くたばり損ない魔法少女わたしの独りゴト   作:土縁屋

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【朗報】おいしいお肉を食べちゃう件

「レイラ・アシュベリーと申しますの。先日は危ないところを救っていただき、ありがとうございました」

 

 

 わたし、華亥ムラクモ♡ 趣味は活け花、特技はお琴の典型的お嬢様♡ 

 

 

 え?

 

 ムラクモちゃんがオジョウサマってマジ? アホウサマの間違いでは? なんだとキサマ! 事実陳列罪で軍法会議だ! ワーお許しをーっ。

 見なさいよ、この麗しの銀髪を。ふわふわのすべすべだぞ。銀髪キャラは昔っからミステリアスな知性キャラだって相場が決まってるんだ! 知ってる知ってる。

 

「……あの?」

 

 おっといけない。

 お嬢様なんて希少価値の高い生き物に出会っちゃったから、わたしの中の淑女力(レディ・コスモ)が思わず奮い立っちゃった。……や、何よそのけったいなシステム。

 

 ところで、おじょー様。

 うん。いや誰? わたし達初対面ですわよね? まったくまったく、下民はこれだから礼儀というものを知らない! なんだとコラ! 革命じゃ! ワーワー! 残念! ムラクモちゃんは死んでしまった!

 ……いや、なんでよ。

 

「ん。華亥ムラクモ。……救うとかよくわかんないけど。気になるんなら、ほどほどに崇め奉っとくといいよ」

「す、すみません! アシュベリー嬢! この人、これでも悪気ないんです!」

 

 なんでメガネさんが謝っとるのん?

 というか、ムラクモちゃんをガキ扱いするのはやめてくれたまえ! 

 クッソー……悪の秘密結社メガネスめ、許せん! 卑劣な精神攻撃を! 正義の魔法少女ジャスティスメシア・ムラクモちゃんの自尊心を攻撃する作戦とは!

 ……いや、本当に。わたしなんか変なこと言った? わかんにゃい。

 

「うふふ。ユニークな方ですのね、ムラクモさんは」

「ん……照れる」

「ちょっと、ムラクモさん! 前に言いましたよね! あなたの無茶苦茶を庇ってくださったんですよ、アシュベリー嬢は!」

 

 ユニーク……湯・肉……。なんだかお腹すいてきたなぁ。

 キュッピーン! 俺は決めたぜ! 初給料の使い道はお肉カーニバルだ! まあ素敵! なんか……なんかお肉を……ダメだ! お肉なんてゲボヘドロ宇宙ムシケラかトカゲくん鍋しか食べたことないから、発想が出てこない! くっ、人生経験の浅さが露呈しちまったぜ!

 

 あ、そうだ(目逸らし)。

 何となくお肉カーニバル宇宙に超恒星間航行しちゃいそうになったけど、忘れる前に言っとかなきゃ。

 

「庇ってくれてサンクス。わたしもあなたのこと、ほどほどに崇めとくね」

「あらまあ嬉しい。かわいい信者さんができちゃいましたわ」

 

 ほっぺに手を当ててあらあらうふふ。すげぇ、リアルお嬢様だ。……ムラクモちゃんの猿真似とは格が違いますわね! チィッ、これが生まれ持った品の違いってやつかよ! だが……真のお嬢様は俺だ! 何! ちゅどーんっ! 世界は平和になった。 Q 何がどうなってそうなったの? A ムラクモちゃんにもわからない。

 ……なんやこの茶番。

 

 んーで、おじょー様の用事を掻い摘んで要約すると、「薄汚いムシケラの住処でゲボヘドロドラゴンに食われそうになったところを素敵で不敵な無敵のムラクモちゃん様に救われ申したので、礼を言いに参りました」ってことみたい。簡潔に言えてえらい! 

 んー……。ごめんけど、ガチのマジで全然覚えてない!

 助けた人のことなんかいちいち覚えちゃないよ! まー! ムラクモちゃんったらなんて薄情なんざましょ! おっしゃる通りです、すみません! 

 

 それにしても律儀だなぁ。

 命拾いしたなら、やったねラッキー☆ くらいに思っときゃいいのに。新しい価値観ってヤツ? 風……吹いてるね、確実に。“協命機関”のギットリおじさんの油を吹き飛ばしてあげて!

