くたばり損ない魔法少女わたしの独りゴト   作:土縁屋

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【悲報】最近のムラクモちゃんは忙しい・2

 わたし、華亥ムラクモ♡ 三年V組~! ムラ八先生~! は~い! 巻き起こすぜトレンディ・サイクロンタイフーン! 熱血教師の愛と友情と思いやりの一撃が、今日も校舎を粉砕し、父兄を爆散させちゃう! グレートでティーチャーな女の子♡

 ……ところで、ムラ八先生ってすごい仲間はずれにされてそうな名前ですねぇ。ムラクモちゃんの繊細なハートは傷つきやすいので、クモ八先生にしときましょう。……これもこれでヤだな。うぞうぞ~。

 

 

 学長室まで案内してもらうことになったの。案内人の人はねぇ……なんかすっごいせくすぃーなおねーさん。

 偏見だけど、炎魔法とか得意そう。イケない恋の魔法とか言って、生徒達の恋の炎、燃え上がらせちゃってそう。……しかし、それも今日までの話だがな。なぜなら俺がキサマを打ち倒し、学園のアイドルの座をいただくからだ! 見よや奥義! 悩殺ムラクモちゃんスペシャル!

 あっはーん! うっふーん! ……ど、どうだ!? 色気が爆発しすぎてキサマの脳みそも連鎖爆発しちゃってんでしょう! で・も。ダメよダメ。だってムラクモちゃんはみんなのアイドル。誰か一人のモノにはなれないの♡ ……しょうもない茶番はここまでだ。ぴえん。

 

 さておき、案内に従ってエレベーターへ。なんだかとっても透け透けスケルトンな四角いやつ。けっこう狭い。

 ムラクモちゃんは最強だからどうってことないけど、高いところがダメって人には拷問になりますよってタイプのアトラクションだよぉ。けっこうギュンギュン動きよるし、普通にムラクモちゃんの三半規管を揺さぶってきちゃう。ゔっ。

 

 で、目的の階層。

 ファンタジーにありがちな感じの吹き抜け廊下をズンズク進むとねえ、いかにもってお部屋があるのん。他よりちょっと威厳がある扉だよ。……こ、ここが魔王の間か……! ドキドキどっきんちょ。

 せくすぃーおねーさん……うん。すぃ姉でいいや。すぃ姉がピカピカ扉をノックするとねぇ……無音。

 もう一度ノック、ノック。……シーン。

 ……ん? もしや学長さんってばお留守なんですのん? 

 もうっ! ムラクモちゃんを呼びつけておいて留守だなんて許しがたい蛮行だわ! わたし的友好度にマイナス補正かかっちゃうよ!

 ……ちなみにデメリットはムラクモちゃんの対応がすごく横暴になります。……え? お前の対応はいつも横暴で理不尽だろって? ……自分、不器用っすから! こういうやり方しかできねえ!

 そんじゃあ、ムラクモちゃん……。学長室で待たせてもらってもいいカナ……? ──くらえーっ! インパクト・ノックだーっ! 学長室もろともドアを粉砕してやるぜ! どんどこどんどこーっ。なんつって。冗談冗談、ムラクモちゃんジョーク。さすがにやんないよぉ。

 

 いや、ホントに。

 ムラクモちゃんは模範的人格者だからね。むやみやたらに暴れたりしないのん。……ホントぉ? 

 んな感じに脳内シミュレーターをウトウト起動してたらね、祈りが天に届いたみたいです。きらきらー。ぽえみー。

 学長室からね、「入りなさい」って声がしたの。なんだかすごくフォフォフォって感じの声。

 ……異世界学園モノの学園長ってロリババアがお約束じゃないのん? 狐耳に尻尾、語尾のじゃ系じゃないのって。……そんで、そういうロリババアはなんだかんだで主人公のハーレムメンバー予備軍に所属しちゃうんでしょ。知ってる知ってる。

 でも、声……すごくおじいちゃんです。現実は非情だぁ。ま。ムラクモちゃんっていう絶対ヒロインがこの世界には存在しちゃってるので、バランス調整かもしんないわね。ありえなくも……ない? なくもない? なくなくもなくない? ……頭こんがらがっちゃった。

 

 入室するとね、そこにはいかにもっておじいちゃま。なんか美髯公って感じの白いお髭を蓄えまくっとる。……この人が学長さん? なんか青龍偃月刀とか振り回しそう。塩とか密売してそう。……キサマ、華亥ムラクモ! なんとなくむしゃくしゃするから、義の刃をくらえ! ぐあーっ、理不尽!

