くたばり損ない魔法少女わたしの独りゴト   作:土縁屋

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【朗報】王都騒乱が終結しちゃう件。……あと、名前

 わたし、華亥ムラクモ♡ 闇に包まれる世界……そこに差し込む一筋の光! 何だいあれは? キサマ名を名乗れ! ──そうです。わたしが世紀のつよつよ最強魔法少女♡

 

 

 はい。

 モンスターくん駆除に精を出そうって、張り切るムラクモちゃんを引き留めたのはね……なな、なんと! メガ子だったの。

 メガ子ね、いかにも「あたし不退転の覚悟でやってます」って感じの顔でムラクモちゃんのこととっ捕まえてくるもんだから、思わず足を止めちゃった。……なあに? ムラクモちゃんになんか頼みたいこととかあるん? できれば後にしてたもれ。今ちょっと忙しいのん。

 

 そんなムラクモちゃんの静かなる抗議の視線(サイレント・アイ)を左から右に受け流しつつ、メガ子ったら白フードさん達と「モンスターは現場で対処が可能か」とか、「元ギルドメンバー達の動員は可能か」とか……なんか、もちょもちょ話しとる。

 どうでもいいけど、そのお話って長くなりそう?

 てか、ちょちょいのちょーい。ムラクモちゃんは放置でおじゃるの?

 なら可及的速やかにお手を放しておくれやす。小生、こんなところで立ち止まってはおれぬのだ……。ちなみに足を止めるとどうなるの? 呼吸ができなくなるよ。ええー! マグロ系魔法少女わたし。……って、そんなワケないないナイロン。

 とかなんとか、しょうもないことをつらつら考えてたらね、なんか神妙そうな顔したメガ子がこっち向いたの。で、

 

「……“暴君”様。話を聞くに、王都を襲っていた魔物たちは、現場の戦力で対処ができるみたいです。元『導きの階』や『護国の盾』……フリーの探索者が対応に当たってくれているそうですから」

 

 だって。要するに手は足りてるからいらないよってコト? ムラクモちゃんいらない子じゃないやい! うえーんしくしく。

 ところで、その……『いちじくのキザな箸』とか『五穀の糧』とか知んないけど。フリーの探索者っていったら、おじょー様とかなのかしら? うーん。

 わたしも道中けっこう潰したつもりだけど……モンスターまだ、それなりにいるんじゃないのん? ……なら。

 

「……でも、わたしが行った方がずっと早くムシケラ退治できるよ」

 

 なんか神妙な顔で言ってくるメガ子に……ムラクモちゃんからの無慈悲な攻撃!

 くらえ! どうだ! 正論パンチ! な、なんてことなの!? ムラクモ風情に抗弁されちゃうなんて……これは一生の不覚ですよ、チミィ。

 

 ムラクモちゃんの言ったことには思い当たる節があったのかも。メガ子ね、うぐぅってなったの。……でもね、わたしの目から視線を外さなかったよ。ずぅっと目を合わせたまま。

 目を合わせたまま、震える……でも確かな声で言ったの。

 

「教祖様の作戦だと、気付かれないようにお城に入って、父上や兄上達を助けて、それでキッカー相国を捕まえるってことでしたわ。

 ……でもこんな騒ぎが起きてるんですから、さすがのキッカーだって気が付いてないなんてことないでしょう。……つまり、“狂い咲き”と戦うことになるってこと。

 ……それに」

「……? ? ん?」

「“暴君”様の威を借りれば、敵の兵士だってきっと武器を捨てますわ! 敵対したって彼らは王国民。できることなら、投降してほしいんですの」

 

 ……なるほどなー。うんうん。えーと……うん。よくわかった! ムラクモちゃんは賢いからね。超速理解したよ。

 よ、要するに……適材適所ってやつでしょ。なんか……メガ子と一緒に行って、邪魔する人をガオーって驚かしたらええってことでござんしょ? ……さすがは神童ムラクモ。この短時間で世界の真理を紐解いてしまうとは……ラブリー&ピース! かわいさは世界を救うってやつね。……違う話になっとりゃせんかい?

 

 ……街の方、気になるけどねえ。メガ子のこと、信じるって言っちゃったしぃ……むむむ。なにがむむむだ。

 

「……わかった。いいよ」

 

 

───

 

 

 王城内は危険がいっぱい! 剣を持った黒服おじさんや、槍を持った鎧おじさん……なんか鉄砲みたいなの持ってる人までいたよ。細っこいビーム出るやつ。光線は指でこう……べしーって弾いといたけど、普通に危ないわね、これ。こんなの人に向けちゃ、めっ! でしょ!

