くたばり損ない魔法少女わたしの独りゴト   作:土縁屋

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【朗報】ムラクモちゃん、頭脳プレイで解決しちゃう件。……あと、親友

 グッドモーニング、グッドモーニング。

 今日のムラクモちゃんはちょっぴりダウナーな気分のお目覚め。

 

 ここはどこ? わたしはだれ? お鼻をスンスン。……ふっ。どことなく…… 懐かしい臭いがする風だ。なんつって。

 ……ムラクモちゃん達ってば、海のど真ん中で、ねばどろゼリーくんに食べられちゃったんだよねえ。

 

 だってのに。起きてみたら……なな、なんと! 周り一面懐かしい景色ですよ。びっくりしちゃうよねぇ。

 ……もちろん、ムラクモちゃんは有能なので、これが幻なんだってすぐにわかっちゃったけどね。だってそこかしこから魔力感じるもん。

 けど……もう二度と見ることないだろうなって思ってた地球の街並みだよ。

 ……うーん、ただでさえおセンチ気味な気分なのに、もっとセンチメンタルになっちゃうよぉ……ちなみに百足はセンチピード。ゲボヘドロめが! くらえ! 滅びの光だーっ! じゅーっ。哀れムラクモは灰になった。……残念!

 

 ……とりあえず、気を失ってるっぽいおじょー様の様子を確認しとこう。

 

 ……うん。

 命に別状はなさそう。運が良かったねえ。

 ……でも野ざらしで寝てるのってお腹冷やしちゃうかもしんないしぃ。……たき火でも起こしたげようかな……って思ったけど、ムラクモちゃんが火を放ったらこの辺一帯火の海になっちゃいますわね。

 でもでもここ……ねばどろゼリーのお腹の中ですよぉ。……げへへぇ。天才的閃きをしちゃったぜ! ここで食らえムラクモちゃんファイヤー! めらめらめらー。貴様を体内から浄化してやるぜ! ひゃーははー! ……なんてねえ。おじょー様いるのにやんないよお。

 とりあえずムラクモちゃんの羽織をかぶせときゃいいかなって。

 

 時折ムラクモちゃん脳内にラブコールしてくる激辛ボイスを聞き流しつつ、聞き流しつつ。なんとなく耳元でプリティ・モーニングコールを連打してたらねえ、おじょー様起きたよ。

 んーで、ここはどこ? わたしはだれ? って感じになっとったから、先住民全知全能ムラクモちゃんが真実を教えて差し上げちゃう。

 

 ……“ここ”かい? ふっ。おじょーさん、知り過ぎは命を縮めるぜここはラブリームラクモちゃんワールド(食い気味)! ありとあらゆる並行世界のムラクモちゃんが集う……スーパーアイドル空間だ。

 嘘だよ。ちょうど見える位置に……ずっと昔にドデカミミズにぶっ壊されたマイハウスあったから「あれお家だよ」って教えといたのん。

 

 

 ───

 

 

 ちょっとこの後のことはあんまり語りたくないんだケド……。

 ……ムラクモちゃんが積み上げてきた黒歴史がねえ、上映会されちゃったのよ。なんかこう……頭の中にお手々突っ込まれるような感じしたと思ったらさあ、ほわーってなって……。そして始まる過去のムラクモちゃんお茶目エピソード集。

 ……うん。

 いやん、えっち! おじょー様にムラクモちゃんの全部……見られちゃったね♡ なんつって。……いや、ホントにごめんねえ。つまんないもん見せちゃって。

 

 ムラクモちゃん黒歴史劇場をおじょー様に見られつつ、見られつつ。帰り道を探そうってんだけど、行けども行けども滅びた故郷。

 何が目的で、こんな陰湿な作戦やって来てんのかわかんないけど……。ふっ。残念だったな。ムラクモちゃんには通じん!

