くたばり損ない魔法少女わたしの独りゴト   作:土縁屋

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【悲報】最近のムラクモちゃんは忙しい・1

 わたし、華亥ムラクモ♡ 実は最近、お料理が趣味になって、女子力爆アゲ中女の子♡

 ……ちなみに、得意料理はお肉の葉っぱ焼きだよぉ。これね、お肉をなんかいいにおいする葉っぱ巻いて焼くの。美味しそうでしょ。

 

 

 ってことでねえ。

 最近のムラクモちゃんったら、けっこう忙しめなの。

 「プリティアイドルムラクモちゃんに一目だけでも会いたい! できればお仕事頼みた~いっ!」つってねぇ、ムラクモちゃんファンクラブの皆さんから熱烈なラブコールを受けちゃって受けちゃって。

 ……きゃんっ、ダメよダメ。ムラクモちゃんは一人しかいないの。みんな取り合わないでぇ。……しかしこれが可愛さの代償……! なんつって。

 

 いや、マジで忙しいのん。

 遺跡行ってアイテム取ってきてねってお願いされたり、あやつを排除せよってモンスターくん退治をお願いされたり。

 てんやわんやの大騒ぎだぁ。うえーん。

 ……他にもねえ、本に載せるからって写真撮られたり、ムラクモちゃんグッズを転売したいから納品してくれってお願いが来たりもしたり。

 

 ……ぶっぶー! だめでーす! ムラクモちゃんグッズは選ばれし者しか手にできない勇者の装備だから非売品なのです!

 ちなみに装備条件はねぇ……。ムラクモちゃんと不滅の友情を築くことだよぉ。

 こんなに可愛いムラクモちゃんと友達になれる上に、気休め効果の付いた装備までもらえるなんて……なんて良心的なシステムなのかしら。みんなこぞってムラクモちゃんを訪ねてね!

 ……そういうことなので、お出口はあちらですよ……え? お小遣いくれるって? ……む、ムラクモちゃんはたかが金銭なんかに負けやしない!

 ……で、でもよう、ムラクモの兄貴ぃ。一つあたり銀貨一枚で買い取ってくれるって言ってるよぉ。これ、頑張れば大儲けできるんじゃないのって。

 し、しかし……。信条と金銭を天秤にかけたりなんて……わたしできない! そんなことを言って……身体は正直だな。ムラクモちゃんのプリティ・アイがコインに釘付けになっているぜぇ……。チラチラチラリ。お前今、コインをチラ見してただろ。絶対見てたぞ。

 ダメよいけないわムラクモ。で、でも……。い、一回だけ……。一回だけだから……信条を曲げるのは……。……ついに堕ちたな! 資本主義の豚め! 拝金主義者となったその罪業を償え! うわーん!

 

 はい。

 ムラクモグッズ作ってってのはねえ、普通に面倒くさいので断ったのん。……茶番が長うございましたな。すいません。

 

 ガチのマジでお仕事が増えてきちゃったので、ムラクモちゃんってばちょっぴり解釈違い起こし始めてるよ。

 ギルドとか探索者ってさ、好きな時に働いて好きな時に休めるって感じのちゃらんぽらんフレンドリーなホワイト職業じゃなかったのん? ムラクモちゃん脳内ライブラリーにはそう記述されてんですケド。

 ……ち、ちくしょう!

 無責任と無秩序だけがお友達だと思ってたのにぃ。……くっ。こんな職場じゃあムラクモちゃんは怠慢できない! なんか思ってたのと違うので転職しまーす。そそくさー。

 これからのムラクモちゃんはかわいいかわいい石拾い屋さんとしてやっていきますからぁ、探さないでください。……なんちゃって。

 

 

 ところで……。なんでいきなりこんな意識高い系パーリーピーポーみたいな、わたし忙しいんですアピール始めたかっていったらねぇ、大部分はなんとなくその場のノリで言ってんだけどね。……メガネさんからお仕事もらったからってのもあるのん。それってどんなお仕事? 聞いて驚け、モノノケ! 

