わたし、華亥ムラクモ♡ スマイルマイル! あの子の笑顔が見えるまであとどれくらい? ぶっぷー。そこはもう通り過ぎました。ナビゲーションを修正します。……ふっ、恋はいつだって障害ありき。鯉よ、来い来い。……フィーッシュ! 故意の間違い。ゆるちて。許しを乞いまするっ! 下請け系“暴君”女の子♡
うん。
相も変わらずムラクモちゃんは大忙し! 平和に暮らしてるモンスターくんへの地上げから、うだつの上がらない記者おじさんとのダンジョン・ランデブーまで幅広く対応! どんなお仕事も笑顔を絶やさずにやります! スマイルとデストロイが取り柄の会社です! 社員は一人! シャインハート社員。なんつって。
ちょっと前に護衛した記者さんいるでしょ。マスコミ屋さん。
“歌姫”の嬉し恥ずかしスーパーリサイタル・フェスティバルまでまだ日にちがあるからってね、追加でムラクモちゃんに依頼して来たんだぁ。「イベントごとまでやることないしぃ。だったら! かわいくてプリティなムラクモちゃんと一秒でも長く一緒に居てぇ! ダンジョンデートしようぜ!」的な。てきてきてきな? てきちぇけなう!
ムラクモちゃん的にお出かけしたいんなら、別のところに行ったらいいのなって思っちゃうケドね。
だってあそこ、アスレチック遊びするってにはだいぶ日当たり悪いしぃ。ガラの悪い生き物うろついてるし。物好きだよねえ。
いちおうね。いちおう。
ムラクモちゃんを雇ったからってぜったいに命の保証があるわけじゃないんだよつってね。そんなようなこと言ってあげたの。そしたらさぁ、「でもあそこ踏破したのお前じゃん。なら余裕っしょ」とかって聞く耳持ちやがらないのん。……ふっ、若いな。……しかし、その青さが命取りだ! 死ねぇいムラクモ! お野菜弾劾裁判だ! そしてお前は有罪! 罰としてコスモバースト死罪だ! バーン!
話逸れちゃった。
別に意地悪で行かん方がいいよって言ってるわけじゃないのよ。これほんと。
いつでも何度でも言いますけれど、ムラクモちゃんは最強です。天下無双の古今独歩、国士無双で……うーん。あとなんかつよい。あとすごくてえらい。それから賢くてかわいい。……なぁんてこったい! まるで完璧超人じゃないかぁ!
でもねえ。だからって、ぜったいにどうあっても最強の安全地帯になれるってわけじゃないよ。
でもうじさんったら、「俺だって行きたくて行くわけじゃねえよ!」だって。「こっちだって取材に命かけてんだ! これでおまんま食ってんだぞ!」つってめっちゃ怒るんだもん。えぇ……(困惑)だよね。
……そうまで言うんならムラクモちゃん、なんも言わない。
───
そんなこんなのそんなに困難。
今ねえ、ダンジョンの下層に来てるよ。道中、襲い掛かって来そうなモンスターくんなんかを先制攻撃で粉砕しつつ、しつつ。湿ったアナグラでピクニックだよ。
……ん? マスコミ屋さんに言ったことって何だったのん? もしかして杞憂民ムラクモか? つってね。うじさん達もそんなような目で見てきおる。
や、腐っても鯛、くたばり損なったって、拙僧、最強の魔法少女ですし。
だからってね、ぜったいではないよ。撤回しない。「あ! アイツは倒したことあるから大丈夫!」つってね。ゲボヘドロ虫けらに頭から齧られて死んだ鼻紙仲間それなりにいるからね。……ゆえにムラクモちゃんは油断しないのだ! えっへん!
「──ってことはよ。最下層には連れてってもらえねえ感じか?」
「ん。すごく広い。帰れない」
「……つまり。おい、通訳しろ」
「あー。……迷子になる、とか?」
そうだよぉ。大正解! ムラクモちゃんポイント一個あげるねえ。ちなみに貯めても特に意味ないよ。何故ならあげたことをムラクモちゃんが忘れてしまうから!
……うじさんってばね、なんかもうムラクモちゃんがなんか言うたび、カメラさんに丸投げするよ。失敬じゃない?
