わたし、華亥ムラクモ♡ まもなく始まる全世界マジカルアイドル仮面舞踏会! あの子のハートを射止めるのは……だぁれ? ひしめく群衆、連なる一人称。押し合いへし合いラブコール騒ぎに割り込むプリティ・ボイスあり。……クククのク。む! 何やつだ!
我こそは怪人プリティ面相! お宝をいただきに参りましたよ。そう、ソレはかけがえのない……秘宝。それはいったい!?
世界最強プリティの座はムラクモちゃんのモノなんだーい! そーれニコー☆ このプリティ・スマイルにメロメロ骨抜きになっておしまいなさーい! しまった仮面越しだ! うっかり系目立ちたがり女の子♡
あいあい。
カクカクがシカジカでマルにウマがどうのこうの、どうなるのって。
いきなりですが、悲しいお知らせがございますぅ。それってなあに? “歌姫”ちゃん探しが難航しておるってことです。
いちおうね、いちおう。聞き込みなんかしてみたりね。怪しいおじさんとか“歌姫”見ませんでしたかっつって。それから、“歌姫”の私物貸してもらったりして残り香から気配特定してみようとかしてみたりねえ、やってみたんだケド。結果ってばなしなしですよぉ。ナシのつぶてだぁ。びしべしーあいててー!
……つかつーか。
いかにムラクモちゃんがセレブリティ・ペットドッグの称号持ちだとはいえ、さすがに人の荷物から人物特定なんて無理がございませぬか? ワンコじゃあるまいしぃ。しからばなんでやったのん? ……それはぁ、えーとぉ。……ノリで。──もうっ! ムラクモちゃんったら! その場の勢いで適当やるの良くないって言ってるでしょ! うえーん、すみません。
んだもんでねえ、うーむむって感じなの。あんさん、こりゃあ難儀なお仕事になりもっせ。
……あんパンと牛乳買ってくる? こういう時間がかかるお仕事だと定番なんでしょ。ムラクモちゃん博識だから知ってるよ。……ところであんパンってどんなパン? なんか反転してんの? 半重力パワーがぎっちぎちに詰まってるとか? ……あぶにゃい。
──くらえ! アンチ・プロトン・グラビティボンバー! どかどかーん! 世界は滅びた。……なぁんて物騒なパンなんだぁ……。
なんてね。
……ムラクモちゃんがのんきに考えてる間も毒物新人くんったらイライラだよ。頭がしがし~ってやって、爪を噛んだりしてる。で、そんな彼を「焦ってどうなるもんでもないだろ」ってムキマッチョさんがたしなめたりすんだケド、「でも、被害者女性は誘拐されてますよね? 今焦らないでいつ焦るんですか? はい論破」的なね。そんな感じのことね、毒物新人くんったら言うの。
……ちょちょいちょい。空気重くないっすかぁー? ムラクモちゃんのストレス耐性はハムスターレベルなんだからね! 気まずいのやめてよね! なんつって。
……うーん。
正直なお話。ムラクモちゃんってばけっこう限界感じてますよ。時間をかけてゆっくりって、やってられる感じでもないみたいだしねぇ。
だけどもだけど、だからっつって何か考えがございますのん? あのムシケラ知能で有名なムラクモちゃんブレインに? ふふふのふ。バカにしくさっていただいちゃ困りますねえ。軍師ムラクモに秘策アリ! それもそれも、とっときの次元的天啓がおじゃる! それってなあに? どんな名案なの?
それはねえ……聞いておどろけ! ととのえ! じょーちゃんに相談する!!!
ってことです。……な、なぁんてこったぁ。我ながら思いついた自分が恐ろしくなるような天才的計略だぁ。……ホントぉ? ただの人任せでは?
聞こえない聞こえない! プリティ・イヤーは聞きたいことしか拾わないんだもーん! ぷいっ(ぶりっ子)。
つーことでね。我が社が提案する計略をお二人へご案内! じょーちゃんに会いに行くことになったの。
んーでねえ、相談したいことあるよっつってPINEしたら、「構いませんわ」つってご返信あったからね。カッフェに集まりましょうってことになったんだぁ。で、現場へご到着っつってねぇ。
じょーちゃんと合流しつつ、しつつ。自己紹介もそこそこに事情をお話しするのん。……毒新くんが。……え? ムラクモちゃん?
ムラクモちゃんはおやつでも食べよっかなって。脳みそグルグルに酷使したからね。なんかサクサクした甘いやつもらおっかな。おねえさーん! これちょーだい!
