わたし、華亥ムラクモ♡ お皿洗いからムシケラ駆除までお任せ安心! どんな難儀な依頼だって、ちょちょいのちょいな最強仕事人♡
ふー。一仕事終えた後の一服は染み渡るぜ……。この一杯のために生きてる……ってやつ? そう、ごはん一杯のためにね(ドッ!
……このお弁当のさ、なんだろ。なんか野菜。野菜のひたひたになったやつおいしいね。うん。タレがおいしい。モムモム。
ところで、ゲロキモスパイダーくんとの長きにわたる死闘を制したムラクモちゃんはねえ、ロビーっぽいところでごはん食べてたの。
話聞かせろ、取材させろってねえ、インタビュアーの人達もけっこうしつこかったけど……すまんな友よ。それがしにはなさねばならぬ義がある。なんだって!? それは……っ? ごはんタイムだ!
お弁当の四角くて平たい箱の中には夢が詰まってるらしいよ。……ゆえに麻呂はその夢とやらを絶賛噛み締め中におじゃにけり。
グッバイ・ドリーム。もぐもぐ。夢は胃袋の中へと消えたのだ……。でも、ムラクモちゃんはこれからも前だけを見て進んでいくよ……なんてねえ。
そんな風にね、悦に浸りつつ、浸りつつ。平和に過ごしてたんだけど……。なんだかザワザワしてきたの。
そこいら中からねえ、ガッチャンゴッチャン音がするよ。不思議ですねえ……なんなのかしら? お前達はそこにいろ。俺が様子を見てくる。……コツン、ピチャン。──ばあっ! ば、化けも──ぐああー! 哀れ、ムラクモちゃんは最初の犠牲者となったのだ。……うーん。
さておきさておき。
どんな些細な悪口も決して聞き逃さないムラクモ・イヤーによれば、ガチャゴチャ音はねえ、戦闘場の方からしてるみたい。わあ、にぎやか。
……そんなわけないと思うけどぉ、なんかのイベントだといいよね。牧歌的な感じのやつだともっといいかも。
黒づくめの人達なんかがたき火を囲ってエロイムエッサイムー……ってさあ。──その求め、ムラクモちゃんが答えたろう! さあ、誰を引き千切ってほしいんだい?! ランプの精・ムラクモちゃんにできることはたくさん! 暴力とか破壊とか蹂躙行為とか! ……暴力しかないやんけ! 無能にもほどがある召喚悪魔だあ。
話逸れちゃった。
とりあえず、見に行こっかなって。くたばり損なったって、魔法少女ですもの。騒ぎあるところに、ムラクモちゃんあり。なんちゃって。
───
戦闘場はね、阿鼻叫喚って感じ。
ミニマム緑おじさんとか、角突きおじさんとか、ゴワゴワ毛並み狼くんとかねえ。めちゃんこに暴れまわっちょる。客席のところとかさ、選手入場口に向かって押し寄せてるの。で、それを武器持ちの人達が必死に押し留めてるみたい。
「……ん」
非武装の人達は……あんまりいない。
そう、あんまり。カメラを持った人達が何人か……残って撮影しとる。た、大したジャーナリズム精神だあ……。ムラクモちゃんびっくり。
まあいいや。やることやっちゃお。
ということでね、はいどーんっ!
そーれ、ムラクモちゃんお得意のデコピン弾だー!
ぺちこん、ぺちこーん! ムラクモちゃんのプリティ・フィンガーに押し出された空気弾がねえ、角おぢの顔面にヒットヒット! そんで爆散しちゃった。かわいそうに。成仏してね。
──その時、彼らは見て知り、思い知った。
息をのむほどにプリティ……アイドル過ぎる美少女の存在を……。なんちゃって。
や、いきなり攻撃を始めたわたしもいけないと思うけど、シーンってするのやめてよ。人もモンスターもすげえ一体感で呆気にとられるじゃん。ムラクモちゃんってば滑った人みたいになっちゃった。
「ぼ……“暴君”だ……っ!」
「“暴君”が来てくれたぞー!」
「これ以上やつらを一匹として逃がすな!!」
と思いきや、なんかすっごい元気になっとる。……キサマが言うのかよって話だけど、情緒大丈夫? ちょっとジェットコースターじゃない?