 

「ひぃぃ! “暴君”……!」

「ぶ、武器を捨てろ! 武器を捨てて腹ばいになるんだ! 無害をアピールしないと引き千切られるぞ!」

「タイラントロリは今日もかわいいなぁ……あ、投降します」

 

 道行く人をおどかし、おどかし。うぇーい! 季節ガン無視のハロウィンだーっ! お皿を数えましょ。一枚、二枚、サラマンダーっ! お皿だけにね(ドッ!

 ……なんか、驚かすまでもなく、ビビられてる気がするけど。……どうでもいいか。

 

 

 カクカクシカジカって感じでね、お城を進むと、でっかい塔にたどり着いたの。なんか……あれだね。童話とかに出てきそう。お姫様とか悪い公爵に捕まってそう。

 ……ムラクモちゃん的に、こういう塔を見かけた時って、壁をさ、よじ登りたい。そんでさ、てっぺんの屋根をぶち抜いて、「お姫様、助けに参りましたよ。白馬の王子でなく、あなたよりも圧倒的にプリティでラブリーなムラクモちゃんが来てしまったことには残念でしょうがね」とかやってみるの、ロマンだよね。

 ところでこのプリティでラブリーなムラクモとかいうやつ、けっこうウザいですわね。誰よお前。……おっと、わたしだったわ。

 

「お父様! お兄様!」

「おお……! フローゼ……! 無事であったか……!」

 

 塔の螺旋階段をテコテコ昇ってくとね、でっかい扉があったよ。……なんか頑丈そうねって思ったから、ちょっと叩いてみたの。こんこーんって。そしたら吹っ飛んじゃった。……な、なんてもろいんだ。見掛け倒しとはこのことか。もっとたんぱく質を取った方がいいよ。

 ……ところで、うん。中にいる人には被害とかないみたいね。なんかすごく居たたまれない間がカットインしちゃった気がしないでもないケド。……知らない知らない! ムラクモちゃんは悪くないもーん! ……ごめんねゆるして。

 

 アイドルムラクモちゃんのダイナミックエントリーでちょっと水を差しちゃったけど、なんかメガ子は捕まってた家族と再会できたみたい。……なんかそんな感じの雰囲気だよね? 事情とか聞き流しとるから全然覚えてないけど、ムラクモちゃんは展開に詳しいからわかるんだ。知ってる知ってる。

 そんでひとしきりワチャクチャしたメガ子父とメガ子兄から、「ところでお嬢さんってばどなた? かわいいね」みたく聞かれたので、「泣く子も黙るムラクモとはわたしのことよ!」的に自己紹介しといたよ。

 ……全部嘘です。なんか普通にメガ子が紹介してくれて、ありがとうを言われたのを賢そうな顔して聞いてただけでした。うん。

 

 

───

 

 

 なんだっけ。うーん……。

 テッカリ彫刻だっけ? なんかそんな人。……人? 彫刻なのに?

 まあなんでもいいけど、その人をやっつけに行くんだって。

 

 どこにいるか心当たりとかあるのん? って聞いたら、執務室にいる可能性が高いよって。……ただし、騒ぎが起きる前なら。

 こうなっちゃうと、変わらず執務室でふんぞり返ってるのか、それともこっそり逃げ出しとるのかわからんちんって。ほへー。

 

 いちおう、逃げだしてない可能性はけっこうあるみたい。

 なんか……“二つ名持ち”の人を雇ってるからって。メガ子達ごとき、いつだって粉砕できちゃうぜ! って慢心してんじゃないのん? ってことらしいよ。

 ふっ、その慢心がお前を殺すぜ……ドヤァ。ってことね。なるへそ。

 

 

 んで、執務室。

 真ん前の扉のとこまで来たけど、人の気配はそんなに多くないね。正直、お部屋の中にたむろってる気配も似たり寄ったりで、そう強い人、居そうじゃないケド……。

 よっぽど擬態が上手い人なのかしら? ムラクモちゃんは最強だけど、不意打ちを食らわないわけじゃないからね。うん。

 

 つーことで、たのもーたのもー!

 お部屋に入るとね、なんだか白スーツに金ぴかアクセサリーゴッテゴテの針金がいたの。あ、針金みたいに細っこいおじさんね。……うわぁ。見るからにムラクモちゃんの苦手にするタイプだあ。

 

「やはり居ましたか! レイモンズ・キッカー!」

「忌々しいブランシュバインの娘め! 野蛮な“暴君”の威を笠に、復讐に来たか!」

「……。そういう気持ちが全くないとは言えない。──でも! フーは自分の信じる正しさに従ってるつもりだよ!」

 

 そして始まるレスバ大会。

 ……うーん。ムラクモちゃんが見たところ、優勢なのは……どっちだろ。わかんにゃい。この無能! ムシケラ知能! ムラクモ! ……言い過ぎ!

