わたし、華亥ムラクモ♡ 祭りじゃ祭りじゃどんどこどん! 掲げよお神輿、居るだけお御輿! ふっ。愛を知るということは……己を知るということ。アイ、だけに……ね。残念ながら貴公は未だマジ迷妄。たまさかまさか! 悲しいね、哀。よーく見な、アレが文明に乗り遅れた者の姿だぜ、アイ。サル並知能アイアイ系女の子♡
はい。
最近の迷宮都市ったらね、なんだかとってもザワチンしてるよぉ。みぃーんな浮足立っとるって感じでねえ、どっこいわっしょいのお祭り騒ぎなのん。
何かいいことでもございましたのん? ついにムラクモちゃんのプリティが世界を救ってしまった? ……いーえ。残念ながらそうじゃなくってよ。
なんだかねえ、有名人が来るからってことらしいよ。でっかいステージ新設してライブすんだってぇ。まー、素敵! まるでアイドルコンサートみたいじゃないのん。
し、しかしアイドルか……。つまり。
つ、ついに見つかっちまったようだな……世界に。このプリティがよ、ふっ。いやんもうっ、照れちゃう! つってね。
朕ってば確かに常軌を逸したキュート、プリティの化身でおじゃりますケド、さすがにぶっつけ本番でライブだなんて困っちゃいますよぉ! 準備とかあるでしょ、色々。それってばどんな準備なの? うーん……。一目見たら記憶にこびりついて離れなくなるような必殺技とか? くらえ! 惑星超圧縮ジェノサイダー!
目立ちたがり屋ダンプカーわたし。
冗談。
本当はね、なんか“歌姫”とかって人が来るんだってお話だよ。すんごい人気ある人みたいでねえ。どこもかしこもその話題で持ち切りって感じ。……むむむ。
まあいいや。
そんなもんでねえ、ムラクモちゃんのところにやってくる依頼も期間限定イベント仕様になっちょるよ。材木の切り出しとか、荷物の運搬とか、護衛とかねえ。
……ムラクモちゃん的にステージの建設とかお手伝いできるかなって思ったんだケドね。ムラクモタワーとか建設してますしぃ。モノ作りはおまかせ、デマカセ!
つってねえ。
メガネさんに言ってみたんだよぉ。そしたらさぁ。「お前の建築センスってまるで砂上に楼閣を立てるがごときじゃん。まかり間違って破壊でもされたら困るから大人しく力仕事しとけよな! マジ卍!」だって。ぐさぐさーっ。
べ、別に刺さったわけじゃないケドね。図星を突かれたとか思ってないケド……今回は引き下がってあげようかなって。力仕事でもお金もらえるからね、うん。
……し、真の芸術家ってセンスを認められるまでに時間かかるらしいしね、うん。
ご覧になってなさいよ、冷徹メガネ超人メガネスめっ。二千年から三千年くらいの未来にはムラクモちゃん建築も……なんかムラクモ式建築とか何とか言って博物館に飾られたりすんだからね! 勘違いしないでよね! つーん。
ところで今ね、護衛のお仕事してるんだぁ。
なんか外国から来た記者さん達なんだって。“歌姫”の追っかけで来てるらしいよ。
カメラさんってばねえ、出合い頭に「貴殿ってばマジであの“暴君”なの? ガチで? プリティすぎない? ファンになっちゃったから人生すべてをかけてあなたを推していきます!」ってな感じにドチャクソ激写してくるもんだから、びっくらこいちゃったのん。
別に写真とんのはいいケド、いきなり強いフラッシュすんのやめてよね。反射的に攻撃しちゃいそうになるでしょ! ムラクモちゃんはヒトを殴んないケド、絶対ってワケじゃないからね! そっちも気を付けてよね!