どうでもいいか。
とりま近場の狼くんへぱんちぱんち! 日ごろ鍛えに鍛えた、愛の鉄拳を召し上がれ♡ ぽこぺん、ぽこぺん! べきごきぃ! さよならばいびー。おそまつさま。
そう大したモンスターくんはいなかったし、数も多くなかったから、鎮圧はけっこうスムーズに終わったよ。あっという間のアットマーク。
楽な仕事だぜ、ふっ。とか思ってたんだけど……ここでミッション・アップデート! 追加依頼発生しちゃったんだよね。
おじさん……モンスター押し止め隊さんでいっか。その人が言うにはね、ここにいたのって弱っちかったり足が遅かったりするやつらだったんだって。速い奴はとっくに街の方へ出てっちゃったって言うじゃない。ありゃまあ大変。
どうにかしてクレヨン! って感じのお願いされちゃって……。苦しゅうないぞよ。その願い……ランプのムラクモ魔神が叶えてしんぜよう。
泥船に乗ったつもりでふんぞり返ってるといいよ。
───
てんてこてんてこー。あの素敵な街……王都は今? ……とんでもねえ、大騒ぎのてんてこまいでございますよぉ。
逃げ惑う人々と、ぎゃーすか暴れ散らかすモンスターくんで視界がいっぱいいっぱい。おおう、なんたる地獄絵図。
とりあえずこいつら潰しちゃえばいいかな。
ドデカ二足歩行ウシくんに踏み潰されちゃいそうになっとる人をさりげなく救い出しつつ、救い出しつつ。ウシくんの顔面には軽ーく蹴りを入れておいてあげちゃう。えいやっ、どかーん! サラダバー。
……ん? お礼? 気にしなくていいよ。勝手にやったことだからねえ。
そんな感じにね、道行く人を助けつつ、モンスターを潰しつつ。ムラクモちゃんってば大活躍しちゃってたの。
そんな中だよ。わたしね、聞いちゃった。
ぶんぶぶーんって感じの羽音。……虫モンスターだ。
なんてこったまだ居たのかってねえ、勇んでそっちに行ってみたの。そしたら……でっかい蜂が人を襲ってる。
これはいけない。
駆除しなきゃ。
……もちろん。ムラクモちゃんは賢くて有能なので、優先順位は間違えない。虫を潰すより、人を守るのが最優先。
なのでねえ、人に襲い掛かりそうな距離にいるやつから順に、片っ端から引き千切ってくよ。
翅を引き千切って、頭を砕いて、腹を抉って……。
……ん? えらく攻撃的な防衛行動ですねえ。やんっ、照れちゃう。自慢じゃないけど、昔っからいろんな人に言われたもんだよ。「華亥ムラクモに護衛は任せられない」って。……ホントに自慢することじゃなかった! で、でもよぉ。こうして誰かの尊い命を守れてるわけだしぃ……。
はい。
そんなこんなでねえ、ゲボヘドロ・ビーを潰してたの。そしたらね、何匹目かな? いちいち数えちゃないからわかんないけど……彼らね、ブンブンいって逃げ出し始めちゃった。その勢い、脱兎のごとく! 虫なのに?
あ、あんな奴と戦えるか! 俺は逃げるぜ! コラ! 敵前逃亡は重罪よ! 戻りなさい! 戻ってムラクモちゃんと戦うのよーっ! ぶんぶんぶーん!
