くたばり損ない魔法少女わたしの独りゴト   作:土縁屋

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掲示板+【朗報】素敵な船旅ツアーにご招待されちゃう件

221:名無しの太郎

 

だーから 

最強は“謀帝”ロイ・ロー様だっつってんだろ

戦績見てみろよ

オーガクイーン討伐に、プロミネンスボディ・イフリート討伐

 

あのごうつく商人共から聖剣まで贈与されてんだぞ

つまり、これいち探索者以上の影響力を持ってるってことだろ

凡百の英雄とは格が違うんだわ

 

 

230:名無しの太郎

 

>>221

 

“暴君"「その聖剣、二つ名もらう時にピンって弾いて壊しちゃった」

 

 

238:名無しの太郎

 

>>230

 

禁じ手やめろ

 

 

243:名無しの太郎

 

“簒奪王”が順当だろ

探索者で、国まで奪い取ってんのってこの人だけだし。そして、これから先もこの人だけだろ

 

帝国も順調に拡張してるしな

 

 

245:名無しの太郎

 

>>243

 

さては帝国民だなオメー

 

我らが“軍神”と法国に阻まれまくってる時点で最強だとか片腹痛いぞ。帝国は弱小国 お前の母ちゃんはでべそ

 

そもそも、“簒奪王”なんて国を落としたって他、特に伝説もない爺だろ

 

 

250:名無しの太郎

 

“狂い咲き”だろ。王都の闘技場配信見たか?

まさか“二つ名持ち”が配信に出るなんて思わなかったが、あの流麗すぎる剣技と分身魔法見たら納得したわ。

あんなの打ち破れる奴なんているわけねぇもんな

 

 

256:名無しの太郎

 

>>250

 

闘技場配信見たやつなら

もっと印象に残ってる選手いるんだよなぁ

 

つか、“暴君”……短期間で伝説作りすぎだろ

増虫事件に、ギガントデスクロー・アラクネ撃破、迷宮都市ダンジョン踏破……

 

“二つ名持ち”になって一年も経ってないやつの戦績か? これが

 

 

261:名無しの太郎

 

“暴君”ね……

配信なんてしてるから、よほどの雑魚か馬鹿なのかって思ってアーカイブ漁ってみたが……

 

頭トロールのやべータイラントロリだったわ

 

 

267:名無しの太郎

 

つかなんで“暴君”以外の“二つ名持ち”って配信しねぇの?

つよつよ配信者の戦闘もっと見たいんだが

 

 

274:名無しの太郎

 

>>267

 

常識で考えろ

普通に対策されるだろ、ほかの“二つ名持ち"に

 

 

277:名無しの太郎

 

“不死鳥”(ボソ)……

 

 

282:名無しの太郎

 

>>277

 

お前定期的に現れて“不死鳥”推すけど

“不死鳥”って特にこれといった戦績ないだろ

 

 

285:名無しの太郎

 

>>277

 

王国所属の探索者だっけか?

ギルド『導きの階』の

 

ダンジョンに潜るでもなく、戦績を打ち立てるでもなく、何で“二つ名持ち"になってるかわからんやつよな

 

 

289:名無しの太郎

 

>>282 >>285

 

そりゃお前、諦めないからだよ

世のため人のため、地道に依頼をこなし続けたからだぞ

 

一度王都に来てみろ

そして働く“不死鳥”を見ろ

 

──飛ぶぞ?

 

 

294:名無しの太郎

 

>>289

 

キモ

 

 

295:名無しの太郎

 

そういや、ニュースになってたが

魔の海域のモンスター討伐、また失敗したらしいな

今度は『賢しき小人の団』から派遣してたパーティが壊滅したって話だ

 

 

297:名無しの太郎

 

>>295

 

スレチだぞ

消えろ

 

 

 ───

 

 

 わたし、華亥ムラクモ♡ ヨーホーホー! ヨーホーホー! 俺達海賊! 楽しい海賊! 塩辛いお水と過激に暴れまわる水くんがお友だちさー!

