くたばり損ない魔法少女わたしの独りゴト   作:土縁屋

39 / 40
【配信】ダンジョン最下層を攻略しちゃう件・3

 わたし、華亥ムラクモ♡ 西へ東へ、てんてこ、てんてこ、てんてこまいだーっ! ここはどこ? わたしはいったいどこへ向かっているの? 

 それはね……希望という、春色の輝きに向かってさ……。なんつって。そろそろ地上が恋しい女の子♡

 

 

 ということでね、目的地は北にござるぞ! ソナ先ナビに従いつつ、従いつつ。猛ダッシュだい!

 しゅた、しゅたたーっ! ニンニン!

 拙者、伝説級ニンジャ、三曲輪ムラ助と申す! 鍛え抜いた走りの技術であっちゅう間にボス部屋まで駆け抜けちゃうぜ!

 道々出会っちゃうモンスターくんには気の毒だけども……どけぇい! ムラクモちゃんの道を阻むでないぞ、べしーっ! 愛の平手打ちが無関係なモンスターくんを襲う!

 あなた……ごめんなさい。こんな愛の示し方しかできないムラクモちゃんを許して……出会い系バイオレンス彼女わたし。

 

「ぢょっ、待っ! はやっ、速いでずぅぅ!」

「……ん。ごめんけど、我慢して。……けど、優しく走ってみるね」

「あっ、そ、その道、右ですぅぅ!」

「ん」

 

 

【遭難者ちゃん白目剥いててワロタ。よく気を失わないな……】

【うおっ、急にペース上がるじゃん】

【↑ むしろ今までが丁寧すぎたんだぞ。蛮族ロリのタイラント攻略はこんなもんだ】

【またタイラントロリがモンスターくんを蹂躙してる……】

【優しく走るとは?】

 

 

 ……てな感じでねぇ、グングン進んでどんどこマップを広げちゃってると、またまたエリアが変わったみたい。

 急に周りが明るくなってねぇ、廃棄されたSF研究所って感じの場所に出ちゃった。

 ザイオン遺跡で見た宇宙戦争ロボくんの親戚みたいなやつが、オンボロになってそこら辺にいっぱい落っこちとる。……ファンタジーゲージがだだ下がっていく音が聞こえるよぉ。ぴろろろーん。

 

 ムラクモちゃんねぇ、なんだかネタバレ食らった気分になっちゃった。

 これもしかして……悪魔は悪魔でも、悪魔みたいなロボットが出てくるんじゃないのん? 流れ星とか彗星みたいなロボット襲ってくるんじゃないのって。

 うむむぅ。異世界でも天使・悪魔はレア種族な扱いなのかも。そう出会えるもんじゃないんだなぁ。

 まぁいっか。帰れりゃそれで。

 

 ムラクモちゃんは多忙な身なのでね。空き地ホームレス配信者わたしなので。一刻も早く帰らせていただくよ! こんな場所にいられるかってんだ!

 〜翌日。ムラクモさんが死にました。ええー!

 

 

【マシナリーの残骸すげぇ落ちてる……】

【俺、マシナリーに詳しくねぇけど、こいつら結構珍しいデザインじゃねぇか? 拾って持って帰ったら、ひと財産築けそう】

【↑ ここまで来れて、持って帰れるならな。ここ、宝の山っぽいが生還難易度高過ぎなのよ】

【ムラクモちゃん、マシナリーに興味なさそうで草。それ拾って帰ったらお金持ちになれるよ……!】

 

 

 さらに進むと、培養器っぽいのがずらずら並んでる部屋に出たよ。

 あ、これってあれでしょ。クローン人間とか改造人間とか出てくるやつでしょ。知ってる知ってる。

 ムラクモちゃんも何回か悪の組織討伐ツアーに参加したことあるからね、見たことあるよ。こんなお部屋。自慢風隙自語。

 あれでしょ。パリーンって培養器突き破って襲ってくんでしょ、改造人間。天井とか床突き破ってきたり。……やめてよね! 今のムラクモちゃんは人間を殴らないんだから、そんなの出てきたらちょろっち苦戦しちゃうよ! ソナ先だって守んなきゃなんないのにさぁ。

 

 

【タイラントロリ、謎に警戒してて草。めっちゃすり足で進むやんw】

【何か感じ取ってんのか? 正直、この部屋にタイラントロリを脅かせる何かって無さそうだけど】

【マシナリーの残骸も増えてきたし、これって多分、もとは警備が厚かったってことだろ。……ボス部屋近そうだな】

 

 

 スリスリスリリ。

 いつでも対応できるように、警戒しつつ警戒しつつ。進んでみたけど、けっきょく何もなかったのん。ホッとしちゃう。……まぁ、ムラクモちゃんは最強なので、何が来ても余裕だけどね!

