わたし、華亥ムラクモ♡ 一度決めたことは決して曲げない、可憐一途な女の子♡
長老おばあちゃんの「やめておくんなましー」「……いやマジで余計なことすんなよな!」って感じの引き留めを無情にかわしつつ、かわしつつ。
ごめんねぇ。ムラクモちゃんは正義で破壊行為を行うんじゃなく、自分の好き嫌いでデストロイしちゃうタイプの迷惑系なの。嫌なやつに目を付けられたなって思って諦めてくだしゃんせ。
ということでね、ファンタジックな森林を大冒険。
いやー、改めて思うケド自然豊かっていいよね。スゥー、ハァー。空気がうまいぜ。
……ところでおいしい空気って言うけど、具体的にどんな味なの? そ、それはそのぉ……し、自然派オーガニック百%使用って感じのお味ですよぉ。
……。
む、ムラクモちゃん、自然大好き! めっちゃ好きやねん! 好きすぎて自発的保護活動しちゃう! 緑を汚す不届き者は汚れもろとも粉砕しちゃうんだから♡ 暴力系ナチュラリストわたし。
さておきさておき。
と、とんでもねぇ力の波動だぁ……。
どんくらいすごい魔力かっていうとねぇ……うーん。超すごい。
……え? 説明になってないって? うむむぅ。
そうだなぁ。──くらえ! ガチ・世界廃滅光線! ずびびーっ! うわーん、大変! 最低最悪ゲス下劣の人外が世界に対して攻撃を仕掛けたわ! 滅亡まであと五秒! ……とか、使えちゃう感じかも。
……そう考えると、実は今起きてる地震って、起こしてる奴の魔力の大きさのわりに被害小さいかなって。
ひょっとして、「ふあーあ。……ん? 寝返りうったら人間さんの村壊しちゃったぁ。ごめんねぇ、ガチのマジでそんな気なかったんだけどぉ。──ほら、ボクちんすんごい怪物だからさぁ」みたいな感じが真相だったりしてぇ。……うーん、親近感湧いちゃいますねぇ。……それとして、ますます生かしちゃおけないケド。
───
んでね、あんれやこれや~ってない知恵絞りつつ、絞りつつ。テンテコ、テンテコ森林徘徊しとるとねぇ、エリア変わったの。
ぱっと見た感じはそんなでもないよ。だるま落としの親戚みたいなやつとか、ちっちゃい祭壇みたいなのとかね……。この先に神聖存在いますよ系小道具がちらほら~って落っこちまくってるくらいなの。でもね……うーん。なんていったらいいんだろ。空気が変わったって言ったらいいかしら。
教会だとか、お寺ってあるでしょ。なんかよくわかんないケド、こう……ふざけちゃいけないよねって気持ちになる場所。あんな感じなのん。
ムラクモちゃんは神様とか信じないほうだけど……ここのエリアに来たらさ、たかが人外だよ。でも、そいつがお祈りされちゃうのも、無理ないかもなって思っちゃった。そんくらい神聖。
そんで、そんな神聖さを引っぺがすみたいにどでかいエネルギーの気配がさぁ、ぶわぶわー……って膨れ上がり続けとる。
こりゃあ、ちょいと気を引き締めてかからねばならんぜよ。
人外を潰すのに手抜きなんかする気ないケド、今回はけっこう本気でやんないとヤバいかもなって。
そんで、さらに森を進むとね。景色が歪むっていうのかな? 蜃気楼みたいにゆらゆらーって空間がよじれて、いきなり目の前にでっかい樹が現れたの。きゃんっ、いきなりなぁに?
思わず見上げちゃうケド……うん。めっちゃでっかい。
王都で見たドデカ高層ビルなんか目じゃないよ、マジで。……ちょろっとー! ムラクモちゃんってば、どうして今の今までこんな明らかな巨木を見逃しておりましたの? まさかとは思いますケド、そのプリティなオッドアイはガラス製のお飾りちゃんでしたのん?