 パーリーピーポー、さらばヒップホップ! 波風に憂いを見せる女の子♡

 

 

 はい。

 こないだダンジョンの一番奥まで行ったでしょ。そのことでねえ、お呼ばれしたの。

 メガネさんギルドだよ。そこでねぇ、なんだかすっごい偉そうなおじさんとハジメマシテ、コンニチハ。

 んで、すんごく長い前置きとか、権利がどうとか、あーだこーだクドクド長話されてねえ……眠くなっちゃった。

 

 ウトウトしてたらメガネさんがちゃんと聞けよ? って睨んでくるもんだから頑張ったケド……要するに、「ダンジョン攻略おめでとう! 見つけたモノの所有権は一応キミに帰属するけど、わかってるよね? ダンジョンそのものは都市連盟のものなんだから、つまりキミが見つけたものも俺達のもの! 不満ある? あるわけないよね? お金あげるから文句言うなよな!」ってことみたい。

 そんで、もらったお金だけど、なな、なんと! 金貨四枚だよ。すんごい大金だぁ……。ぐへへぇ。なんて素晴らしいんざましょ。この黄金の輝きは永遠にアテクシのものざますぅ……。

 

……なんてね。

 今回もちゃぁんと寄付させてもらったよぉ。どこの誰に渡したらいいかわかんないから、おじょー様にお願いしちゃったけどねえ。

 ……なんたるこって! この期に及んで他者に丸投げとは……他力本願無責任ムラクモめ! 貴様にこき使われる人間の恨みを食らえ! バキューン!

 しょうがないでしょー。だってムラクモちゃんってば、人を見る目ないないナイロンなんだからぁ……ゆるちて。

 

 

 さておきさておき。

 偉そうおじさんにお金もらって……何日かしてだよ。

 

 それは、ある昼のことでした……。じゃかじゃーん。

 うららかな陽気の下、おしゃれなカフェ(当社比)で優雅なティータイムを嗜む銀髪ミステリアス美少女……ムラクモちゃん。そんな美少女のもとに舞い込む一通の連絡! 「なんて素晴らしい美貌だ! あなたは一億年に一人の超スーパーアイドルの素質を持っている! 全財産貢ぎます!」 そして始まる、キュート&デンジャラスなデスティニー……。ドラマ『百億万ドルの女』ムラクモちゃん脳内で放送中! なんちゃって。

 

 そんなこと考えながらねえ、今のわたしって外見的知性指数が爆上がりしてるな……なんて悦に浸ってたら、またもやメガネさんにお呼ばれされちゃったの。

 ……ええ? またでござるかぁ? 最近多くないっすかぁ? ムラクモちゃんったらこう見えてけっこう多忙なんですケド……。そうなの? 具体的にどんなご用事があるんだい? それは……色々。ご飯したりぃ、お昼寝したりぃ……うん。すっごい色々。

 行きたくないなあ。さぼっちゃおうかな。ムラクモちゃんってば最強だから、お金なくても生きてけるし、バックれちゃっても……うん。行ってきマンモス。

 

 

「指名依頼が入ってますよ、ムラクモさん。

 依頼人はトレンジャー・ゴルディオン社。内容は魔の海域に生息すると見られる魔物の討伐。細かい事情を話しても、ムラクモさん眠くなっちゃうでしょうから手短に行きますが、要するに貿易海路の開拓と理解していただければ。当該魔物は討伐に差し向けた探索者達を全滅させています。

 生還した者は重篤な錯乱状態にあることから、詳細は不明ですが……精神的な攻撃手段を持っていると推測されます」

 

 

 そんでメガネさんギルドへ、ムラクモちゃんがエントリー。

 なんのご用でおじゃるの? って聞いたら、これ。

 

 ……うーん(疑問)? うん(超速理解)。

 ちょっと聞き捨てならないこと聞いちゃったけど……そのモンスターくん、精神攻撃してくるって本当ですのん? 本当だったらヤバいよ。だってムラクモちゃんってば最強だけど、精神防御にはあんまり自信がないんだもの。

 そりゃ、ちょっとやそっとの精神干渉ならどうってことないけどねえ。……これ、行かなきゃダメ? 他の人に行ってもらったり……あ、はい。ダメですか。……世知辛い世の中だぁ。

 ふっ。ムラクモの最期は……近いな。年貢の納め時だぞ、死ねえい! うわー! びびびー。

 

 ……決まっちゃったからには駄々っ子こねてもしょうがないもんねえ。しゃーないから、気を取り直して愉快な船旅ツアーを楽しんでみよ。……海ってそんなにいい思い出ないけどねえ。

 

「あ、今回の依頼……アシュベリー嬢と共同ですから。ムラクモさんだけだと戦闘以外が不安なので、私の方からお願いしておきましたよ」

 

 モンスター潰すだけなのに、お目付け役が必要とはいったい?