お仕事の内容はね、なんかカメラマンのおじさんとうだつ上がんなそうなおじさんの二人を迷宮都市へご案内すること。ちなみに今いるのね、港町だよ。なんかオシャレな感じのセレブリティ港町タウン。ムラクモちゃんには縁遠そうな場所だぁ。
いい匂いしたんだよね。お魚の。
お仕事中だからね。いけないわ、ムラクモ! その欲望を解放しては……! つってね。我慢しようと思ったんだよ。
でも、なんかでっかい看板立てとるいかにも「うち、めっちゃおいしいご飯出してます」って感じのご飯屋さんがさぁ。背徳という名の精神攻撃を繰り出してくるもんだからさぁ。ムラクモちゃん、イケナイとはわかりつつ、わかりつつ。屈服してしまったのん。フラフラ~つってねぇ。
ご飯屋さんに入ろうとしたらね、「おめえ仕事中やろ。何食いもんにつられとんねん」ってうだつ上がんないおじさん……長いね。うじさんでいいや。
そのうじさんに怒られちゃったよ。うえーん、しくしく(しらじらしい嘘泣き)。すみません、おっしゃる通りですぅ。
いけにゃい、いけにゃい。ムラクモちゃんとしたことが。
お仕事放っぽり出してご飯しようなんて。……貴殿、これがプロフェッショナルのやることなのかい? ふっ、愚問だな。プロフェッショナルとはつまり……なんかすごい! なんかすごいということは最強ということ! ならば何も問題はないのだ! ギオンのショウジャが鐘を鳴らすとショッギョムッジョの響きがあるらしい! 死ねぇいムラクモ! 栄枯盛衰クラッシュだーっ! ずばーっ。なんつって。
護衛つっても、そうやることはなかったかなって。
特に移動中絡まれたりすることなかったし。たまにモンスターくんの気配感じることあったケド、力の差がわかるのか襲ってこなかったしねぇ。……うーん賢い。
そんな道すがらね、暇だったのかしら。
うじさんってばめっちゃ色々聞いてきたよ。「貴殿、何ゆえそんなに強うござるの?」とか「貴公の可愛さの秘訣とか教えておじゃ候」とかね。こないだの帝国旅行のこととか、探索者の前のことも聞かれたりしたかも。
無論、聞かれたらムラクモちゃん答えるよ。自分語り大好きだし。だからね、
「ん。チリ紙やってた。ムシケラ駆除のお仕事」
「……は? ……いやいや。もうちっと真面目に答えてくれや。わかるように言ってくれ」
「魔法少女だよ。危ない蟲を駆除してたの」
「ま、魔法少女……? それってどういうものだ? 魔導師や魔術師の亜種か?」
「鼻紙だよ」
「──ダメだ。何を聞いてもこの調子だ。まともな答えが返ってこねえ。……こんなにインタビューのし甲斐がない対象、そうはいねえ」
……って感じに答えてたんだケド。
なんかご不満みたい。
まったくまったくぅ。ムラクモちゃんと理解し合いたいなら、サイコメトリーくらい習得なさってよね! あ、でも勝手に気持ち読んだらメトハラってことで、素敵な快眠プレゼントしちゃうからね! ……どちらに転んでも相手には不利益しかない会話だぁ。
───
そんなこんなのこんなにもそんな。
ってことでね。迷宮都市にご来着したなら、お二人をお宿まで案内して解散だよ。
んーで、依頼終わりましたよって報告するためにメガネさんギルドへごーごーのれっつらごー。
そんで受付。
今日も今日とて行列をなしとるところへ、しれっと混ざっちゃうよぉ。……ふっ。今日もまた前に並んでるやつをぶっ飛ばさずに我慢できた。ムラクモちゃんってばもはや、模範的人格者どころか、絶対的人格者を名乗っても許されるのでは?