そのあともちょろこちょろこ歩き回っとるとね、暇だったんかしら。うじさんったらぺちゃらこ話し出したよ。
ほとんどどうでもいい愚痴だったケド、しょうもない感じのムラクモちゃんのウワサとかね。『“暴君”は通行の邪魔という理由で山を引っこ抜いてどかしたことがある』とか『“歌姫”の手先が“暴君”に毒物を投げつけた! 宣戦布告だ!』とかって、根も葉もないやつ。『お前これマジなのん?』つって聞いてきよる。
……できるかできないかでいえばできるけどね、ムラクモちゃん。……くらえ! プリティマウンテン・リバースフォール! 出た! 世紀のヒールレスラー・ムラクモちゃんの本邦初公開、自然破壊の申し子たる代表技だーっ! 惑星選手、これには耐えられないーっ! ……やらないけどね。やらないよ。
ホントに。
ところで、そんな風に無駄話しまくるってことは……そなたずいぶんと集中力切れてきてんじゃないのって。でしたらならば、そろそろもう終わりにしていい? ムラクモちゃん帰りたいんですケド。
護衛の仕事って気を張っちゃって、張っちゃって。興味ないお話しでもウトウト聞き流せないしぃ。……クッ。ムラクモちゃん最大の天敵・長話を合法的にぶつける手段だぁ。──つまり、華亥ムラクモを討ち取るには護衛を依頼すべし! ……ってこと? なんつってぇ。
そんな風にね、しょうもないこと考えてたの。
……二体か。
うじさんのお話し聞いてたからね、気が付くの遅れちゃった。いけにゃいいけにゃい。ムラクモちゃんとしたことが。
つーわけでね、先手必勝だよ。テチテチ向かってくる人外くんには申し訳ないとはまったく思わないケド、死んでね。
ってことで、向かって人差し指と親指で作った輪っかを向けちゃう。そんでもって、はいどーんっ!
プリティ・フィンガーから繰り出される怒りと鬱憤のデコピン弾が、罪なき人外くんへ襲い掛かる! ばーん! あわれ、彼らは爆散して死んじゃった。なむなむ、ご冥福をお祈りしますねえ。
「……あ、相変わらずとんでもねえな。“暴君”……その名に偽りなしかよ」
「ん。もういい?」
「え? は? いい……とは?」
「お腹すいた。帰りたい」
「おい、自由かよ」
うじさんったらね、「貴公、お仕事舐めてる? こちとらお金支払ってるんですけど? その輝かしきプリティを視認できただけでお釣り来ちゃいますけど、ちゃんと最後までお仕事は完遂なさってよね!」って感じに怒ってくるの。うえーん(嘘泣き)。
でもでもぉ。こぉんな危ない場所にいるってのに、無駄話仕掛けてくんでしょ、うじさんだってぇ。お仕事中なのにさぁ。飽きてきちゃってんでしょぉ? 正直にお言いなさいよ。小生今なら全力で同意してあげちゃうよ。
……。
真面目な話、マスコミ屋さんたち、安全だって安心しとるでしょ。それってね、夕方ごろにカラスがカーッて鳴くのと同じ意味だよ。ご帰宅の時間。
んだもんで駄々っ子こねちゃうよぉ。帰りたい帰りたい、お腹空いたんだーい! つって。そしたら願いが通じたのかも。
うじさん、でっかい溜息して同意してくれたよ。やったぜ、ゴネ得だぁ。
───
お休みだよ。
今日はねえ、じょーちゃんとれっちんとでお茶しに来たの。じょーちゃんおススメのカッフェがいつも行くところなんだケドね、今日はムラクモちゃんがお店選んだんだぁ。なんかねえ、木彫りの看板出してる小汚いお店だよ。……うん。見た目はだけはね。さすがにね。でも味はいいんだよぉ。
「“暴君”……。アンタここ……。居酒屋じゃないのよっ。お茶するっつってんでしょ! 酒飲みに来てんじゃないのよ!」
「ん。でも見て。おいしいごはんたくさんある」
「飯ならさっき食べたわよね!? ランチ! つか食事が目的じゃないって言ってんでしょ! ……ちょっと! 何とんでもない非常識を見る目してんのよっ。言っとくけど、おかしいのアンタの方だからね!」
「まあまあ、スカードレッドさん。ちゃーちゃんだって一生懸命選んだんですから」
「だぁから! こいつを甘やかすなってのよっ、激重飼い主気取り!」