 

 

 ───

 

 

 異世界の港町って、なんだかワイワイガヤガヤしてる。迷宮都市もワイガヤしとるけど、種類が違う感じ。

 ……なんだっけ? えーと、魔の怪力だっけ? プカプカモンスターくんのいるところ。そこに向かうのにはお船がいるからって港に来たの。おじょー様も一緒だよ。

 

 露店通りを歩いてみると、そこはかとなく都会感。なんだか珍しいのがいっぱいだぁ……。

 目移りしちゃうなぁってね、お上りさんよろしくキョロキョロしてたら、「迷子になっちゃいますわよ」っておじょー様がお手々繋いでくれたの。……なんかガキ扱いされてるみたいで釈然としないケド、まあいいか。

 

 そんで船着き場を目指してたらねえ、変なの見つけちゃった。

 果物屋さんなんだけどねえ、灰をぶっかけられた赤いまんまるって感じの売っとる。なあにこれぇって聞いたらね、ドラゴノオトシモノっていうんだって。なんか深海に生息してそうな名前。なのにフルーツ。

 うむむぅ。

 それにしても港に果物屋さんなんて珍しいなぁ、なんて思ってたの。そしたらね、「港だからありますのよ」っておじょー様。……今、ナチュラルに心読まれましたか、ムラクモちゃん? …………こわ(素)。

 

「お一つずついかがです? お安くしときますぜ」

「あら。それじゃ、いただこうかしら。……はい、ちゃーちゃんの分ですわ」

 

 くれるの? ありがとう。

 どうぞって差し出されたドラゴノオトシモノを受け取り受け取り。かじってみたら……うえっ。すっぱい甘い! ……もう一口ばくーっ。……やっぱりすっぱい! でもなんか癖になっちゃうお味。

 惚れちまったぜ、お前さんによ……。

 とっても気に入ったので、果物屋さんに袋いっぱいにちょうだいっつってお買い物。先生! ドラゴノオトシモノはおやつに入りますか? ……うーん。──入らない! 何故ならすっぱいから! やったぜ!

 

 

 異世界初の船旅だよ。

 どんなお船なんでしょうねえ。この世界のことだから、ジェットエンジンとかついてたりして。……船のお尻からビーム出しながら進むんだよ。めっちゃ速い。

 

 ……とか思ってたんだけど、実際に見てみたら意外に古風なたたずまい。……魔力をかすかに感じるけど……ロケットは見当たんないし、お尻に穴も空いてない。

 ええ? この世界モノレールもどきあるのに、お船はジェットエンジン搭載してないのん?

 つ、つくづくムラクモちゃんの期待を裏切ってくれる異世界だぜ……ゴクリ。

 

 

 どんぶらこっこー、どんぶらこっこー、よーいよい。

 お船なんだけどねえ、けっこう快速。

 貫禄いっぱいの見た目を裏切っちゃうスピードでビュンビュン進むよ。目的地までそんなにかかんなそう。……これどういう仕組みで速いんだろ。別にそこまで興味ないけど、不思議な気持ち。

 速い分、すげえぐわんぐわん揺れるもんだから、最強ムラクモちゃんの三半規管も揺さぶられちゃって、揺さぶられちゃって。

 思わずブルーな気分になっちゃう……。ムラクモの弱点見つけたり! それは船酔いだったのかぁっ! 情けない奴め、最強が聞いて呆れるぜ! 死ねーっ、ぐさー!

