くたばり損ない魔法少女わたしの独りゴト   作:土縁屋

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【悲報】様子のおかしい人に遭遇してしまう件

 わたし、華亥ムラクモ♡ 花より団子! 犬も歩けば棒に当たる! 月にムラクモ、花に風!

 ……こう考えると、わたしの名前ってなんとなく風流な感じ。……だが、無意味だ! 何故なら知能がムシケラレベルだから! 人間の品性は知能と比例する! 品性よりも愛嬌系女の子♡

 

 

 魔力ってね、無色透明の力の塊なんだって。素粒子とか熱エネルギーとかってあるでしょ。そんなんとはもっと根本から違った、きわめて根源的かつクリーンに使えるエネルギー。それが魔力らしいよ。

 まあ、地球じゃ人間からしか取れない資源だったから……うん。力自体はクリーンでも出所はあんまりクリーンじゃない感じになっちゃってたけどね。

 ……世知辛い世の中だぁ。

 

 腐っても鯛、くたばり損なっても魔法少女ってことでね。

 記念すべき最初の授業だよ。

 硬い奴の殺し方を教える前に、とりあえず、魔力について語ってみようかなって思ったの。何故なら今のムラクモちゃんは敏腕熱血教師……。お給料分くらいは働くのん。

 し、しかし……。ムラクモちゃんの知能はムシケラレベル。本当に他人に授業できるほどの知識がキサマにあるのかい? ……フフフ。そこは抜かりなし。わたしってば、これでもベテラン魔法少女だもの。魔力や魔法について、基礎的な知識くらいは持ってるよぉ。インテリジェンスガールわたし。

 しかしこの時のムラクモは、自分が致命的な勘違いをしていることに気が付いてないのであった……。

 

 はい。

 ドヤ顔で魔力について語ってみたんだけどねえ。なんか普通に生徒さんに「それ知ってます」って論破された上に、その知識歯抜けですねって逆に授業されちゃったの。そんな馬鹿な! ムラクモちゃんは歴戦の戦士だぞ! その知識量がこんな若造風情に──ぐああーっ! 華亥ムラクモ! あなたから敏腕熱血教師の称号をはく奪し、歯抜け知識ドヤ顔披露女の称号を新たに付与します! そんなご無体な!

 ……はぁーまじ(わざとらしい溜息)。はぁーやれやれ。チラチラチラリ。やる気下がっちゃった。

 

 ……なんかもう帰りたくなってきたな。帰っちゃおうかな、なんて思ってたらね、質問されたよ。

 ……え? こんな歯抜け知識ドヤ顔披露女わたしに、何かを聞いてくれるのん? 人の世のぬくもりを感じるぜ……。

 ところでその生徒さん、なんでもムラクモちゃんの配信を見てるらしくって、無詠唱の魔法を使うコツとか教えてって言ってきたのん。

 いいよぉ! 教えちゃう! 何でも教えちゃるばい! ムラクモちゃんにお任せ、デマカセ! ……って言いたいとこだったケド、ごめんねぇ。教えらんない。

 意地悪でもったいぶってんじゃないよ。……実はねえ、別にムラクモちゃんって魔法を無詠唱で使ってるわけじゃないの。

 

 最初に言ったけど、魔力って無色透明の力。じゃあ、その力に色を付けるには? っていったら……イメージだよね。

 例えばさ、炎の魔法を使おうと思うでしょ。その時にはね、炎がどんな風に燃えて、どれくらいの熱があるかってイメージしなきゃなんないのん。そんでその魔法の炎がどんな形で、どんな規模で、どんな風に動くのかってイメージしなきゃなんない。殺し合いをしてる最中にゴチャゴチャ考え事なんかしてらんないよねぇ。

 この世界の魔法も大事なのはイメージだってのは変わんないみたい。でも、わたしが知ってる魔法よりもずっと体系化されてる感じ。

 雑な理解でお茶を濁しちゃうけど……。イメージをいちいちやってらんないから、詠唱だのなんだの色々工夫してますよってカタチ。……ざっくりいうと、武道の流派みたいなもんかも。あちょーっ、ぺしぺし!