 なんか二人してあーだこーだピーチクパーチク言い合いしてんだけどねえ、先に手をあげたのは彫刻おじさんだよ。

 つまり……おじさんの判定負け! う、疑うでない! ワシは公平に判定したのじゃー!

 

「“狂い咲き”! おい! “狂い咲き”! ……なぜ来ない!」

 

 そんで、おじさんったら一生懸命喚くんだけど、誰も来ないの。

 無駄だって思ったのかしら。「これだから商人の使い走り風情は」ってね、吐き捨てて……護衛の人達かな? 次はその人達に「やれ! いけ! 儂を守れ!」って唾を飛ばしまくったの。

 護衛おじさん達はねえ、

 

「で、でも……。相手は“暴君”ですよ……?」

 

 つって、武器捨てちゃった。

 助けてくれる人がいなくなっちゃったんだって思ったんだね。もうダメだぁって感じにうなだれちゃったの、彫刻おじさん。小声で何がぶつぶつ言っちょる。

 そんなおじさんを見てね、メガ子ってば困ったような顔して、

 

「……寂しい人」

 

 だって。

 ちょっ、やめてよ。それムラクモちゃんにも刺さっちゃうんですケド。ムラクモちゃんの強化ガラス製のハートに傷がついちゃうよ。かすり傷。

 

「……らぬ」

「ん?」

「終わらぬぞ! 儂はこんなところで終わるものか! 貴様! “暴君”とかいったな! 儂に手を貸せ! ブランシュバインは確かに尊い血筋だが、実権を持たぬ!

 ……わかるか? そやつらごときに手を貸したとて、貴様はそれほど得をせんということだ!

 儂を見よ! 評議会筆頭として権勢を欲しいままにし、国とて今や思うがままよ! 理解したらば儂を助けよ、探索者! 哀れで蒙昧な守銭奴よ! 貴様とて金のためにやっておるのだろう! 正義や大義などどうでもいいのだろう! ならば、儂を助けよ! 褒美は思いのままであるぞ!」

 

 ふーん……。

 ……まあ、確かにねえ。

 わたしってば、メガ子みたいなご立派な理想は持っちゃないよぉ。当たっとる当たっとる。ズビシィ! いて! 突かれちまったぜ……図星をよ。なんてね。

 でもねえ。一つ気に食わないこと、あんだよね。

 

「……そっかぁ。あなた、お金たくさん持ってるんだもんね。いっぱいくれるの?」

「え……? あ、“暴君”様……?」

「そ、そうだ! 報酬は望むままであるぞ! ……なんなら、儂の愛妾として面倒をみてやっても──」

 

 ドゴッ!

 

 ……あ、いけない。ついイラっとして物に当たっちゃった。彫刻おじさんのお部屋の壁が崩落しちゃったよ。ごめんねえ。

 

「──へ?」

「……お金いっぱいもらえるのはうれしい。でも、断るね。……わたし、他人に値踏みされるのって、大っ嫌いなの」

「や、やめろ! 何をする気だ!? 儂を殺すのか!?」

 

 殺さないよぉ。

 腐っても鯛。くたばり損なっても魔法少女なんだもの。魔法少女は人を守るものであって、倒すものじゃないでしょ?

 だから殺さないし、怪我だってさせないよ。うん。

 

「大丈夫、殴ったりしないよ。……ただ、あなたの全財産……根こそぎむしり取るだけ。それだけだよ」

「──は?」

「どこにあるの? お金。教えてよ」

 

 腹は立つけど、だからといって暴れ散らかすほど、ムラクモちゃんはガキじゃねえのだ! 我慢できてえらい!

 それに、別にわたしがどうこうしなくたって、メガ子がいい感じにするんでしょ。……たぶんね。おそらく。メイビー。

 

 それでも彫刻おじさんね、けっこうしぶとくヤダヤダって駄々っ子こねて抵抗するもんだから、またちょっとイラっとしちゃって、ほんのちょろっち。ちょっとだけだよ。荒っぽいやり方で聞き出しちゃった。

 も、もちろん、傷一つ付けてないよぉ。……誰に言い訳してるでごわすの? ふっ、他人は誤魔化せても自分にウソは付けないもんさ……なんつって。

 

 

 ───

 

 ヨーソロー、ヨーソロー!