……毒新くんとムキマさんにはなんだか抗議の視線っぽいのもらっちゃうケド、でも拙僧! 自分を曲げません! 何故なら“暴君”だから! ……俺は、俺の信じた道を行くぜ。どんなことがあろうと決して振り返らねえって、道をよ……。おっと足を踏み外しちゃった! がらがっしゃーん! ムラクモ死す!
そんでね、お菓子モムモムしつつ、しつつ。しょうもないこと考えてるうちにも、お話ってば進んだみたい。
じょーちゃんね、ふんふむ考え込んでたんだケド、なんか思いついたんかしら。ムラクモちゃんのほう見て聞いてきたの。
「……ふむ。ちゃーちゃん、一つよろしいかしら?」
「ん?」
「ちゃーちゃんも依頼をされたんですわよね? その……“歌姫”さんの友人さんとやらから」
「うん」
「……なら一旦、その人に聞いてみるのはいかがかしら?」
んん? んー? ……??
す、すまぬが……ムラクモちゃんの知能には負荷がかかり過ぎる問題のようだ。もうちょっと噛み砕いて説明お願いできまするか?
……。
それってつまり……どういうことですのん? 神経質お姉さんに、もっかいどんなお仕事すんのかって聞きに行くってコト? んん? わかんにゃい。
ムラクモちゃんの氷よりもツルテカな脳みそが火を噴きそうになってるとね、ムキマさん言ったよ。「それにどんな意味があるんだ? “二つ名持ち”を集めて捜索願出してるような奴に、誘拐場所の心当たりがあるとは思えねぇが」つって。
「それですわ」
「……あ?」
「おかしく思いませんこと? たかが人探し。例え誘拐の可能性があったとして、一般の探索者を動員すれば事足りる案件ですわ、これ。……わたくしが思うに、依頼主の方、誘拐犯には心当たりがないのでしょう。そこは疑う必要ないと思いますの。
……でも、行きつく先。誘拐犯が向かう場所のことは知っているんじゃないかしら? わたくしはそう見ましたわ」
……なるほど。
ムラクモちゃんってば、完全に理解しちゃった。つまりあれでしょ。なんか……怪しいってことでしょ。神経質お姉さん。……がちゃばたーん! 追い詰めたぞ! さぁ、貴殿……隠していた真相をすべて語ってもらおうか! ふっ、愚かね探偵さん。わたしは単なる操り人形。あなたが真相にたどり着くことは決してないわ。──気になる続きは劇場で! 『劇場版・なんちゃって探偵~犯人はムラクモ~』ムラクモちゃん脳内で好評上映中!
とのことでね、メガネさんギルドに向かうことになったの。
───
わちゃらこわちゃらこ~。
メガネさんギルドだよ。行ってみてね、受付けさんに神経質お姉さんいる? つって聞いたら帰っちゃいましたよって。……ありゃま。そりゃそうか。時間経ってるもんね。……でも聞きたいことあるから連絡できますかっつってね、じょーちゃんかけあってくれたの。そしたらね、なんか渋々~って感じでやってくれたよ。
そんなに待たなかったかな。
ちょっとしたら息切れしながら神経質お姉さん来てねえ。「受けてくださるんですか!!」って。……うーん。ごめんねぇ。受けない。
「先約があるから」つってお断りするとね、またしてもがっくしって感じ。……でも、“歌姫”ちゃんのコトはちゃんと助けてくるから、それでゆるちてゆるちてー。
神経質お姉さんとお話すんのは毒新くんだよ。
「麻呂長きにわたり“歌姫”殿と懇意にしておじゃにけり」ってやつね。説明してたのん。……で、お話しが終わった時、すんごい音したよ。ばちーん! つって。これには思わずウトウトしてたムラクモちゃんも飛び起きちゃったね。やや、何事にござるか!? 敵襲?! つって。
クッ……敵の正体は、神経質お姉さんです! 謀反じゃ乱心じゃあ! 被害報告をせよ! 一人です! 毒新くんがやられました! なぁんてこったぁ。惜しい人物をなくした。毒新くん、キミの犠牲とおごってくれたご飯のことは忘れない! ふぉーえばー!
