くたばり損ない魔法少女わたしの独りゴト   作:土縁屋

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【配信】地道なお仕事しちゃう件

 視聴者数:29911

 

 

 

 わたし、華亥ムラクモ♡ ジャンジャカジャーン! ご近所迷惑なんのその! 待望のプリティアイドルがキラメキゲリラライブを敢行しちゃいまーす!

 あなたのことが好きで好きで好きでーっ! ぼぼぼぼえー! ぼえぼえー! 難聴系主人公キラー女の子♡

 

 

 はい。

 今日も今日とてお仕事です。山に来てるよぉ。岩だらけって感じのビッグマウンテン。

 なんかね、モンスターくんが登山の邪魔して来てマジでうっとうしいからお掃除してクレヨンってことみたい。んだもんで遠足だよぉ。

 別にねぇ。困んないよ、ムラクモちゃんは。……でもいちおうだよ。ホウレンソウが可能な一級社会人としてね、いちおうだけ。聞いてみたの。

 お掃除っつったって、どんくらいやったらいいのん? まさか絶滅させろってワケじゃ……ないでしょ? って。そしたらねぇ、どうせいくらでもわいて出るし、とにかくたくさんぶっ殺してくれたらいいよって。でも、てっぺんに住んどる奴はガチのマジで迷惑千万なんで、ぜったい殺しといてくれよな! って。なるへそ……。

 ……ところで、ホウレンソウってなあに? 野菜じゃないよね? さすがに。

 

 さておきさておき。

 そういう事と次第でありますので、モンスターくん諸兄にはまことに申し訳ないケド、死んでもらいますねぇってことで。ばきどかーっ。大暴れしちゃう。

 『人外とあえば引き千切り、蟲とあえば問答無用でぶっ殺す! 血と涙と悲鳴まみれの冒険がここにある! プリティ・クエスト』ムラクモちゃん脳内で好評配信中! な、なんて邪悪なゲームだぁ……。

 ムラクモちゃんと出会ってしまった不運なモンスターくんにはご冥福を祈りつつ、祈りつつ。てっぺんまで行くとねえ、でっかい鳥さんがハロー・エブリワン。こやつか……! こやつが……抹殺対象! つまり……このエリアのボスね!

 超速理解ゲーム脳わたし。

 

 いきなり押しかけて申し訳ないケド、お仕事なのでぇ。死んでね。

 つーことで、くらえ! ぶっつけ本番! サンシャインスマイル・デスジェノサイダーだーっ!

 こんな時のために用意した新必殺技がヘンテコ山在住・でっかいバードくんを襲う! ……ところでこんな時ってどんな時? ……うーん。なんか無性に目立ちたい時……とか? うーん俗物的必殺。

 

 せっかくだから必殺技自慢しちゃうよぉ。……せっかくとは?

 なんかこう……魔力をねぇ、ぎゅうぎゅうに詰め込んじゃうの、お手々に。そんでね、そのピカピカなプリティ・ハンドをずどーっ! って鳥くんのお腹に突き刺したげちゃうのん。大事なのはねえ、強く殴り過ぎちゃダメってことだよ。やり過ぎちゃうと爆散しちゃうからね。……鳥くんが。む、ムラクモちゃんの手加減力が問われているぜ……!

 んでんで、うまいこと相手が原型を保ってたらね……すかさずカメラに向かってプリティ・スマイルを大奮発♡ もってけドロボー! 閉店覚悟の出血大サービスセールだーっ! ニコー♡ そーれニコニコ~♡

 愛想を振りまきつつ、振りまきつつ。

 仕上げだよ。高めて圧縮しまくったお手々の魔力をねえ……。

 

 プリティ・エナジー全解放! 行け、飛べ! 星の彼方へ大爆発! どかどっかーん! って感じ。

 ……ふっ。また一つの生命が“星”へ還ったか……。なんつって。あばよ鳥くん! 君の勇姿は忘れない! ……覚えてるうちはね、うん。成仏してねぇ。

 南無南無~。

 

 

【いきなりとんでもねえパンチ放ってて草】

【いやいや。……いやいやいや。今の何? パンチが大爆発を起こしたんだが? 怪鳥が内側から弾け飛んだが? いったい全体何が起きたの?】

【↑ タイラントロリだぞ】

【何の説明にもなってなくて草。なのにこれ以上ないってくらいムラクモちゃんを説明してて大草原】

【無駄に可愛い媚び笑顔向けてくんのやめろ。脳がバグる】

【↑ 毎度の挨拶でもそうだけど、バーバリアンロリって極まれに媚びてくることあるよな。かわいいけど。……ひょっとして配信者を勘違いしてる?】

 