かしまし、かさまし。ご近所迷惑、騒音トラブル三割増しにさせていただいておりまーす。ちなみにこのサービスは拒否出来まぬぅ。……ひどいかさましだぁ。
席を見繕ってご着任だよ。……着任? どんなお仕事? そりゃあなた、酒池肉林大臣ですよ。一方的に注文して食べて帰ってく……。ちなみにお金は増えないどころか減ります。なぜなら、お仕事ではなくお買い物だから! なんてこった盲点だぁ。
はい。
ムラクモちゃん何食べよっかなって。……うーん。さっきお昼ごはん食べたばっかだからなぁ。あっさりしたのがいいよね。……お肉たのも。
「……はぁ。上へ下へのてんやわんやよ、マジで。“歌姫”だか何だか知らないけど、いい迷惑だわ」
「わたくしも。“英名の剣”に臨時で雇われてますわ。どうにも執務の手が足りないそうで」
ムラクモちゃんもめっちゃ忙しいよ。
マスコミ屋さんの護衛とか森の伐採とか、資材の運搬とか! ……って思ったケド、よくよく考えてみたらいつもとやってることそんなに変わんない気もしますねえ。……それ行け! 万能重機ムラクモ! 力仕事ならお任せください! ムカつく人外のせん滅から、邪魔なダンジョンの崩落まで幅広く対応! ……破壊行為ばっかやんけ! つってね。
お肉食べてたの。モムモム。
ムラクモちゃんは鳥のお肉が一番好きだケド、このお店のはねえ、なんか変なやつ。地球上に存在しなさそうな生物のお肉らしいよ。……まあ、ムラクモちゃんが地球で食べたご飯なんて合成ゼリーとゲボヘドロ宇宙ムシケラくらいだけどねえ。
ちなみにお肉、シララバカヌーとかって名前らしいよ。シララバカヌー。変な名前。味はね、おいしい。具体的に食レポするとね……うん。すごくおいしい。モムモム。
シララバカヌー食べてたの。そしたられっちんが、「……そういやアンタ、新人に毒ぶっかけられたらしいわね。噂になってるわよ」って。……ん?
そうだっけ? なんかそんなこともあったような、なかったような……むむむ。 ……うん。あんまり覚えてないかも。
まあ、ムラクモちゃんの記憶領域は猫の額より狭いからね。仕方ないね。
そんな感じに自己正当化しとるとね、じょーちゃんが急に頭触ってきたよ。……なぁに? ムラクモちゃんのプリティがあまりに輝かしいから、触って確かめたくなったのん? いやんえっち! ……でも。じょーちゃんだけのトクベツ、だよ♡ こんなこと許すの、じょーちゃんだけ、なんだから。この果報者♡ なんつって。
「……ちゃーちゃんが気にしてないようですから、わたくしも気にしないことにしますけれど……。……けれどね。一応、言っておきますわね。ちゃーちゃん。毒物をぶつけられるっていうのは怒っていいことなんですのよ」
「ん。どうってことない」
「……これなんですもの。……愛犬家をやるのも楽じゃありませんわ」
き、聞かなかったことにしますね、その愛犬家……。
……。
そのあともたくさんお話したよ、いろいろ。……そういや、毒物新人くんね、謹慎になっちゃったんだってぇ。大変だぁ。
───
華麗にマスカレィド、踊れや歌え、お祭りだーい!
“歌姫”ご来訪当日だよ。なんかもうね、いかがわしい。迷宮都市って基本的にいかがわしい街だケド、今日に限っては限界突破しちゃっとるよ。その辺歩きまわるだけで怪しい勧誘とかキャッチに捕まっちゃいそう。……や、それはいつもか。
パレードなんかやっとってねえ。
遠目に“歌姫”見えたよ。ムラクモちゃんには遠く及ばないケドね、うん。このプリティの体現者には及ばないまでも……まあ、なんか顔いい女でしたわね。物語とかだったら「勇者様……!」つってね。なんかお祈りしてる感じのね。薄幸美少女タイプって感じ。悲しき過去とか持ってそう。
それよりなにより大事なことに気が付いちゃったのん。
実はねえ……。出店めっちゃ出とるよ。おいしそうなにおいがそこら中からして、ムラクモちゃんの理性を焼き尽くそうとして来よる。ふふふのふ。しかし心配召されるな各々方! 拙僧今日はお小遣いをたくさん……持ってない! 何故なら生活分以外はメガネさんに渡してるから! ムラクモ、豪遊失敗!