こここ、これは何かの間違いだぁ。ムラクモちゃんの健康お目々がビッグウッドを探せ! に失敗しちゃうなんてぇ。しかし現に見つけられなかった。それは事実ではないかね? ……クックック。俺は認めねえぜ。これはイカサマだ。あれは白昼夢なんだーっ! ぶっぶー! 不正解!
どうもねぇ……結界みたいなので隠されてるからわかんなかったみたい。
ムラクモちゃんは最強だから、目と鼻の先まで来ることで気が付けたけれど。これ、そうとう巧妙な術だよ。
きっと森の大賢者とか、古のワイズマンとかがバリヤーって張ったに違いないのん。『世界を魔王の脅威から守るため~!』とかってさ。
そう……とんでもなく高度な結界……。
……。
……ちょっと待って。
おかしい。おかしいよ。
ならなんで……今になって見抜けたの?
距離の問題? 結界を形成してる魔力を無意識に破壊した? ちがう。
……なら、わたしの感知能力が上回った?
……。
確かにわたし、感知能力には自信あるよ。
だって侵略者って平気な顔で不意打ちしてくるんだもの。擬態なんかもするしね。だから魔法は得意じゃないケド、感知はちゃんとできるように訓練したの。
──したけど。
さすがにわたしを上回る魔法の使い手を感知できるほどじゃないの。
……あの結界、どう考えたってわたし以上の魔法使いが張ったやつだ。そんなのを……この距離になるまでのうのうと森林浴を楽しんでたような蒙昧が──都合よく見破るなんてあるわけない。
破滅的に大きい魔力。なのにそれに見合わない小規模な地震、不自然に見破れた結界……もしかして。
──わたし、釣られた?
って思った時だよ。
【……飽きもセズに、人間を守っているようだネ? 華亥ムラクモ】
「っ」
【愚か、愚か。懲りもせズに繰り返すなんテ】
よぼよぼのおじいちゃんみたいにしゃがれた声がね、上からしたの。
……クッ! キサマ何者だ! 名を名乗れ! っつってね。見上げてみたらそこにはでっかーいドラゴン。うん、ドラゴン。さすがにトカゲ呼びするにはご立派すぎるご容姿。
見た目はね、マジで樹属性って感じ。鱗とか木で出来とる。んで、枝とか葉っぱとかツタとか絡み合っててぇ。火に弱そう。
そんな樹属性しわくちゃおじいちゃん声ドラゴンはね、葉っぱ製のでっかい羽をバッサバッサやりながら……あろうことか煽ってきやがったのん。
なんやねんこやつぅ、ムラクモちゃんの何をご存じでありんすの? 貴殿。わたし達初対面だよね? ナンパにしては変則的ですわね。──でもごめんなさい! ムラクモちゃんってば、ドラゴンの口説きに攻略されちゃうほどちょろい女じゃありませんの! はーい、恋愛不成立~。お帰りはあちらですよぉー。……おっといけない。押しかけ殺龍しようとしてんのわたしだった。
なんで急に『──あ! お前アレじゃん! 華亥だろ? 俺だよ俺! 中学の頃同級生だった田中だよ! 覚えてる?』みたいなこと言ってきたの? ってさ、気にならないでもないケド……まあいいや。
お初にお目にかかりますねぇ。誠に申し訳ないんですけど、一身上の都合で死んでね、ってことでぇ。
はいどーん!
