くたばり損ない魔法少女わたしの独りゴト   作:土縁屋

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【長編】ムラクモちゃんズストーリー劇場版『帝都燃ゆ』!・7

 わたし、華亥ムラクモ♡ プリティ・キラキラ流星群! 見てほら見て見て! あの夜空にキラめく大粒のレインボウ・ジュエルは……ムラクモちゃんっていう、百億万点のラブリーだぜ。スタァライト・プリティ女の子♡

 

 

 囚人さんたちの街からさらにさらに長旅を続けること幾星霜。夢を探して三千里。……君も、探しているのかい? 欲と野望に満ちたこの街に……。キラリ輝くキラメ希望って……ヤツを、さ。なんつってぇ。

 

 つーわけでねえ。帝都だよ。

 バッと見た感じ……そんなに観光には向いてなさそうかなって。

 帝都ってからにはすんごい発展してて、ワチャクチャ~ってしてそうなのにねえ。なんかすっごいピリピリ。今から街ぐるみの殺し合いでも始まるんかって感じ。

 

 ……。

 ……や、街自体はすごいよ。

 道路とかすんごい広いしぃ。ようわからん機械とかそこら中に散らばっちょる。

 真っ白な鉄のお家がたくさん並んでてねえ。サイレンみたいなライトがそこかしこでウォンウォン光っとる。

 せっかくの都会だってのに、お店屋さん少なくってねえ。

 お土産屋さんとか……ご飯屋さんもそんなになさそう。でも、その代わりに軍人さんっぽい人はけっこう歩いとる。街中で武器持ってるよ。

 ……やあムラクモちゃん! 帝都へようこそ! おいしいご飯も面白いお土産もないけれど、ムキマッチョの僕らが全力で君をお出迎えするよ! ……帝国流の歓迎でなぁッ! 今だッ、死ねーっ! バキューン! ぐわーっ。

 

 うん。

 そんでね、これからいかがいたすの? ってお話になったよ。れっちん聞いたの、ひりしあに。「アンタどうしたいのよ」つってね。

 ……ムラクモちゃんとしてはお宿に行きたいなあって思うケドね。だってここ、お散歩したってそんなに楽しそうじゃないし。

 でも、ひりしあ、「……え?」だって。ぽかーんってしてる。……ん?

 

「どうする……とは?」

「言葉通りに決まってんでしょ。……あのね。あたしらの頭はアンタよ。“暴君”のやつもあたしも、単なる付き添い。

 だから、お望みの帝都まで来たんなら、その後を決めるのはアンタ。……当たり前でしょ?」

「…………。考えてたことは、あるんだ。でも、まだ輪郭を帯びてるってだけで……」

 

 とりあえずお宿行かない? ムラクモちゃん、お宿行きたいんですケド。

 ……なんつってねえ。いつも通り脳内だけの提案をしつつ、しつつ。二人のやりとり見守ってたんだケド……。

 ──突如感じるトキメキ視線! はたして、その正体とは……!

 うん。

 普通に道行く軍人さんだよぉ。全員が全員ってワケじゃないケド、なんやあいつら怪しいなってお目々向けてきおる。

 ……いやんっ、やっぱり! 隠そうと思って隠せるものじゃないのね! ムラクモちゃんの可愛さは! ……冗談。

 ムラクモちゃんが言うのもなんだけど、わたし達って旅の愉快な芸人一座って感じの怪しい見た目しとるからね。是非に及ばぬのよさ……。

 ……敵意までは感じないケド、ここ、長居しない方がいいかもねえ。

 

「……ん。お宿行こ」

「珍しいわね、アンタから催促してくるなんて」

「……変に思われてる。職質されるかも」

「あはは……。怪しいものね、私達。……待って」

 

 ひりしあったらね、いきなりキョロキョロ挙動不審になったと思ったら、黙り込んじゃった。……んで、ブツブツ言いだしたよ。「……静かすぎる」とか「兵士がこうも都内を歩き回っているなんて……」とか。

 ……ちょっと! 怪しまれとるから早く行こう言うてるでしょ! さらに怪しい行動追加してどうなさるのん? 不審者アピールおやめになってよね!