 

 結論です。ムラクモちゃんの魔法に詠唱がないのは、流派が違うってことになります。……つまり、おぬしに教えられることはすべて教えた! もうおぬしはワシより強い! って……こと? ゆ、ゆるせぬ! このムラクモちゃんより強い奴が存在するなんて! 黙れ若造! キサマを葬って最強に返り咲いてくれるわーっ! ……なんてねぇ。

 うん。

 ……え? 流派が違ってもやり方くらい教えられんじゃないのって? ……で、できませぬ! 何故って、ムラクモちゃんってば、固有以外は基礎教練レベルのすんごく簡単な魔法しか使えないから。……例えば、炎出すのはコンロの魔法。水出すのは蛇口の魔法。魔力圧縮は単に魔力をそのものを動かしてるだけだよ。

 必殺のエクスプロージョン・ノヴァ(なんかすごい大爆発。宇宙とか消滅する)とか、デスブリザード・マックス(なんかヤバい吹雪。冷たい風を受けただけで状態異常になって死ぬ)とか考えたことあるケド……。

 それを実現するには……INTのステータスが絶望的に足りてない……。む、無念。 

 

 ま、まぁ! 天は二物を与えずっていうしぃ。最強の暴力と美貌を手にした代償に知能を失ったと思えば……うん。ド、ド派手な超絶魔法使えなくてもムラクモちゃんは依然最強だから!

 そう……。最強たるムラクモちゃんが使えば、単なるコンロの魔法も、地獄の業火に早変わりしてしまうのだ……。ふっ……。最強たる華亥ムラクモは生まれついての最強ゆえに、最強の何たるかを説くことができぬ……。悲しきデスティニー。

 ……ホントの話、ムラクモちゃんが使える魔法で攻撃用のやつって「魔獣の手」だけなんだよねぇ。これ、ほとんど使ってないケド。

 ちなみに固有魔法ってすごく雑に使えるのん。それが何でかって、魂に由来する魔法だかららしいよ。ソースは“協命機関”の怪しい科学者。魔法少女になる時に適合手術受けるんだけど、そん時に言ってた。

 

 そういうことで、『大解剖! 華亥ムラクモが最強なワケ』を伝授することはできないケド……。しかし諦めるな少年少女よ!

 力いっぱい生きれば人生案外なんとかなるかもしんない! ……たぶんね、マヌルネ。マヌルネコ。……しまった! ムラクモちゃんってば人生ちゃらんぽらんに生きてきたから、いいこと言おうと思っても実感が伴わない! まるでスポンジのような発言……びっくりするほどスカスカだぁ。

 

 さておき、授業。

 当初の予定通りに硬い奴の殺し方を教えようと思ったのん。カンフー映画であるでしょ。あちょーってやったら、どかーんってなって、敵が爆散するやつ。あれを伝授しようと思ったんだケド……全然伝わんなかったんだよね。

 こう……腕をぎゅーんってやって、魔力をだばーっってやったらいいよってね、詳しく言い直したんだけど、まるで伝わってにゃい。

 ならばこうだ! 腕に魔力を入れて、思いっきし殴ったらできるよって言ったの。……伝わんない。

 

 進退窮まったり。

 もはやこうなれば、実践の腕っぷしでムラクモちゃんの有能さを示すしかない!

 ってことでね、硬い奴を殺す、すんごいパンチ見せたげようと思ったの。だから生徒さんに聞いて、ぶっ壊してもいいやつ……哀れな犠牲者くんにご紹介願いましょう。

 そんで出てきたのは、なんか壁みたいなやつ。いちおうね。用心深いムラクモちゃんは「こやつ壊してもよろしいの?」って確認してみたの。そしたら、「訓練用ですし、結構損壊するんで、気にしなくて大丈夫なんじゃないすか」って。

 ……言ったなオメェ。俺はキサマを信じるぜ。

 そして万が一……沈むとなった時は──諸共にだ。……世界一身勝手な一蓮托生だぁ。

 

 はいどーんっ。

 壁系サンドバックくん相手にパンチパンチ! 硬く握りしめられた鉄拳が、愛と教育の雄たけびを乗せて特に問題を起こしていないサンドバックくんを襲う! どかどかーん! サンドバックくん、死す! 報酬としてムラクモちゃんは借金を背負った! ちゃりちゃりーん!

 ……えぇ(困惑)? なんでぇ?

 

 

 ───

 

 

 初仕事を終えて夜だよ。

 お宿に戻って、じょーちゃんにお電話しちゃう。……ふっ、見てるかヒゲモジャスキンヘッド。

 あの……『華亥ムラクモ、ガチで友人ゼロ人(誇張なし)』で有名だったムラクモちゃんにも、寝落ちもちもちに付き合ってくれる相手ができたんだぞって。これからのムラクモちゃんは友達百人集めて、友達バトルに参加し、世界最強の友達マスターに成り上がってくんだぞって。……まー! 節操がない! ムラクモちゃんのプリティ・ヒップはまるで羽のような軽さでうらやましい限りざますわ! 心外!