魔力圧縮で足場を作りつつ、作りつつ。決意と情熱を込めて握りしめた拳がドラゴンさんのウロコをバキバキに粉砕──できなかったの。
ぶん殴ったるって寸前でね、妙な結界に阻まれちゃったんだよね。これ……衝撃を受け流すタイプのやつだよ。表面でツルって滑っちゃう感じの……水属性が使いそうなやつ。……うっとうしいことするなぁ。
【熱心だネ。いじましイ。……しかしそうしテ君は一体何を手にしタ? 疎外と追放。それだけダ】
「……この世界に飛ばされたこと言ってるの? それなら、わたし感謝してるくらいだよ」
【本当にそうかナ? 本気で然りと答えられるかイ? ワタシには……目的を失って、ただ漠然と生きているだけのウツロに見えル。殺すべき敵、果たすべき復讐を終えた燃え残りが君ダト】
グサグサーッ。
ドラゴンくんが放った言葉の剣が、ムラクモちゃんの図星をクリティカルに貫いた! うわーん痛いよーっ!
……うん。
まあ、言いたいことはわかるよぉ。自覚もしてる。
ムラクモちゃんってば、暴力装置を真面目にやりすぎてちょろっち人間性失ってる系なんだって。
まだちょっと自由に馴染めてなくってさぁ、無趣味なまんまなんだよね。だから好きなモノとかさ、見つけてきたいなって思っとる。
何でそんなにムラクモちゃんのこと知ってんのってのはおいといて、正論だねってことは認めてあげるよ。
……でも。
「……ごめんけど、わたし。どうでもいいやつに知った顔されるの……嫌いなの」
【ではどうすル? わたしを殺すカ?】だなんて余裕かましてるドラゴンくんへコンロ魔法放っちゃう。木製だもん、死ぬでしょ。……あ、火事のことなら心配いらないよ。森が丸焼けになりそうなら燃えてる木、ちゃぁんと根こそぎ引っこ抜いて阻止するからね。自然破壊の申し子わたし。
ボーボー、メラメラー。料理は火力。火力は情熱! 情熱は愛! そして愛は料理! 素敵なループですねってことで燃えたまえー! ってやったんだけど……。
効果ないみたい。バリア自体は抜けたんだけど、魔法に対する抵抗力がすんごい高いみたいで、ムラクモちゃんレベルの炎魔法じゃ燃やせないみたいなのん。……しまった! INTの低さが弱点になっちまったぁ。
反撃に飛んできた魔法弾を握り潰しつつ、仕切り直し。
「……聞いていい?」
【答えよウ】
「あなた、強い。なのに、あの勇者村……チャチな地震やってるの、なんで?」
【アレは我が領地ダ。わざわざ自らの縄張りを攻撃するケダモノなぞ居はしなイ。……だろウ?】
「……なるほど。やっぱ釣りだったんだ」
【お前はもう少し、自らを隠すということを知った方がいイ。丸わかりだっタ】
そっかぁ。
ご忠告ありがとねぇ。……でも、自分を隠すのって嫌いなの。だってムラクモちゃんは最強の魔法少女だもん。
こ、コソコソ隠れながらヒソヒソしちゃうなんて……ぷ、プライドが許さないぜ……! なんつって。
……ま、まあ。絶世の美貌を生まれ持った者の宿命だよ。注目されちゃうってのはね!
お手々をまたぎゅって握っちゃうよ。
聞きたいことは聞いたし、今度こそ死んでもらおうかなって。
ガチで行っちゃうよ。ってのが伝わったのかしら。
ドラゴンくんもバリアの密度を増やしてみたり、巨木に魔力をみなぎらせてみたり、光の弾を浮かべたりで臨戦態勢。
そんじゃ行きますねって、はいどーん!
空中のドラゴンくんに向かってジャンプ、ジャンプ。……途中でなんかスタイリッシュな回転。意味はない。
巨木からね、邪魔するみたいに枝の槍とか、葉っぱの刃とか飛んでくるよ。ぜんぜん効かないけど。でもドラゴンくんが吐き出しまくってくる光のブレスは普通に痛い、痛い。これ、食らってんのムラクモちゃんじゃなかったら周囲の空間もろとも消し飛んでる系のビームだよぉ。まあ、来るとわかってりゃ防御もできるけどね。抜かれてケガしてるけど。ひえー! 火傷だー! イテテ~! っつってね。
痛みをおして拳の距離まで来たら、ここで必殺の魔力圧縮だよぉ。
……バリアはさ、衝撃を受け流すんでしょ? だからパンチしても効かないの。
だったらさぁ、全方位から一斉に力をかけて、衝撃が逃げる方向をなくしちゃったら……良さそうだなって思わない?
