無個性でヒーロー!? できらぁ!   作:にょわ

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 ちょっと消化するには早かったかもしれない話題が出てきます。後で後悔するかも、というかしそう。


展開式装着型戦術機構・武装戦姫

「う、うぅ……ぐす、ひぐ……」

 

 控室のすみっこに座り込み、床に"の"の字を書き続ける少女がいた。

 極限まで丸められた背中は実体以上に小さく見え、さらに首元からは『私は問題発言を繰り返した挙句あっけなくわからせられたよわよわメスガキです』と書かれたプラカードを下げるという、哀愁が漂いまくっている彼女は誰か……。

 ――そう、私である。

 

「「「だーーーっはっはっはっはっは!!」」」

 

 電気、物間、かっちゃん、お前らマジ覚えとけよ……!

 

 第一種目、障害物競走のゴール20m前でかっちゃんのヤケクソハウザーによって墜ちた天使(エンジェル)となった私は数度地雷の連鎖爆発によりバウンドし、なんとか体勢を立て直してゴールへ発射されることで完走するも、その頃には先頭集団は全員ゴールテープを切り終わっていたという結果に終わってしまった。

 あえなく私は7位……いいもん、所詮第一、第二種目は前座みたいなもんだからいいもん。最終的に1位になればいいんだもん。もんもんもん。

 

 そんなことより! 私を笑いやがった三人(カス共)をまずは泣かす!

 

「ていうか電気ぃ! 開幕のアレはなにさ! あんな啖呵切ってあっさり凍結されちゃってさぁ! それに最後も! 隣にヤオモモいたんだからアースだしてもらうなりなんなりショート対策できたよねぇ! 後で補習!」

「ぐっ」

 

「物間くんはさぁ! 結局レース中一回も姿見なかったけど! どこで何やってたのかなぁ! 足りてないんじゃないのかなぁウルトラぁ!」

「ふぐぅっ(27位)」

 

「かっっっちゃん!! 私の妨害に目ぇ眩んで順位落としててダッサー! なんもしなけりゃ2位だったのに妨害成功して5位って!ダッッッサーー!」

「っせぇわボケ!」

 

 ふん。正当な報いだ。ばーかばーか。

 

「争いは同じレベルでしか発生しないっつうけどさぁ」

「ふっ、同じ穴の狢」

 

 おい聞こえてるぞ切島常闇。

 

 っとと、戯れもここら辺にして、今は第二種目のことを考えないと。

 30分後に始まる第二種目は"騎馬戦"。第一種目の順位に応じて異なるポイントが付与された鉢巻を最終的に保持できた総ポイントで順位が決まるというものらしい。うん、まだ変じゃない。

 騎馬は2~4名で組み、全員のPの合計がチームでの初期Pとなる。まだ大丈夫。

 30分経過時点での合計P順で決まり、上位16名が決勝進出。最小4チームから(まずないけど)最大8チームが勝ち残りとなる。以上!

 あれ? なにも突っ込みどころ無く説明が終わっちゃったぞと思ったのも束の間。

 

 ……そう、おかしいのはルールではない。そのポイントだ。

 第一種目(よせん)突破者45/220名のハチマキは下から5Pずつ増えていき、45位は5P、10位では180P、2位は220P、つまり1位は……そう、1000万Pである。

 いやなんでだよ! 定番だけど!!

 

 ま、そうなってくるとむしろ1位じゃなくてよかったかもしれない。

 過剰火力では無い(失格にならない範囲で)広範囲殲滅のできる轟、機動力に優れ空に飛んで避難もできるかっちゃんはともかく、火力が強すぎて気軽に個性を人に撃てないデクや現状ただのスーパー一般人である私が一位だったらちょっと流石に厳しかったかもしれない。

 多分A組以外のほぼ全員が開幕で(1000万P)に殺到するだろうし、轟はそれを圧殺するだろう。そこでかちんこちんになった敵チーム達からハチマキを奪っていけば決勝進出は確実……。

 

 いや、それは雑魚の思考だ。

 

 折角の晴れ舞台、かっちゃんじゃあるまいしそんなみみっちい戦法じゃ面白くないよねぇ!

 そうと決まれば!

 

 ここにいる45名の内、21人はヒーロー科。

 わずか4名のそれ以外の生徒の1人である、私に勝るとも劣らない天才美少女……発目明(・・・)に手を伸ばす。

 

「明ちゃん!! 私達2人で、ハチマキ全部取ろう!」

「…………えぇ!」

 

 あはっ! やっぱりその未知への期待でいっぱいのキラキラした目、大好きだ!

 

 待ってろよ轟! 今度はそっちが追われる番だからね! あとついでにかっちゃんも! 第一種目の落とし前は死んでも付けさせる!!