 

 おえっぷ。

 お目々グルグルしてきちゃった。……すみっこの方でじっとしてよ。

 ……それにしても、ムラクモちゃんともあろう者が、まさか船酔いしちゃうなんて……新しい自分、見つけちゃった♡

 

 うん。

 なんとなくおセンチな気分でザバザブ綺麗な海を眺めてるとねえ……地球の海を見た時のこと思い出しちゃう。……なんだか、わけもなく自分語りをしたい気分になっちゃった。

 

 

 ヒゲモジャスキンヘッドがゲボヘドロゲジゲジにかじられた後くらいかな。ムラクモちゃんもそれなりに魔法少女としてキャリアを積んだくらいの時。

 海を解放してこいってさあ、“協命機関”のおじさんに言われたんだよね。そん時には、マジで? って思ったもんだよ。

 だってねえ。地上にだってまだまだたくさん侵略者いたけど……海とか宇宙は地上なんか比べ物になんないくらい宇宙ドデカムシケラがうじゃらこしてたんだよ。

 ……特にヤバかったのが大気圏。ドデカ宇宙トンボがみっちり飛んでて、とんでもなかったの。あいつらすんごいスピードで飛ぶんだよ。ムラクモちゃんが知る限り、最速だったね。

 

 話逸れちゃった。

 地上以上にムシケラまみれだってのに、どこそこの海域の虫をやっつけろってんじゃなくて、海ぜんぶ解放しろってんだもん。ブラックバイト極まれりって感じするよねえ。

 

 まあ、仕方ない部分もあったかもしんないケド。

 ムラクモちゃんだってすごい頑張ったけど、神様じゃないからねえ。助けらんない人も、街だってあったし……魔法少女もヒーローもバンバン死んじゃって人手不足ったらありゃしない感じだったしぃ。

 んだもんなのに、ガチのマジでやるの? ってムラクモちゃんにね、ヒゲモジャスキンヘッドの後任とかって神経質おばさんったら「お前の性能を持ってすれば可能」の一点張りなんだもん。

 ……気乗り全然してなかったけど、やれと言われたことをやるのがアルバイターの使命だもんねえ。世知辛い世の中だぁ。ハイヨロコンデー。

 

 地球の海ってねえ、ドブみたいな緑色してんのよ。ところどころ茶色のグラデーションかかってる最悪の場所なの。臭いも最悪。

 だってのにさぁ。ヘリコプターに乗っけられて、ど真ん中に到着した途端、「行け!」だよ。……ちょっと! ムラクモちゃんの投棄は違法なんですケド!

 

 ……。

 海の中にはねえ、でっかいヤゴとかタガメがススイーって泳いでたよ。そりゃもうすんごい数。気持ちよさげに泳いどるあやつらを見てたら……なんだかもう腹が立っちゃってねぇ。

 ムラクモちゃんはやりたくもないドブ虫さらいに精を出さなきゃなんないってのに、いい気なもんでござんすねって。……チクショウチクショウ八つ当たりしてやる!

 くらえ! 愛と友情と平和の……ドブまみれ女スペシャル! ちゅどーん。ドブ海ムシケラ達は滅びた……完! 

 

 ちなみにこの後しばらくね、ムラクモちゃんったら身体からにおい取れなくなっちゃって、人に会うたび「オメーマジくせーな」ってお顔しかめられまくったんだよねぇ。ラフレシア系魔法少女わたし。

 ……なんだよもう! ムラクモちゃんを不法投棄したのそっちでしょ! もっと気遣ってよね!

 ぷんすかぷんぷん!

 

 

 ───

 

 

 ヨーソロー、ヨーソロー。アホイ!

 

 しょうもない思い出に思いを馳せてたらねえ、霧が出てきたよ。……おおう、なんだかいかにもって感じの雰囲気。

 船員さん達も浮き足立っちゃって、「こっから先は俺達行きたくねえからアンタらで行ってくれ」って。ちっちゃい手漕ぎボートがあるから、それで行ってくれって言われちゃった。

 ……うーん。まあ、そりゃそうか。

 

 

 ムラクモちゃんは感謝ができる礼儀正しい子なので、連れてきてくれてありがとうをちゃんと言って、ボートへゴーゴー。……よく見たらちょっとマヌケなデザインしてますわね、これ。

 まあいいや。

 オールを握り握り。大海原へと出発だ! ムラクモちゃんとおじょー様の大冒険はここから始まるんでゲソ!

