【悲報】“歌姫”のライブ、延期www
1:名無しの権兵衛
ドウシテ…… ドウシテ……
8:名無しの権兵衛
酷いよぉ、こんなのあんまりだぁ!
俺この日のために法国から迷宮都市に来てんだぞ!
こんなチャラついた催しに浮ついてるって知れたら出世コース外れるかもしれないからって“軍神”様にも内緒でこっそり来てんだ!!
絶対やれよな! 金は返さなくていいから絶対にライブはやれ!!
13:名無しの権兵衛
>>8
お前……
いや、何も言うまい……
19:名無しの権兵衛
でも仕方なくねえか?
なんかウワサじゃ行方不明なんだろ、“歌姫”
一週間以上居場所が知れないってやべえだろ
22:名無しの権兵衛
>>19
腐っても“二つ名持ち”なんだし、自衛くらいはできるだろ
27:名無しの権兵衛
>>22
一人じゃコボルトの一匹も殺せねえザコが“歌姫”だぞ
29:名無しの権兵衛
なんでコボルトも殺せねえヤツが二つ名もらってんだよ
33:名無しの権兵衛
>>29
知らんよ
皆知らねえから“歌姫”は戦績を愛嬌で買った売女だなんて言われてんだろ
35:名無しの権兵衛
“歌姫”捜索に“二つ名持ち”を動員するって話も出てるらしいぞ
“暴君”とか“狂い咲き”とか
36:名無しの権兵衛
>>33
おい!
お前その聞くに堪えない罵詈雑言……これ以上やるなら、どうなっても知らんぞ!
41:名無しの権兵衛
帝都炎上事件じゃゼルヴィナ教が絡んでたらしいし、もしかして今回も奴らの仕業なのでは?
44:名無しの権兵衛
>>41
はいはい
陰謀論陰謀論
66:名無しの権兵衛
ムラクモちゃんに人探しを依頼するとか正気か?
途中でめんどくさくなって迷宮都市更地にしそう
70:名無しの権兵衛
>>66
さ、さすがのタイラントロリもそれはやらんやろ……
やらんよな?
75:名無しの権兵衛
タイラントロリ「ん。ヒトは殴らない」
なお、聖剣破壊、王城破壊は別とする
78:名無しの権兵衛
……迷宮都市にいるやつらは生きろ
───
わたし、華亥ムラクモ♡ 欲望渦巻く夜のぎんぎらタウン……。肩で風切りてんてこ歩くプリティはだぁれ? 朕、朕! 朕だよ! ……キャッ! 朕朕詐欺!? ……これ、なんか響きが良くないかも。
ていく・つー! あくしょん! 麻呂麻呂! 麻呂でおじゃござる! いやん麻呂麻呂詐欺だわ! 許せない! 特殊詐欺もろとも惑星をガンマ線バーストしてやる! 闇あるところ光アリ! くらえ! メテオライト・流星ボンバー! どかーん! 小事が大惨事系女の子♡
迷宮都市は相も変わらずどったかばったんお祭り騒ぎ。ムラクモちゃんってばね、じょーちゃん、れっちんとお店巡りしてみたり、ご飯の食べ歩きしたり、出店を冷かしたりしてたのん。……これぜんぶ同じことでは?
うーん。それも仕方ない。
別にそんなに興味ないケドねえ、“歌姫”のライブも見に行こうかなってお話だったの。ケド、なんか延期するらしいよ。無期延期。……お腹でも壊しちゃったのかしら?
“歌姫”さんがご不調でも出店のご飯は期間限定だからねえ。次の日なんかも屋台巡りしてたの。
お昼ご飯にしようと思ってねぇ。出店のご飯頼んだんだぁ。なんかずるずるしてるやつ。……ムラクモちゃん博識だから知ってるケド、これってパスタっていうんでしょ。トマトとかチーズとか突っ込んで食べるやつだぁ。
パスタ味の合成ゼリーね、食べたことあるから知ってるよ。知ってる知ってる。
……って思ったんだけど、なんか違うらしいよ。ツァケとかって、お汁に付けて食べるご飯なんだってぇ。ほえー。
んでね。そのツァケ食べてたの。お汁の中に色々入ってておいしいおいしい。
……食べてたらね、「む。そなたそなた、もしやあのプリティ千里行で有名なラブリー・ムラクモ殿ではございませぬか」つってねえ。背後から声をかけられたのん。
む! 何やつ! 拙僧の背後に立つとはよほど生命が惜しくないと見える……。けっ! よく言うぜ。てめえの注意が散漫なのが悪いんだよ! ザコが! キィーッ! ロジックハラスメント! なんてねえ。
……アイリだよ。なんかお友達っぽいおデコの子と一緒におる。
ややいのやあ!
