わたし、華亥ムラクモ♡ 一夏の思ひ出……めくるめくアバンチュール……。純粋無垢な美少女は渚で愛を知り……。プリティからセクシぃ(大嘘)……へ進化を遂げてしまった旅行明け女の子♡
楽しかった運動会! ちょっと言葉じゃ言い尽くせない修学旅行! 奇想天外、きっとそんな展開。……これ、なんか響き似てるね。
さておき、金魚人くんをやっつけた後だよ。
戻りはね、けっこう迷っちゃったんだケド……。
ムラクモちゃんの帰巣本能は鳩を遥かに凌駕する性能なので、なんだかんだで港町にたどり着けたの。えー、皆様の温かいご声援には大変勇気をいただきましてぇ……ムラクモちゃんはこの度、ミステリアス系帰巣本能美少女としてやっていくことが決定いたしました。ぱちぱちー。
うん。
そんで港についたんだケド……おおわらわのてんやわんや。
先にお船で帰ったおじさんとか、他のムキマッチョおじさん集まってきてねえ。利権がどうとか、優先航路がどうとか、縄張りがなんだとか色々言ってきたの。
……興味なかったから全部聞き流しちゃってあんまり覚えてないケド。でも仕方ないよね! だってムラクモちゃんってただのバイトですしぃ。そういうお話は正社員の方にお願いしますぅ。わたし知ーらないっ(ぶりっ子)。……イラァ。
……港町に戻ってきた時にはねえ、夕方くらいだったんだけど、なんか絡まれてるうちに夜になっちゃって……しゃーないから宿にお泊りして、朝ごはんに魚食べたんだよ。
食べたやつね、なんか熱帯魚みたいな色した焼き魚だよ。……焼いてあるのに熱帯魚カラーとは? 毒とかありそう。内臓融解しそう。
……でも味はおいしかったよ。屋台おじさんの串焼きの次においしい。……また来たいなぁ。
そんでモノレールもどきにゆらり揺られて……ただいまただいま!
迷宮都市にハイサーイ! ほんの三日くらいしか離れてなかったけど、なんかすごい懐かしい気分だぁ……。
これもムラクモちゃんが海の大冒険を経て……ひと回り大きく成長したからですわね! おーいみんなー! プリティアイドル・ムラクモちゃんが帰ってきましたよー! 見て見て! めっちゃ大きくなったでしょ! 実録! すぐに分かるムラクモ成長見分け集!
……えっ? 違いがわからないって? そんな馬鹿な! よく見てござってよ! 明らかに態度……大きくなっておじゃるでしょーっ! ……胸張ることじゃないやんけ!
メガネさんに「なんか陰湿そうなお魚さんがにちゃにちゃしてたからやっつけてきたよ! やったぜ!」って感じの依頼報告をして、おじょー様とばいばい、解散。
ふっ。ムラクモちゃんってば、今回もめっちゃ大活躍だったな……。いっぱい働いたから、しばらくはゆっくりしよう。差し当たっては今から惰眠を貪ろうかな。
──なんて、思ってたんだけど……。
ね、眠れない!!
ムラクモタワーに戻ってさぁ……。お布団(オオカミくんの毛皮製)に包まったんだよ。で、寝つきの良さがウリのムラクモちゃんは世界選手権優勝クラスの早さでウトウトしてたの。
そしたら……。
急にだよ。頭ん中におじょー様のお顔が浮かんできたの。
その脳内おじょー様ったらね、なんだかすっごい優しい笑顔で……。気のせいだけど「ちゃーちゃんはずっ友ですわ」って声まで聞こえる気がしちゃう。
自分でも意味わかんないんだけど……きええーっ! って気持ちになったの。どうしようもなくって、思わず枕をぎゅぎゅー! そんでもってじったかばったん!
……あ。枕破裂しちゃったし、床ぶち抜いちゃった。
い、いったいどうしたってんだい? ムラクモ……。わかんにゃい! わかんないケド……なんだかすっごい恥ずかしい気分! これってなんで!?
……お、おまけにほわほわするし、ムカムカだってしちゃう。……何これ、新手の破壊衝動?
マジでなんだろこれ。ムラクモちゃん、こんな感情知らないんですケド……。なんなんこれ。
よもや……これが、遅れてきた反抗期ってやつですのん? むしろ……思春期? ばうばう! 飼い主ちゃんってば、ムラクモちゃんと洗濯物一緒にしないでよね! ちぃっ! 生意気な駄犬チャリクモめ! 断罪の一撃を食らえ! ずびびーっ! うわーん、すみません!
……。
……おかしいなぁ。
わたし、なんで今になってこんな気持ちになってんだろ。
金魚人くんの陰湿攻撃の影響、残ってんのかしら?