……うーん、まだ早いか。せいぜい、文明的人格者が関の山かも。
あくびを噛み殺しつつ、噛み殺しつつ。……がおー! わんわん! 順番待ってるとねえ、にわかにザワザワしてきたよ。
最初はねえ、近ごろの迷宮都市は浮き足立っとるからっつって思ったんだケド、どうも違うみたいなのん。
男の子だよ。特に見るべきところもない感じの、普通の子。鎧着とる。
そんな子がねえ、なんかムキマッチョのおっさんに絡んどるの。
──あ!
知ってる! ムラクモちゃんこれ知ってる! 意地悪な先輩に絡まれて実力見せつけちゃう系のやつだ! ……ってことは、あのパッとしない少年、すんごい力隠し持っとるのん? 宇宙ドデカゲジゲジの超高速移動すら見逃さないムラクモちゃん・アイによれば、まぁじで普通の人って感じだケド……。
……いや、本当に何も感じない。でも展開的にはなんか隠してそうだし……でも、最強のムラクモちゃんすら騙し通せる実力者が彼だとしたら……つ、ついに来てしまったというのか、新陳代謝の時が……!
……いやだい! いやだい! 最強はムラクモちゃんなんだい! それだけは天地がひっくり返り、惑星が重力崩壊して宇宙が死を迎えても変わらないことなんだーっ! うえーんしくしく。
話逸れちゃった。
いざこざね。
ムラクモちゃんってば展開があんまり見覚えある感じだったから誤認しとったケド、どうも男の子の方が熱くなっとるみたい。「取り消せよ!」っつってムキマッチョに掴みかかるんだけど、「おいおい、落ち着けよ。俺も言い過ぎちまったことは謝るからよ。そう熱くなんなって」って逆になだめられとるみたい。
……ん?
なんやなんやー、つって思っとるとね、近くのおじさんが教えてくれたの。
なんかね、ムキマッチョおじさんってば“歌姫”についてお話してたらしいよ。『あいつコボルトの一匹も殺せねえくせに二つ名持ちなんて、こりゃあくせぇ! ……ぺろっ。陰謀の味がする。ふんっ、この事件、裏があるぜ』って感じにぃ。
でね、少年はそれをたまたま聞きつけた新人君なんだって。いきなり怒り始めたみたいでねえ。「“歌姫”ちゃんをバカにするなーっ!」って。……ん、うん。
趣味ってやつね、うん。いいよね。わかるわかる。……ホントぉ?
だ、だが……。明日から彼が陰でどう呼ばれるか……。
そ、想像するだけで、なんかムラクモちゃんの胸、苦しくなってきちゃった。現実逃避にじょーちゃんのこと考えよ。わんわん! ペットのチャリクモだわん! なんつって。
……。
む、ムラクモちゃん、君が強く生きられるよう、ひっそり心の中でお祈りしとくねえ。
少年とムキマッチョさん……美女と野獣。違うか。これ、見なかったことにしてるとね、ムラクモちゃんの番が来たよ。
んで、今日も完了報告をしてお金をもらったら、生活できる分以外をメガネさんへゴー、シューッ! 「だから、あなたの借金は完済してるって言ってるでしょ」つってお決まりの文句をもらっちまいますけれど、いい加減諦めてほしいよね。
ムラクモちゃんが返すって決めてんだから、完済してるかどうかは関係ないのん。つーことでどうぞってねえ。
伝えること伝えて、渡すもの渡したら、ご帰宅ですよっつってねえ。今日の晩ごはんどうしようかな。屋台おじさんのところに行こうかな? それとも新しいご飯屋さん開拓しようかな、なんて悩みつつ、悩みつつ。
帰ろうと思ったの。
そしたらさ、飛んできたんだよね。黒い麺。バチャーっつってひっかむっちゃったのん。うええ。
……いきなりなぁに? 拙僧の油断を突いて襲撃を成功させるなんて……きゃんっ、刺客!? だが、無意味だ! 何故ならこの身は鋼鉄よりも屈強! メガトンレーザーの直撃だって無傷なんだからね! ……あ。でもでも、ムラクモちゃんボディはプリティなぷにぷに柔らかさも両立してるよ。そこはね、勘違いなさらないようにね!