成功するかなんて知らないケド、死なばもろともー! もろともにしねー! なんちゃってぇ。
はいキュイーン!
【……グ、グググ!】
「ん……っ!」
天才的発想だぜ!
なーんて自惚れちゃってたんだけどね、一つ抜けがありましたの。それってなぁに? ドラゴンくんが普通にムラクモちゃんより上手の魔法使いってことだよぉ。思った以上に抵抗が激しいのん。
な、なにごとも思い付きでやってうまくいくほど甘くはないんだな。ムラクモちゃん一つかしこくなっちゃった。……まぁ、すぐ忘れるだろうけど。
魔力圧縮ムラクモちゃんと、バリア抵抗ドラゴンくん。
押し合いへし合い、がんばれがんばれ、どっちも負けろ!
どんくらいそうしてたかしら?
永遠に続いちゃうかもしんないって感じのバトルを制したのは──ジャカジャン! ななな、なんと! ムラクモちゃんだったのでしたぁ! わーぱちぱち。
……そんでね、力場が緩んだ一瞬にバリアへ腕を突き入れて──ドラゴンくんご自慢の翼をむしり取ってあげたの。ぶちばきー。
そんで長ーい首根っこ掴んで、地面まで真っ逆さま。地面へドガスーンってぶつかっちゃった。
───
【──ここまでカ。さすがに最強の魔法少女は伊達ではなイ】
「……それ。なんで知ってるの? 自己紹介した覚えない」
【答えるつもりはなイ】
「……」
思わせぶりだなぁ。
さっきまで散々好き放題言ってたくせに、いざ聞くと教えてくんないだもん。
……まあいいけどね。無理には聞かないよ。そこまで気になるわけじゃないし。
そんじゃ、お別れの時間だねってことで、名乗ったげる。
誇ってもいいよぉ。ムラクモちゃんと対等にやり合える奴なんてそうそういないんだからぁ。
ムラクモちゃんのお名前抱えて地獄でもうまくやれるように、お祈りしとくねぇ。
「わたし、華亥ムラクモ♡ 全身全霊、全力前進! あなたを滅ぼす魔法少女だよ。覚えて逝ってね♡」
【──】
「お! お待ちください!!」
……ドラゴンくんの心臓をね、抉りだそうと思ったの。
そんで振りかぶったムラクモちゃんのプリティ・ハンドがね、トドメだーっ! ってフィニッシュを決めようとした時だよ。
後ろからいきなり抱きつかれたの。
いきなりなぁに? 何やつなの?
って思ってるとわらわら~って人が出てきて、ドラゴンくんの盾になるみたいに立ち塞がりおったの。
クッ、ころせ! いきなり背後から現れるなんて失礼じゃない! ぷんすかぷんぷん!
し、しかし……不意打ちについてはドラゴンくんに夢中になってたムラクモちゃんが悪いのでは? 知らない知らない! 自分にとって都合のいいことしか聞きたくないんだもーん!
で、その人達。
……どっかで見たような恰好しとるなって思ったら、地元民さん達だよ。
地元民さん全員、決死の覚悟ってお顔。
…………。
「ここ、危ないよ。帰った方がいい」
「“暴君”殿! どうかお見逃しください! 守り神様なのです!」
「お願いします!」
「おやめください!」
「……どいて。怪我するよ」
「退かぬと申した! 若衆も言うたが、シシル様は太古の昔よりこの地を守る神龍様ぞ! 短絡的な行動など起こそうはずがない!」
んで、何人かの人に抗議されちゃう。……この迷惑系ムラクモめ! 退散せよ! きえーい!
