無個性でヒーロー!? できらぁ! 作:にょわ
いや〜どこかで出てくると思ったんですけどね、無個性だけどフィジカルだけでちょー強い人。
だから、私がなります。
私は、あいつがキライだった。
「無個性」を理由にまともな努力もせず、ただヒーローになりたいなどと夢想する。
「ヒーローになる」なんて口にする暇があったら1秒でも長く訓練をつめってんだ。
「やってみなきゃわかんない」? ハッ、馬鹿かあんたは。
そーゆーのはちゃんと頑張ってる奴がいう言葉なんだよ。
ただまあ、1つだけ凄いと思うところもある。
それはあのヒーローノート。
今のご時世まさに星の数ほどいるヒーローを1人1人分析し、特徴をまとめる。
みんなはそれを「キモオタ乙」と一蹴するけれど、そんな一言で済ませていいことじゃない。
それは、賞賛に値する「努力」だと思う。
だけど、あいつはその努力の結晶を燃やされ、捨てられ、踏みにじられてもまったく言い返さない。
どうしてあいつは、自分のしたことを穢されて泣き寝入りできるんだろう。
だからやっぱり、私はあいつがキライだった。
こんなやつがヒーローになんてなれるわけないとも思っていた。
地味だし、カッコ悪いし、地味だし、女々しいし、地味だし、あと地味だし。
だけど……だけど、
「SMAASH!!!!!!」
あの瞬間、不覚にも私は、あいつをカッコいいと思ってしまった。
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ある時、中国で光る赤子が発見された。というニュースが世界中を駆け巡った。
以後、各地で「超常」が発見され、いつからかその「超常」は「個性」と名付けられた。
これは、そんな個性豊かな世界を生きる、「無個性」で個性的な少女の話である。
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朝、先生が教壇に上がるといつになく真剣な表情でこんなことを語り出した。
「さてお前ら、お前らはもう3年になったということで……そろそろ進路のことを、真剣に考えなきゃいけないと思う」
生徒のだれかが、ゴクリと生唾を飲み込む。
「そこでだ! お前らにはこれから進路希望調査を書いてもらうんだが…………まぁ全員ヒーロー科志望だよなー」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」
先生の声に続き、多数の生徒が雄叫びを上げながらそれぞれの個性を発動させた。
あるものは手を岩でまったく包み、あるものは髪の毛を尖らせ、そしてあるものは目玉を飛び出させた。……え、最後のやつキモ、キッモ。めっちゃ目ぇデローンってなってる。キモ。
そんなみんなの様子を尻目に見ながら、かちゃかちゃと目の前のブツを弄くり回す。
「んー、ここはもうちょいこうした方が……ん?」
ふと目を上げると、幼馴染Aこと爆豪がなんか面白い感じに固まってた。
え、なにあれおもしろ、写メっとくか。パシャりんこっと。
ちょうど連写し終わったくらいのとこで、クラスを爆笑の渦が包んだ。
どうやら爆豪が雄英を受けるって話をしてすげーってなってるとこに先生が爆弾を落としたらしい。
幼馴染Bこと緑谷通称デクも雄英を受けるという爆弾を。あと私。
あーそりゃ笑うわ、うん。
「なんで没個性どころか無個性のてめぇが俺と同じ土俵に立ったんだ⁉︎」
うっわ爆豪こわ。ヤンキーじゃん完全に。
「おい、なに他人事みてーな顔したんだ? おい、おめーもだよ!」
「おりょ? 私?」
なんかこっちに話が来たっぽいので付き合ってあげよう。
「あぁそうだよ! 無個性コンビが身の程わきまえず雄英受けるとか喚きやがって! 調子のってんじゃねーよ!!」
「はぁ……私はそっちのデクと違ってちゃんと受かる確信をもって受けるので、ありがたーい助言は結構」
「あぁ⁉︎ なにがどうなったら無個性が受かるっつーんだよ⁉︎」
「なぜってそりゃあ……」
あ、遅れながら自己紹介。
私は
趣味はトレーニング、勉強、そして……。
「自作サポートアイテムの使用許可、取ってきたからね」
発明!