 

□■□■□■□

 

『待たせたなァリスナー諸君! 作戦タイム終&了! 第二種目騎馬戦! はじめっぞぉぉぉぉぉ!!』

「「「ワァァァァァァ!!」」」

 

 ついにやってきた第二種目、広大なスタジアムほぼ全域が競技範囲という広すぎるフィールドの元、選ばれし45名が騎馬の組ごとに少し離れて居並ぶ。

 会場の大歓声を受けながら客席に目をやると、観客席の最前辺りを埋め尽くす負け犬達(予選敗退者)。数人は悔しそうにしているが、ほとんどの人間が自分が負けたことも気にせず全力で、むしろ気楽にお祭りモードに入っているのが目に入った。

 ったく、その程度の気概で私達相手にあんなイキり立ってたってマジ? そんなんだからできないんだよウルトラ。

 

『倍率約5倍! 狭き門を潜り抜けた強者たちが繰り広げる、血で血を洗う騎馬デスマッチがいま、始まろうとしているぅぅ!』

 

 あの人ずっと過激すぎない? 大丈夫? 教育委員会とかから苦情こない??

 

『全12チームの内、注目の騎馬を紹介していくゼ! まずはこいつら! 騎馬に八百万、上鳴、麗日を据えた、チーム緑谷ぁぁぁ! 総ポイント850P!』

『第一種目での協力プレイは見事だった。個性の対応力も高く、なんでもありのこの競技であのチームワークはかなり強力な武器になるだろう』

 

 やっぱあそこはまた組んでくるよね……ヤオモモと上鳴の組み合わせがまじで強いんだよね。足りない頭も補えるし。そこに機動力も妨害もとどめもなんでもござれなお茶子ちゃんに突破力のデク、総合力ならあそこが一番じゃないの?

 

『続いては"ハード&ロック"! 圧倒的"漢"! な三人を支える紅一点! 攻撃は最大の防御! 瀬呂、耳郎、切島が運ぶは核弾頭! チーム爆豪ぅぅぅ! 総ポイント570P!』

『背後への牽制と索敵を耳郎に一任し、他三人でひたすら殲滅……重戦車みたいなパーティだな。しかも砲門(爆豪)は飛んでくる。一瞬でも気を抜いたらどんなチームも耐えられないだろう』

 

 うっわなにあれ厄介だな。ぶちかましは切島が絶対に耐えるし、近距離戦はしたくない。でも距離を取ると響香ちゃんのスタンと瀬呂の拘束が飛んでくる。捕まればかっちゃんがかっとんできて「ちゃんちゃん☆」だ。嫌すぎる。

 

『そしてこいつを忘れちゃあいけないよなぁ! 開会式で散々煽り、ソッコーわからせられた打たれた出る杭! 逆襲なるか! 騎馬にサポート科発目……え、だけ??? 肩車してる??? あ、あーー……架沙音・発目ペアぁぁぁ!! 総ポイント420P!』

『女子二人で騎馬として成り立つのか? と思うが、この二人はパワーローダー先生お墨付きのサポートアイテム開発の天才だ。間違いなく何かはあるんだろうな』

 

 第一種目で10位以内入賞者を抱えたチームの中では総合ポイントぶっちぎり最下位、しかもペア! さらに無個性&サポート科!

 辺りの声に耳を澄ましても、聞こえてくるのは他チームへの対策をどうするかという話題のみ、私達は警戒すらされていない……。

 ははっ! 逆境だねぇ架沙音未来! ゾクゾクする(・・・・・・)

 

 自分で言うのもなんだけど、10年間絶やさなかった鍛錬と強力なサポートアイテムのおかげで、私はかなり強くなった、と思う。それこそ日本一のヒーロー養成機関に主席入学できちゃうくらいには。

 だから、忘れてたんだ。私の原点を。

 さっき明ちゃんを誘って二人っきりでペアを組もうと誘った時……やっと、思い出した。始まりの激情()を。

 私の原点(オリジン)! ここまで努力を続けられた理由!

 

『最後に紹介するのは第1種目堂々の1位! 1000万ポイントをひっさげてやってきたぞォ! 時間いっぱいハチマキを守りぬけるのか! 騎馬常闇、飯田、芦戸! チーーーム・轟ィィィ!!!』

 

 反骨心(・・・)

 

 無個性ってわかった時、お医者さんに「可哀そう」と言われたことに腹が立った。

 鍛錬を続ける私に先生がくれた「いつも頑張ってて偉いね」という称賛の裏に見え隠れする哀れみに腹が立った。

 お父さんお母さんが私の居ない所で言っていた「今は好きにさせてあげましょう」という優しさに腹が立った。

 

『さぁ準備はいいか有精卵共! できてなくても待たねぇけどな! さぁ第二種目! 騎馬戦!』

 