ふーんだ! やなこったい! ムラクモちゃんは自分勝手を極めるんだー!
……ん。よく見たら抗議の人達にね、長老おばあちゃん混じっとるじゃないのん。こんにちはぁ。はよ帰って。養生なさって長生きなされい!
真面目なお話。
この感じ見てるとペットってワケじゃないんでしょ? ならさぁ、人外庇うなんて正気じゃないし、逆張りしてんならやめた方がいいよ。……さすがにないか。
じゃあやっぱ洗脳されてんのかしら? うーん……。けどもけれども、そんな感じしないしぃ……。
……あ。
そういえばだったけど、ドラゴンくんってば魔法の腕、ムラクモちゃんより上だったじゃないのん。……じゃあ洗脳されとるやんけ!
うむむぅ……面倒だなぁ。ムラクモちゃんは人間殴んないってのにぃ。
……しゃーない。
魔力圧縮で押さえつけ……たら、普通に危ないわね。ドラゴンくん死に体だけど、まだ動けるだろうしぃ。
ち、力づくでどかしたら……ダメだぁ。変に抵抗されたら、ブチって潰しちゃうかもしんない!
どうすっべ、どうすっべって思ってたらね。
「ちゃーちゃん。ちゃんとお話を聞いてほしいんですの」
「……」
じょーちゃんだよ。
ムラクモちゃんのこと抑えつけてた二人って、じょーちゃんとれっちんだったみたい。
……ぜ、ぜんぜん気付かんかった。
ご、ごめんねぇ。ムラクモちゃん、人外ぶっ殺そうって一度考えちゃうと、けっこう周り見えなくなっちゃうの。ゆるちて。
それはそれとして。
じょーちゃんのお願いだもんね。いいよ。聞くだけ聞いたげる。
そんでムラクモちゃんがお話を聞く態勢になって構えをとくと、ドラゴンくんサポーター村人さん達ってばあからさまに安心した顔しとる。
ごめんなさいねぇ、ご迷惑おかけしてますぅ。
んで、お話の内容なんだけどね。
「実は勇者村には守り神がいる。伝説に語られない……チョー絶天才で謙虚な模範的人格者ドラゴン様がよ!」ってことらしいよ。なんか長々どんだけ素晴らしいかって語られたケド、人外の素晴らしさなんか要約もしたくないので、飛ばしちゃうよ。「最近、村に地震が多く起きていて、その原因がドラゴン様なのは知ってたぜ! だが、ドラゴン様のことだ! 深慮遠謀のお考えがあるに違いないぜ!」ってことみたい。
……うん。
ふわっふわじゃないのよ、根拠。まるでムラクモちゃんの倫理観みたくフワフワだぁ。
で、でも。洗脳されてんじゃなくって、好きで庇ってんだってのはわかったのん。……奇特な人達だなぁ。
【……相も変わらズ、人間に甘いネ】
「し、神龍様?」
【華亥ムラクモ。それで君はどうなったんだイ? 地球でどうなっタ? 何もかも君が悪いということになったろウ。誰も感謝など渡しはしなかったろウ。
……いい加減に気付きたまエ。君ハ──】
「──かわいい子犬。でしょう?」
「じょ、じょーちゃん?」
ぐったりドラゴンくんが急に饒舌になったと思ったら、じょーちゃんが割り込んだのん。
んで、ムラクモちゃんの頭をなでなでー。
あ、もっと強くていいよ。今日はそういう気分。……な、中々のお手前……。
ところで、ドラゴンくんの早口煽り。
……なんだか懐かしさを感じる煽りだなって。昔にね、同じようなこと言ってきたやついるのよ。そいつ皇蟲っていうんだけどね。『いつまで人間ごときの走狗に甘んじるんだイ』ってさぁ。『君がどれほど献身を尽くしてモ、行きつく先は破滅になるだろウ』って。……まあ、その通りだったよね、ある意味。異世界追放されちゃったしぃ。
……でもねえ、本当に後悔はしてないの。
だからね、あいつにくれてやった言葉、君にもあげるね。
「お礼がほしくてやってない。……でも、ご忠告ありがと。忘れるまで覚えとくよ」
──決まったね。
ってことで、このまま流れでドラゴンくん千切っちゃお。村人さん達、ドラゴンくんの剣幕にドン引きして距離取っとるし。チャンスだ! 死ねぇい!
