わたし、華亥ムラクモ♡ クールにブルーなシップがジ・アースからやってきた平和の使者! どんな問題も、愛嬌と慈愛のハートで解決しちゃうよ! ……むっ、事件! 暴れるのはやめなさーい! やめないと……ラブ&ピースの精神が火を噴いちゃうぞ! 暴力系ヒロイン女の子♡
待ちに待ったご飯とついに対面できましたよぉ。……長かったぜ、ここまでの道のりはぁ。ふっ、だがそれも今となってはいい思い出……。
さておきさておき。
ギガ盛MAXべペロン牛スパイス仕立てバケット。これね、ヤバいよ。むっちゃおいしい。
見た目ね、なんかお皿に乗ってる青紫の肉塊なんだケド……食べてみたら意外や意外! すんごい味する! おもにしょっぱい! あと辛い! それからなんかすっぱい! ついでになんか変なにおいする!
……ムラクモちゃん的にこれ……高得点ですよ。97点。ちなみに屋台おじさんの串焼きは102点。すんごい高評価だぁ……。
おいしいお肉とお魚とお野菜と、ついでにデザートを食べたら……お待たせしましたぁ。お話だよ。
……あ、でももうちょい待って。歯磨きしなくっちゃ。魔法で済ませたら早いケド、じょーちゃんがねえ、それだとなんか気持ち的に不衛生だっていうの。
……えぇ(困惑)? そんなもんだからね、デンタルケアーしてくるまでちょろっち待っていただける?
って言ったらねえ、ブルおじが「後にしてくれ」って。ダメなの? でも不衛生女わたしの称号はちょっと……。いかに空き地ホームレス配信者わたしの称号を持つムラクモちゃんでもねえ。マジでダメ?
……「今はそういう感じじゃないから」って、今度はハデポさんまで言うのん。
しょうがないなあ。そうまで言うんであれば、魔法でお掃除するよ。すぐ終わるからね。……はいきゅいーん。汚れよ、消滅せよ!
お話だよ。
“簒奪王”って知ってる? ムラクモちゃんは知らない。でもなんかそんな異名で呼ばれるすんごい爺さまがいるんだって。なんかねえ、そのおじいちゃんがイケイケゴーゴーだった若い時分にね、反骨精神ぶっ飛びすぎて国を乗っ取っちゃったんだって。そんで“簒奪王”。
ヤバいよねぇ。まるで他人の廃工場を勝手にたまり場にしちゃう不良集団みたいだぁ。……まあ、ムラクモちゃんの所領たるムラクモタワーも勝手に不法占拠した場所なんですけどね。……む、ムラクモちゃんは土地強奪系地上げヤンキーだった……?
い、今はちゃんと購入したから!
メガネさんにね、「おめぇ、人さまの土地勝手に占拠していいと思っちょるんか? 買えや」って怒られちゃってぇ。うん。だからムラクモちゃんは不良じゃない! プリティアイドルなんだー!
はい。
んで、その元ヤンおじいちゃんがどうしたのって言ったらねえ、なんか今でも色んな国を乗っ取ったるぜってハッスルしてんだって。……わぁ。元気なおじいちゃんだなあ。長生きしそう。健康的だよね。
その健康志向元ヤンおじいちゃんってば、最近は王国をゲットしちゃうぜ! つって好き勝手やってたんだってぇ。
ほえー。
「なに他人事面かましてやがんだ。王都事変で反対勢力に加担しといてよ。“簒奪王”サマの調略ぶっ潰したんだろ?」
「……覚えてない。でもフローゼとアイリは友達になったよ」
「…………。わかったか、じゃじゃ馬姫。こいつはこういうやつなんだよ」
「あ、ああ……。うん。なんというか……非常にユニークな少女だね、うん」
……んー。ガチのマジでわかんない。調略ってなんのこと?