 

 ……本当だよ。

 滅びた故郷の風景も……黒歴史の放映も、頭ぶわーもどうってことないの。

 ……本当のホント。

 だってわたし最強だもん。最強なんだから、メンタルだって鋼鉄をはるかに上回るタフさなのよ。……む、ムラクモ。な、なんというメンタルなのだ……心が頑丈過ぎて黒光りして見えるぜ……わかりましたか? これがメンタリズムです。

 

 でもね。

 ほんのちょろっち……ちょっとだけだよ。

 

【──魔法少女は……人を救うものなのに。なんで助けてくれなかったの?】

 

 って声。

 ……こういうの、ムラクモちゃんの心にクリティカルヒットしちゃうのん。

 そんでねえ、そんな声をリピートリピートしながらヒゲモジャスキンヘッドの死に様を中継されちゃうってんだもん。……さすがに参っちゃうよねえ。

 

 ……でも。ちがう声がね、割って入ってきたんだよ。急に。

 一緒になって飛んできた……かわいいかわいいってうるさい爆音と一緒にね。

 

 「ちゃーちゃん大好き宣言」だって。……ちょっと意味わかんない。

 そんで、なんか色々言われたけど……一番びっくりだったのは「わたくしも隣に立っていたいですわ」ってやつ。

 ……おじょー様って、物好きなんだねえ。

 

 ……救われた、なんて言わないよ。

 だってムラクモちゃんは魔法少女。

 ……例えそれが油ギットリおじさんの鼻紙程度の意味でしかなくっても。全部を助けらんなくったって、くたばり損なったって魔法少女なんだもん。

 ……誰かを救う側でいたいよ。

 でも……友達。……友達か。

 

 …………なんだろ。

 なんか、胸の奥のところ……くすぐったい。

 

 熱量に当てられちゃったのかな。よくわかんない。

 でも無性にわたしのこと、話したくなったの。おじょー様にわたしのこと知ってほしくなっちゃった。いいの? 隙自語しちゃうよぉ? 覚悟できてる? 

 

 おーけー!

 内容はねえ、自分でもよく覚えてない。あるよね。テンション上がって早口トークしちゃうんだけど、終わってみたら何を話したか覚えてないって。内容が無いよう。事実陳列罪やぞ。

 夢中になってお話してたら、頭の中にガンガン響いてたあの声がもう聞こえない。……ヒゲモジャスキンヘッドの声が聞こえなくなった。

 あの……。だからおじょー様。その音響魔法、止めてもらっていい? えげつないくらいうるさいのん。 ……え? 「わたくしの親友宣言(ラブコール)をもう少し聞いてほしい」って? 

 あの……。このままだとムラクモちゃんのお耳……使い物にならなくなっちゃうんですケド。

 

 

 ───

 

 

『ジツニ感動的ダ……。腐臭ガ漂ウヨウナ臭イ展開ニ……涙モロイ私ハ滂沱ノ涙ヲ流シテシマイソウダヨ』

 

 もっともっと話聞いてほしいなってちょっとテンションアゲアゲになってたところに、妙に水っぽい拍手の音が邪魔してきたの。

 む、なにやつ! 名を名乗れぇい! ふっ。我が名は閃光のムラクモ。貴様の背後はもらったぞ! ぎゃああーっ! 鈍足のムラクモーっ!

 ……音の方見たらねえ、変な金魚浮いとる。……いや、これ金魚? 人魚……魚人? 金魚人?

 

「……どうも、あなたはちゃーちゃんの記憶から生まれた幻影って風じゃありませんわね」

『キミ、アシュベリー嬢ダッタネ。

 コノ期ニ及ンデ、ソノヨウナ蒙昧ヲ抜カス……幸福ナ知能ノ持チ主デ、大変結構ナ事ダヨ。道理デ忌想結界ヲ物トモシナイ訳ダ』

 

 口の悪い魚だなあ。

 ところで、あの粘りっこい陰湿攻撃って……犯人は貴公ござるのん?

 そうだとしたら……ムッカァ!

 ムラクモちゃん久々に怒りを覚えておりますよ。……その怒りの総量! ……なな、なんと! すっごいめちゃんこどでかいレベルだーっ! どかーん! 