黒麺が飛んできた方見てみたらね、真っ青だよ。“歌姫”ガチ勢少年くんってば。ムキマッチョさんも固まっとって、何やら空気が急に重くなったような気がしますねえ。
ガチ歌くんがもう、死んじゃうんじゃないのってくらいにガクブルしとるとねえ、ムキマッチョさんガバっつって急に頭下げだしたよ。「申し訳ない! どうか許してやっていただきたい!」って。……や、許すも何もそもそも怒ってませんケド。
ムラクモちゃん、黒麺ぶつけられたくらいじゃ怒らないよ。でも、食べ物粗末にすんのはよくないよね。そこは気を付けた方がいいんじゃない?
つって、そんな感じのことを言ったらね、「いやそれ食いものじゃなくて毒物です。モンスターに投げつけて攻撃するやつですよ」って、なんか信じがたいバカを見るような目で見られちゃった。……失敬!
ど、毒だとしてもね。ムラクモちゃんには無意味だよ。何故なら最強だから! 最強に状態異常は通用しないのだ!
帰ろうと思ったの。
黒麺ぶつかって足止めされちゃったケド、まあ別に構わないのでね。それよりも大事件なのはムラクモちゃんのお腹がグーグーだってことだよ。
んだもんでねぇ、なんだか気まずいギルドさんには申し訳ないですケド、ムラクモちゃん帰りますねって。その時にね。去り行くプリティ・バックに、声がおっかけてきたの。
「貴公、マジで怒ってないのん?」つって。ムキマッチョさんね。
だから怒ってないよって。そしたらさぁ、「いやいや。いくら稀代のプリティが温厚篤実、仏のハートを持ってるつっても黒麺ぶっかけられたらさすがにイラっとはするよね? はい論破」って言うの。
……はぁーやれやれ。
やれやれですよまったくぅ。このムラクモちゃんの器を見誤ってもらっちゃ困りますねえ。最強のムラクモちゃんの人間的器は大きさも最強! 下には底なしの穴が開き、上は青天井! いやー広い! あんまりにも広すぎて限界地点が見えませんねぇ。……それはないのと同じでは?
つーんだ、しーらないっ(ぶりっ子)。
そんなもんでねえ、マジでどうでもいいし気にしてないんだけど、しつこく食い下がってくるよ。……ねえねえ、ムラクモちゃんが帰りたそうにしてるの目にお入りになりませんか? 見てこのお顔。……いつも通りの人間国宝プリティ!
……ムキマッチョさんったらね、「お前もほら、頭下げろ」つってガチ歌くんのことギュウギュウして謝らせようとしてるよ。……ちょ、無理やりはいくない。
「……アンタが気にしてるかどうかってのは重要じゃねえんだ。“二つ名持ち”に、平の探索者が無礼をやった。……要は、筋の問題だ。ケジメは付けなきゃなんねえ」
「えぇ……(困惑)? 小指、落とすの?」
「は? ……いや、そこまではやんねえが。……いや、小指を切る? なんで小指?」
だってケジメだなんて言うからぁ。任侠映画だとやるでしょ、ケジメだつってぇ。「俺の生きざま見とけやぁ!」ざくーって。
ムキマッチョさんにしつこく絡まれてたの。そしたらガチ歌くん、なんかもうガクブルしすぎて話せないって感じだったけど、落ち着いてきたのかしら。ボソボソ声で「すみませんでした」って言ってきたよ。
……うーん、受け取るべきいわれのない謝罪だあ。
……でももう、なんかもうめんどうになってきたし、「いいよ」って言っとくねえ。一刻も早く帰りたいし。この後大事な予定もあるからね。
……あ。でも、ムラクモちゃん今は毒も滴る顔いい女だし、こんな格好だとご飯屋さんで入店拒否されるのでは? ……ムカムカァ!
おのれガチ歌めがゆるせぬ! なんつってぇ。