 "個性が強い"、それだけの理由で威張り散らかす幼馴染(爆豪勝己)に腹が立った。

 "個性が無い"、それだけの理由で夢から逃げ続ける幼馴染(緑谷出久)に腹が立った。

 

 口では立派なことを喚いても、結局自分勝手なエゴでしか動けない私自身(架沙音未来)に、腹が立った。

 

『スタートォォォ!!』

 

「明ちゃん!!」

「えぇ!!」

 

 明ちゃんが取り出したカプセルを足元に投げると、真っ黒なスーツケースが現れる。

 

 視界の端では有象無象が轟に突っ込み、纏めて氷漬けにされている。知ったことか。

 

「「システム・オン! ドレスアップ!」」

 

 声紋認識が発動し、スーツケースはガッチョンガッチョンと展開されていく。

 気が付けば"黒"は私たち二人を包み込んで球体を象り、一瞬の静寂……次の瞬間、黒球は内側からはじけ飛び、巨大な漆黒のドレスを身に纏った私……に肩車をされる明ちゃんが現れた。

 みんなは覚えてる? 雄英入学より前から明ちゃんと一緒に共同開発していたサポートアイテムのこと! これがその完成品ってワケ!

 イメージとしてはあれだよ、女性演歌歌手。あのド派手な衣装みたいな感じだ。

 ふっふっふっ、しかもこのドレス……おっと訂正。

 

「武装戦姫! 着装!」

「コード・アラクネ! 『天地無双』!!」

 

 武装戦姫シリーズ(・・・・)・『天地無双』はただのドレスと違うところが山ほどある。

 まず目に入るのは、広がるスカートの中から覗く8本の脚(・・・・)だろう。

 

『な、っっんだあれぇぇぇぇ!! いつのまにここは紅白歌合戦の会場になったんだぁぁぁぁ!?!? 架沙音・発目ペアが謎のサポートアイテムを身に纏うぅぅ!!』

「「「か、カッケーーーー!!!」」」

 

 戦場の男子の内、約9割の目がこちらに向き、キランキランに輝かせながら大合唱。

 ふっふっふ! そうだろうそうだろう! どーだ私達のドッ可愛いベイビーは!

 ていうかさぁモブ君たちぃ!

 

「よそ見してんじゃねぇぞボケぇ!」

「なっ!? ぐわぁ!」

 

 来るよ? 戦車が。

 

「私達も行くよ!」

「えぇ!」

 

 8本の脚を弛ませ、大きく跳躍! しかもここで終わりじゃあないよ!

 

『と、飛んだぁぁぁぁ!? 8本の脚の先端から炎を吹き出し、大空を舞い踊る! って今度はビームぅ!? あの脚なんでもアリかよおい! 蜘蛛だけどな!』

『あのアイテムは俺も初めて見る……あいつがクラスメイトにすら見せなかった切り札ってわけか』

 

 8本の脚は多機能マニピュレーターになっており、多脚による環境を選ばない踏破性能、ジェット噴射による飛行性能、そしてレーザーによる攻撃性能……これらを駆使しどんな環境でもこちら側の有利を押し付ける……それがこの『天地無双』のコンセプトだ。

 脚の先端からビームを飛ばし、体勢を崩したところで頭上の明ちゃんが"BUN鳥餅銃(ぶんどりもちガン)"という超ひっつく鳥もちを発射し、それを巻き取ることで武装解除を狙うアイテムでハチマキを奪う。このコンボだけで既に3つのハチマキを獲得した。え? 私? 私はほら、明ちゃん肩車してて両手ふさがってるから。いやこれちょっと危ないな。ちょっと体勢変えるか。

 

「明ちゃん、肩車流石にかも! 一瞬トばすよ!」

「えぇ、カッコよくお願いします!」

「もち……ろん!」

 

 上空で明ちゃんを投げ上げ、急旋回、ついでに明ちゃんの三半規管を考慮してできなかった高速スピンで全方向へレーザーを飛ばす!

 両手に持ったBUN鳥餅銃でハチマキを乱獲しながら落ちてくる明ちゃんを……キャッチ! お姫様抱っこへフォルムチェンジ!

 私達の魅せプレイに客席からワァッと歓声が上がった。ん~~~気持ちい!!

 

『つーかあいつ自分でサポートアイテム禁止って縛ってなかったか!? いや別に勝手に言ってるだけだから破ってもなんかある訳じゃねえけどな!』

『あれはどちらもペアである発目明が持ち込んだアイテムだな。とはいえ普通ならあそこまで大がかりなアイテムは身に着ける、または手に持てる分だけ(持ち込み制限)に引っかかって無理なはずだが……そこであいつがいつも使ってるカプセルか』

『カプセルぅ?』

 

『説明しましょう!!』

 

 いつのまにかヘッドセットのようなものを耳に着けた明ちゃんがしゃべると、スカートの一部から展開したスピーカーによって増幅された声が会場に響く。

 うわびっくりした! 明ちゃん!?