 ……なんつってねえ。

 

 嫌なもん見せやがってチクショウ! って気持ちがあるのは否定しないケド……。まあ、やり口を非難する気はないよ。

 ……精神防御の低いムラクモちゃんとはいえ、ここまでやってくれるとは、むしろショーサンしたげたいくらいの気持ちでゲス。ご褒美のムラクモちゃんスマイルあげるよ。ニコー! あ、無視された。むっきー!

 

 うん。

 ……非難する気はないけどぉ。それはそれとして、お返しはさせていただくねえ。

 え? 理不尽だろって?

 

 むふふん! ムラクモちゃんってば、“暴君”なんだよねえ。だから、気に食わないやつには理不尽をぶつけちゃうよぉ。……え? 理不尽はいつものことだろって? ……ちょ、今キメ台詞の最中なんで!

 

 

 つーことでねえ、はいどーんっ!

 えいやって拳を握って、金魚人くんへダッシュダッシュ! くらえ……っ! これが貴様に味あわされた積年の恨み(逆恨み)の味! 友に誓った無念の奥義! センチメンタル・デススマッシャー(単なるパンチ)だー! ばちこーん!

 ムラクモちゃん渾身のパンチが罪なき金魚人くんを襲う! そしたらね、金魚人くんったら血煙になって吹っ飛んじゃった。……ふっ、肉となればみな仏。成仏しろよな。

 ……やったか!?

 

『……残念ダケレド。華亥ムラクモ。君ニ僕ハ殺セナイ。コノ空間ニイル限リ、僕ハ不滅ダカラダ』

「……そうなの? なんで?」

『君ハツクヅク馬鹿ダナ! 敵ニ向カッテワザワザ能力ノ種明カシヲスル馬鹿ガドコニイルッテ言ウンダイ!?』

 

 そっかぁ。教えたくないんじゃしょうがないねえ。

 ムラクモちゃんは模範的人格者だから、無理強いなんかしないよぉ。

 ……なので。

 

「……じゃあ死ぬまで殴るね」

『無駄ダッテ言ッテルダロ! ヤメロ!

 ム、ムラクモ……。種明カシハシナイガ、一ツイイコトハ教エテアゲル。……僕ガドウシテ君ノ過去ヲ弄ンダカ……』

「ふああ~」

「あらまあ。おねむですの、ちゃーちゃん」

 

 うん。寝起き最悪だったからねぇ。

 ……殴って死なないんなら、圧し潰してサラサラにしちゃお。

 

 そーれ魔力圧縮だよぉ。べきべきー。

 

『聞ケッ──ン? ウワアアアアアアアア!』

 

 ベキゴキー。

 金魚人くんねえ、ムラクモちゃんプレッシャー(魔力圧縮)をくらって折りたたまれて……カラカラのまんまるになっちゃった。

 ……なんかきったない色してるなぁ。これじゃまるでゲボヘドロビー玉だよぉ。……ゲボビー大人向けの配色で発売中! なんだって!? そんなもの即刻発売停止にしたまえ! ……ごもっともー。

 握り潰しちゃお。べきさらー。……さらば金魚人くん、来世は立派な砂として大成してね。

 

 ……なんてやってたら、空がピカーって光ったの。うおっ、まぶし!

 な、なんじゃなんじゃ! 天使降臨か!? そうです。わたしがあの有名な……ラブリーエンジェル・ムラクモです。世界滅亡ビーム。びびびー。

 

 ……冗談。

 金魚人くんだよ。なんかどこからともなくぬるりって感じに出てきたの。

 

『不滅ナンダッテ言ッタダロ!! 僕ハ死ナナイ!!』

「えぇ……。しつこいなぁ」

「ちゃーちゃん、ちゃーちゃん」

 

 困ったなあって思ってたらねえ、おじょー様がちょいちょい。

 なあに? ムラクモちゃんになんかご用? 親友と化したおじょー様のお願いならなんだって聞くよ。

 しかも……今ならお得なセール中! その上おまけでムラクモちゃんヘッドをごしごし撫でる権利までついてきちゃう! ……な、なんてお得なシステムなんだ……。まさに大出血、大セール! 感謝したまえよ!