 その学長おじいちゃんからね、要項だなんだって、むにゃむにゃ言われたケド。

 要するに「うちの学校って、卒業後に騎士になったり、探索者になったりする子けっこう多いんだけど、実際のモンスターと戦わせたりするような授業ってやってませんです。普通に危ないんで。でも実戦を知らんやつらが知識だけつけて本職になるのって危ないでしょ? んだもんで、“暴君”殿には手加減無用の授業をお願いしたい! ……あと、例えばだよ! 例えばの話。学内で問題が……。起きるわけないけどね! 安全第一だから問題なんかあるわけないけど……もし仮に! 仮にだよ! 学内で問題あったら解決も手伝ってほしい(小声)」ってことみたい。

 

 ……これムラクモちゃんの気のせいかもしんないケド、実は先生として呼ばれたのって、ひょっとして建前かなんかなんじゃないでしょうか? ……いやいや、まさかね。そんなわけないないナイロン。

 まあいいよ。ムラクモちゃんはお仕事ってなったら、ちゃぁんとお給料分くらいは働く有能なので。むしろ有能過ぎて給料出なくっても働いちゃう。元鼻紙なので。

 ……ぐすんぐすん、なんて健気なんだムラクモ! キミには特別にスーパー健気系ヒロイン美少女で賞を贈りたい! えーっ! 困っちゃいますぅ(ぶりっ子)。わたし全然そんなつもりじゃなくってぇ。友達が勝手に応募しただけなんだけどなぁ……チラチラチラリ。……けっ。ぶりっ子がよぉ。

 

 学じいのながーいお話をやり過ごしつつ、やり過ごしつつ。

 ようやく解放されたので、講義のために貸し出しますよって教室へ行きがてら学内を案内してもらうよ、すぃ姉に。

 学校の中はなんだかすごく最新鋭で機能性って感じ。

 なんかエマージェンシーとかっていきなり警報鳴り始めて隔壁とか降りてきそうな雰囲気。そんで壁がぱかーってなって、改造兵士とか出現すんでしょ。知ってる知ってる。ムラクモちゃん見たことあるもん。悪の組織討伐ツアーで。

 ……キサマ、ムラクモ! 悪の基地と異世界の学校を一緒にするなんてひどい名誉棄損ですよ! あなたを詐欺罪と器物損壊罪で訴えます! 覚悟の準備をしててね! 器物はけっこう壊してるケド、詐欺はしたことないよぉ……ゆるちて。

 

 そんなこんなで、目的地へ。

 けっこう広めのルームでねえ、何だったかな。けっこう前にドデカスパイダーくんを活け造りに転生させたげたでしょ。あそこの闘技場に似てる。

 すぃ姉に聞いてみたらね、ここ生徒達が使う訓練室の一つなんだって。

 ……あれ? ってことは、それって今まで空き地だ空き地だーってやってたところにポッと出のポット女が出現してるって印象では? 生徒諸君からしたら「何やあいついきなり来てワシらのシマ荒らしよってからに。ショバ代よこせや」って感じになってない? 空き地ホームレスわたしが、空き教室占領わたしに進化してませんか?

 うーん……まあいいか。

 

 そんで、「これ、時間割です」ってペラペラの紙を手渡しされたんだけど……残念! ムラクモちゃんは字が読めない! 空気も読めない! しかしサバは読んでくる!

 ……え? どんなサバ読んだの? 実はねえ、魔法少女やってた時に、公式プロフィール作んなきゃいけなかったんだけど、そこの身長……188cmって書いてたのん。本当は150cmもないよ。……詐欺しとるやんけ! しまった! ムラクモちゃんの器物損壊罪と詐欺罪が立証されちゃった! 逮捕だーっ! がっちゃーん!

 

 うん。

 字が読めないよって正直に言ったらね、それならこれあげるよって時計もらったの。お仕事の時間になったらアラーム鳴るんだって。ほえー、なるほどー。便利なんだねぇ。

 お仕事までは好きにしてていいよって言われたので、お隣のロッカールームに失礼しまーす。

 んでね、備え付けのベンチに座ってウトウトしちゃう。授業中の生徒達を冷かしながら学校の中を徘徊してみようかなって思ったケド、ムラクモちゃんは天才的に賢いので、どうなるかわかっちゃうんだよね。普通に迷子になって、たぶんここに戻って来れない気がするんだぁ……。己を知り、敵を知れば百戦危うからずって風林火山の元ネタの人も言ってるし。ガオー!