 ……や、別にね。じょーちゃん一人いてくれたらそれでいいから、進んで友達作りする気はないケドね。……なんか重い女みたいだな、わたし。

 

 ──ムラクモちゃん以外の女と仲良くしないでよッ!!!

 なんつってね。バイオレンス系グラビティ女わたし(仮)。

 冗談だけどね。ジョークだけど……。これ、事実になんないように気を付けよ。

 

「── 一緒に王都へ行けなくってごめんなさいね。ちょっと用事が立て込んでしまっていて」

「いいよ。……話、楽しいし」

「ちゃーちゃん……! わたくし、一刻も早く用事を済ませて王都に行きますわ! 前回はじっくり回れませんでしたし、今度こそ一緒に王都観光しましょうね!」

 

 ってな感じに他愛のないお話をしつつ、しつつ。

 はぁー帰りたい。迷宮都市所在のムラクモタワーがムラクモちゃんの帰りを待ってるよ。……別にあったかくはないけどね。隙間風ビュービューだよ。

 というかぁ、学校ってちょっと興味あったケド……よく考えたらわたし、学生として来てんじゃないから、青春謳歌できないしぃ。

 ちょちょ、話が違うんではないでごわすの? いいや、お前が勝手に期待していただけだ! ぴえん。

 

 二日目と三日目も変わらずお仕事。

 有能なムラクモちゃんはちゃんと学習して、パンチの打ち方を教えることにしたの。……サンドバックくん壊すと弁償してくださいねって怒られちゃうんだケド、ムラクモちゃんはお仕事に手を抜かないプロフェッショナル! お給料分はちゃんと働きますよぉ。……それで弁償させられてたら本末転倒では? 

 で、でも……お金より大切な何か……きっと手に入れちゃうから……(負け惜しみ)。それってなぁに? …………思い出と、自信? なぁんてこったい! まるでムラクモちゃんのおめでたい脳みそみたいにフワフワのふわっちじゃないかぁ!   

 

 

 はい。

 三日目のお仕事が終わったあと、ムラクモちゃんってば日課の食べ歩きしてたの。

 その日はねぇ、ジャイアントクロッケルとかって、なんか生々しい見た目の丸焼きお肉がお相手だよ。これでっかいし、タレがだらだらーってしとる。

 持っただけでお手々べっちゃべちゃー。そんなもんだから、どっか近場に腰を落ち着けようかなって思って……そんで見つけたベンチに座って食べてたの。

 そしたら──。

 

 変な魔力の流れ、感じたの。

 何が変って、ちょっと言葉にしづらいんだけど……うーん。

 例えばさ、カメレオンっているでしょ。タコでもいいよ。あれって周りの景色にあわせて自分の体色変えるでしょ。あんな感じの流れ方だよ。

 ……きゃっ! まさか……刺客!? ムラクモちゃんのプリティさという圧倒的光に釣られた誰かが、篝火に引き寄せられるようにしてストーキングしてるとか? いやんっ、照れちゃう。

 

 さておき、いちおう周りを見渡して見るよ。キョロキョロキョロリ。

 超高速飛行する宇宙ドデカトンボさえ見逃さないムラクモちゃんのプリティ・アイから逃れられると思うでないよって思ったけど……。別に怪しい人影なんてない。

 おかしいなぁ。思い過ごしってことはないと思うんだケド……うーん?

 

 

「こんにちは。王都は今日もいい天気ですね。……って、あのお空は魔法の投影か。失敗失敗……えへへ」

「──ッッ」

「あたし、アンナっていいます。……ごめんね? 急に話しかけちゃって。びっくりしたでしょ」

 

 こいつだ。

 こいつに違いない。いや、こいつしかありえない。

 

 単なる魔力の偽装じゃない。気配を遮断してるんじゃない。

 魔力を使って自分自身を偽ってる。平凡に見せようとしてる。明らかに超越した気配漂わせてるくせに、それを無理やり隠して見せてるから、チグハグだ。

 チグハグ過ぎて認識をかき乱されて気持ちが悪い。

 ……こんなの。

 こんなのってまるで……侵略者みたいだ。

 