今度こそやっつけるぞって、勇んで踏み出そうとした、プリティ・レッグなんだけどね、その前に止められちゃった。
またまたじょーちゃんだよ。……そういや抱きつかれてんだった。……いやいや、この流れ何回やるのん?
「めっ! ですわよ、ちゃーちゃん」
「……なんで止めるの?」
「ザメルさん達がおっしゃってらしたでしょ? シシル様は危険なモンスターとは違うって」
「……そうは思えないケド」
「まあ正直、わたくしもそう思いますわ。神龍だとか言われたって、大暴れして悪態ついてるところしか見てませんし」
「えぇ……(困惑)」
ガチのマジでどういうことなの?
それなら潰したっていいじゃない。なんで止めるん?
反抗期なの? ムラクモちゃんがやることなら何でも否定しておきたいお年頃なの?
……いやいやまさかね。うちのじょーちゃんに限って! ……でもそうやって過信してると、思わぬ落とし穴にはまったりするよね。
オラオラ系アンチムラクモじょーちゃん……ゔっ! の、脳が! 脳がこわれるぅ!
「あ、アシュベリー。アンタ言ってることムチャクチャよ」
「愛ゆえですのよ、スカードレッドさん。……ちゃーちゃん。わたくし、根拠なんてまったくありませんけれど、それ、間違ってると思いますの。
……だってわたくし達ってよそ者でしょう? 勇者村の事情なんて分かりませんでしょう?」
「……確かにそう。
……ん。でもわたし、そいつ嫌い。だから殺す。村のことなんか関係ない」
「なら、わたくしはちゃーちゃんが好きですわ。だから申し訳ありませんけれど、邪魔させてもらいますわね。……あら? これだと村のことなんか関係なくなっちゃいますわねぇ」
……わかんない。
意味わかんない。なんで? 好きなら止めないでよ。
求められてないのなんてわかってるの。ドラゴンが村人に慕われてるってのもわかった。
でも、人外だよ。
ヒトを攻撃する人外だ。
どっか遠く、人目につかないとこでひっそり暮らしてんならともかく、わざわざ人里を攻撃するような奴、生かしておく必要あるの? ないでしょ。
「……離して」
「離しませんわ。……ふふ。こうやって掴んでれば、ちゃーちゃんは行動できませんものね」
「離してって言ってるっ!」
「離しませんと言いましたわ。……ねえちゃーちゃん。わたくし、あなたに嫌われ者になってほしくないんですの。
……ちゃーちゃんが一生懸命なのは知っていますわ。誰かに優しくしたいなって思ってるのも知ってますの。
でも、きっと……。ちゃーちゃんが思うように、思うことをやり続けたら……あまりいいことにならない気がしていますの。だから、離しませんのよ」
…………要するに。
じょーちゃんが言ってることって、皇蟲やドラゴンくんが煽ってきたことと一緒ってことみたい。
なら、わたしが返す言葉は決まってる。
……決めてた、ハズなのに。
なんでだろ。
言おうって思った言葉が出ないの。
「…………じょーちゃんは」
「聞きますわ」
「じょーちゃんは……正しいの?」
「うーん…………わかりませんわ。だってわたくし、世間的に見て正しいとか間違ってるとかで動いてませんし。ちゃーちゃんが好きなだけですのよ。
ちゃーちゃんにとって良くないことになるなって思ったら、たとえちゃーちゃん自身が相手でもわたくし戦いますわ。……それだけのことですのよ」
……そっかぁ。
……。
……わかった。
じょーちゃんのそれ、ムラクモちゃんのピュアピュア・ハートにズッキューン! って来ちゃったからね。今回だけ! 今回だけの、トクベツ……だよ♡ 見逃したげる。
……でも、こいつをそのままにしておくのって普通に危険だから、殺さないまでもどうにかしなきゃなんないことってあると思うの。
……とりあえず。
【グ、アアァァァアッ!】
「神龍様!? キサマ、何をした!」
「回復魔法かけたの。……心配ないよ」
「は? いやめっちゃ苦しんでますけど……」
「ホントだよ」
まあ。
ムラクモちゃんは魔法って基礎教練レベルしか使えないからね。ただしくは回復魔法(もどき)なの。生命力を魔力で無理やりブーストするんだよ。だから、欠損とかあるとメチャクチャ痛いんだぁ。治るけどね。死んだほうがマシってくらい痛いケド。
許せドラゴンくん。君を二度痛めつけているこのムラクモの所業を許しておくれ。
……しばらくすると……なな、なんと! キレイさっぱり治った樹属性ドラゴンの姿がそこに!