 海の冒険家ムラクモちゃんが、宝島から戻ってまいりましたよぉ。今回の船旅で見つけた彫刻おじさん島にはねえ、めちゃんこたくさんの金銀財宝がありましてござる。やったねハッピー! 大金持ちだぁ!

 ……なんてね。このお金は受け取る気ないの。なぜなら最強だから! ムラクモちゃんはマジで強いので、お金がなくたって生きてけるよ。

 

 でもねえ、ムラクモちゃんと違って、このお金を必要としてる人ってけっこういると思うの。モンスターくんがめちゃくちゃやったせいで王都もボロボロだし、ムラクモちゃんと同じで路地裏暮らしの人だっているみたいだもんね。だから、このお金、その辺にバラまいて回ろうかなって思ったんだけど……。

 

 やめたの。

 王都のことなんかよく知らないわたしが適当にやるより、ちゃぁーんと届けてくれそうな人に心当たりあったからねえ。

 

 それって誰なの? いったい誰!? またまたとぼけちゃってぇ。……メガ子だよ。

 んで、彫刻おじさんのドデカい金庫を王城に置いて来たってワケ。守衛っぽい黒服おじさんには「頭おかしいんかコイツ」って目で見られちゃったけどね。……迷惑ついでに、メガ子に言伝も頼んどいたの。「お金、うまく使ってね」って。

 

 そんでね、お城近くに公園あったからちょっぴり休むことにしたの。

 ……や、宿に戻るのが怖いんじゃないよぉ。おじょー様に怒られるかもしんない可能性を恐れてるんじゃありませんからねえ。

 ……嘘です。マジビビってます。メガ子に出会ってからの冒険に加えて、彫刻おじさん島への航海でもかなり日にち使っちゃったもんね。

 もうっ、こんなに長いこと宿を空けて! やべえバレた! まったくいけないチャリクモね! ひーん、ごめんちゃい。……おろろ~。

 

 

 現実逃避じゃないよ。違うけど……ベンチにもたれかかってうとうとしてたの。

 そしたらねえ、なんだか吐息が聞こえてきたの。変態さんかな? まあ、ムラクモちゃんは可愛いし、仕方ないね。……冗談。

 メガ子だよ。かなり急いできたみたいだねえ。ぜーぜー言って、声が出せないみたい。お疲れさまーバケーション。ひえ、しゃむい……。

 

 メガ子の息が落ち着くのを待ってからね、ムラクモちゃんから切り出しちゃう。

 きっと何か言いたいことあったんだろうけどね。申し訳ないけど、先手は常にムラクモちゃんがいただく!

 

「わたし、華亥ムラクモ♡ 自分語りをするのが大好きな、どこにでもいる女の子♡ ……あなたは?」

「えぇ……? いや……。んんっ!

 ……失礼いたしましたわ。わたくし、フローゼ・バーム・ブランシュバインですの。以後、よしなに」

 

 フローゼ。

 フローゼ、フローゼ、メガ子はフローゼ……。うん、覚えた……かもしんない。忘れちゃったらごめんね。でもなるべく覚えとくよ。

 ……友達の印にムラクモちゃんフィギュアあげたかったけど、そういや、王都に来る前にヤンキーくんにあげちゃったんだった。

 

 うーん、仕方ないから、ムラクモちゃんハンカチあげるよ。狼くんのゴワゴワ毛並みむしり取ったやつ。ハンカチっていうか、毛皮。

 ちょっと待ってね。これに生命維持の魔法をかけて……と。はいどうぞ。

 

「え? いやこれ……。これなに? え? 唐突に自己紹介したと思ったら、ピカってしてなんか変な毛皮渡されて……意味わかんない! どういうこと!? ちょ、“暴君”様!? どこ行くんですか! 説明して!」

「帰るよ。友達が待ってるし。……あ、フローゼ。なんだかすごく、ヒゲモジャスキンヘッドみたいだったよ」

「何それ!? どういう悪口!? フー、髭なんて生えてないし、髪の毛ふさふさだもん!」

 

 つーことでね、ばいばい。

 ……ちょっと前に卑怯だって怒ってくれたの、ヒゲモジャスキンヘッドみたいで、なんかちょろっち懐かしい気分になったよ。

 

 ちなみに。

 宿に帰ってみたら、案の定おじょー様に心配かけちゃってたみたい。

 実家から戻ってみたらどこにもいないから心配したのよって、怒られちゃった。

 ごめんちゃい。

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