 わたしもびっくりしてんだけどねえ、学校で先生をやってみませんかってお話だよぉ。えぇ(困惑)? ……は、華亥ムラクモが人に物を教えるだって? しょ、正気なのか……? だいぶ正気じゃありませんねえ。

 

 お話を詳しく聞いてみたの。

 そしたらね、なんか王都のけっこう大きい学校が依頼してきたっていうじゃない。お仕事の期間は一週間らしいよ。

 なんかごちゃらこ説明されたけど、要約したら「うちの学校は生徒自身の自主性と伝統に囚われない発想の自由さを重視しており、定期的に外部から講師を招いて授業してもらってるよ。あんた“暴君”とかってすんごい探索者なんでしょ(いやん、照れちゃう)。座学ばっかのもやしくん達に、実戦でしか見えないモノ……見せつけちゃってくださいよ!」だって。簡潔に言えてえらい!

 

 ……これね、ムラクモちゃん的に正直、うーんって気持ちなの。

 だってムラクモちゃんってば路地裏育ちのアウトロー・ガール。学校なんか行ったことないしぃ……そんな奴が学生さん相手に何を教えるんですかって。

 ……いちおう、“協命機関”がやってる魔法少女育成カリキュラムくらいは受けたことあるけど、これ学校じゃないもんねぇ。が、学力が致命的に足りぬ……。

 さすがに言われないだろうケド……。

 仮にだよ。足し算引き算やってみろとかってお願いされたらムラクモちゃん爆死しちゃうよ。……くっ! 脳内計算回路がオーバーロードしている! なんでこうなったんだ! た、足し算です! あの恐ろしい難題をぶつけられて、ムラクモ脳内は自壊を始めています! な、なんだってー! どかーん!

 その辺をメガネさんに伝えてみたら「私だってそう思いますけど……先方からはすでに多額の寄付金をいただいておりますし……ムラクモさんには理解できない高度に政治的なやり取りもありまして」だって。うわぁ、山吹色のお菓子だぁ。そんな越後屋と悪代官のやり取りみたいな理由で、こんな暴力的に横暴な人事が決まっちゃっていいの!? さすがのムラクモちゃんも突っ込みせざるを得ないでやんす。

 

 ……。

 でも、ほんのちょろっち……。ちょっとだけだけどね。学校って興味ある。

 華の青春スクールライフ。……あれでしょ。楽しかった運動会。いきなしハーレムなラブコメが始まったり、生徒会がやたら権力持ってて圧制したりしてんでしょ。知ってる知ってる。そんでバトル漫画顔負けの展開始まっちゃったりするんだぁ。……ハーレム主人公による、生徒会へのレジスタンス活動とかねぇ。

 ……これが学生運動ですか? そんな馬鹿な。

 

 さすがのムラクモちゃんもうぬぬぅって悩んじゃったんだケド……。なんかもう考えんのめんどくさくなってきちゃったから、メガネさんには「いいよ」って言っといたの。

 こうなったらヤケばい! この天才ムラクモちゃんになんでんかんでん、お任せどうぞ!

 ムラクモちゃんが教えられることなんて、ムシケラの千切り方とか、ムカつくやつの焼き払い方とか、厄介な奴の圧殺の仕方くらいなもんだけど、そんなでいいなら教授さしあげようじゃありませんの! まー! なんて野蛮な授業! 有害指定モノの野蛮さですから、PTAは断固として抗議していきますわ! ピーヒャラ、ピーヒャラ!

 時代は平和と愛! もっとコンプライアンスに配慮した暴力行為を授業するべきではありませんの? ……コンプライアンスに配慮した暴力とはなんぞや?

 わかんにゃい。

 

 

 ───

 

 

 ハンニャラホンニャラ、これこれしかじか。

 王都の風情があってとっても煩雑な地下大都会を進むとね、ひときわでっかい建物を目指して合点大発見! あれが依頼人のハウスね。見よ、ムラクモ……あれこそが『学校』……。ワシらの目指した約束の地。

 建物の見た目はね、ぶっとい高層ビルって感じ。もう慣れたけど、ファンタジー要素を無視してく方向性は相変わらずみたいですねえ。

 入口のところにこれ見よがしの電光看板おいてるけど、今回はおじょー様が一緒じゃないから、なんて書いてんのか、まったく読めにゃい。……おいおい、いいのかよ。こんな字をロクに読めもしないやつに物を教えさせてよぅ。言うな! ……言ってくれるな! そのくだりはもうやったんだ……。今は進むしかねえ!

