよよ〜ん。デブ扱いはやめたまえ。

 

 つーことでね、お手々で輪っか作って──。

 

「俺は気が短けぇんだ! ……さっさと訓練場に──あ? ちょ、おまっ!」

 

 ブルおじがなんか言ってるけど、知ったこっちゃないのん。

 何故か? 戦いはいつどこで発生するか分からないからだ〜っ! キサマ達はいきなり襲ってくる侵略者相手に、いまご飯中だから待っててねと言い訳するのか〜っ!

 かぁ〜っ、ぺっ。甘ちゃんがよぉ。

 卑劣! なんて最低なのムラクモちゃん! 不意打ちを行う上に、先回りして理論武装まで済ませちゃうなんて!

 

 げへへ。これも全部、オイラを怒らせたブルおじが悪いんでヤンスぜ。三下小物系ホームレスわたし。

 もう辛抱たまんねえ! 早くやらせてくれ、アニキ! 仕方ない奴だな。やれ!

 

 はいぺちこーん。

 必殺のデコピン弾がブルおじの剣を鞘もろとも粉砕! やったぜ! ガハハ見たか! これがムラクモちゃんに逆らった愚か者の末路だぁ!

 ……圧制者ムラクモめ! まだ生きてたか! 死ねぇ! ぐわぁーっ。

 うん。

 気を取り直してね。ほら見てほら見て、ムラクモちゃん渾身の横ピース♡ 可愛いでしょ。ぷりちーガールムラクモって呼んでもいいよ。

 

「ふ、不意打ちとはいえ、あのロイ・ローの剣が砕かれるとは……」

「構えてさえいなかったぞ……。ぼ、暴君だ……!」

「マジかよ、聖剣グランシャリオンだぞ……。冗談キツいぜ……」

「あ、あんな頭が弱そうな娘なのに……っ!」

 

 

 ───

 

 

 カクカクシカジカってことでね。

 なんかよくわかんないうちにムカつかされて、ようわからん長話を聞かされて……。

 結局階級がどうのこうのっていうのもよくわかんなかったし、なんだったんですかね。ムラクモちゃん、何のために呼ばれたの? 全然話聞いてなかったからわかんにゃい。

 

 はぁー。なんか気疲れしちゃった。屋台おじさんのところでお肉食べよ。……ん? もしかして、わたしの行動範囲ってば、狭すぎ!? 狭くて何が悪いか!

 

「……?」

「よう。悪かったな、ひでえこと言っちまってよ」

 

 ふと感じた人の気配。その正体はピットブルおじさんでした。やん、こわぁい(白々しい悲鳴)。

 ところで、ひどいこととは? なんか言われたっけ? もう覚えてないのん。へっ、俺が気にしてねえんだから、お前も気にすんなよな。それが友達……ってやつだろ? ……押しつけがましい友情だなあ。

 

「ん。こっちこそ、剣壊してごめん」

「構わねえよ。……うん、マジでな。気にすんなよな」

 

 そ、そう?

 でも、なんかお高そうな剣だったし、さすがにやり過ぎたかもって、反省はしてるのよ。ムラクモちゃんの脳内は自浄作用がメッキメキに働いてるからね。

 

「これ、あげる」

「ン、こりゃあ! ヒューマンティスの殻片か!?」

 

 何そのヒューマンティスって。ニクカマキリのこと? 人型だから? あ、安直ぅ……。

 ネーミングセンスないなぁ。ギルティ・ムシケランとか、ゲロキモカマキリマンとか、もっといいのあると思うけどね。

 ……まあ、ブルおじの言う通り、これニクカマキリの一部。正直マジでいらなかったけど、メガネさんが受け取りの権利があるの一点張りで、無理に押し付けられちゃったの。邪魔でしょうがないから、プレゼントしたげる。感謝はね、別にしなくたっていいよ。

 

「豪気なもんだ。……いや、あんだけの腕がありゃあ、そうもなるか……。どうにも、余計な世話を焼いちまったみてぇだな」

「……?」

「こっちの話だよ。……んじゃ、縁があったらまた会おうや、“暴君”さんよ」

「……何それ」

「二つ名だよ。あんたのな。……ギルド長連中の意見が一致することなんざ滅多にねえが、今回は数少ねえ例外だったぜ」

 

 あばよ、と去ってく背中を健気に見送るわたし。なんてプリティ。

 ……え? こんな可愛いムラクモちゃんが暴君扱いされちゃうの? 世界は残酷ね……。いや、ちょっと可愛すぎたのかも。出る杭打たれちゃったわね。美少女有罪判決出ちゃった。

 

 

 ……ま。正直、誰に何と呼ばれようと知ったこっちゃないけどね。わたしはわたしがやりたいことをやるだけなので。

 ムラクモちゃんは今日も我が道を行く。……あらま、こんなところに暴君ちゃんがおりましてよ。

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