どうにか捕まえようって思ったんだけど、さすがに数が多くってだいぶ逃がしちゃった。あいすまなんだ。アイス学んだ? やかましいわ。
んで、襲われてた人達のね、助かりましたって感じの感謝感激を受け取りつつ、受け取りつつ。まだ安全じゃないからねって、一刻も早くおうちに帰るよう言っとく。
え? お名前教えてって? ……気にしないでいいよぉ。どうせムラクモちゃんは忘れるし、チミ達も運が良かったなラッキー☆ くらいに思っといたらいいよ。無事でよかったね。
……ここでムラクモちゃんカード発動! いつか見たブルおじの真似! 去り際にお手々フリフリ。うーん、なぁんてハードボイルドなんざましょ。
───
追跡中だ、ダッシュダッシュ。
な、なんて速さだ! ムラクモ……まるで白銀の閃光のようじゃあないか! いい気分だぜ、いえい! ドバシュー! ……ん? 前から逆走車が! バァン! だから安全運転を心掛けなさいっていったでしょ、ムラクモちゃん。地獄で反省してね。うえーんしくしく。
蜂くんを追いかけつつ、追いかけつつ。
道中に不穏な気配があればムラクモちゃんトルネード殺法(パンチとかキック)で対処してっちゃう。ハードワーカーわたし。
どの辺りかな? 土地勘がないからわかんないけど……。遠くの方にでっかいお城が目視できるくらいの場所に来たの。
んーで、そこには裏切りお兄さん(仮)が居よる。
「フフフ……この時をどれほど待ちわびたことか。……“暴君”。未だ花開かぬ小さな蕾よ。貴女のように愛らしい花は、蕾のうちに摘み取り、活け──その瑞々しさを永遠のモノとしたくなる」
「……?」
そんでぺちゃらこーって、よくわかんないことまくし立ててきちょる。
……よ、要するに何を言いてぇんでおじゃるの?
困惑しきりのムラクモちゃんを置き去りに、裏切りお兄さん(仮)はめっちゃ裏切ってきそうな顔を恍惚に赤らめて、なんだろ。ハアハア息を荒げまくっとる。
……な、何をそんなに興奮しとるん?
「ギガントデスクロー・アラクネを討った手際……見事と言っておきましょう。なるほど、“暴君”の二つ名は伊達ではない。
されど、僕とて“狂い咲き”の二つ名をいただいた英雄です。そして英雄とは自らよりも強いモノを倒してこそ甲斐がある。──我が前に屈服せよ! “暴君”!」
「ん。……なるほど」
つまり、ムラクモちゃんかわいい大好き! これから一生、毎日あなたを称えていきますってこと? ……ふぅ。まったくまったく。かわいすぎるってのも……罪ね。
冗談は置いといて、要するに喧嘩したいってコト? あかん! あかんぜよ! 今日のムラクモちゃんは人間相手だろうと容赦なくワシャクチャしてまうぞ! ……だ、ダメだぁ……自分を抑えられない……! とかいって。
そんなムラクモちゃんの慈愛の精神もむなしく、裏切りお兄さんったら、細っこい剣をぴゅんぴゅんしならせながら、分身殺法なんてやってきよる。おおお?
目にも止まらぬ速さってやつ? 正直ホント、すばしっこさだけなら今のムラクモちゃんより上ってくらいの速さですよ、これ。すごいねえ。
ま。速いだけじゃあムラクモちゃんには通じないけどね。なぜなら最強だから! 最強……それは頑強さ。そんな針みたいなのでツンツコされたって、どうってことありませんことよ。おほほ。
でも……。厄介は厄介だよね。
まともにやり合ってたら時間かかり過ぎちゃって、蜂くん達を取り逃がしちゃうかもしんないし……。だから渋々だけど、ちょっぴり手を出しちゃう。
「……ちょっと痛いかもしんないけど、大丈夫。怪我はさせないよ」
「人の心配をしている場合かい? ──ほら、永遠が君へにじり寄っている……」
何やこいつ……。話が通じない(困惑)。
と、とにかくね。魔力圧縮だー! そーれ拘束拘束ー。……って思ったんだけど、魔法に対する抵抗力が思ったより高いな、この人。これ以上威力を高めると、制御が難しくなっちゃって、ぐちゃぐちゃに押し潰しちゃう。
な、なんて面倒なんだぁ。……うむむぅ。しゃーない。こうなりゃ奥の手や!