 

 ……あ。鳥くん原型なくなっとるやんけ! これじゃ持って帰れないじゃありませんのよ。うえーんしくしく。持って帰って屋台おじさんのところでお料理してもらおうと思ったのにぃ。

 くっ……。配信映えするかっこいい必殺技とおいしいお肉……両方をゲットできるほど世の中は甘くできてないってことか……世知辛いぜ。ほろり。慣れないことはするもんじゃないですねぇ。

 まあいいや。

 お仕事が一つ済んだので、帰りましょう。

 

 

 ───

 

 

 そのあともね、二つお仕事もらったケド、ムラクモちゃんは有能なので、さささっと終わらせちゃった。……そんなスピード感でやっちゃって大丈夫ぅ? お仕事、雑になってるんじゃ、ありませんか?

 ふふふのふ。心配ご無用でありんすわ。その辺も抜かりはありませぬ。何故ならムラクモちゃんは最強! 最強……それは万物を凌駕する才能……。

 で、でもよう。本当にそれが根拠だったとして……ムラクモちゃんのムシケラ知能はどうなっちゃうの? さすがの最強も知能レベルまではカバーできませんの?

 聞こえない聞こえない! 都合が悪いことは聞きたくないんだーい!

 

 ちなみにねぇ、やったの荷物運搬のお仕事とね、街道のモンスターくんお掃除だよ。 

 そんでね、今やってんの猫探し。迷宮都市に戻ってきたの。

 愛猫(他人)探して三千里。おーい猫さんやーい! どこにいらっしゃるのー? 君が持って行ったわたしの心を返しておくれやすー!

 キャッツ・マイ・ハート……なんつってねぇ。へぇーくちょいっ。ぶるぶる、なんか無性に冷えてまいりましたわね。

 

 

【しかし、ムラクモちゃんってマジで仕事選ばねえな。猫探しなんて探索者の仕事じゃねえだろ】

【ムラクモちゃんって“二つ名持ち”にしちゃだいぶ安い報奨金で雇えるらしいし。こいつ本当に“暴君”か? 今からでも“聖女”に二つ名改名しろ】

【↑ “聖女”はもういる定期】

【借金してるって噂あったし、返済のために頑張ってるんでは?】

【↑ もう完済したらしいぞ。しかも寄付までしたらしい】

【聖女では?】

【↑ “暴君”だぞ】

 

 

 あ、そうだ(唐突な思い出し)。

 実は今ねぇ、配信してるんだよ。

 ……な、何よ! 長い間あたしのこと放っておいたくせに! いまさら空き地ホームレス配信者わたし気取り!? ……ち、違うんだ! 信じてくれ! 俺は決してお前をないがしろにしてたわけじゃあ……。そういう気分だったんだーっ! うん。

 なんてねぇ。

 しょうもないこと考えながら迷宮都市をあっちらこっちら。

 

【ムラクモちゃんゴミ箱漁ってて草】

【屋台に釣られてて笑う。めちゃくちゃ真剣に揚げ物吟味してて草】

【ちょっ! いないよさすがにその狭い隙間には! 壁壊しちゃダメだって! 誰かこの暴君を止めろーっ!】

【↑ 通りすがりの迷宮都市の白百合さんが止めてくれたぞ。……ヨシ! 問題なし!】

【問題しかないんだよなぁ……】

 

 ……。

 

 ……んーむむ。

 正直舐めてたかもしんない。

 

 猫探しくらいなら容易くやれるやろ! って思っとったけども……。まるで見つからへん!

 魔力感知で探そうにも、この辺人多いし、そもそも小動物なんて大した魔力持ってないからわかんにゃいしぃ。

 な、なんてことだ……。あの最強・ムラクモちゃんにも不可能なことが、まさかまさか存在したなんてぇ。……この無能! 期待外れ迷探偵! ムラクモ! ……すみません。

 

 うーん、困った駒った小松菜。……関係ないケド、駒ったってなんかSNS感ありますね。お馬さん専用ツイッター。略して駒ッター。なんつって。

 しかし、ムラクモちゃんは諦めない! 諦めない心が──最高の魔法なんだから☆ ……ん。今わけもなくイラっとしちゃった。ぶりっ子やめてね。……きゃんっ。ごめんなさぁい☆

 どうにもなんないからねぇ、もはやムラクモちゃんに残された道は一つ。それってなぁに? ふっ。シラミ潰しに探すこと……それあるのみよ。それ……さっきまでやってたのと変わんないんでは?