……。
まあ、なんか気まずいやり取りあってねえ。「貴公、お前正気なの? アイドルと男が一つ屋根の下で暮らすとか許されないんですけど? つか、そのあげくヤバいおじさんにさらわれちゃうとかマジで言ってる? 拙僧頭おかしくなりそう……きええええい!!」って感じぃ。
なんか長くなりそうだったケド、ムキマさんが間に入ったの。「今は過去を責めてるときじゃねえだろ」って。
正論だぁ。セイロンティー。……や、おっしゃる通りだと思いますケドぉ。いやでも、神経質お姉さんの言い分にも一理あるのでは? アイドルと男の同棲だなんてふしだらですわよ! 別にそこまで“歌姫”に興味ないムラクモちゃんでも、なんか響きがね。よくないよねって思うもん。思わず生えてきちゃうよね、角。ムラクモちゃんの心にもさ、ひひーん! って。
……冗談だよ。さすがにね。
さておきさておき。
詳しいお話聞かせてつってね、本題に入ったの。お姉さん落ち着いてからね。
で、気になる目的地なんだケド……ご存じでしたぁ。
「ダンジョンの名前は知ってますよ。詳しい場所までは知らんけど」……ってことみたい。ほえー。
なんかね、お呼び出しもらったでしょ。そん時にお話しする気だったみたいだケド、おみゃーら聞かんかったやん! って怒られちゃった。ごめんねぇ。
ちなみにダンジョンのお名前ね、ジッデッカっていうらしいよ。なんかお尻が悪い刑事さんって感じのお名前。
……教えてくれてありがとうつって、お礼を言ったらお別れ。
でね、ダンジョンのお名前わかったケド、場所がわからんのじゃどうしょうもないよね。どうすっべってことになったの。
じょーちゃんがね、メガネさんギルドにお願いしてダンジョン名を検索してもらったらどうかしらって言ってねえ。名案だって思うじゃない? ムラクモちゃんも思ったのん。……でも、なんかムキマさんが微妙な顔しとる。毒新くんが聞いたらね、「そりゃ、調べてもらえりゃ早えだろうし、確実だろうがよ。……手続きの方に時間がかかるぞ」だって。……そんなに長くかかるのん? ……早ければ三日くらいで行けるらしいよ。
……なるほど。急げば、ガバれ。ってやつですねえ。知ってる知ってる。
「──そんな時間、待てない! 今この時だって! シャーラが無事な保証はないんだ!」
「そうはおっしゃいますけれどね。がむしゃらに突っ走ってどうなるものでもないでしょう?」
「……ッ!」
「……ちと、熱くなりすぎてるな。休憩するか? “暴君”殿も腹減ったろ」
「ん。
……ね。聞いて」
「聞きますわ」
ん。ご飯いいね。ちょうどお腹減ってたのん。
……ところでムラクモちゃんね、お話聞いててなんとなぁーく思い出したことあるの。……確実じゃないよ。確実なお話しじゃないケドね。
“歌姫”ちゃんを追っかけて外国からやって来たマスコミ屋さんと最近お知り合いになったのん。……記事になるからってね、ムラクモちゃんに頼んで迷宮都市ダンジョンの、それも一番奥まで行きたいって言うような人たちだよ。……なんだか、ダンジョンなんかに詳しそうな感じするよね。
でも、“歌姫”の追っかけが本業みたいだし、普通に知らないかもしんない。どうなんだろうね。
……つって、こんなようなこと教えたげたの。……そしたらね、それだ! ってなっちゃった。「すぐ行こう! それ行こう!」って。じょーちゃんもね。「手続きだけやっても時間は余りますからね」って。
……え? ご飯……。
ちょ、引っ張らないでよぉ。行きます、行きますからぁ。……ひーん。
───
ててんがてんてこ、ててんてこー。
結論からお話ししますねぇ。マスコミ屋さんたちだケド……なな、なんと! ダンジョンのこと知ってたよぉ。
なんかねえ、別に有名ではないケド、無名でもないって感じのよくあるダンジョンの一つらしいよ。場所はねえ、帝国と法国とかってところの国境にあるみたい。
んで、情報提供感謝感謝ーっつってね。「“歌姫”のことなんだぞ! アテクシたちも連れてお行きんしゃいよ!」ってお仕事熱心なうじさんを華麗にスルーしつつ、しつつ。モノレールもどきに乗って二度目の帝国観光だよぉ。
んでんで、帝国の駅に着いたなら、なんか乗り物乗り継いで目的地ダンジョンへ。
その途中ねえ、なんかでっかい車もどきにご乗車しとる時だよ。
こう……道路の真ん中ら辺に全身真っ赤っかのおじさん立ち塞がってね。うおっ、あぶね! って感じに乗り物止まっちまったのん。キキー! ドンッ! ぴーぽーぱーぽー。先生……あの子は……助かるんですか!? ……残念ですが……ムラクモ即死です。がびーん!
おじさんね、なんかとっても半裸で、でっかいハンマー持っとるのん。
そんで「小賢しい人間共め! 貴様達の動き程度見破れぬと思うたか!?」っつってめっちゃ張り切りよる。……キャッ! 変質者!?