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それから1年間、トレーニングをしたり発明したり作ったアイテムの実験をしたり、あともちろん受験勉強をしたりして過ごした。
そして今日は、待ちに待った受験当日‼︎
これからこの学校に通うことになると思うと、ドキドキするよね!
ん? 落ちるとかは考えてないのかだって?
そりゃあ怖くないと言えば嘘になるけど、自分は受かる! と思っていかないといけるもんもいけなくなっちゃうし、なにより緊張で死ねるから。
だからこうして自信をみなぎらせて自身を奮い立たせているわけなんだよ。
あ、今のは自信と自身を掛けたダジャレだよ、HAHAHAさすが私。こんな状況でも小粋なジョークでユーモアを忘れないなんて。
そんなバカなことを考えていると、前の方に緑色のもさもさ頭が見えた。
あれはもしかしなくてもデクくんじゃん。
んー、でもなんかいつもと雰囲気が違う気が……。
男子3日会わされは……ってやつ?
「やっほーデクー」
「あ、架沙音。おはよう」
「なんか今日いつと違くない? やっぱきんちょーしてるの?」
「う、うん……そうかも知れない」
んーーー、なんとなくだけどそれだけじゃない気がする……なんというか、 こう、自身に自信を持ててる感じ?
あ、ちなみに今のもあっはい2回目だし飽きましたかそうですか。
「…………まーいっか……うん、今日のデクはちょっとカッコいいかも」
「ふぇっ⁉︎ かかか架沙音どういうことそれ⁉︎」
あらら真っ赤っかになっちゃって。
「ふふ、なんでもないよーっと」
「ね、ねぇってば⁉︎」
照れ照れなデクを背後に控え、たったかたったか歩いていると、今度は爆豪と遭遇した。
「ちっ、ホントに受験したのかよ無個性コンビ」
「そっちこそ、よくメディアを振り切れたね? ヘドロ君?」
「あ"?」
「お?」
「ちょ、ちょっとやめてよ2人とも!」
爆豪がケンカふっかけてきてそれを私が買ってデクがあたふたしながら止める。私達が3人揃うといつもこれだ。何回やっても飽きない楽しさ、プライスレス。
「うるさいぞ君たち……!」
私達がギャースカギャースカ喚いてると、なんか全体的に四角い男子がギロッと睨みながら注意してきた。
「はぁ、へーへーわかりましたよーっと」
「はぁ⁉︎ まだ試験も始まってねーんだから別に俺らの自由だろうがよ!」
大人しく矛を収めた私と違って爆豪はまだ食ってかかった。
あーあー、あーゆう風紀委員会タイプは反抗するといつまでもグチグチ言ってくるからめんどくさいだけなのに。
そしてその後、やはり私の予想通り説教タイムが始まるのであった……
「君もだぞ! そこの君!!」
「へ⁉︎ 私も⁉︎」
うへぇ、巻き添え食らった……ダルいなぁ。
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てきとーに風紀委員の説教を聞き流しながらそれとなく人が多いところへ向かい、彼を撒く。悪いな風紀委員、君はなにも悪くないがめんどいのでさよならだ。
そのまますすすーっとホールへ向かい、自分の受験番号が書いてある席に座った。
持ってきたサポートアイテム……いや私にとってはメインアイテム? だけどまぁとにかくそれの点検とかをしつつ時間が過ぎるのを待っていると、幼馴染コンビがやってきた。
「おいてめぇ架沙音! 俺らおいて逃げてんじゃねぇよ!」
「えー、そもそもあそこでつっかかった爆豪が悪いんじゃん。私まで巻き込まないでよ」
「はぁ⁉︎ お前がうるせぇからだろうが!」
「は?」
「あ"?」
「もう2人とも! また怒られちゃうってば……」
あーそれはダルい。しゃーなし、静かにしてあげよう。
お口をチャックしながらアイテムのチェックを続けていると、突然ホールが暗転し、一点にスポットライトが当たった。
そしてそのライトを一身に受けるのは、プロヒーロー「プレゼントマイク」だった。
『今日は俺のライブへようこそ! エビバディセイヘイ!!」
「ヨーコソー!!」
シーン.......そんな擬音が聞こえてくるほど静まり返るホール内。
あり、反射的に返事をしたけどもしかしなくても私だけ? え、やば、はず。
『オーケーガール! いい反応だ! 元気な返事、ありがとう!』
「……ハッ!」
「っ、うっさいやい」
隣から心底バカにしたような声が聞こえてきてイラっとする。でもうわ、うわ、はっず、マジで恥ずかし。
そこからは特に事件もなく、説明は滞りなく終わった。
いっぱいロボ倒せってさ、ちょろいもんだね!