 ……殺さなきゃ。

 今すぐにこいつの首根っこを引っ掴んで、へし折って、魔力圧縮で跡形もなくなるまで圧し潰して……いや、再生するかもしれない。

 なら、侵略者共の王にやったのと同じように、こいつも『魔獣の手』で周囲の空間諸共消滅させるべきだ。

 一刻も早くこいつを殺さなくっちゃ、何かとんでもないことになりそうな気がする。それが何かなんて知らない。

 知らないケド──。

 

「あのー? もしもーし! 聞こえてますかー?」

「……ぁ。ん」

「もー! 聞こえてるんならちゃんと返事してくださいよー! 無視されたかと思って、ちょっぴり傷ついちゃいましたよー」

 

 ……ちがう。

 違う、違う! 落ち着け、華亥ムラクモ。

 彼女はヒトだ。虫じゃない。そんなのよく見なくたってわかること。

 

 いくら気配が気持ち悪いからって、ゲボヘドロムシケラ野郎と同一視して、問答無用で殺すのが魔法少女のやることか?

 落ち着こう、落ち着くんだ……。

 こいつはヒト。……少なくとも見た目は。なら、華亥ムラクモの敵じゃない。……でも、殺すべきでは?

 

 ……。

 

「……何か、用事?」

「ううん。何の用事もないよ? ……ただ」

「……?」

「──何か、迷子みたいな顔をしてるな、って」

 

 ……ちょっと迷った。

 余計なお世話だって突っ返して殴り殺すか、知った顔すんな殺すぞって首をむしり取ってやるか。……ダメだ、全然落ち着けてない。

 

 そうだ、馬鹿になろう。馬鹿にならなきゃ。シリアスくんってば、あなたはお呼びじゃないのよっ。ちょっと旅行へ行ってらっしゃい!

 行先は……冬の夜空だーっ! シリウスだけにね☆ わんわん! ……ぶるぶる、しゃむい。冬の風が差し込んできたかな。 

 

 ……。

 と、ところで! 迷子みたいな顔してるって何よ! 言っとくけど、ムラクモちゃんってば王都に来るのは二度目なんだからね! 立派な王都ジェンヌよ。王都通。……どうでもいいけど、『おうとつう』って響きだけだとなんだかえずきそう。ゔってなりそう。なんか喉ヒリヒリしてそう。

 

「ご心配ありがとう……って言っとくね。でも大丈夫」

「そっか。……もしかしたら余計なお世話かな、とは思ったの。でもね、なんだか放っておけなくって」

「……。これ、食べる? おいしいよ」

 

 ……ダメだぁ!

 馬鹿になっても絡みにくい! ムラクモちゃんこういうタイプ苦手! なんだろうね、なんだろうね! なんかもう……苦手!

 「わぁ! くれるの? ありがとう!」なんて言ってね、女……チグハグ女だからチグ子でいいや。チグ子ね、お肉受け取ってムシャムシャ食べ始めたよ。

 ……目だけで見ると、本当にどこにでもいそうな平凡な女にしか見えないのん。

 ……でも、気配がやっぱり変。最強のムラクモちゃんでも把握しきれない……変な気配してる。なんだかすっごく清らかな魔力をしてる気がしないでもないし、そのまったく逆。とんでもなく邪悪な魔力をしてるような気もする。……殺すべきかも。

 

 おっといかんいかん、配管工!

 ここにこれ以上いると、ムラクモちゃんの非友好ゲージが振り切っちゃうよぉ! ちなみに最大まで溜めると、問答無用で殺しにかかるよ。きゃっ! 野蛮人!

 一刻も早くこいつから離れよう。今のムラクモちゃんはジャック・ナイフより危険な狂犬なので。油断してると……吠えちゃう。わんわん! チャリクモだわん! ……なんか弱そう。

 

 すっくってね、ベンチから立ち上がると、「……帰るの?」ってチグ子言ってきたよ。

 はい、帰ります。ムラクモちゃんは多忙な身なので。具体的にはこのあと帰ってお風呂に入りたいし、じょーちゃんと通話したいし、晩御飯も食べたいの。……なぁんて忙しいんだぁ! 用事が目白押しじゃないかぁ! ……ってことでね、サヨナラバイバイっ。別れに涙は……いらないぜ。

 そんな時に、背中の方から声が聞こえてきたのん。……チグ子の声。

 

「何か……なんでもいいよ! 困ったことがあったらゼルヴィナ教を訪ねて来て! あなたの悩みや痛み……あたしにも背負わせてほしいから!」

 

 ……。

 ……ごめんけど。

 本当に、余計なお世話だよ。

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