───
何日かして……おじょー様行きつけのカフェに来たの。
ここねえ、なんかムラクモちゃんが普段行く大衆食堂みたいなカフェ(個人的見解)と違って、見た目からおしゃれなお店だよ。カフェ(真)。なんかお花の匂い漂ってそう。……漂ってないケド。
……くっ。普段通いの店からして品性の違いを見せつけてくるとは! おじょー様……恐ろしい子。
そのおしゃれなお店のお外のところにね、並べられたテーブルの一つを囲んで、わたし、おじょー様、れっちんでお茶会中。
けっこういろんな種類のおやつ出てきてんだけど、ムラクモちゃんのお気に入りはね、なんか宇宙食の豪華版みたいなやつ。すっごいパサパサしててめっちゃ甘いけど、おいしいおいしい。
「……それ、本当なの?」
「経緯を伝えただけですので、確定的ではないそうですが。けれど……人の言葉を話していましたし、状況や、習性と思われる部分に関しても魔人の可能性が高いそうですわ」
「習性ね……。生物の負の感情を自らのエネルギーとして取り込む……だったかしら。悪趣味な生態……嫌いだわ」
食べるのに夢中になっちょるムラクモちゃんを置き去りにして、二人はなんやら小難しいお話。
魔人だって。ムラクモちゃんそれ知ってる。あれでしょ、RPGとかで勇者の敵になりがちな種族でしょ。知ってる知ってる。……ん? だとすると、この世界って魔王とかいるのん? ならシチュエーション的に異世界からの来訪者たるわたしが勇者? 華亥ムラクモの真の二つ名は“勇者”だった? ……まぁわたし、召喚じゃなくて追放で来てる邪道ちゃんだけどねぇ。
……馬鹿だなムラクモ! 魔王も四天王も物語の話だぜ! ゲーム脳もいい加減にしろよな! メルヘンチックゲーム脳わたし。
脳内高次元に意識を接続してるとねえ、なんだか視線を感じたの。……キャッ、誰!? ムラクモちゃんを見るのは!
れっちんだよ。どうしたのん? もしかして……ムラクモちゃんがあんまりプリティだからって見惚れてるの? ……だ、ダメよれっちん! ムラクモちゃんには心に決めた人が……。愛は情熱、芸術は爆発だぜ、ムラクモ! え……きゅん! 油断したな今だ! バキューン! チョロクモ、死す!
「……なぁに?」
「“暴君”……。アンタが強いのは認めるし……人外嫌いも察しちゃいるけどね。……せめて新種のモンスターを倒す時くらい手加減しなさい。その素材が研究になるんだから」
「……ん。手加減はいつもしてる」
「いやいやいや……アンタ馬鹿言うもんじゃないわよ。あんなパワーでいっつもメチャクチャするくせに手加減込みなんてあり得ないでしょ。……え? ないわよね? ……──あ! 答えなくていいわよ! むしろ答えないで知りたくない! これ以上アタシの常識破壊すんのやめて!」
「スカードレッドさんもちゃーちゃんと仲良くなってくれて、わたくし嬉しいですわ」
うん。めっちゃ仲良し。
ムラクモちゃんの人間的器はマリアナ海溝より深いので、謀反人れっちんすらも受け入れてしまうのだーっ。……ん? 「アシュベリー……。アンタ目の治療受けた方がいいわよ」ってれっちん言っとる。
……キサマれっちん! この期に及んでもムラクモちゃんに抗うか! ゆるせぬ! ……誰ぞ! 誰ぞある! あの不埒ものを成敗いたせ! 曲者じゃー! ぺちこ、ぺちこー。
うん。……まあいいか。
「……ところで、ずっと気になってんたんだけど……。聞いてもいい?」
「ん」
「アンタその首に着けてる奴……もしかして、ペット用──」
「リボンのチョーカーですわよ(食い気味)! ちゃーちゃんに似合って可愛いですわよね!」
「えぇ……(戦慄)」
この首に着けてる奴ねえ、なんかピンク色の蝶ネクタイみたいなやつだよ。
ムラクモちゃんってかわいいのに洒落っ気がなくてもったいないですわってね、このお店に集まる前におじょー様くれたの。
……正直、首に着けるやつだよって言われた時には、ひょっとしてまたリードなんか付いてたりしてって思ったケド、付いてなかったのん。……ムラクモちゃんは別に犬扱いされたって怒る気ないケド、さすがにひも付きの首輪付けて歩き回るのは絵面が悪いよぉ。なのでね、いかに大親友おじょー様の頼みでも断固として断ってくよ。……なんたって、ムラクモちゃんは風紀的にクリーンなプリティアイドル魔法少女だからね!
うん。
ところで、リボンのチョーカー……、けっこうオシャレなデザインしてたよ。さすが、おじょー様はセンスいいんだねえ。……まあ、ムラクモちゃんにファッションの良し悪しとかわかんないけど。
これが孫に意匠、ぬこに大判焼き、ムラクモにファッション……ってやつかぁ。