こんなところで奇遇ですねえ。“歌姫”さんのライブ見に来たのん? それともムラクモちゃんのプリティに照らされに? けっこう! 今なら特別大サービスでピースしてあげちゃうよぉ。こんなこと、いつもならあんまりやんないケド、今はお祭りやってるからねえ。トクベツ……なんだからね……。この果報者♡
つってね。そんなようなこと考えてたら、アイリ話してくれたよ。……別に興味ないケド、アイリは友達だからね。話したいなら聞いたげよう。
なんかねえ、リハビリに来てんだってぇ。……あ、アイリじゃなくておデコちゃんの方ね。
……どこか悪いのん? ムラクモちゃんが見た限りだと別に命に別状なさそうだケド……。
……いちおうね。いちおう、回復したげようかつってね。そんなようなこと聞いたら、ケガじゃなくって心の問題なんだって。
……そっかぁ。お大事に。
「……前みたくムチャクチャなやつに戻るには時間がかかるかもしれないけど……楽しいなってこと、面白いなってこと。時間をかけてたくさん思い出させてやるつもりです」
「ん。……これ、あげる」
「え? ……いやあの、このツァケ、食べかけなんですけど……」
「おいしいよ」
「いや……そういう問題じゃなくて」
断腸の思いだよ。
こんなにもおいしいご飯を差し出すのは……。でも、ここで会ったのも何かの縁。袖振り合うのも多生の縁……や、多少の縁ですねえ。ってことでね、ムラクモちゃんの楽しい、ほんのちょっぴり分けてあげるよぉ。光栄に思ってよね!
───
お呼び出し食らったの。メガネさんギルド。
アイリと不意のエンカウントをしてからけっこう経ってのことだよ。なんかねえ、すんごい大切なお話あるからってさぁ。んぇー。めんどい。
めんどいケド、お仕事だからねえ。行ってみたの。んで、応接室へどうぞっつってご案内されてぇ。
お部屋の中にはね、幸薄おじさんとなんかめっちゃ裏切りそうなお兄さんと神経質そうなお姉さんいるのん。……神経質お姉さんね、めっちゃイライラしとって、ドチャクソ気まずい空気だよ。
……。
ね、ムラクモちゃん帰りたいんですケド。帰っていい? ……ダメですか? はやく入れって? うえーん、しくしく(白々しい嘘泣き)。わかりましたよぉ、入室しますぅ。
──その瞬間、無数の視線がプリティに突き刺さる! ……でもわたし、やり遂げます! まばゆいスポットライト! 次元的超絶アイドル・ムラクモがサツバツとしたライブステージへエントリー、エントリー! 宇宙的プリティ引っ提げて殴り込みだぁ!
はい。
「……“暴君”か。久しいね。相変わらず瑞々しく愛らしい花だ」
「???」
いや、どちら様?
お部屋に入ったらね、裏切りお兄さんがなんかメチャクチャ馴れ馴れしくしてくるよ。……ちょっと! 今ムラクモちゃんのうなじ触ろうとしたでしょ。わかっちゃうんだからね! ふしだら警察だぞ! ぴーぽーぱーぽー! 逮捕だ! 大人しくしろ! ガチャーン! 華亥ムラクモ、現行犯逮捕です! ……なして?
ふっ……。それはね、人を狂わせてしまうほどにプリティすぎるキュートが罪、ってことさ……しゃらーん。なんてっこったぁ。拙僧ってば、罪な女……♡ なんつってぇ。
そんなしょうもないことを考えつつ、考えつつ。
何でお呼び出しされたのん? つってねえ。……神経質お姉さんが教えてくれるみたいなの。
んでんで、それね、なんだか眠くなってきちゃうくらいに長いお話しだったから要約しちゃうねえ。
「“歌姫”ちゃんは頑張ってた! 芸能界の一番! アイドル戦国時代に燦然と輝く一等星! 天下一統目指して日々野望に邁進していたの! だっていうのに消えちゃった! 理由は……ちょっと言えない。心当たりはあるけど言わない。……なんでって? 決まってんでしょ。女の子にヒミツは付き物だからです♡」
……って。要約できてえらい!