 うん。

 

「あのお魚さんったら、さっきこの空間にいる限り不滅だとか言ってましたわ。……それって逆に、この空間がなくなったら消滅しちゃうってことでは?」

「ほへー……。じょ、……じょーちゃんは頭いいねえ」

「うふふ。それほどでもなくってよ」

『ダガ、ソレガワカッタトコロデドウスル? 君達ニ手立テガナイノハ揺ルガナイ。世界ヲ壊スナンテ誰ニモデキッコナイモノ。

 ワカッタカイ? ワカッタラ……サァ。絶望シテオクレ。アノ甘美ナ感情ノ味ヲ僕ニ頂戴?』

 

 ……うーん。

 実をいうと、この世界そのものをぶっ壊すのはわりと簡単にできちゃうよ。何故ならムラクモちゃんは最強だから! 魔力圧縮をこの世界そのものにかけてぺちゃんこに崩壊させたり、全力ムラクモちゃんパンチでぶち抜いちゃったり。えいやっ、ぺしぺしーって。……すごい威力だぁ。これがムラクモか……。

 

 ……でも残念。できるけど、できない。

 だって、そのレベルで本気出しちゃうと、おじょー様が巻き添えでぐちゃぐちゃになっちゃうしぃ。

 ……せめてこの空間の座標がどこかってわかったら、次元ビリビリに破いて外に出られるんだケド。……ムラクモちゃん、ここに飛ばされるときに気を失ってたから、わかんにゃい。……もうっ! 肝心な時に役立たずなムラクモなんだから! へへへ……すいやせん。

 

 つまりこれって……打つ手なしってことなの? なんだかネットリ口調の金魚くんに言いたい放題言わせておくってことなの?

 ふっ。安心したまえ。こういう時のために、有能なムラクモちゃんは手を打ってある。……それってなぁに?

 

 ずばり、ハッタリだよ。

 あるでしょ。任侠映画なんかで……。

 「お前……ワシにこんなことしてタダで済むと思っとんのかい!? バックに誰が付いとるか知ってのことなんやろなぁ?」とか言うやつ。あれやったらいいよねって思ったの。

 

 ……金魚人くんってば、ムラクモちゃんの昔を全部を見たみたい。なら、わたしがどれだけ人外を潰してきたかもわかると思うの。

 「跳ばんかいワレェ」つってちょっと凄んだらびっくりして「わたくしが悪かったです。これからは心を入れ替え、海に帰って平穏に暮らします」って言ってくれるかも。……まあ、金魚人くんには死んでもらうけどねぇ。

 

 ところで、そういうハッタリやる人って……。

 「だから何だよ」って無視されちゃって、だいたい破滅しちゃってる気がするんですケド。もしやムラクモちゃんも破滅するのでは?

 

 きーっ! あなたっていつもそう! 冷静ぶって俺はわかってる感出して! じゃあ代案出してよ! ぶっぶー。出せませーん。

 ムラクモちゃんの知能はムシケラレベルやぞ。……ばかあほ! 無能! ムラクモ!

 

 うん。

 他に考えもないし……やってみよ。 人生は挑戦だぜ……若人よ。……できるだけ怖く見えるように、賢そうな顔しとこう。

 

「……本当にできないと思う?」

『……エ?』

「見たんでしょ、わたしのこと。……だったら、世界の一つや二つ、千切り潰すくらいワケないって……わかるよね?」

『──ッ!? ハッ、ハッタリダ! ハッタリニ決マッテル!! ココニハ貴様ノ友人モ居ルンダゾ?! 出来ル訳ガナイ!』

 

 ご名答ですぅ。

 よ、よくぞこのムラクモちゃんの神算鬼謀を見破ったな……。ふん! 貴様ごときムシケラ知能がやる浅薄な計略などお見通しよ! やーいやーい! べろべろばぁ!

 ち、ちくしょう……。だが……俺達は旅立ってしまったんだ……この広大な宇宙というフロンティアに……。いまさら戻れるものかよ!