 

 うん。

 そんでそんで、培養部屋を抜けて、オンボロ廊下を進むと、なんか……豪華な扉見つけたの。枠のところにね、青っぽい光と黄色っぽい光が行ったり来たりしてる。

 ムラクモちゃんは有能な上に、察しもよい天才だから、ピンときちゃったね。

 ここ、ボス部屋に間違いないでごわす! ズバビーン!

 

 でもでも、こういうのって、鍵とかいるんでしょ。なんか宝石系とかカード系の鍵を見つけて差し込まないと開かない系の扉なんでしょ。知ってる知ってる。

 ……鍵かぁ。

 探すの面倒だなぁ。はーやれやれ。

 

 とりあえず目的地には来れたみたいだから、ソナ先は下ろしてあげよ。

 ……みなまで言うな、みなまで言うな! 礼などいらぬぞよ。拙僧、己が決まり(ルール)に従ったまで! ……え? ソナ先は嫌がってただろって?

 あー! あー! 聞こえない聞こえなーい! ムラクモちゃんは自分に都合のいいことしか聞きたくなーい!

 

「あっ、あの……? どうされたんです……?」

「……ん。鍵、めんどいなって」

「え? 鍵? ええ?」

 

 

【だから主語! ムラクモちゃん、頭の中身をそのまま言語に出力するクセ、直しなさいって!】

【遭難者ちゃん、タイラントロリと出会ってこっち、ビビったり困惑したり担がれたり、忙しいな】

【たぶん、ムラクモちゃんはボス部屋の扉に鍵がかかってるのかどうかっての気にしてるんでは?】

 

 

「……あ。そういうことか……」

 

 どうしたもんかな、ぶっ壊しちゃおうかなってちょろっち悩んじゃう。そしたらね、透明の板をふむふむ見てたソナ先が「鍵はかかってないですよ」って教えてくれたの。

 

 ……そうなの? よく知ってるねぇ。

 ダンジョン博士でござんすか、そちは? って思ったけど、よく考えたらソナ先、ボス部屋から逃げて来てるんだもんね。そりゃ知ってるか。

 

 そうとわかれば、出陣ぞ! 出会え出会えー! あめがしたしるさつきかな。時は今!

 ……俺、帰ったら屋台おじさんのところで串焼き食べるんだ。なぁに心配するな、すぐに追いつくさ。故郷に残してきた家族の晴れ姿を見るまでは死ねるかよ!

 ってことでね、突入だーっ。のりこめー!

 ……と思ったけどねえ。その前に。

 

「ん。ここで待っててほしい」

「え……? で、でも……」

「戦いが始まったら、守ってあげる自信ない。きっとわたし、攻撃するのに夢中になっちゃうし」

 

 

【あー。それはな……。遭難者ちゃんには無念だろうが仕方ない】

【今までのタイラントロリの戦い見てても、護衛とか得意じゃなさそうだしな】

【自己理解できてて草】

【意外だったわ。ムラクモちゃんって案外他人を気遣うんだな。“暴君”らしく、他人の命なんてゴミ扱いしてんのかとばっかり】

 

 

 申し訳ないが、ソナ先は留守番だ。ムラクモの護衛力はついてこれそうにない。

 ソナ先ねえ、なんか妙に焦りながら「足手まといにはなりませんからついて行かせて」って食い下がってくるけど、ごめんねえ。だめだよ。

 ……気持ちはわからないでもないんだけど、今回は縁がなかったってことで、ご理解いただきたく存じるよ。

 その……悪魔(仮)をやっつけたらちゃんと呼んであげるから、ここで待っててね。

 

 はい。

 気を取り直して、今度こそ突入しちゃう。たのもーたのもー! ばーん!