 

 ……。

 ひりしあね、考え込む人みたいなポーズしたと思ったら、「──まさか!」つって、急に走り出しちゃったの。ずだだーって。

 これにはムラクモちゃんもれっちんもびっくらぽんだよ。どこ行くねーん! って。

 

 ……うーん。

 揉め事になったらムラクモちゃんってば役立たず以外の何物にもなんないからさぁ。だからお宿行こっつったのにぃ。……人生とはまこと思い通りにならないものですね。ふっ……だからこそ、面白い……! 途中下車系覇王わたし。

 

 

 

 軍人さんのお目々を潜り抜けつつ、潜り抜けつつ。……ひりしあに追いつくとね、ぺたんこ座りしてたよ。……絶望、してる?

 うーん……。

 

 近づいてみると、いきなり抱きつかれたの。こう……ムギュギューってね。あらま、情熱的。とうとうムラクモちゃんのプリティに屈服なさったのん? ……でも、おさわりはダメよダメ! そこまで許したつもりないんだから! ムラクモちゃんに張り付きたかったら愛の三大試練乗り越えて来てよね!

 

 ……追い詰められてるな。そうとう。

 

「──止めてくれ。……止めて、ほしいんだ。彼らを……お願いだ」

「まずは落ち着きなさいよ。……察しちゃいるけどね。アンタの口から話しなさい」

「……ッ! そんな場合じゃない! 甘かったんだ! 何もかも遅かったんだ! ……おじい様は──もう、宣戦布告をしてしまった……」

 

 ……。

 ごめんケド、そういうことならお役には立てないよ。

 何度だって言うけど、わたし魔法少女なの。ヒトは殴らないよ。

 場合よっちゃ、ヒトをどうにかしなきゃなんない瞬間があるってのはわかるよ。

 ……わかるケド。

 今回は本当にご縁がなかったかなって。

 

「……ん。ごめんね」

「どうして? ……君なら、信条を曲げずとも……何か。なんでもいい。何か、何か! なんだっていいっ! 何か解決する方法を知っているんじゃないかい?!」

「……お宿さがそ」

「……ッ! 君は……監獄街で! あの闘技場で! 信条と友情を秤にかけて──両方選んだじゃないか!! なら、今回もそうしてよ! 私じゃわからないやり方で、何もかもムチャクチャにして……。あの時みたいに! おじい様を止めてよ!」

 

 ……ムラクモちゃんはね。最強だよ。

 本当のホントに最強。生まれたばっかのベイビー時代から、ガチのマジで負けたことない生涯無敗だよ。……腕っぷしだけならね。

 でもね……。だからって何でもかんでも解決できるわけじゃないよ。

 命は大切だって思う。誰だって死んだらいいとは思わないよ。当たり前だけどね。

 ……地球にいた頃。たっくさん踏み潰される命を見たよ。何とかしようって思ったけど、届かなかったの。……わたし、最強なのにね。

 地球にいた頃、わかってもない正しさってやつを振りかざして、ヒトを殴ったよ。……死ぬほど後悔した。

 

 だからね。

 もっかい謝るよ。……ごめんね。

 

「……じゃじゃ馬姫を援護するわけじゃないけど。“暴君”……アンタ、マジでどうにかなんないの?」

「……なる。でも、それやったらわたし、もう魔法少女じゃない」

「……そう」

「どうにかできるのかい!? なら──!」

「……この国、丸ごと滅ぼす」

「……え?」

「わたし、そういうやり方しかできない」

 

 信じられないってお目々向けられちゃうよ。ひりしあに。

 裏切ったなこやつ、この化け物め! そんなやり方こっちは求めてないぜ! 『つーかお前、マジで魔法少女なの?』

 ……うん。まあ、慣れたもんだよ。いまさら傷つくようなもんじゃないもんね。

 ってことで、ひりしあ引っ張ってここから離れるよぉ。……悪いね、ムラクモちゃんなんかが触っちゃってぇ。ゆるちて。

 

 

 ───

 

 

 お宿だよ。窓から外を見てみるとねえ、相も変わらず軍人さん達がえっちらほっちら。鎧ガッシャガッシャいわせながら歩いてるよ。

 な、なんと美しい……。一糸乱れぬ隊列だぁ。 ……まあ、ムラクモちゃんには協調性とかないから隊列の良し悪しとか知ったかぶりだケド。

 

 さておきさておき。

 ひりしあはね、お部屋に閉じこもっとるよ。……うえーん! ムラクモちゃんとかってプリティ・ヒロインがとんだ暴力系ゲロインだったぁ! 騙しやがってぇ! ってショック受けちゃっとるみたい。……失敬な! それは価値観の相違ってやつだよ! ムラクモちゃんはかわいいんだーっ!