 

「どう思ったって知らないケド……。

 人外を前にした華亥ムラクモが……。──本当に人間を優先するって、思ってるの?」

『ヒッ……。ボ、“暴君”……ッ! ……ア、アシュベリー! イイノカ!? アイツハオ前諸共、コノ世界ヲ破壊シヨウトシテイルンダゾ!!』

「わたくし、ちゃーちゃんのこと信じてますもの」

『ア、アリ得ナイ……ッ』

 

 金魚人くんったら、黙り込んでプルプル震えとる。……あれ、うまくいきそう。

 ……なんてこったい! まさかムラクモちゃんの作戦がこうもうまくハマるなんて! これで名実ともに銀髪知性派ミステリアス美少女の称号……名乗れますよね?

 ……ふっ。愚かだなムラクモ。獲物を仕留める前から舌なめずりとは……その傲慢を償え! ぐさー!

 

 ……ダメ押しに魔力をお手々に集めてチラチラ見せびらかしてあげるとねえ、金魚人くんったら音を上げてくれたよ。

 『フ、フザケルナ! コンナ奴ラニ付キ合ッテラレルカ!』だって。

 呼んだのそっちのくせにー。殺しに来たのはこっちだけどねえ。……じゃあ正当防衛では? ……聞こえませーん!

 

 金魚人くんがお手々をフリフリーってするとね、なんか足元からお水がせり上がってきたの。……あの霧の海でわたし達を呑み込んだねばどろゼリーだよ。あれよりだいぶちっちゃい感じだケド……。

 ……ムラクモちゃん天才だからわかっちゃったけど、これ現実の方の世界に戻れるんじゃないのって。計画通りなんじゃないのって。やったぜ。

 

 ところでこれ、おじょー様だけ取り残されるとかないよね? 

 そう思って見てみたら……そっちもねばどろが襲い掛かっとる。……なんだか絵面がよろしくないけど、ホッとしとこう。

 抵抗せずにねばゼリを受け入れるとねえ、暗い水の中に引き込まれちゃうような感覚。……意識飛ばないように防御しとこ。

 

 

 ───

 

 

 なんだか……長い夢を見ていたような気がするぜ……。帰ってきたんだな、この惑星に……。

 

 なんだろうね。乗ったことないけど、ウォータースライダーってやつかな。

 あれに乗って滑るような感じがしたと思ったら……ムラクモちゃんったら普通に海中へ吐き出されちゃった。

 ……目がグルグルするぅ。三半規管最弱わたし。

 というか、わたし達ボートで来てたでしょ! なのに海に不法投棄するなんていけないんだぁ。……まったくまったくぅ。なぁんて不親切な金魚人くんなんざましょ。

 

 ところで気付いちゃったんだケド……。

 わたしが海でプカプカやってるってことは、一緒にいたおじょー様も一緒ってことじゃない? ……ムラクモちゃんは最強ゆえに海中に沈んでもどうってことないけど、おじょー様は普通に溺れちゃうんじゃないのって。……探したげよ。

 

 ということでね、きゅいーん!

 こ、ここで出たかーっ! ムラクモちゃんお得意の魔力圧縮ーっ! さすがに海の水ぜんぶ持ち上げるのは巻き込み事故起こしちゃいそうだから、霧の海一帯の水をねえ……ぱかーってやって、押さえとくよ。……これが、ムラクモーゼの奇跡って……やつか。しゅばらしぃ……。

 ワシは決めたぞ! この大地にゴルフ場を建設する! ええー!? でも万が一水が戻ってきたら……。知らない知らない! そんなのはお前らが考えておけ! ……そうして生まれたのが竜宮城ってワケ。……なんつって。

 

 おじょー様はねえ、けっこう簡単に見つかったよ。

 近くに行って様子を見てみたら……気を失ってるみたい。……うん、命に別状はなさそう。でもびしょ濡れだし、あんまり長引かせたらよくないな。

 

 ちょろっちだけ待っててねえ、おじょー様。

 急いで金魚人くんぶっ殺して……港町まで戻るからねえ。

 

 

 そうと決めれば、さっそく行動、行動! わーわー!