 はい。

 変わんないケド、それしか思いつかないからしょうがないよねって、続行です。

 

 

 

 けっこう長丁場の探し物になっちゃってねえ。それでもめげずにこう……這いつくばってね。ちっちゃい隙間覗き込んでたの。猫さん出ておいで~って。いなかったケド。

 そんな時だったの。ムラクモちゃんに声掛けしてくる人物が! いやんっ、何者!? まさか……超絶ラブリーなムラクモちゃんに骨抜きになっちゃったファンなの? 美しいって……罪ね。

 冗談だよ。

 

「……あ、ああの。その……お困り……でしょうか?」

 

 ところで声の人。

 なんかめっちゃおどおどしとる感じ。

 どちらさま? ムラクモちゃんになんかご用? 今ちょっと忙しいから後にしてちょー。ってね。

 振り向いてみるとね、女の子だよ。メガネでね、ゆるーい三つ編みの子。

 

 

【メガネっ娘だー!】

【剣を佩いてんな、二本。探索者か? ……とてもそうは見えんが】

【↑ 人は見た目じゃないぞ。タイラントロリを見ろ! 見た目は妖精、中身は蛮族だぞ!】

【この子、どっかで見たような気が……思い出せん】

 

 

「ん。探し物してる」

「あ、お、落とし物……でしょうか?」

「ちがう。猫探してる」

「あ、ね、猫?」

「うん。お仕事」

 

 ムラクモちゃんがね、このあふれ出るコミュニケーション能力を駆使して懇切丁寧に教えたげるとねぇ……うん。メガネさん……はもういたね。うーん。緩い三つ編みの子……ゆみ子でいいや。

 ゆみ子ってば、なるほどガッテンわかりましたってお顔。ご理解くださったか。

 そんならもうよろしい? ファンサするのは大切だけど、ムラクモちゃんお仕事中。なんで戻らせてもらうねぇ。っつって、猫さん探しを続けようとしたらね。ゆみ子ってば呼び止めてきやがったのん。

 ……なぁにもう~。忙しいから後にしてってのにぃ。……簡潔かつ手短にしてよね!

 

 ゆみ子ね、なんだかすんごく一世一代の告白でもすんの? ってくらいのタメをつくったと思ったらねえ、「そち、メタクソ手間取っておるようでおじゃるし、麻呂が手を貸して差し上げても構わんぜよ」って。……あ、思わず盛っちゃった。ホントはねえ、もっとおどおどーって感じの言い方だったよ。

 

 

 ───

 

 

 猫さん探しはねぇ、ムラクモちゃんの苦戦が何だったのってくらいにあっさり終わっちゃったよ。

 ゆみ子ね、ターゲットの猫さんがどんな特徴かってのを聞いてきたと思ったら、「猫探しにはコツがあるんです」って。なんだか自信ありそう。よう言うた! 

 んーで、何何? なにすんの? なんかすんごい奥義とか使うのん? それってムラクモちゃんも習得できる? おせーて、おせーて! って期待するムラクモちゃんクエスチョンへどんなアンサーを返してくれたかっつったらねえ、道行く野良キャッツさんに話しかけだしたんだよぉ。

 …………。

 えぇ……(困惑)?

 

 

 ……いやいや。

 いやいやいや。ちょいとお待ちなさいよあなた……。猫に話しかけるって……そんなメルヘン・ランドの住人じゃないんだからさぁ……。

 しゃべる猫さんなんて、現実にはおりませんよぉ。宇宙から侵略してくるゲボヘドロインセクトはいたけどねえ。人間が主食のやつ。

 喋る動物なんてまるでマスコットじゃないのよさ。全魔法少女憧れの存在だよぉ。憧れ過ぎて……うわー! ラブリー・ピースフルランドにムラクモの魔の手が迫ってきたぞ! ありとあらゆるマスコットを我が物にせんとする暴君の野望だー! なんてこったい、ゆるせぬ! やつを倒さねばメルヘン三千世界に平和はない! くらえ! 愛と平和のレボリューションフラッシュ! ぐわー! さらばムラクモ! 永遠に!