ん……どっからどう見たって人外なんだケドぉ、でもこの世界、改造人間もいるみたいだし。だからね、いちおう聞いてあげたのん。「貴公、人間なの? それともガチ人外?」つって。そしたら鼻で笑いおってねえ。
「笑止! 誇り高き魔族の我が人間だなどと──う! ギャアアアア!!」
そっかぁ。
つってね。首チョンパしてから、魔力圧縮でグチャグチャに消滅させてあげたよ。毒新くんの話じゃ、首刎ねたくらいじゃ生きて戻ってくるかもしんないっていうし、念には念をねぇ。最強は油断をしない! えっへん!
ふー。
一仕事終えたぜ。って思ってたらね、ムキマさんからひと言。「貴殿、あいつなんか情報持っとったんやない? 即死させんの短慮やない?」って。
……あ。すみません。
そんで、そっからは歩きだよ。
勇者・毒新くんのチャレンジダンジョンクエスト! パーティメンバーは古参幹部で戦士のムキマさんと笑顔と優しさが癒しの僧侶じょーちゃん。そしてちゃらんにぽらんなプリティ遊び人、ムラクモちゃんなのだぁ。……うーん、なんだか先行き不安な構成だ……。おもに遊び人。途中離脱とかしそう。なんか飽きてきて。なんつって。
山あり谷あり。修羅とあっては修羅を斬り、人外を見つけては根こそぎ千切り潰して進みます。なぁんてこったぁ。武士道とは……プリティと、見つけたり。
道中はね、まあ別に取り立てて語るようなことなかったかな。
なんかでっかい乗り物捨てられてたから拾って、ムラクモちゃんクリエイティブ発揮しちゃったり(名付けて聖剣・プリティ・カリバーン……プリティ・キャリバー……プリティキャリバー。いいね! プリティキャリバーにしよ。ないすねーみんぐ!)、キャンプファイヤーしたりね。たき火を囲んで旅の仲間とかたらい。……ちなみにムラクモちゃんは特に語ってないです。夜更かしって苦手なの。
他にも焦りに焦った毒新くんが短気を起こしてみたり、そんな彼をムキマさんがヨシヨシしたりねえ。あとね、念願のじょーちゃんと帝国観光楽しんだり。街じゃなくて灰と石ころだらけの荒野だけどねえ。まま、ええやろ。
……や、めっちゃ語っとるやんけ!
そんなこんなのこんなにも思い出いっぱい(当社比)!
ダンジョンの前にたどり着いたよ。……はぁ、はぁ。ようやくここまで来たぜ! 待ってろ魔王! 行くぜ! 飛ぶぜ! あいきゃんどりーむ! 俺たちの戦いはこれからだ! 完! ムラクモちゃん先生の次回作にご期待ください。
……。
……ラストダンジョン、決戦前夜だよ。今お昼だケド。
だからねえ、ムラクモちゃんから毒新くんに特別プレゼントあげる。……聖剣・プリティキャリバーだよ。……う、美しい……その上強大なエナジー感じる。勇者覚醒強化イベントだぁ! こぉんな素敵な武装ゲットできちゃうなんて……よかったねえ。この果報者♡
「……い、いやでもこれ。“暴君”さんが車メチャクチャにこねくり回したやつだよな? 今にもへし折れそうな棒切れにしか見えないんだが……」
「ん。でも強いよ」
「ぞ、造形センスがガッタガタだ……。ありゃ剣ってより干物だな」
「ちゃーちゃんなりにバドーさんのこと心配してるんですのよ。どうか受け取ってあげてくださいな」
失敬な言われようだなあ。じょーちゃん以外。……いいケドね。気にしてないケドね。真の芸術家とは常に孤独なものなのだ……。
でもこれ、本当にすっごく強いよ。なんたって、ムラクモちゃんの魔力を込めまくってるからねえ。……ただまあ、魔力を込めとるだけだからねえ。扱う技量ないと単なる棒切れになっちゃうだろうケド。
……見た限りだと、毒新くんにその技量はないかなって。……今はね。でも、最低限の性能を引き出す程度には基礎が身についてるっぽいから、まあ、ちょっとしたバフくらいにはなんじゃないかなって。
そんなようなこと教えてあげたんだケド、どういうわけか半信半疑ですよ、彼ら。何がご不満ですのん? ……え? そんなすごい武器にしては魔力を感じないって? そりゃそうだよぉ。外に漏れるような魔力あったら無駄遣いになるでしょ。ちゃんと圧縮して詰め込んでんだからねっ。
強化イベントも済んだところで、突入突入!
ここからがとんでもねえバトルの始まりですよってワケ!