 でも……居場所もわかんない金魚人くんinねばどろゼリーをどうやって見つけるんでおじゃるの? ふっ……もちろん抜かりはござらぬ。……拙者に策がござるぞ! しゃきーん!

 ……普通にねえ、魔力圧縮でこの辺りの海域全部揉み潰しちゃえばいいかなって思ったんだケド……、それだと普通におじょー様も巻き込んじゃう。だからねえ、不本意だけど固有魔法使うことにしたの。

 

 はんにゃらー、はらひれー。ドデカ異形ハンドよー、来たれー! ぶわどわーん!

 ……これねえ、伊達や酔狂で『魔獣の手』だなんてけったいな名前してるんじゃないのん。魔力をねえ、ずばずびーって注ぎ込むと……次元の壁もビリビリにできちゃうんだぁ。

 ……まぁこれ、手加減以外の使い道したのなんて侵略者のボスを引き千切った時くらいだけどねえ。……ん? ということは……金魚人くんったら記念すべき二人目の犠牲者ってことになりますわね。わーおめでたい。

 

 さっき言った通り、ねばゼリくんは見つけらんないの。

 でもね……そいつを門にして繋がってる世界の場所はわかっちゃうんだぁ。……出入りするところ……通っちゃったからねぇ。住所覚えちゃった♡

 つーことで、異形ハンドくんに魔力エネルギーをオン! そしたらなんだか赤黒く明滅しててとっても邪悪。……やっぱこれ、見た目最悪。こんなの使ってたらムラクモちゃんのプリティでキュート、清楚で可憐なパプリックイメージが台無しになっちゃうよ。

 

 んで、力がいい感じにたまったらねえ、その辺の空間を適当にガリガリ引っ搔くよ。

 ……すると、あら不思議(棒読み)。千切れた空間の向こう側に金魚人くんがおるじゃありませんの。

 

 正直このまま空間もろとも引っ掻き裂いてあげてもよかったんだけど……。

 彼は英雄だからね。やり方は陰湿だったケド……ムラクモちゃんをああまで追い詰めたのは普通にすごいよ。褒めたげる。

 なのでねえ、敬意の証にムラクモちゃんのお名前、名乗ったげよう。そんで地獄に行って、「俺さぁ、ムラクモちゃんとかってミステリアス美少女に名前教えてもらったんだよね。これって脈アリ?」ってコイバナに花を咲かせたらいいんじゃない? ……ちなみに脈はないけどね。だってムラクモちゃんはアイドル系魔法少女だもん☆ ……うっとうしいわね、このムラクモとかいうやつ。

 

 ……ってことで。

 

『キサ──ッ』

 

 はい、がしーっ。

 なんか言いたげな金魚人くんをねえ、異形ハンドで捕まえて……こっち側の世界へ引きずりだしちゃう。

 そんでねえ、とびっきりのプリティ・スマイルをプレゼント! ニコニコー! ほら見て! もっと見て! めっちゃかわいいでしょ。無視しちゃやーよ。

 

「わたし、華亥ムラクモ♡ くたばり損なったってノンノン・プロブレム! お茶目でキュートな──あなたを潰す魔法少女だよ。名前だけでも覚えて逝ってね♡」

 

 そんじゃばいばい。成仏してねー、つって。

 手加減なしのパワーでギュッと握り潰しちゃうよ。ごきめきー。あわれ、金魚人くんは異形ハンドくんの錆になったのだ。

 ……術者が死んだからかな。ねばゼリ内部……崩壊始めたの。……うん。

 あとは無理にこじ開けた穴を適当に塞いで……一件落着ですね。

 

 やることやったし……おじょー様回収して帰ろっかな。

 はあ……いっぱいがんばったらお腹空いちゃった。港町についたらお魚料理頼んでみようかなって。

 

 ……。

 ところで帰り道って、どっちだったっけ?

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