 

 さておきさておき。

 なんだかおしゃれな感じのガラスドアを抜けると……なんだろうね。すごくエントランスって感じの場所に出たよ。……ええ? 学校って入口にまず下駄箱があるもんじゃないのん? まあいいけど。

 

 受付のお兄さんに話しかけてみたんだけど、「ん? 入学希望の子かな? ……ごめんね、今は募集してないよ。もうちょっと大きくなったらパパ、ママと一緒においで」って感じにあしらわれちゃった。……ちょっと! ムラクモちゃんのことガキ扱いすんのやめてよね!

 ……っていうか、ムラクモちゃんって有名人と化したんじゃないのん? 顔パスでどんな場所にも出入り自由なんじゃないんですか? だってのにこの対応。理想と現実の差が激し過ぎて摩擦熱が発生しちゃってるよ。くらえ! ままならない現実の──ソニックブーム! ぐわーっ。

 

「……ちがう。お仕事。……教えてって言われたの」

「? 仕事を教えるって? ……そういう遊びが流行っているのかな。

 ……コホン! ワー! そんな小さいのにお師匠さんだなんて、君は賢いんだねえ。お兄さんにも色々教えてほしいナー(棒読み)」

 

 ……イラァ。

 よもやこやつ……。完全にムラクモちゃんを舐め腐っておるな? こ、この野郎! ムラクモちゃんはミミズと節足動物と、ガキ扱いが大嫌いなんだぞ!

 即刻その生温かい対応をやめよ! 繰り返す! その近所のガキがままごとをいきなり始めたから仕方なく付き合ってやってるって感じの対応をやめたまえ! しまいには怒りのムラクモちゃんハンドが、貴様をわしゃくちゃにしてしまうぞ! ずばすびー!

 

 ……ふぅー。

 ま、まあいいよ……(ビキビキ)。ムラクモちゃんは大人の女だからね。こんな見え透いた煽りにはのらないのん。

 れ、冷静になりましょう。ムラクモちゃんはかわいい上に冷静な天才少女なので、こういう状況も問題なく打破しちゃうよ。

 ……なんだっけ。紹介状! そんなんもらったんだった。それ見せたら、この失敬なノンデリ男……ノデ男もさすがにムラクモちゃんがガキじゃねえってわかるでしょ。

 つーことでねえ、見よ! この印籠を! えぇーい! 頭が高いぞひかえおろー! 

 

 ムラクモちゃんナップザックからお手紙を取り出し取り出し。よく見てほらよく見てって、ノデ男に見せつけてあげちゃうとねえ、やつばらめったら、笑顔が凍り付きましてござるよ。お手紙とねえ、ムラクモちゃんのお顔を交互に見比べながら「……は? “暴君”? ……こんな小さな子が? そんな馬鹿な! で、でも……“暴君”が来るとは聞いてるし……」とかってブツブツ言っとる。見たかキサマ。これがムラクモちゃんの実力だぞ! 虎の威を借る狐わたし。

 今よムラクモ! ノデ男は動揺しているわ! トドメを刺しちゃって! ……いや。ヒトは殴んないって言ってるでしょ。

 

「……お仕事なの。どこ行ったらいい?」

「だ、だが……いや。か、かしこまりました。学長室は二十四階の奥にあります。少しわかりづらい場所ですから、案内図をお渡ししましょうか?」

「……読めない。天井ぶち抜いてったらダメ?」

「ダメに決まってんでしょ!? ぼ、“暴君”だぁ……! 間違いない……っ!」

 

 じょ、冗談だよぉ。ムラクモちゃんジョーク。……え? 笑えないって? すいません。ちょ……そんなビビんなくったっていいじゃないのぉ。

 

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