 

 んで、れっちんはね、「重苦しいったらないわね。外の空気吸ってくるわ」って街に出ちゃった。ムラクモちゃん知ってるけど、こういうのってだいたい偵察に行ってるんだよ。そんでねえ、出先で思わぬ出会いとかして、突破口見つけてくるんだぁ。知ってる知ってる。

 

 ムラクモちゃんはご飯食べてるよ。なんか黒っぽいパン。薄っぺらくってねえ、ゴリゴリーってしてる。おいしい。

 ゴリゴリ食べてたら、宿のおかみさんが「それってスープにつけたらもっとおいしいよ」って教えてくれたの。……うん。もっとおいしい。

 なんだか物々しい街だケド、人は親切だし、ご飯もおいしいねぇ。

 

 

 ……。

 何日かお泊りしたんだよ。

 ひりしあは相変わらず引き籠っとるし、れっちんはお出かけしてる。

 ムラクモちゃんはね、日々をぐーたら過ごしてるよ。平和だねえ。……ホントぉ?

 す、少なくともムラクモちゃんが知覚してる世界は平和だから……見て見ぬふり系平和主義者わたし。

 

 

 そんなある日……。あんまりうららかではない帝都のお宿へ……れっちんが帰ってきたのです。 

 ……人を連れて。

 女の子だよ。どっかで見たようなお顔しとってねえ。髪色はれっちんと一緒の赤色。んで、すんごい気まずそうお顔しとる。

 

 ムラクモちゃんね。珍しく挨拶したのよ、自分から。こんにちは、はじめましてって。そしたらさぁ、ひどいのん。

 そやつ、「クソダサい仮面ですね。マジで趣味悪いから、やめた方がいいよ」って言ってきやがったの。……勘違いしないでよね! 好きで付けてるんじゃないよ! これはれっちんによる陰謀なんだーっ! ムラクモちゃんをクソダサ仮面に封じるという陰謀! うえーん!

 

 ……ねえもう、仮面とっていい?

 ムラクモちゃんってば堪えられないんですケド。ただでさえ、人間国宝プリティ・フェイスを封じてなきゃなんないってのに、その上言われなきクソダサ趣味って誤解まで受けなきゃなんないなんて、これなんて拷問?

 取るよ? いいよね? ……え? 付けてろって? ……うーん。

 ちょっ! プリティ・ヘッド叩こうとしないでよぉ! わかりましたよぉ。従いますぅ。

 

 連れられてきた女の子ってねぇ。びっくらこいちゃう新事実発覚なんですケド……なな、なんと! れっちんの妹さんらしいよぉ。……うーん。

 そんじゃあ呼び方ってれっちん二号でいいの? むむむ。れっちんジュニア? ……うーん。れっちんよりなんか当たりが柔らかそうだから、れっちん(柔)とか……。

 や、待てよ。……でもこやつ、初対面のムラクモちゃんにクサダサ女の称号を付与してきよる無礼者だよ。……謀反人の血筋やんけ! ゆるせぬ!

 よってキサマは今日から謀反人二号だぁ! 新しいお名前、あっちんが欲しければせいぜいムラクモちゃん友好度を稼ぐんだなあ! ぐははー!

 ちなみにあっちんはねえ、髪の毛赤いからあっちんだよ。れっちんあっちん。電子レンジでチーン! アッチー! なんつって。

 

 

 ところで、ムラクモちゃんってばね、おやつ食べてたんだぁ。

 なんか……しっとりしたクッキーみたいなやつ。べっとりした甘いやつ塗ったくって食べるんだよぉ。

 ……正直ねぇ、これ。おえっ、って思うっちゃうよね。甘いだけなら、いい思い出ないなぁで済むんだケド、べっとりしてるとねえ。ちょっと想起されちゃいますよね。うん。ひょいぱくーっ。あまいおいしいあまい。……ぜんぜん食べとるやんけ!