あ、でもひとつだけ。なぜか私とデクは同じ会場だった。なぜ? 同中一緒にする??? かっちゃんだけハブられてたのはウケたけど。
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到着、試験会場。
いや町。なに、なんで敷地内に町があるの? 雄英マジハンパねぇ……。
とにかく、敵を倒してポイントを稼ぐタイプらしいから、大事なのはスタートダッシュだよね。
だったら最初に使うのは……これとこれかな。
ズボンのポケットからラベルの貼ってあるカプセルを3個取り出し、目の前に投げる。
ちなみに書いてあるのは「跳ぶ:上」「滑る:空」「撃つ:氷」の3つだ。
すると、落下の衝撃でカプセルが開いて靴と棒と銃が出てきた。
丁度それを履いて、持って、腰に付けたところでプレゼントマイクの声が聞こえた。
『ハイスタート!!』
グットタイミング! ゴーグルをつけてから前方に軽くジャンプする。
「あいきゃん……」
そして両足を揃えた着地した瞬間、私の体は物凄い勢いで空中に弾き出された。
「ふらーーーーーーーーーい!!!」
今使ったのはまぁ簡単に言うとすごい高くジャンプが出来る靴で、名付けるとしたら「ホップジャンプ」かな。この靴を履いた状態で高さ10cm以上から足を下ろすと、地面にこの靴のソールが触れた瞬間に空気、爆破、磁力、重力などいろんな要素が一気に放出されて地面と物凄い勢いで反発する。ちなみに使い切り。
stepって片足着地じゃん? それをすると片足がもげてロケット団のごとく空まで吹っ飛んでいくんだよね。だから「ホップジャンプ」。
ただこのアイテム1つだけ……いや欠点はやまのようにあるんだけどまあとにかくマズイことがあるのだ。
さっきは勢いでI can fly! なんて叫んじゃったけど、所詮これはjumpでしかないわけで、つまりなにがいいたいかというと……
「ん、そろそろかな」
上方向のチカラがなくなれば、ふつうに落ちる。
「うひゃーーーーー!」
何回やってもこれは死ぬほどこわいいいいい!
落ち着いて、落ち着いて……もうちょっと速度をつけて……今!
手に握りしめていた棒のスイッチを押し、ジョイント部分をキュッと捻る。
すると棒がガッチャンガッチャン変形をして、グライダーの形を作った。
これはもうそのまんま「折りたたみ式グライダー」かな。
みなさんも、高さ数百メートルから落下するっていうのはよくありますよね? そんなときにはこれ。これがあれば大空を滑空し、落下の衝撃から逃れることができます。一家に一台、折りたたみ式グライダー。プライスレス。
しかし、こいつにもやっぱり欠点はある。
それは、一定以上の速度が出ている状態で何も考えず着地をすると死ぬことだ。
でもまぁ当然だよね。グライダーってのは下への運動エネルギーを横向きに変えてるだけなんだから。
高速道路を走ってる車から突然降りたら死ぬでしょ? それと同じだよ。
そのため私は高さ25m程で早々に離脱をし、落下地点めがけて「粘着」カプセルを1個と「ふわふわ」カプセルを4個投げた。
それらが地面に触れた瞬間ふわっふわでもっふもふででっかでかなクッションが4車線道路いっぱいに広がった。
そこに私は丸まりながらダイビング! ふわふわに身を委ねる。
これが私の編み出した障害物を全部無視できる最強移動術! どうだ!