 寝る子は育つ。ムラクモちゃんは一日の大半をぐうたら寝て過ごしてるのに育たない。これって詐欺では? いいえ、それは詐欺でなく、個人差です。うえーんしくしく(白々しい嘘泣き)。

 

 

 ───

 

 

「──ちょっと、ルメリア! ダメだって!」

「大丈夫ダイジョーブ。心配ないってアイリ。この子ぐっすり寝てるみたいだし。

 それに……アンタだって曲りなりにこの王立学園に来てんなら、“暴君”と呼ばれるほどの人物の魔力……サンプリングしてみたいって思うでしょ?」

「思わないよ! 私、探索者志望だし。

 そ、それに……。私その人がギガントデスクロー・アラクネをメチャクチャにするところ、見たんだ。あの王立闘技場で、間違いなく」

「そんな脅しで、この学園の頭脳たるルメリア様が止まると思う? むしろ余計に燃えてきたわァー!」

「やめなってば! 引き千切られちゃうよ!」

 

 ワーワー、ワーワー!

 ……なんだかムラクモちゃんのプリティ・イヤーに感アリ! 侵入者です!

 クックック……我がまどろみを妨げる者は何者ぞ……。怒りのムラクモちゃん流星群(ただの飛び蹴り)で校舎もろとも滅ぼしてくれようか……? やんないけどね。

 身を起こしてキョロキョロキョロリ。そうするとね、ムラクモちゃんベンチの付近に女の子が二人いるよ。生徒さんかしら。……ここから紡ぎ出される真実──。ムラクモちゃんの頭脳が弾き出した答えとは? わかんにゃい。

 ……え? まさか……空き教室占領わたしに対する地上げですか? ……そ、そんなまさか……っすよね? なんつって。

 

 冗談はおいといて、なんの御用でおじゃるの? もしかしてそろそろ授業始まるからって起こしに来てくれたのん? きゅんっ。ムラクモ感激ぃ!

 なんて思ってたらねえ、なんかおでこ丸出しにしてる子がずずいって感じに距離詰めてきて、あろうことかこのムラクモちゃんに向かって魔力をよこせだなんて言ってきおったの。

 ……いやだい、いやだい! ムラクモちゃんはお注射嫌いなんだーっ! ……し、しかし。採血じゃなくって、魔力採取だ。痛くはないハズ。……なぁにそれぇ。なんの意味あるのん? あ、教えてくんなくていいよ。特に興味ないし。

 

「……どれくらいほしいの?」

「意外と話がわかる! ごほんっ。……そんなにたくさんじゃなくていいっすよ。ちょびっとあれば、魔力を調べられるんで」

「……そう」

 

 しょうがねえなぁ、もう。

 指先に魔力を集めてほれ、って差し出したげると、おでこちゃん……デ子ちゃんね。なんだか邪悪な形状のフラスコもどきを取り出して、採取しちゃった。……見ろよあの顔。満足げにしとるわ。

 デ子ってば、フラスコの中身をまじまじと見て「珍しい魔力色だ」なんて言っとるよ。……もう一人の子。二つ結びだからツー子でいいや。ツー子が「そうなの?」なんて不思議そうにしたらね、「少なくともあたしは今まで見たことないかな」って。

 え? ムラクモちゃんってばレアモンスターなの? 乱獲されちゃうのん? ムラクモの毛皮がグラム単位で量り売りされる時代が……そこまで来ている。いやん、怖い♡

 ちなみに色はね、赤っぽい銀色だよ。混ざっとるとかじゃなくって、銀色の魔力の周りを赤い色が薄ーく覆ってる感じ。……うん。

 

 ところで用事ってそんだけ?

 個人授業を受けたいとか、ムラクモちゃんサインがほしいとか、友達になりたいとか……そういうのないのん? しかし彼女達はムラクモちゃん魔力に夢中。このような屈辱を感じたのは初めてですよぉ……。くっ、ころせ!

 いいけどね。……いいけどね、別に。ムラクモちゃんにはおじょー……じょーちゃんいるし。うん。

 

 ムラクモちゃん魔力をまじまじ見ながらわちゃくちゃ話しとるガールズに、お帰りはあちらですよってご案内。

 そんでもうひと眠りしちゃおっかなってところで、時計くんがお仕事の時間だよって愛のモーニングコール。もうお昼過ぎだけどねえ。

 おおー。ついに始まっちゃうんだぁ。ムラクモちゃん先生の授業が。

 テレビの前のみんな! ムラクモちゃんはお色気枠だよ! お色気枠のせくすぃー教師だからね!

 

 ってことでね。差し当たっては……うん。

 すごく硬い敵の殺し方でも教えようかな。

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