ん。治ったならおけおけ。んじゃ、お話だよ。
「……ね。暴れんのやめて」
【好きでやっているのではなイ】
「やめてくれるってこと?」
【やめられぬ事情があると言っていル】
……わかんにゃい。
ちょっとドラゴンくん、ムラクモちゃんにもわかるように説明してくんないかしら?
ムラクモちゃんの理解力はムシケラ以下! なので優しーく、噛み砕いて、赤ちゃんに離乳食を食べさせる~ってくらいにわかりやすくね! お願いしますよ!
【……支配を受けているということダ。抵抗してはいるガ……自分自身でも、いつ凶暴化してしまうか知れン】
「そうは言いますけれど、どこのどなたに? 言っては何ですけれど、あなたほどの力を持ったドラゴンを支配するなんて、アーティファクトを使ってもできそうにありませんわ」
【……蟲ダ。蟲が身中をはいずりまわっていル。……卵を産み付けられたのダ。
やったのは……照りのある緑色で……薄桃色の翅と、腹と尻に針があル──】
……!
テカテカの、緑色。薄桃色の翅。
針が二つあって……。
「──紫の複眼。一つ一つに真っ赤な目が付いてる」
【あ、あア。そうカ。そうだっタ。……お前は知って──いるのだったナ】
──皇蟲だ。皇蟲が使う端末。
あいつがやる最低に愉快でハッピーな手段の一つが──寄生なんだよね。
わたしもやられたから知ってる。……お揃いだね、ドラゴンくん♡
ま。わたしの時は無理くり抉り出して握り潰してやったけどねぇ。最強のムラクモちゃんを支配しようなんて百年早いのだ! なんつって。
……。
「……今からお腹に手を突っ込むよ。あなたなら多分死なないと思うから、我慢して」
「ぼ、“暴君”!? アンタ殺すのやめたんじゃなかったの?」
殺すんじゃないよぉ。
説明すんのも面倒だから、やっちゃうね。
はいずぼーっ。ドラゴンくんってばすんごい絶叫あげちゃっとるけど、ごめんねぇ。ムカつく幼虫潰すほう、優先させてもらっちゃうね。
……それにしても。ドラゴンくんってば、妙にムラクモちゃんのことよく知ってんなって思ったけど……まさかまさか、皇蟲に寄生されとるとは。このムラクモちゃんの千里眼をもってしても見抜けなんだ。……でも納得しちゃう。
──いやいや。そんなことある?
だってあのゲボヘドロ寄生虫野郎、間違いなくムラクモちゃんが滅ぼしたはずなんですけど。なしてこの世界で、それもドラゴンくんなんかに産卵しとるワケ? ……わかんにゃい。
てか生きてんの? 生きてこの世界にいるの? どこぞでのうのうと暮らしてらっしゃるのん?
