わたし、華亥ムラクモ♡ 朝はお魚、昼はお肉、夜は気分! おススメご飯ならいくらでもおたずねください! 食のメイクアップ・アーティスト・プランナー女の子♡
朝ごはん食べてたんだよ。
今日のご飯はねぇ、じょーちゃん一押しの意識高い系オーガニック食堂だよ。なんか野菜マシマシ。おいしいおいしい。
一番おいしかったのね、なんかピンク色の葉っぱ。サラダになっててねえ、こんもり千切りピンクが盛ってあんの。んで、何か肌色のソースかかっててねえ。てっぺんによくわかんないモチモチの白い奴乗っかっとる。
お味はねえ……よくわかんにゃい! 味が複雑すぎてムラクモちゃんのムシケラ知能じゃ処理しきれないのだ……残念。
もしゃもしゃもしゃり。
気分は草食動物。ムラクモラビットちゃんですよ♡ ぴょんぴょこぴょん♡
……サイの間違いでは? ムラクモライノー。前方しか見えないうえに人のお話を聞かない! その上脳みそは……とってもツルツル赤ちゃん肌! まー! なぁんてお似合いなんざましょ!
……失敬だな! なんて失敬なわたしだ! モシャモシャー。
ご飯中だってのにねぇ、呼び出しあったんだよ。
『急ぎの用事あるから、プリティキュートなムラクモちゃん様に置かれましてはちょい来てちょ』って感じ。ええー……めんどい。も~マジでめんどいんだケド、お仕事ですよって言われたらねえ。……世界滅ばないかな。
まあいいや。
わかりました、あとで参りまするよっつったの。そしたらさぁ、『いや今。すぐに来てっつってんじゃん。急ぎだっつってるでしょ』って。知らないよぉ。そっちこそムラクモちゃんがご飯してるのお見えになりませんか? なんか変なお野菜食べてるでしょって。
……もしかして。ムラクモちゃんを早々に追っ払って食べ残しを強奪しようって算段じゃございませんよね? ……分けてほしいなら素直に言えばよろしいのに。ほんのちょろっちだけなら……あげてもいいよ♡
せっかくねえ、ムラクモちゃんがさりげない優しさを演出しとるってのに、呼び出しの人ね。『いやマジでいらねえから。そうじゃねえから。来いっつってんじゃん。お仕事のお呼び出しだって言ってんじゃん。俺も忙しいんだけど。あんま手間どらせんなよな!』って。……すみません。
めっちゃ怒られちゃった。うえーんしくしく(白々しい嘘泣き)。
わかったよぉ。わかりました。行けばいいんでしょ、行けば……。はぁーやれやれ。人気者は本当に辛いぜ。
───
案内されて行ったのはねぇ……なんか暗い街。
迷宮都市ってね、けっこういろんな区画あるの。ムラクモタワーがあるところはね、住宅街なんだって。んで、メガネさんギルドがあるのは商売屋さん通り。んで、今いるのが治安悪い通り。魔法学校モノの物語なら、闇の夜横丁とか名前ついちゃいそうな感じ。……きゃんっ、こんなところにムラクモちゃんを連れ込んでどうする気? ……ま、まさか。路地裏に連れ込んで──二人っきりの独占握手会でも開いちゃう気なの!? ダメよダメ! ムラクモちゃんはプリティ・アイドル! みんなのモノなんだからっ! なんつって。
呼び出しくんについてって治安悪い通りをグングン進んでくとね、なんか胡散臭いお店にたどり着いたの。
すんごい趣味が悪い看板飾っててね、電飾でめっちゃおめかししてるお店だよ。治安悪い通りってなんか全体的に薄暗いんだけど、このお店だけめっちゃ派手。胡散臭いよね。……でもねえ、なんだかお店の中からいい匂いするよぉ。ご飯を邪魔されちゃったムラクモちゃん的に、ものすごくワクワクしちゃうにおいです。
お店の前に立っとる黒服おじさんに礼をされつつ、されつつ。入店したの。
お店の中ね。奥の方にでっかいモニターとかあってねえ。ステージには音楽家さん達いるよ。いっぱい机とソファー並んでてね、個室もあるみたい。
……。
……見張られてるな。数は……三人かな。思ったより少ない。……自分のテリトリーだからかも。
あ。ムラクモちゃんお仕事だからって呼ばれてんじゃん。んじゃ、ありゃ形式だけの見張りか。……ってことでね。
個室にご案内だよ。
んでね、食いもんでも好きに頼んで勝手に待ってろって放置されてんだけど……。うーん。どうしよ。
お肉にしようかな……。お魚? でもなあ。このお店でしか食べられないの頼んでみたいしぃ。
……ポクポクポク、チーン! 閃いたぜ! 俺は……このメニューに全てを賭ける! 頼んだぜ! ギガ盛MAXべペロン牛スパイス仕立てバケット!