 ……うわきもっ(素)。

 

 

【うわ……】

【ひえっ】

【これ、本当にマシナリーか? えらく有機的っていうか……率直にキメェわ】

【古代の闇……感じちゃいますねえ】

【ひでえグロ映像だわ。特に髄液滴ってんのが無理】

 

 

 深い深い地の底の底。SFチックなお部屋で出会ったその人は──でっかい脳みそでした。

 

 うん。脳みそだよ。めちゃんこでっかいのがプカプカ浮いとる。

 ボス部屋ね、けっこう広いんだけど、そのお部屋がぎゅうぎゅうに感じる大きさなの。あんまりおっきいから、見上げても天井見えないのん。なんて素敵な地底のお星さまなんでしょうねえ……。思わずパンチ出ちゃいそう。

 

 さておきさておき。

 そんじゃあ、始めちゃおうかなって。今回はねえ、ほんのちょろっち。ちょっとだけだよ。やる気を出しちゃう。

 あふれ出るやる気をお目々に込めてねえ、脳みそロボくんを見つめてあげたの。

 そしたらねえ、びっくりしたのかな? ムラクモちゃんのあふれ出るプリティ力(当社比)に魅了されたのかも。脳みそロボくんったら、魔力干渉をめっちゃ仕掛けてきたの。

 ……これ、地味にヤバい攻撃だな。魔力逆流させて、内部から破裂させるつもりみたい。押し流すみたいに飛んでくる魔力も相当ですよ、これは。

 ……でも、ムラクモちゃんには通用しないけどね! 何故なら最強だから! ……正直、魔法分野は相手をぶん殴るほど得意じゃないんだけど……うん。最強は不得意さえ最強だから最強なのだ……。

 

 むむんっ、と拳を握りこんで跳躍。今回は意味ありのジャンプです。

 ……敵討ちをするんじゃないよ。だって、ムラクモちゃんには関係のない話だし。ソナ先のためにやるんでもないからね。

 君はわたしの通り道の先にいたから、なんとなく滅ぼされちゃうのだ。

 だからねえ、脳みそロボくん。地獄に行って、ムラクモちゃんを存分に恨みたまえよ。脳みそロボットにあの世があるか知らないけどねえ。

 とりあえず線香の一本くらいは立ててあげるねえ。そーれムラクモフラッシュ! ぴかー! うおっ、まぶしっ。なんつって。

 

 冗談は置いといて、ドデカ脳みそのど真ん中に、えいやっとパンチ!

 そしたら脳みそロボくん、ばぶちーん! って弾け飛んでめちゃくちゃになったけど……死んでないな。微弱な魔力の胎動を感じる。

 ……分裂か? それとも核(コア)か? どっちでもいいけど……。肉片に紛れて潜伏してるみたい。肉片から漂う死にかけの魔力がダミーになって、感知がしづらい。……失敗したなあ。

 

 

【シュってして、ピカって光って、気付いたら脳みそが木っ端みじんにぶっ飛んでた……。いったい何が起こったの?】

【↑ さっきまでタイラントロリがいたとこ見てみろよ。すげえ踏み込み痕。……いつになく本気出してるっぽいな】

【終わったの?】

【タイラントロリ、警戒を解いてないな。……まだなんかあるのか?】

【……なんか変な音聞こえないか?】

 

 

 

「……ッ!!」

 

 おーい脳みそロボくん、出ておいでー。ムラクモちゃんと遊ぼうよーってねえ。感知を続けてたの。

 そしたら、どこからともなく音が聞こえてきたよ。モスキート音みたいなやつ。

 これ、単なる音じゃないねぇ。……魔力を超音波みたいにして発してるみたい。イルカとかコウモリとかがやるエコーロケーションってあるでしょ。あんな感じ。

 ただ、この音波のタチが悪いところって、どうも精神干渉の効果が付いてるみたいなの。しかもねえ、壁に跳ね返ったりして、倍倍に効果を増やしてるみたい。

 ……ちょっと、勘弁なさってよ! ムラクモちゃんってば、精神防御はあんまり自信ないんですケド!