でも、なんかご迷惑かけちゃったのは本当みたい。ムラクモちゃんってば最強だからね。もしかしたら通り道に転がってたの踏み潰しちゃったのかもしんない。
んだもんでねえ、ハッスルおじいちゃんには申し訳ないケド、気の毒でしたねえって感想しかないよ。……でも、いちおうだけ謝っとくねえ。これっぽっちも悪いと思っちゃないケド。いちおうね。
ごめんねえ。……うん。おまけのムラクモちゃんスマイルも付けちゃおうかな。そーれニコー♡
はい。これでおアイコね。ということで、お話ってそれで全部? ムラクモちゃん帰っていい? ……「いいわけねぇだろ、座れ」だって。はぁーい。
ところでもうだいぶお話長いよ。
ムラクモちゃん飽きてきちゃったんですケド。ウトウトしてもいい? ……え? ダメ? うえーん。
まあいいや。
ながながブルおじのお話、要約しちゃうねえ。
「ハッスルおじいちゃんってば、長年頑張ってハッスルしてた計画めちゃくちゃにされちゃったせいで頭がパーッになっちゃった! ゆるせぬ! せっかくの計画を潰しおって絶対に許さぬぞ! ──王国! ついでに法国も許さんし、都市連盟も許さん! 大戦じゃあ!! 世界全部に戦争仕掛けてめちゃくちゃにしちゃうもんね! ひーっひっひー!」 ……ってことみたい。今回はだいぶ短くできましたね。えらい!
「ロイ・ロー。……すまないが、ここからは私の口から説明したい」
「……ふん。まぁ……好きにすりゃいいがよ。“暴君”、アンタに口説き落とせるもんだとは思えねえな」
「だが、それが筋だ。
……まず、謝罪を。いきなり手荒なことをしてすまなかった、“暴君”殿」
「気にしてない。……わたしも。お店壊しちゃってごめんね」
「その謝罪はロイ・ローに。彼のお店なんだ。……いや、うん。……先に喧嘩を売ったのは私だもの。非はこちらにあるさ」
や。普通にムラクモちゃんが最強げなかったよぉ。最強たるムラクモちゃんが、ほんのちょろっち煽られたくらいで、ぷんすかぷんぷんになっちまうなんてねえ。……華亥ムラクモ。お主はまだまだ……若い。プリティ・天下掃滅流を皆伝にするわけには……いかぬ。……むしろ破門じゃあ! えぇー!!
……あ、忘れる前に謝ろ。お店壊してごめんねえ、ブルおじ。
ところで、ハデポさん。
なんだろうね、すんごい覚悟決め申したってお顔したと思ったらね、「改めて名乗ろう。フィリシア・ドゥ・シルヴェリオンという。……わかってしまうだろうが、“簒奪王”の孫娘が私だ」だって。……いや、存じ上げませんケド。
ハデポさんがね。ムラクモちゃんに頼みたいことってつまり、「ムラクモちゃん様かしこみー。その溢れんばかりのプリティご来光で一切衆生をあまねく照らしたまえー。かしこみかしこみー」……ってことらしいよ。
……すんごく盛っちゃった。正しくは「ハッスルおじいちゃんがハッスルしすぎちゃって身内の恥だけど、大人しく老人ホームに入ってくれるような人じゃないしで、めちゃんこツラたん。あ、そうだ(閃き)。無理やり病院送りにして解決しちゃお☆」って。んで、それムラクモちゃんに手伝えって言ってんだぁ。
うん。……やんないよ。
ムラクモちゃんはヒトを殴んないって言っとるでしょ! しかもご老人が相手だなんて……ますます殴れませんよねって。
そんな感じにお断りを入れるとねえ、
「無論、承知しているとも。わかった上で、重ねて願っている。貴女のその信条……どうか曲げてはくれぬか、と」
「……ごめんケド、他当たって」
「戦争だ。……ただの戦ではない。いくつもの国を巻き込むような戦いだ。……もしかすると貴女は、私が帝国可愛さにこのようなことを言っていると考えているのかもしれない。……否定はしないよ。だがね、より多くの人命が無為に失われぬようにと考えているのは本当なんだ」
「……帰っていい?」
「……ッッ!」
怒んないでよぉ。意地悪で断ってんじゃないのよ。ホントに。
ムラクモちゃんだってさぁ、ぎゃははーっ! 愚かな人間め! 争え勝手に争えもっと争うがよい! ……とか思ってるわけじゃないんだよ。
ホントの話。
人間同士で殺し合いなんかやってたら止める自信ないの。だってどっち殴ったらいいかわかんないし。いや、そもそもムラクモちゃんはヒトは殴んないけどね。
……例えばさぁ、でっかい軍隊が街を襲うとするじゃない。ムラクモちゃんこれね、止められると思うの。魔力圧縮して動けなくしちゃえばいいもんね。……ん。いや待って。や、やっぱやめた方がいいかも。魔力抵抗強い人混じってたらグチャグチャにしちゃうかもしんない。……あれ? そもそも街全体に圧縮かけたら地元民さんも巻き込んじゃうのでは?