え、なに? 危険が多すぎるからダメ?
私は何も聞いてない。この移動方は最強、異論は認める。
だって実際こうして誰よりもはやく中心地にたどり着けたわけですし。
『グギャギャ、ニンゲンキタ! コロセ!』
そこら中からロボの声が聞こえてくる。
え、口悪っ。雄英のロボ口悪っ。
そんな悪い子にはー……SF作品とかで必ずと言っていいほど出てくる定番中の定番、「冷凍光線銃」でお仕置きだー!
効果は単純明快、この銃からでる光線に当たると凍る。
そう、光線なのだ。つまり速度は光速。予測可能回避不能防御不能の最強銃である。
しかもその光線はトリガーを押している間で続ける。
トリガーを押し続けた場合1秒しか保たないっていうコスパ最悪銃でもあるのだ。
だけど安心して欲しい。この日のためにこれを18丁作ってきた。
「ヒャッハー汚物は消毒だーーー!!」
周囲にいた十数体のロボ〜ズは全滅した。
なおこれをするために4丁消費した。
うーんちょっと今のは無駄が多かったな……オーバーキルしすぎた。
ま、最悪これが尽きてもまだまだ武器はあるんだ。大盤振る舞いで行こうか!
□■□■□■□
そんなこんなで千切っては投げ千切っては投げを繰り返していると、見慣れた後ろ姿が見えた。
「やっほーデク、調子はどう?」
今朝のデクはなんとなくいい感じだったからやっぱうまくいってるのかなーなんて思っていたけれど、結果は残念なものだった。
「あ……架沙音……」
こちらを振り向いたその姿はひどく弱々しく、いつもの私が嫌いなあいつに逆戻りしていた。
「……はぁ、まーそんなもんだよね」
もう興味をなくした。なにかここを受かれる秘策みたいなのがあるのかと期待してたけれど、この様子じゃなにもなさそうだ。もしかして本当に記念受験だったの? こいつ。
「じゃ、私もラストスパートかけるから。邪魔して悪かったね」
「あ、待って……」
「それじゃ」
なにかあいつが言っているけれど振り返ることなくその場を後にする。
もうこいつと会うことはないだろう。やっぱり所詮、爆豪の言う通りクソナードだったのか。
私はこの時、緑谷出久という少年への興味を、愛着を、完全に失った。有り体にいえば失望したのだ。
だけどこの後、私はこいつへの評価を180度とまではいかずともガラッと変えることになる。
もうすぐあいつの視界から消える、というところで超巨大なロボが姿を現したのだ。
その姿を見た瞬間、数多の受験生達が一目散に逃げ出した。
これが恐らく先程プレゼントマイクが言っていた
私は彼らと同じように逃げの手を選ぼうとした。
倒すことはできなくもないけど、あれを倒すにはいくつも貴重なアイテムを 消費しなくちゃいけなくて、おまけにリターンはゼロと来た。倒す気がしないのも当然だろう。
しかしその中で、ドジな受験生が転んで逃げ遅れた。
そこに迫る
あーあ、かわいそうに。試験もラストスパートなのにここで脱落なんて。
まー先生達が助けてくれるだろうから死にはしないだろうけど、受験には落ちるかもね。
そんなことを考えながら撤退していたら、予想だにしていなかったことが起こった。
あいつが、デクが、
そこで私はハッとした。
なにがヒーロー志望だ。なにが先生が助けてくれるだろうだ。
目の前で倒れてる人がいたら、助けるのがヒーローじゃないか。
「SMAASH!!!!!」
なにが失望だ。なにが興味を失っただ。
.......なにが、ヒーローになれるわけがないだ。
少なくともこの中では、ヒーローだった。
デクだけが、ヒーローだった。
「カッコいいな……」
自分でも無意識に、そんな言葉が溢れた。
落ちてきたデクは右腕と両足がグチャグチャになっていて、そんな代償を払 って1人の少女を救ったヒーローは、そのまま意識を失った。
そしてその直後、試験終了を知らせるアナウンスが鳴り響いた。