ち、チクショウ! なんてこったぁ。お金がないっていうのにはこぉんなデメリットがあるなんてぇ……。でもでもぉ、借金返済は自分で決めたこと、約束ゴトだしぃ。うえーん、ひもじいよぉ。
……くそ、こんなところに居られるか! 俺は自分の部屋に戻らせてもらう! つってねえ。
帰ろうと思ったの。
そしたらねぇ、誰だっけ? なんか地味ぃな少年くんに声かけられたよ。ムキマッチョなおっさんと一緒におる。
なぁに? ムラクモちゃんに何かご用? ごめんケド、後日してくださる? それがし今日のところは閉店ガラガラなので。お家に帰るところです。
って感じにお断りを入れたのん。そしたらさぁ。「え? 貴公拙者をおぼえてござらんか? いくとせのむかし、貴殿にお世話になり申した者です。此度はそのご恩返しとして出店のご飯をおごらせていただきたく」って。……え? いいのん?
もっかい聞くケドいいのん? ホントに? ……いいよって。──なぁんて素晴らしい出会いなんだぁ。今日という日の幸運を地獄でよろしくやっとるヒゲモジャスキンヘッドに感謝するねえ。なむなむー。
じゃあ、ご遠慮なくってことでねえ。お肉食べたいよ。あとお野菜。なんかグニグニしてる串焼きも食べたいし、フワフワの変なやつも食べたい。あれもこれもそれもどれも注文させていただくねえ。
んでんで、買ってもらった食べ物抱えてね、休憩席で食べてたの。おいしいおいしい。手が止まらへんで、忙しい忙しい。
……そんな多忙を極めるムラクモちゃんに、ムキマッチョさんがねえ、
「アンタにはすまねえことをしたな」
「ん?」
「小僧のことだ。筋が通らねえがよ、どうにも忍びなくってな。連れてきちまった」
「???」
って。
……いや、何の話ですか?
急に何? そち、ムラクモちゃんに対してなんかすまないことしたん? 心当たりぜんぜんないんですケド。……あ。そういえばなんか毒物新人くんがムラクモちゃんに毒を投げつけたってウワサになってんだってね。ひょっとしてそのお話?
なら別に気にしてないから気にしなくていいよ。……未来に生きましょう! ムラクモちゃんが党首を務める未来系ちゃらんぽらん党のマニフェストは『現実逃避』! 未来への漠然とした不安も、過去にやっちまった黒歴史も忘れ去って今をちゃらんぽらんに生きましょう! ビバ、フリーダム! ……この世の終わりみたいな公約だぁ。
しょうもないこと考えつつ、考えつつ。もぐもぐお口を運動させとったらね、毒物新人くん(仮)ったら「……かわいい」だって。……あ、わかる? わかっちゃう? ムラクモちゃんがプリティだってこと! いやー。にじみ出ちゃったかな、キュートでラブリーな存在感♡ でもでもぉ……ごめんなさい! アイドルに恋愛沙汰は厳禁ご法度! 貴公の気持ちには答えられません! これからも模範的な厄介ファンでいてね♡ なんつって。
……。
ん、もうなくなっちゃった。
もうちょい食べたいなって気持ちあるから、追加注文しちゃおっかなって思ったんだケド、さすがに図々しいかも。残念ですが、食べ放題は時間切れです。残念。
……食べるもの食べたし、もう帰ろうかなって。んだもんでね、新人くんとムキマッチョさんにはごちそうさまとありがとうを言っとくよ。あ、それとね。
「……おいしいものくれたお礼だよ。困ったことあったら頼っていいよ。できることはやったげる」
「いや、お礼っていうか……そもそもこっちがお詫びをしたいっていうか……」
「気にしてない。気にしてないから、これ、貸し」
「おいおい……。そりゃ筋が違うだろって」
つってね。
でも、新人くんもムキマッチョさんもごねるのん。いらんいらんっつって。えぇ(困惑)?
なんか押し問答になりそうだなってね、ムシケラ知能界の神童ムラクモちゃんは察したよ。なんかこの世界の人って律儀だよね。こっちが貸しっつってんだからやったぜって思っとけばいいのにね! 物好きだなあ。
長々やり取りすんのも面倒だからね。言うだけ言って帰らせてもらうねえ。秘技・言い逃げ! 「俺、お前のこと好きだから! それだけ!」的横暴が罪なき探索者二人を襲う! でもしょうがないよね。何故ならムラクモちゃんは“暴君”だから!
イヤなやつに絡まれたなってね。諦めの境地に達してねってことでね。帰るねぇ。