 なんつってね。ムラクモちゃんジョーク。

 

 話逸れちゃった。

 ゆみ子ってばね、なんかにゃーにゃー言っとる。……傍目には危ない猫好き少女ですよぉ。

 

【メガネの子かわいい】

【にゃーにゃー言っててかわいい。タイラントロリさんにも見習ってもろて】

【↑ クモっちかわいいだろ! ……か、顔“だけ”は】

【猫狂いのメガネっ娘……。思い……出した! その子、アシュリー・カーバインだ! “不死鳥”ちゃんだぞ!】

【↑ 王都の“二つ名持ち”か? 何でそんなのが迷宮都市にいるんだ?】

【普通に観光か依頼やろ】

【というか猫狂いとは? ……いや、あの光景見たらわかるけどさぁ……】

 

 

「……わかるの?」

「にゃー。……あ、は、はい。お、お猫様はこの世で最も慈悲深く、包容力があり、そして陰キャにも優しい存在ですから……! こ、こうやって真摯に心を通じ合わせれば、空より広大にして清澄な思いやりの声が答えてくれるんです……っ」

「?? ……?」

 

 なるほどつまり……どういうことですか?

 ちょっと何言ってんのかわかんなかったケド、にゃーにゃーゆみ子ね。猫とひとしきり戯れたと思ったら「ついてきてください」って。自信満々って感じでねえ。そんで猫さん見つけちゃったってわけ。

 

 ……いやホントにどういうこと?

 

 

 

 視聴者数:30720

 

 

───

 

 

 お仕事終わりにメガネさんのところに行くよ。

 そんでね、同じく仕事終わりのムキマッチョさん達でギュウギュウの長い列にちゃぁんと並んで順番待ち。今日も前に並ぶやつをぶっ飛ばさずにいられた……。ムラクモちゃんが常識人であるという証明がまた一つ増えちまったぜ……ふっ。

 さておき、順番が来たら「こちらのね、親切で素敵な方の協力のおかげで無事猫さんはご帰宅なさいましたよ」って報告。なんかこん時……メガネさんめっちゃびっくらこいとったし、ゆみ子もたじたじーってしてたケド、興味ないから聞き流しちゃった。ムラクモちゃんは自分が興味あること以外は興味がないのだ! まー! 自分勝手! しかしそれがムラクモちゃんだ! 残念!

 猫さん探しのお礼はね、銅貨十枚だったよぉ。ちゃりーん!

 やったぜ! 大儲け! ……って思ったケド、これは受け取れませぬな。だって猫見つけたのゆみ子だし。

 

 なのでねぇ。銅貨十枚をゆみ子へどうぞ! っつってプレゼント・フォー・ユー。ゆみ子ね、「あ、う、受け取れません! “暴君”さんが受けた依頼ですし……」とかってごねてくださるけど、無理やり押し付けとくよ。

 ……あと忘れちゃいけないのがねぇ、今日の分の稼ぎをご飯の分だけ取ってから……メガネさんに渡すこと。借金返済だよ。

 ……え? 匿名希望さんの親切のおかげで借金なくなっただろって? それは……はい。どこの物好きさんか知んないケド、めっちゃありがたいよね。

 ……あなたの溢れるゴールデンでトレジャーなバーニング・エール、受け取っちゃいました♡ えー。皆様の温かいご支援のおかげでわたくし、わたくし華亥ムラクモは今日も活動ができております。

 ……何の活動? ……うーん……人外抹殺。物騒!

 

 それはそれとして。

 学じいの依頼を断ったのはムラクモちゃんだからね。依頼金を返すよって言ったのもムラクモちゃん。つまりは……そう。身から出た錆! すべておぬしが悪いんじゃー! 生命を持って償えー! ざばざーん!