 そりゃそうだよ。ゆみ子のおかげでお菓子屋に入店できるようになったムラクモちゃんに敵はないからね。ニュー・ムラクモだよ。

 

 おっといけにゃい。

 話が横道に逸れてしまいましたわね。戻し~戻し~。

 おやつに夢中になっとったらね、二号さんが言うのよ。「……その。……聞かないんですか?」って。……え? 何を? ってワケ。

 別にムラクモちゃん聞きたいことないよ。二号さんにも特に興味ないし。──ハッ!! ま、まさか……! そうやって謎をチラ見せすることによってムラクモちゃんの気をひこうとしてる? この溢れ出るプリティに魅了されてしまったのん? ……ふっ。小生ってば、罪な女……。

 

「……あの?」

「無駄よ。そいつ、マジで興味あること以外興味ない女だから。……言っとくけど、自分で助けた人間の名前どころか顔も覚えないのよ。友人扱いされてるっぽいあたしの名前すら未だに覚えちゃないし。……いや、れっちんって何よ。何でれっちん? スカードレッドだから? ……はぁ」

「そ、それは……。いかに姉さま相手といえど、気の毒になってしまいますね……」

「うっとうしいわね。アンタいちいち言葉にトゲ付けないと喋れないわけ?」

「……ご自身のなさったことをよぉーく思い出してくだされば、物事には原因があるということがお分かりになると思いますが?」

 

 えぇ……(困惑)?

 なんで急に喧嘩しとるん? しかもムラクモちゃん挟んで。……やめてよね! なんだか気まずい気分になっちゃうでしょ!

 けれどもけども、そんなムラクモちゃんの願いも届くことはなく……。……ところで届くってどこへでございますの? そりゃあなた、れっちんズにですよ。……ならば口に出したまえ! なるほど盲点!

 

 ……んだもんで、「喧嘩やめてよね」って言おうと思ったの。そしたらさぁ、

 

「けれど、意外です。……姉さまがワザワザ自分から友達になりに行くなんて。……とても気が合ったんですね、そこのクソダサ仮面さんと。お似合いのセンスです」

「ちがう。これわたしの趣味じゃない」

「……ああ、道理で。……でも安心しましたよ。お姉さまと対等のセンスの持ち主が、この世に二人もいないことに」

 

 二号さんめ、あろうことかムラクモちゃんのセンスをけなしてきおったの。……だからこれ、ムラクモちゃんが好きで付けてるわけじゃないっつっとるでしょ! ダサいと思っとるよ、ムラクモちゃんだって!

 ……今こそ、おぬしたちにだけ真実を話そう。世界の闇に葬られた真実を……。

 ムラクモちゃんのセンスは……別にふつう! 特にファッションとかわかるわけじゃないケド……さすがにれっちんと同列扱いは心外だよ!

 ……あ。

 話逸らされとるやん。……クッ。恐るべき話術と心理攻撃だ……。謀反人二号……この軍略家ムラクモを上回る知略を持つというのか……? なんつって。

 

「ふんっ。アンタこそ、いい年こいて少女趣味が直ってないみたいじゃない。……いいわけ? 謹厳な帝国軍人サマがそんな涎掛けみたいなマントつけて」

「なっ……! 言ってはいけないことを言いましたね!」

「売られた喧嘩を買ったまでだっての!」

 

 ……。

 ラブラブ姉妹のハネムーンきゃっきゃうふふーは続きますよ。

 うーん。

 ……もう好きにやったらいいよ。ムラクモちゃん何も言わない。

 

 

 ───

 

 

 すごい時間経ったよ。

 具体的にはわかんないケド、少なくともムラクモちゃんがウトウトして……ハッてなるくらいの時間。

 けっこう長そうな感じするよね。お外も暗くなっちょるし。いけない、いけない☆ 食堂でうたたねしちゃうなんて、ムラクモちゃんったらうっかりさん☆ ……こいつウザいわね。ぶりっ子よ、滅せよ! ファイヤー! かかったな! ムラクモ逮捕三角陣! ぐわー! ふっ。悪は滅びた。

 

 れっちんと二号さんったらね、まだ喧嘩してるよ。ムラクモちゃん挟んで。しかもワザワザ椅子持ってきてやってんだもん。

 えぇ……(戦慄)?