そうと決まったらね、店員さん呼んでこれちょうだいってお願いするよ。……あ、あとお魚焼いたやつもお願い。それと、なんかお野菜も。
んでんで、高鳴る胸を抑え、気分は一日千秋。早く来ないかなーご飯。なんて待ってたの。
ご飯はね、わりと早く来たよ。
……いや、ご飯っていうか、訪ね人。
ピコパーンっつってね。
「お客さまーご注文のお品届けに参りましたー」って。お、来たね。も~ムラクモちゃんってば辛抱たまらんぜよ! はよはよ! つってね。でも店員さんったら「今手が塞がってるんで、よろしければドアを開けてくださいませんか」って言うじゃない。
いいよーいいよー。それくらいならねって。もう我慢できないよ! はやく出してくれ!
って思うじゃない?
そんで、ドア開けてみたらさぁ……。そこにいたのって派手な人だよ。派手な女の人。それ以外感想ありません。……ちなみに生き様はムラクモちゃんの方が派手だけどね! そして外見はプリティがはるかに上回ってる。
……別に対抗意識燃やしてるわけじゃないからね! 勘違いしないでよね!
しかもその派手な女の人……うん。派手ポニーテールだからハデポさんでいいや。ハデポさんね、お手々に料理なんて持ってないじゃないのよって。んじゃあ何持ってんのって、でっかい斧だよ。槍と斧合体してるやつ。ムラクモちゃんってば博識だから知ってるけど、これハルバートっていうんでしょ? ミサイルだぁ。
「やあこんにちは。さわやかな朝だね」
「ん。……ご飯は? あなた、持ってるって言った」
「すまないね。それは嘘だ。……どうしても君を驚かせたかったんだ」
「……」
……ッ!
……い、イライラァ。うん。
し、しかし……。危ないところだったが、何とかこらえたぞ。思わずハデポさんの頭むしり取っちゃうところだったぜ。 ……冗談だよ。ムラクモちゃんジョーク。うん。
でも……やめてよね! ムラクモちゃんってばヒトは殴んないケド、すんごい短気なんだから! あんまりイラつかされると、思わず手が出ちゃうかもしんないよ! 気を付けてよね!
……ま、まぁいいや(震え声)。
で、ムラクモちゃんに何かご用なの? ちょっと今、手が離せない大事なご用事な真っ最中なんで。真実の店員さんが届けてくれるご飯を待たなきゃなんないっていう世界的使命の真っただ中なんですぅ。んだもんでぇ、ハデポさんのお相手してる余裕ないんですケド。お帰りはあちらですよ。
って感じのこと言ったげたんだけど、彼女ったら『釣れないね。けれど、そういうのも悪くない』って。……なんやこいつ。
「最初に言っておこう。これから私は君を攻撃するよ。無論、一切の手加減なく、殺すつもりでだ」
「……他を当たって。付き合うつもりないよ」
「いいとも。それでいい。私が勝手に君を斬りつけるだけだからね、“暴君”殿」
お話聞いてらっしゃる?
……まあ、好きにすればいいよ。どうせそんなナマクラなんかいくらぶつけられたって痛くもかゆくもないし。
無視しとるとね、ペちこぺちこ叩いてくるよ。……ムカァ。でも、ムラクモちゃんはヒトを殴らない。……ほんのちょっぴり破ってコイツ殺すくらい許されるのでは? ……いやいや。いけないいけない。ムラクモちゃんは人間の味方です。……ホントぉ?
どんくらい時間経ったかしら?