 

 おえっぷ。

 なんだか気持ち悪くなってきちゃった。……これ、長引かせたらちょろっちまずいかも。

 ハッハッハッ! 愚かなムラクモよ、年貢の納め時が来たようだな! 何を! 悪の怪人、ダーク脳みそロボ! プリティヒロイン魔法少女ムラクモちゃんには奥の手があるのよ! くらえ! ラブリースマイル♡ ……ムラクモ敗北! なんつって。

 

 ……こんな時は魔力圧縮の出番かもしんない。──そ、そこに気が付くとは……やはり天才。

 なんというアイディア! 百年に一人の天才的発想だよこれ! そうと決まれば、さっそく行動だ! 広ーく浅ーく、お部屋丸ごと圧力かけちゃう。

 そーれドッシーン。うわー! ムラクモが来たぞーっ! どすどすー。重ーい! ……ちょっと! 乙女に向かって重いは禁句でしょ! せめて質量凄いって言い換えなさって!

 

 うん。

 圧力かけてるとね、お部屋の一角にちまっこい脳みそのお人形見つけたの。どったかばったん、すっごいもがき苦しんどる。

 

 こんにちは、また会えたね♡ ってねえ。

 お人形くんのむき出し脳みそにお手々を伸ばし伸ばし。てやーっ、必殺のプリティクローだーっ(愛のアイアンクロー)。 そんで引っ掴んだ頭をねえ、ぐしゃって握り潰してあげちゃう。べきごきー。

 うえっ、なんかべちょべちょしとる。ばっちい。

 

 

【あ、相変わらずのパワー&残虐プレイ……もうこいつ暴君だろ。……“暴君”だったわ】

【何事もなかったかのように遭難者ちゃんを呼び戻しに行って草】

【改めて、タイラントロリの圧殺魔法ってやべえよな。このボス部屋、小さめの村くらいの広さあったのに、普通に効果範囲なんだもんよ。威力よりなにより、範囲の広さが無法過ぎる】

【これ……迷宮都市のダンジョン……攻略されたってことだよな? あまりにあっさり過ぎるってか、脱出のついで過ぎて実感ねえんだが……】

【↑ タイラントロリがやることだぞ】

 

 

 脳みそロボくんも潰したし、これでお外に出られるよね。ってことで、区切りもいいし配信終わろうかな。

 考えてみたら、食べ損ねの丸焼きくんからこっち、ロクにご飯してないし、めちゃくちゃお腹ぺっこりんだよ。お腹空き過ぎて、お腹と背中がガンマ線バーストしちゃうよ。あれが……ムラクモフラッシュの真の姿……。なんつって。

 

「……ん。終わるね」

 

 

【相変わらず唐突ゥ!】

【余韻もクソもねえwww】

【乙かれー。次も楽しみにしてるよ】

 

 

 視聴者数:57047

 

 

 

 ───

 

 

 

 配信を切りつつ切りつつ。ソナ先を迎えに行ったのよ。

 そんでねえ、脱出の転移陣ってどこにあるの? って聞いたら、ソナ先ってば「その前に宝箱とか探した方がいい」っていうじゃない。ええー。めんどくさいめんどくさーい! ムラクモちゃんもう、一刻も早くお外に出て、屋台おじさんの串焼き食べたいのーっ!

 でも、ソナ先も全然譲んないもんだから、ガチのマジでめんどかったケド、宝探し手伝ってあげたの。

 

 宝はねえ、けっこう簡単に見つかったよ。

 やっぱりSFチックな箱。中身は知らない。なんでかっていうと、ソナ先ったら、宝箱見た瞬間、目の色変わっちゃったのん。

 「“暴君”。貴女には申し訳ありませんが、利用させていただきました」って。そうなの? へーって思ってたらねえ、ムラクモちゃんに勝るとも劣らないニンジャ・スタイルで箱持って逃げちゃったの。……大事そうに抱え込んでたし、よっぽどいいもの入ってんのかしら。

 

 ソナ先ねえ、宝箱の近くにあった青白い魔法陣に乗っかって、ビューンって跳んでったよ。……なるほどなー。あれが帰り道か。

 あ。それとね、ムラクモちゃんは有能なので、去り行く背中に一声かけるのを忘れなかったよ。

 

「今、元気いっぱいだなって思ってるかもだけど、魔力で無理してるだけだからね。帰ったらちゃんとご飯食べてたくさん寝なきゃダメだよ」

 

 ってね。

 いやー。できる女は違うぜ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。