……穴だらけやんけ!! ……結論です。華亥ムラクモは街を襲う軍隊を止められない。大変心苦しくはありますけれど、これがファイナルアンサーです。
「……君は。人死になんかどうだっていいと思ってるのかい?」
「じゃじゃ馬姫、それは……」
「黙れロイ・ロー! だってそうだろう! おじい様を放っておけば、地獄だ! この世のすべてが炎に巻かれてしまう! 明らかだ! そんなことは明らかなのに、兄様も! お父様も! 母様も、宰相も四天王も国民達さえ! 誰一人あの人を止めやしない!」
ハデポさんったらね、ムラクモちゃんに縋りついてきちゃった。お手々をね、ギュッてしてきて……。もう他に頼れるものがないよって感じ。……こんな目、地球にいた頃……イヤって程向けられたなあ。や、別に嫌ではなかったけどね。
「魔法少女は私達を救ってくれる」って。
……。
もちろん、東奔西走させていただきますよぉ。人外相手ならねぇ。
……うーん。
「……“暴君”殿。君は、フローゼ姫に協力したんだろ? 人間と戦ったんだろ? ……何が違うんだい? 何で違うんだい? 彼女の何が君の信条を曲げさせたんだい? ……教えておくれよ。お願いだから」
……。
また痛いところ突かれてますよ、ムラクモちゃんってば。学じいといい、ハデポさんといい、ムラクモちゃんの泣きどころを的確にツンツクしてきおって。
くらえ、図星スフィフト! びしばしー! あいてー! お許しくだされ、お戯れをー! あーれー!
うん。
別に何が違うってことないよ。
ただ、わたしが自分でそう決めたってだけ。
…………。
「聞きたい。……あなたは、正しいの?」
「え……?」
ハデポさんったら、そんなこと夢にも聞かれるとは思わなかったってお顔。
お口もごもごさせたと思ったら考えこんじゃった。
ふぉふぉふぉ、若人よ悩むがよい。……ムラクモちゃん待ってあげる。
……飽きるまで、だけどねぇ。
…………。
んーでね。長ーい長ーい時間考えてくれたよ、ハデポさん。これがもう、あんまり長いもんだから、ムラクモちゃんってばもっかいお肉頼んじゃったくらい。……大変おいしゅうござったよぉ。……お持ち帰りってできる? ……できない? 残念。
ながぁーい考え時間のあと。
迷子の女の子みたいな顔したハデポさん、言ったよ。
「……すまない。
わからない。本当に答えが……出ないんだ。こんなこと、初めて聞かれたから……」
「ふーん……。……いいよ」
「……え?」
「は?」
「付いてく。……わかんないんでしょ? なら、付いてって、わかるまで待ってあげる」
……別にハデポさんのためじゃないんだからね! 勘違いしないでよね!
うん。
別にここまでサービスしたげる必要ないんだけどねえ。
……でも。
ムラクモちゃんが聞いたこと、ちゃぁんと真面目に考えてくれたでしょ。それ、嬉しかったからねえ、お礼だよ。ハデポさんが答えを出してムラクモちゃんに教えてくれるまで……一緒にいたげてもいいよ。お仕事は受けないけどね。
……そうだなぁ。
……帝国旅行。……そのついでに、ハデポさんと一緒にいるってことでいいかもしんない。
……そうと決まったらムラクモちゃん帰るねえ。帝国観光ツアーのために準備しなくっちゃ。じょーちゃんにおみやげ買いたいからね、おみやげ用ナップザック取ってこなくっちゃ! 「おい! 何勝手に帰ろうとしてんだ!」って引き留めてくるブルおじに、グッバイグッナイ! そなたから教わった去り際は今もムラクモちゃんに根付いている……ってことで、じゃあねぇ。