お話聞いて一番に答えたのね、裏切りお兄さんだよ。めっちゃどうでもよさそうに鼻で笑っとる。
「──拒否させてもらう」
「“狂い咲き”?!」
「……フン。アレは女としても、英雄としても特に見るべきところのない女だ。ならば、僕が動く理由はない」
つって。
裏切りお兄さんに断られちゃったからかな。
神経質お姉さんったら、今度は縋りつくみたいにムラクモちゃんのこと見てきたよ。……うーん。
別に人探しするのはいいんだケドねぇ……。そこは別に断んないよ。でもね、本当に頼むのムラクモちゃんでいいのん? 自分で言うのも悲しくなるケド、猫探しも満足にできないよ、ムラクモちゃんは。……え? 魔力感知したら一発だろって? むむむ、それはそう。そう、なんだケドねぇ……うーん。
……ところで。
「……ヒトなの? それとも人外?」
「──え?」
「潰せってんでしょ。……でもわたし、ヒトは殴らないよ」
「な、なんでそういう話になるんです!?」
おっと早とちり?
ムラクモちゃんなんかにお願いするから戦いをしろってことなのかと思ったのん。……そっちの裏切りお兄さんもそれなりにやれそうだしぃ。
勘違いならいいのよ。ごめんねぇ、いきなりこんなこと言っちゃってぇ。つってね、「じゃあ受けるね」って言おうと思ったのん。……そしたら、
「わかりません。……わからないんですっ。何か……危険に巻き込まれている。それは確かです。わかります。でも……それが何かまでは」
だってぇ。
えぇ……(困惑)?
……なんかもうムラクモちゃんってば頭こんがらがって来ちゃった。
つまりこれ、どういうお話なのん? って改めて聞いたの。そしたらねえ、「“歌姫”を探してほしい。ことによっては、“歌姫”が遭遇しているだろう危険を排除してほしい」って、そういうことみたい。……危険とは? もうムラクモちゃんったらお話聞いてました?! それがわかったら苦労はござらんのん!
んー……。
「いいよ」
「……あ。ありがとうござい──」
「いいケド。お仕事として受けない」
「え……?」
「“暴君”。それは一体どういうことなのか、聞いてみても?」
幸薄おじさんだよ。
「貴公まさか断らないよね?」って感じで聞いてくるからね。違うよって教えたげたの。「人探しをするところまではやる。でも危険の排除はやらない」って。
だからね、これお仕事じゃないよっつって。
そしたら神経質お姉さんったら、キィーッ! ってなって頭がしがしーってしてねえ、「あんた達“二つ名持ち”なんでしょ? “暴君”なんでしょ? “狂い咲き”なんでしょ? だったら何とかしなさいよ!」っつって駄々っ子こね始めちゃった。
裏切りお兄さんね、「キミがキミの情で動くように、僕には僕の美学がある。何物も侵せるものではない」って。……ムラクモちゃん?
……そうだなあ。相手が人外だったらやったげてもいいけどねえ。……うーん。
「……たとえ人間が相手になったとして、それが何だっていうの。誘拐犯なのよ。躊躇う必要なんかないでしょ!」
「……聞きたい。あなたは、正しいの?」
「正しいわよ。……大切な友人のためにできる限りのことをしようって、それは正しいことでしょ!」
……ふーん。
そっかぁ。
大変心苦しいご通達になりますケド……今回のお話しはご縁がなかったってことでねえ。ムラクモちゃんは神経質お姉さんのご健勝を草葉の陰からひっそり祈らせていただきますねえ。……いつの間にムラクモちゃん死んでたの? くたばり損なってはいてもまだ存命ですよ、拙者は。
そんなようなこと言ったらね、何でよ何でよーっつってめっちゃ駄々こねるよ。……や、気持ちはね、わからないでもないよ。今のムラクモちゃんはね。……友情。それはなんか胸の奥のところがモゾモゾする感じ。わかるわかる。
わかるケド。……ヒトを殴らないって約束ゴトは、ムラクモちゃんにとっても大切だよ。ムラクモちゃんは“暴君”だけど、魔法少女でもあるからねえ。
そして、やっぱり“暴君”なのでやりたくないことはやりません。つってねえ。
はい、不採用です。なんつって。
ムラクモちゃんも裏切りお兄さんもやる気ナッシングでごわすでよってのがどうにもなんないってわかっちゃったんだね。神経質お姉さんがっくしだよ。
……ごめんねえ。ムラクモちゃんってば何でもかんでも好き嫌いで決めちゃうタイプの迷惑系なのん。……な、なんてことだ……。ヤツは“暴君”! 情や心で動くような温かさを持たぬ存在だぁ。……この鬼! 冷徹頑固脳内花畑! ムラクモ! ゆるちて。
んじゃあ帰ろっかなって、その時に裏切りお兄さんがね、
「……そう悲観するものでもない。アレも年頃の娘なんだろ? ボーイフレンドと戯れる時間の一つも欲しいんじゃないのかい?」
つって、なんか意味深なこと言ってたよ。
そんなスキャンダラスな!