 

 また話逸れちゃった。

 んーで、「命の礼は返したいので、力になれることがあったら何でも言ってね!」ってことみたい。……うおっ、まぶし! おじょー様の輝きを放つ人間性が、ムラクモちゃんのゲボヘドロ価値観を焼き尽くした! チーン。南無南無。お空から見守っててね、わたし。

 ……勢い余って死んじゃったよ。

 

 

 ───

 

 

 

 はい。カクカクシカジカ、マルマルウマウマ。ふっ、ムラクモちゃんは面倒が嫌いなんだ。……え? お前のウザがらみのが百倍面倒だって? うーうー、聞こえない聞こえない。

 運命的な邂逅もそこそこに……ダメよ! ムラクモちゃんはみんなのモノなんだから! 誰か一人のものにはなれないの! 許してね、キラーン! なんつって。

 そんなこんなでようやくメガネさんからカイホーされたの。

 ふぅ、なんだか太陽が黄色く感じるぜ……。いま夜だけど。気分は残業明けサラリーマン配信者わたし。

 

「お嬢ちゃんひとりかい? お母さんは?」

 

 打ち上げだ! 忘年会だ! 接待ゴルフだ!

 なんたって今のムラクモちゃんにはこれがある! チャリーン! 銀ピカに輝く丸っこい石ころ! 価値は知らない!

 なのでねぇ、なんか直感の赴くままに夜道を行ったのよね。……匂いに釣られてともいう。わんわん! ポチクモだわん! ……なんか足八本ありそう。きもっ。

 

 打ち上げの話。

 そんでこじゃれた街並みの、あんまりこじゃれてない屋台に立ち寄ってみたら……これだよ!

 失敬なおっさんだな! そのヒゲモジャフェイスに引っ付いてる二つの真ん丸は飾りか? 見てよこのぐらまらすぼでい。どう見ても大人のれでいでしょ!

 まあいいや。ムラクモちゃんは心が広いから許したる。でも、チミィ、ご飯マズかったら命はないと思いたまえ。……か、勘違いしないでよねっ。別にガキ扱いを気にしてるわけじゃないんだからっ。

 

「ん。いつもの」

「いや……え? ん? いつものとは?」

 

 そりゃ、いつものでしょ。他に何があるの? ……あ、圧制者だ! 囲め囲め! な、なんだキサマら! どっかーんっ。澄まし顔理不尽わたしは死んだ。スイーツ(笑)。

 や、うん。申し訳ないんだけど、ムラクモちゃんは字が読めないの。……ふっ。これも天才に生まれてしまった宿命って……ヤツかな(当社比)。

 

 許せマスター。俺はいま君を試している……。だがこれも君がワンランク上のステージに上るための試練というやつなのだ……。大解剖! ムラクモちゃんブレインのヒ・ミ・ツ! なんつって。

 

「……冗談。お肉ちょうだい」

「えぇ……。いや……。……はあ、お好きな席へどうぞ」

 

 おっさんはなんかもの言いたげな顔をしたけど、一刻も早く帰ってくれって思ったのか、きわめて事務的な対応になった。ふっ、また一つ世界を知ったな。わしゃ嬉しいぞい。

 

 んで、ごはん。

 席について足をぶらぶら。うらぶれた屋台で待ち合わせをしてるかわいいわたしを演出してると、串に突き刺さったお肉が出てくる。

 ほー。へー。ふーん、キミがあのいい匂いの元ってわけね。中々いい見た目してるじゃない。どれほどの実力の持ち主か、今からわたしが試してあげるわ……。

 

 ……。

 はむっ……。

 

「──ッ!!!!!!!?????????」

 

 出会いの奇跡。油とたれのラプソディ。ムラクモちゃんを優しく抱きしめてよしよししてくれるような口触り……。芸術品ですよこれは……。

 クッ。どうやらオルァ、とんでもねぇバケモンに出会っちまったようだぜ……。

 

「え? ちょ、なんで涙を?」

「……ん。ちょっと真理の裏側を見てきただけ」

「どういうことっ!?」

 

 負けちまったようだぜ、俺はよ。完敗だよマスター。ふっ、だがこういう負けなら……悪く、ないかもな……。とか言っちゃって。

 

「……気に入った。また来るね」

「いやいやいや……。勘弁してください」

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