 お部屋戻んないでずっとやってたのん? 何が二人をそうまで駆り立てるのん? こやつらもういっそ仲いいでしょ。

 

 

 寝直そうと思ったんだよ。お部屋に行ってさぁ。

 そしたらねえ、二号さんが引き留めてきたの。「え? マジで聞かないの?」って。……や、だから聞かないよ。興味ないって言っとるでしょ。眠いし。

 ……ってことで戻るねえって立ち去ろうとしたの。そしたらさ、がっしり腕掴まれちゃった。……え? 何? 何ですか? アイドルにおさわりって厳禁なんですケド? そのお手々放してくださる? ……どうしても握手したいんなら、CD購入してよね! アルバム名はねえ……『プリティ☆世界大洗脳♡』。ムラクモちゃん脳内限定で販売してるよぉ。ぜひぜひ手に取ってみてね! なんちゃって。

 

 ……話戻すね。

 もー。あんまりしつこいもんだからさ、二号さん。

 聞いてあげることにしたんだよぉ、お話。

 

 

 二号さんってばぺちゃらこ、ぺちゃらこーって長話してくださったよ。……ムラクモちゃん、長いお話苦手なんですケド。

 しかし聞かざるを得ない!

 なんでって? ウトウトするとねえ、二号さん気が付いて起こしてくるんだよぉ。しかもれっちん、頭ぺちこーんってしてくるしぃ。……チクショウ! 謀反人姉妹め! でも二号さんのことはなんだかちょっと好きになってきたから、あっちんに格上げしてあげるよ。いいよね、れっちんを思わせるノンデリ感。

 

 けっこう長いお話だったから要約しちゃうね。

「あちし、皇帝陛下に弓引くつもりはないでごわす。無論、謀反人の姉に協力するつもりもなぁ! ガハハ! ……だ、だがしかし……! み、見ちまったんだぁ……この麗しの帝都にカルト宗教がうごめいているのを……! や、やつらが戦時下の今、この帝都で暗躍しているとなれば……! 先帝陛下が危ない! ……チクショウ! 仕方ねえ! あちしに協力することを許すぜ! 不肖の姉と愉快なご一行!」

 って感じみたい。要約できてえらい!

 

 ……それはそれとして。

 大変なんだねえって思うよ。れっちんはお友達だから手伝ったげたいとも思うケド。今回はムラクモちゃん手伝わない。

 

「ん。……れっちん」

「クリムよ。クリム・スカードレッド。覚えなさいよね! ……わかってるわよ。待つんでしょ? あのじゃじゃ馬姫のこと」

「ん。……約束したし」

「……どういうことです?」

 

 ひりしあが決めることを待つってことだよ。何をしたいのか、どうしたいのか。

 信じてる……なんて言うつもりないよ。あの子今、感情ズタズタだし。ムラクモちゃん的に、ここで折れちゃうんじゃないかなって思う。

 ……でも。どうしてかな? ありっこないのに、もしかしたら、って思っちゃう気持ち、あるの。

 我ながら、理不尽だなって思うケド。

 

 実際、ひりしあが立ち直ったとして。わたしにも譲れない一線ってのある。

 何を言われたって、わたしはヒトを殴らない。……だから、ずっとずっと役立たずだよ、ムラクモちゃんは。

 ……でも。

 それでも。そんなムラクモちゃんでも、手伝えることがあるのなら……って思っちゃう。

 らしくないなぁって。……期待しちゃってんのかもしんない。

 

 

 ……。

 そんなもんだからね、自分勝手健気系暴力ヒロイン・ムラクモちゃんは、覚醒前夜主人公・ひりしあを待たせていただきますねって。

 そういうことになりまする。

 付き合い悪くってごめんねぇ。これに懲りずにまた誘ってね。

 

「本当に自分本位だわ。身勝手女。……アンタほど“暴君”なんて二つ名が似合うやつ、そういないでしょうね」

「ん。照れる」

「……え? “暴君”? ……“暴君”ハナイ・ムラクモ? は?」

「……ふんっ。妹連れで観光してくるわ。……街がにぎやかだからね。ちょうど槍を振り回したくって仕方ない気分だったの。不審者がうろついてるってんなら、観光ついでの運動に丁度いいわね」

「ちょ、姉さま!? どういうことなんです? “暴君”? ……え?!」

「行くわよ」

 

 れっちんね。あっちんの腕引っ張って行っちゃった。

 ……。

 おやつ食べよ。もぐもぐー。

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