───
そんなこんなのこんなに相談室。
……“歌姫”探しだけどねぇ。うーん。
知り合いを探すんならそう難しいもんじゃないケド、そんなよく知らない人を探すってなると難しいよね。
ムラクモちゃんは最強なので感知能力も最強だけど、それはそれとして魔力の波長を見分けるのって思ったより神経使うよ。魔法としてどがどごーん! ってやった後なら「おっ! こいつぁくせぇぜ!」って簡単なんだけど、無色透明のまんまだとどうしてもねえ。
だがしかし! 歯がカカシ!
鯛は腐っても鯛、魔法少女はくたばり損なっても魔法少女ってねえ。……わたし、諦めません! 彼女を見つけるまでは! 行くぜ、目指せ! 黄金郷! 迎え、約束の地へ! ジパングはどこだ! 東だ! 東方見聞録! ……ところで東ってどの方向? わかんにゃい。
……うむむ。頭脳労働しとったら、なんか頭くらくらしてきちゃった。
……知ってる? ムラクモちゃんはそんなに知らない。
疲れた時に甘いものを食べるとね、なんかいいらしいよ。……ホントぉ? 自分の食い意地を優先してるだけでは? ギクゥ!
お菓子屋さんに行ったんだよ。持ち帰りのところ。……さすがにね、やることあるからね。腰を据えておやつはね。我慢できてえらい!
そんでねえ、なんかカリカリしてる甘いやつ買ったの。ちっこくってねえ、いろんな色してんの。瓶に入っとる。面白いよね。
んでね、座れるとこ探してね、買ったやつポリポリしてたの。あまいおいしいあまい。……悪魔だ! こんなアマイモンがあるなんて! なんちゃって。……ちょっと安直だったな。
……話逸れちゃった。
声かけられたんだよ。「──やっと見つけた……!」つって。
なあに? どちら様? ……冗談。
毒物新人くんだよぉ。あとなんかムキマッチョのおじさん。
毒物新人くんったら、なんだかぜはーぜはー言っとってお目々真っ赤っか。
危ないふいんきですねえ。……よもや、このプリティが脳を支配するあまり正気を失ってしまったのん? そしてその狂気は愛という名の欲望に変わり、ムラクモちゃんへ毒手を伸ばそうと……! いやん、ダメよダメ! 小生アイドルなんですもの! おさわり禁止!
はい。
ムラクモちゃんになんかご用? って聞いたらね、「……約束だ。アンタ、約束してくれたろ」って。
うん。覚えてるよぉ。ちゃぁんとね。……でもムラクモちゃんの記憶は新陳代謝が高いから、危うく老廃物になっちゃうところだったよぉ。運が良かったねえ。
……お話を聞いてみるとねえ、うーん。要するに、「かわいいあの子に一目惚れしやんした! だけど、ヤバいおじさんに目を付けられて彼女は連れ去られちまった! 魔王城に向かいたいが、オレはモブ兵士だ……。あとムキマッチョ戦士。勝てっこねえ。ヤツは伝説の魔王(誇張表現)なんだぞぉ……。あ、そうだプリティ・ムラクモちゃんなら! あの絶世の美少女アイドルならあふれ出るラブリーで解決してくれるはず!」ってことみたい。……うーん長い。
……。
そっかぁ。人外がねえ……。人をさらったんだぁ……。
ふーん……。
「……何をしてほしいの?」
「あ。ぅ、そ、その……。助けて、ほしいんだ。“歌姫”を……いや。シャーラを」
「……」
毒物新人くんから強い感情を感じる。
……。相手が人外ならね、ムラクモちゃんにためらいはないよ。だから答えはいいよって、それだけなの。
それだけ、のはず、なんだケド。
聞きたくなっちゃったの。
だってあんまり悔しそうだったから。……覚えのある感情の色だなって。
「……ね。あなたは、正しいの?」
「──え?」
「……約束だもの。助けたげる。……だから、無理に答えなくていいよ。でも、聞きたくなったの」
毒物新人くんね、考え出したよ。
すんごく真面目に考えてくれてねえ。けっこう長い時間だったかも。
そんで彼、言ったの。さっきまでおどおどがなくなって、強い目で。「正しいとは思わない」って。
「……間違ってるってことじゃない。本当ならオレが、オレ自身の手で助けたかったんだ。……でも、もうそういう段階じゃない。オレにはそんな力も、力を付けるための時間もない。──だから正しいとかじゃないんだ」
……。
助けるって言ったケド。ムラクモちゃんの質問に真面目に考えてくれたお礼だよ。
“手伝って”あげるね、キミのこと。