 うん。 

 んだもんで、ここでちゃんとお金返さなかったら二重に約束破りすることになっちまいますよって。

 さ、さすがにそれはね……。厚顔無恥、悪辣非道の約束破り魔ムラクモとして名を馳せたムラクモちゃんもね。うん。よくないよねって。

 

「……あの。何度も言いますけど、困ります。ムラクモさんの借金は完済しましたっていいましたよね?」

「うん。……でもあれ、わたしのお金じゃない。お金返すよって約束したのはわたし。だから返すの」

「や、本当に困りますよ……。ただでさえ、“暴君”のネームが安く買われ過ぎてるってのに……。その上こういうことをされると。

 ……。こ、ここだけの話をしますよ。ムラクモさん、あなたに送られてきたあの財宝……いくらか中抜きされてるんです。わかりますか? 義理を通す必要はないってことですよ」

「ふーん。……返すね」

 

 めっちゃ迷惑そうにしとるメガネさんへお金を押し付けちゃう。……ん? ゆみ子といい、メガネさんといい……。今日のわたしって妖怪みたいですねぇ。妖怪・ムリヤリオカネオシツケテクルゴン。な、なんて迷惑な存在……。でもごめんねぇ。ムラクモちゃん、約束したことは守りたいのん。

 自己満足女の自分勝手に付き合わされてマジ不幸! ってことでね。納得……して♡ ……くっ! 極悪自分勝手ぶりっ子ムラクモめ! 他人の事情を鑑みないその傍若無人、ゆるしがたし! きえーい! ずばー!

 いや、ほんとすみません。

 

 

 

 そんなこんなってことでね。今日もお仕事頑張ったなー!

 今日の晩御飯はねぇ……うーん。屋台おじさんとこでいいや。おいしいし。んでね、帰ったらじょーちゃんとお電話すんだぁ。昇級試験だとかって忙しいらしいからあんまりお話できないけどねぇ。……さ、寂しさだと? このムラクモにそのように惰弱な感情はない!

 嘘です。普通に寂しいのん。おセンチメンタル気分のメランコリック・ムラクモちゃんをやっとるとね、背後から忍び寄る影! 何者だ! 名を名乗れい!

 

 ゆみ子だよ。

 なんだかとっても深刻そうなお顔で、「あ、ぼぼ“暴君”さん……!」つって追いかけてきたの。なぁに? まだなんかご用あるの? ムラクモちゃんってばこの後も大事な用事が目白押しなんですケド。

 ……ん。

 いちおうね。いちおう……聞いてはあげるけどね、手短にお願いしますよぉ。

 

「……」

「……?」

「…………」

「???」

 

 もー! なんなの!

 ムラクモちゃんは可及的速やかにお家に帰りたいって言ったでしょ! ……頭の中で! なんてこった! それじゃあ伝わんないよ! こんなにどんなに伝えたいことがあるってのに、ひと欠片だって君に届きはしないんだぁ……。口で言ったらいいのでは? なるほど正論!

 

「……言いづらいことなの?」

「あ、え? ……あ。ああ、あの! 違います! ……ちがくて」

「ん?」

「あ、その……。“暴君”さんってもっと怖い人なんじゃないか……って思ってたから……!」

「ん。よく言われる」

 

 失礼しちゃうよね! まったくまったくぅ! ムラクモちゃんのプリティさはいつだって変わらずここにあるってのにね!

 いいけどね。慣れたし。

 言いたいことってそれで全部でおじゃるのん? って思ってゆみ子見たら、まだ何か言いたそう。……。

 

「あ、謝りたいな……って……! う、ウワサだけで知った気分になってたこと……!」

「??? ……わかんない。気にしてないし、必要ないよ」

 

 ……必要ないつってんのに、ゆみ子ったら「それでも……!」っつって食い下がってくるよ。マジメだなぁ。

 というか、おアイコだなってムラクモちゃんは思ってるよ。猫探し、手伝ってもらったもの。十分どころか差し引きお釣り出ちゃいますねぇ。……あ、でもすみません。ムラクモちゃんってば今金欠気味なんで、お釣り出せません! ゆるちてゆるちて。

 ……。

 

「……どうしても気になるんなら、ほどほどに崇め奉っとくといいよ」

「あ、あがめ……? ……え? ぼ、“暴君”様……とか?」

 

 もしくはプリティ・ムラクモちゃん様とかね! むしろこっちが推奨だよ!

 ゆみ子ね、なんか「“暴君”さん。“暴君”様……」とかってブツブツ言ってたけど、納得したのかしら? わかんにゃい。

 ……ムラクモちゃんね。お腹ぺっこりんがもはや限界なので、自己解決したっぽいねって思っとくよ。うん。……なんとなくね。なんとなくそんな感じだねって。

 そういうことだからね、ムラクモちゃんは帰ります。本日はお疲れさまでした。っつってね。

 じゃあの、ゆみ子。また会う日まで! ま。……ムラクモちゃんが覚えてたらの話だがな! ガッハッハー!

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