実はねえ、ムラクモちゃんには魔法少女として授かった自分だけの魔法があるんだよね。いわゆる固有ってやつ。
ただ……すっごく見た目が良くないから、本当にマジで滅多に使わないんだけど……今回ばっかりは仕方ないかもしんない。
登録魔法名をね「魔獣の手」っていうの。これねえ、ムラクモちゃんの影から好きなだけでっかいお手々を召喚できるって魔法だよ。シンプルでしょ? でも強いんだぁ。実際の手みたいに馴染むから、手加減する時にも重宝すんだよね。
つーことでね、カモン、異形ハンド! エロイムエッサイムぅ~! われはもとめうったえたり。なんつって。
「! こ、これは──っ」
「おやすみなさい。毛布かけとくね」
おっきなお手々がぐわんって伸びてね、がしーっって掴んじゃう。で、もぎゅぎゅーっ! って圧力かけちゃう。
そしたら、裏切りお兄さんね、ぐっすり快眠についたよ。……あ、そういえば。毛布なんて持ってなかった。
……風邪、ひかないといいね。
───
だいぶ引き離されちゃったけど……俺にはわかるぜ! 名探偵ムラクモちゃん? ゲボヘドロ・ビー達はあのお城に逃げ込んだのでござろう! すげえ……なんでわかるの? 理由は……勘だ! 第六感主義者わたし。
でもねえ、それも捨てたもんじゃなかったみたい。
お城の外壁に砕かれてる部分があったの。これ、蜂くんやったでしょ。
その穴からお城に不法侵入してみるとね。とうとう見つけましたわよ! ドデカ・ビー! ここで会ったが百年目! もう逃がしませんわよ!
とりあえず手近な奴の翅をむしってあげちゃう。んで、ぱんちきっく、ぱんちきっく(ドゴバキッ)。
逃げ惑う者達にも、ムラクモちゃんは容赦しない! なんて冷酷なんだ……邪知暴虐のムラクモめ! 父上の仇! ぐさーっ。……情けは人のためならず。覚えておきたまえ。
ま。虫は滅ぼすけどねえ。
んで、ほどなくして蜂くん達は駆除完了。そこで気が付いたけど、なんかメガ子とご立派教祖がおる。……あとなんか人がいっぱい。
……そういや、よく聞いてなかったけどなんかお城に行ってくるとか言ってたような言ってなかったような……。どっちなんだい! はっきりしてよね! すみません。
ん。……けがは、なさそうね。ならヨシ! とりあえず声だけ掛けとこうかな。
「ムシケラ……ぜんぶ潰したよ。もう大丈夫」
見て見て、ムラクモちゃんスマイル。慈愛の精神が形になったようでしょ。ほれほれ。
そんなところにね、メガ子が走ってきて、
「来てくださったんですね! “暴君”さま!」
だって。めちゃんこよいしょしてくれちゃう。……うむうむ。苦しゅうないよ。もっとほめてほめて。
すげえ気持ちよくなってたんだけど……。突然ね、白フードの人達が「教祖様!」だって。おっきな声出したの。
どしたの? 話きこっか? てかポンスタやってる?
さておき、そっちを見るとご立派教祖ってば気を失っとる。
ははあ。名探偵ムラクモは察してしまいましたねえ。
こわい思いをしてたけど、ムラクモちゃんっていう絶対の安心感を得て緊張の糸が切れたんだ。いやん、照れちゃう。
まま、ゆっくり休むといいよ。
……わたしはもっかい街に戻って、モンスターくん達をやっつけてこなくっちゃ。……って思ったけど。
ん?
このまま一緒に来てほしいって? ええ?