無駄な努力してたハデポさんね、いったん手を止めたよ。さすがに疲れたのかしら? ……つーかご飯まだ来ないの? ずっと待ってんですケド。
ハデポさんったら「ふむ……」とかってね。なんか考えこんどる。んで、
「“暴君”殿はヒトを殴らないと聞いたが、どうやら筋金入りみたいだね。……聞きたいんだが、君はどうすれば怒るんだい? どうしたら怒り狂って戦いをしてくれる? それが知りたいんだ」
「知らない。……それに、あなたにムカついたって殴ったりしないよ」
「ふむ。……なら、頭を伏して頼み込んでみようか。……私と戦ってみてくれ、“暴君”殿。私はね、君の価値が知りたいんだ。このフィリシア・ドゥ・シルヴェリオンが欲するだけの価値が……“暴君”ハナイ・ムラクモにあるのかということが」
……いや、ぜんぜん頭下げてないですケド。めっちゃ尊大に胸張ってますやん。……いいけどね。別に。
あと、何度だって言うけど知らないよ。誰に何と思われようと知ったこっちゃないし。……でもねぇ。
ちみぃーっとムカついたことあるよ。それね、さっきのお言葉。ムラクモちゃんの価値を知りたいとかってやつ。
……ムカムカァ~だよ。
だって、ムラクモちゃんってば……他人に値札貼られるの嫌いなんで。
……だからね。
特別だよ。あなただけの……トクベツ♡ ……お望み通りにそのケンカ……。買ったげる。
安心していいよぉ。腐っても鯛。死に損なっても魔法少女だもの。痛い目にはあわせないでいたげるよぉ。
んじゃあ、どうケンカすんのって。
……そうだなぁ。
「……ここ、あなたのお店?」
「ン? ……まあ、そのようなものだね」
「わかった。……じゃあ、このお店……。更地にするね」
「──は?」
従業員さんのことなら心配しなくっても大丈夫だよぉ。ちゃあんと考えてんだから。
パンチでやったら被害が大きくなっちゃうでしょ。だからねえ、魔力圧縮でジワジワ壊すことにするのん。
そしたらさぁ、お店の中にいる人みんな、『あ! 悪の大怪獣・最低最悪ムラクモが私怨でお店を崩壊させようとしてる! 逃げなきゃ!』ってなって……人的被害はゼロってワケ!
さ、さすが天才軍略家ムラクモ……百年に一度の詭計だぜ……。
つーわけでねえ。はいキュイーン!
治安わるわる通り所在、ド派手お店くんへ特にいわれのない圧力が襲う! ウワー! ヤメテクレー! キエ~! べきばきー。
す、すまない……お店くん。しかし、ムラクモちゃんはもう戻れないところまで来てしまった……。
べきべきー。そぉーれもいっちょ、ばきばきー。
ってね、お店破壊に精を出してるとねえ、「な、なぜそうなる!?」とか、「正気じゃない!」とかってハデポさん騒ぎまくってるの。
……はやく避難した方がいいよぉ。ここにいるとペチャンコになっちゃうしぃ。そんな風に言ったげたんだけど、「そう思うならやめろ!」って。
……やめてほしいの? そんな風に聞いてみたらね、「当たり前だろ!」だって。
「……そっかぁ。……やめたげる」
「ぜぇ……。はぁ……。……な、なんなんだいったい……」
感謝してよね! ふつう、ムラクモちゃんをムカつかせた奴なんてこれくらいの被害じゃすまないんだからね! 勘違いしないでよねっ。
はぁー。暴れたらまたお腹空いてきちゃった。ただでさえぺっこりんだってのにぃ。
……。
ところで、だいぶ時間経ったと思うんですケド、ご飯まだ来ないの? ……残念だったな! む、何やつ!? 普通……お店がバキバキにされてたら……店員さんは逃げる! なので……永遠に貴様のもとへご飯が届くことはないのだーっ! しまった想定外!
うわぁん!! チクショウ、チクショウ! お腹空いたよぉ! ムラクモちゃんってば別に三食全部食べなくったってぜんぜん平気だけど、最近は一食抜くとすんごい悲しい気分になっちゃうんだぞ! どれもこれも、この世界のご飯がおいしいからだーっ! ありがとう!
ムラクモちゃん情緒が完膚なきまでに破壊されとるとねぇ……ん。人の気配だよ。
「だぁから、やめとけってあれほど言ったろうが。“暴君”はお姫さんが思ってるほど素直に「きゃんきゃん」って尻尾振ってくれるような生きもんじゃねえってよ」
「……ロイ・ロー」
……なんだか任侠映画の三下役みたいに入ってきたのはねえ。……うーん。どっかで見た顔だなあ。うーん……まあいいや(諦め)。
ヤクザみたいなワンちゃんっているでしょ。ピットブル。おじさんめっちゃ似ててねぇ。ブルおじだよぉ。ブルお……じ。
……あ! 思い出した! ブルおじだ! なんか去り際がかっこいいおじさんだ! その節はお世話になりましたぁ。ムラクモちゃんラーニングで、その去り際……真似させていただいてますよぉ。
「よぉ、“暴君”。認定会議以来だな。よろしくやってやがるみてぇで何よりだ。
……しかし、なんだ……。相変わらず、だな?」
「ん。照れる」
「褒めちゃねえがな。……まあ座れや。今日はよ、お前さんにお転婆姫とやり合わせるために呼びつけたワケじゃねえ。キチンと思惑があってのことだ。それを今から話してやる」
「……ご飯頼んでいい?」
「…………。好きにしろ」