──絶対に見つけ出して殺してやる。
……。
ところで、しばらくドラゴンくんのお腹をもぞもぞーって探すとね、ムラクモちゃんのプリティ・フィンガーに感アリ!
んで、ふん捕まえて引っ張り出すとねぇ、蛍光オレンジのグニョグニョがぬるりって出てくるの。大きさはね、うん。ドラゴンくんの体の中をよっぽど食べまくったんか、だいぶ大きい。ちょっとした大型犬くらいの大きさだよ。……犬で例えるのよくなかったかも。
そいつね、先端の部分開いてさ、人間みたいな歯、むき出しにして威嚇して来てる。マジキモいよね。思わず素に戻ってぶちゅーって引き千切っちゃった。
うえー、ゲボヘドロ汁だぁ。ばっちぃ。虫ゴミくんをその辺にポイ捨てしようかなって思ったんだケド、こんなの捨て去ったら環境破壊極まりないもんね。なので、ワーワー言っとる長老おばあちゃん達を流しつつ、流しつつ。魔力圧縮でグッチャグッチャに圧縮して、栄養ゼロ点の肥料に転生させちゃう。
……あ、そうだ(思い出し)。ドラゴンくんに回復魔法かけてあげなきゃ。きゅいーん! ってね。
……そんで皇蟲のことね、ドラゴンくんに聞いてみたの。……そしたらさぁ、もう死んでいないよってさ。
や、そんなわけないでしょって。あなたさっきまで寄生されてたじゃないのよって。……でもねえ、勇者が確かに打倒しましたよって言うの。
……んー(思考中)んんんー……うん(思考放棄)。
はぁー。もうわかんにゃい。ムラクモちゃん知能の限界を超えたレベルの事象だよぉ。もう無理ぃ。
今日って色々あって気疲れしちゃったし、幼虫の除去も気を遣ったしぃ。お腹だって空いちゃった。
ドラゴンくんにお話しありがとうを言って、はよ帰ろ。
……って思ってたら、ドラゴンくんに呼び止められちゃった。
なぁに? まだムラクモちゃんにご用あるの?
【殺さぬのカ? 我は人外だゾ】
「……やんない。約束したから」
【そうカ。…………すまなかっタ】
「なんで謝るの?」
【それハ……。……言うつもりはなイ】
「??? ……ん。いいよ」
【……借りたままでいるつもりはなイ。返すゾ】
───
帰り道だよ。
ドラゴンくんにやられた傷に回復魔法かけてるとね、じょーちゃんが「その魔法……痛いのでは? わたくしが癒しますわ」って。ほんとう?
んじゃ、お言葉に甘えちゃおっかなぁ。ぴぴぴー。きゅいーん! 完治だぁ!
ありがとうね、ってお礼言ったんだケド、じょーちゃんってばなんだか気まずそうなの。
いつものニコニコ~ッてしたお顔が暗いよ。……うーん。じょーちゃんがそんなだと、みんなの太陽・ムラクモちゃんまで墜落しちゃいそう。
……だからね。
「……ありがと」
「ちゃーちゃん?」
「ん。……間違ってるよってね、言ってくれたの……嬉しかった。また、叱ってくれる?」
「……ええ。友達ですもの。ずぅっとあなたを見守りますわ」
ん。
……そんでね、この日はお宿に泊まって……次の日に迷宮都市に帰ったんだケド。
今日も今日とて借金返済だぁ、ってお仕事に行こうと思ったらね、メガネさんが完済しましたよって言ってきたの。どういうこと?
って聞いたら、匿名希望さんからとんでもないお宝が送られてきててねえ、それが返済にあてられたんだって。
他人の借金を返してくれる物好きさんがいるなんて、世の中って広いんだねぇ。ありがとう、名も知らぬ長靴をはいた猫さん。
でもタダでお金だけ受け取るのも悪いから、ムラクモちゃんスマイルを天に送っておくね。
そーれニコー♡