 

 

 てこぎー、てこぎー。

 霧の海はなんだかとっても静か。こんなところにモンスターくんがいるって本当なのかな? どっちかっていうと、お化けの方が出てきそうだケド……。ちなみにムラクモちゃんは幽霊とか大丈夫だよ。なぜなら最強だから! 襲ってきたらパンチでやっつけたらいいもんね!

 うらめしやー……え? そんなところで商売してないで表通りでやったら繁盛しますよ! 裏飯屋、なんつって。……ぶるぶる、冷えてきましたねえ。お化けの仕業かな?

 ……。

 

「……?」

「どうしましたの、ちゃーちゃん?」

「……ん。わかんない。わかんないけど……今、何かに触られたような──」

 

 え? と周りキョロキョロおじょー様。……何も感じてないみたい。

 気のせいだったのかしら? ……でもさっき、確かにひんやりした感触がムラクモちゃんに触った気がしたんだけど……。キャッ、まさか……お化け!?

 悪霊退散、悪霊退散! ……べ、別にビビってなんかないんだからねっ。だ、だってわたし最強だしっ。

 

 お、落ち着こう。まずはクールにね。クルクルクール。はとぽっぽー。……お前は何を言ってるんだい?

 ふ、普通に考えて、お化けとかじゃなくって、魔力を使った攻撃に決まってるよ。お化けとかヒカガクテキだし……そもそもモンスター退治に来てんだもんね、うん。

 ムラクモちゃんに気取らせずに一撃入れた手腕は買うけど……。ふっ、無謀な攻撃をしたのは命とりだったな!

 

 そーれ魔力感知だ! すぐに見つけてやるぜ! ばびびー。

 ……って意気込んでみたけど、ダメみたい。何故って、この霧……魔力なの。

 そのせいで感知がかく乱されちゃって、なんもわかんない。……もうっ、肝心な時に役に立たないんだから! 無能! マヌケ! あんぽんたんムラクモ! ぐすんぐすん(嘘泣き)。

 

 ……うーんと考えて、ピカーンとひらめき!

 感知がきかなくてわかんないんなら、いっそのこと圧殺魔法で海の水全部どかしたら、さすがに隠れ場所もなくなるのでは!?

 

 なんてナイスアイディア! ナイスすぎて、できれば地球の時に思いついておきたかった!

 ……とにもかくにも思い立ったがキッショウジ! じゃあやったるでよ! ってねぇ、魔力を練り上げた時だったの。

 

「──ちゃーちゃん、下ですわ!」

「……ッ!」

 

 海水がね、山になったの。

 ……違った。

 山みたいに海水が持ち上がったの。お水はね、なんだかすごく生き物っぽく蠢いてて、失敗したゼリーみたいな質感。ねばどろゼリー。

 そいつがね、ボート丸ごと……おじょー様とわたしのことを吞み込みにかかって来ちょる。

 

 無抵抗でやられるつもりなんてサラサラないよ。……むしろ、そっちから出てきてくれたんなら、お望みどおりにばぶちーん! ってやったる!

 ねばどろゼリーめが、ムラクモちゃんに出会った不幸を呪うんだな……ふっ。

 むむん、ってね。拳を握ったの。そんで必殺のセンチメンタル・デススマッシャー(普通のパンチ)をお見舞いしたろうとした時──その時に、聞こえちゃった。

 頭の中に……直接ぶつけるみたいに。どこかで聞いたような声がした。

 

【──魔法少女は……人を救うものなんでしょ? なのに……なんで助けてくれなかったの?】

 

 ……って。

 思わず止まっちゃった。

 

「──!」

「ちゃーちゃん!」

 

 ──精神攻撃! って思った時には遅かった。

 動きを止めた一瞬が、どうしようもなく致命的だった。

 ねばどろゼリーが大きくお口を広げて──わたし達、食べられちゃったの。

 

 グルグルの水底へ……流されてく……。

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