 

『知ってんのか発目ェ!?』

『いやそりゃ知ってるだろ、使ってんだから』

 

 仲良し先生ズによる茶番は置いておいて、明ちゃんは私のコンプレス・システム、そしてこの武装戦姫シリーズ・『天地無双』のプレゼンを始めた。

 ……しかもちゃんと次々ハチマキを奪いながら。この子ポテンシャルすごいな!? ヒーローなれるよ!? 絶対!

 ちなみにさっき当たり前のようにスピーカーが出現したけど、あれは災害救助用の機能の一つ。

 この『天地無双』はこれでも(・・・・)戦闘というよりは救援を主目的としてつくられた形態で、この踏破性能でどのような場所にも救助へ迎えるというのがそもそもの着想なのだ。なので災害救助に必用そうな機能はひととおり搭載されており、スピーカーは遠くの要救助者に声を届けるため、同時に展開できる収音機はどんな小さなレスポンスも聞き逃さないため。我ながら傑作と自信をもって言える出来になっている。

 

『さて、皆さん……そろそろ気になっているんじゃないですか? モード(・・・)・アラクネということは……?』

 

 おっと、丁度いいところに。

 やるんだね? と胸元の明ちゃんを見ると、こくんと頷き返してきた。

 よーしおっけい! いっくぞーー!

 

『勿論しますとも! 変身(・・)! ……あっ次のモードにはスピーカーはありませんのでこれにてプレゼンは終わります。ご興味のある方は雄英高校パワーローダー先生まで!』

『オーケイありがとう発目リスナー! ……いやあいつホントにサポート科か??? いくら回避は相方に一任してるとはいえ、喋りながらカメラ見ながらアイテムの説明しながらバッチリハチマキ奪ってってんぞ???』

『マルチタスクの極地……並列思考ってやつだろうな。とはいえあそこまで多くの事を同時にこなせるやつは見た事ないが』

 

 ふっふーん! どーだ見たか!

 

「未来さん! お願いします!」

「お願いされた! ドレスチェンジ! 武装戦姫! 転装!」

 

 転装コードの発令と共に、ドレスが解けまた"黒"の集合へと戻る。

 ちなみにこの黒い液体自体は実は装備とは関係なく、ただの変身隠しの為のものだったりする。

 だって服の形を取る以上、丸見えじゃ放送事故が起こりかねないからね!

 水銀を磁場で操作しているこの暗幕の内側で、がっちょんがっちょんパーツを組み替えているのだ。

 

「コード・クロウ! 八咫烏(ヤタガラス)!」

 

 変身が終わり、暗幕が解ける。

 さぁ2フォーム目! とくと見よ!

 

『飛行形態だァァァ! カッケェぇぇぇ!』

「や、八咫烏だとっっ!?!?」

 

 全長3mはあった『天地無双』とは打って変わって大量のパーツは高密度に折り畳まれ、アーマーとして身に纏う形で身体の各パーツに装備する。

 両腕は翼を模したパーツにすっぽりと覆われ、常時ブースターにより発生している浮力は羽ばたきにより何倍にも跳ね上がる。

 ほとんどのパーツが用いられた脚部装甲は蹴りの威力を極限まで高めるために動きをサポートする程度の大腿部と比べて膝下に集中しており、幾重にも重ねられた装甲により圧倒的な防御力を兼ね備える。

 そして何よりの特徴は腰下から生えたマニピュレーター(第3の足)だろう。尾白くんの個性を参考に設計したマニピュレーターは意のままに動き、先端のアームでものを掴むこともしならせて打ち付けることも自由自在だ。……そして隠された第三の機能は……おっとこれはまだ秘密だったね!

 今はこのマニピュレーターで明ちゃんを掴んで浮いており、わたしから吊り下げられているような形だ。

 

 そしてカラス繋がりだからか常闇くんがバッって振り向いたね、かわいい。

 

「ふっ、カッコイイな! 我が(ともがら)よ!」

「でっしょー常闇くん!」

 

 やっぱり親近感感じるのかな〜カラス。

 ま、闇、夜の化身としてのカラスと私の八咫烏じゃルーツが違うと言うか、むしろ正反対というか……折角だから見せてあげよっか!

 

「明ちゃん、アレお願い」

「了解しました、ご武運を」

 

 よし、明ちゃんに作戦も伝えられたし、準備完了!

 

「轟ぃ!」

「なんだ!」

 

 波状攻撃のように迫る多種多様な攻撃を捌きながら、律儀にも返事を返した轟にふっと微笑みを……いや、にやっと挑戦的な笑みを浮かべ

、両腕は翼になっており指をさせないため顎をクイッとやって頭を示す。

 

「頭、守っときなよ」

「は?」

「【綺羅星】」

 

 瞬間、轟の方へ向けた両脚の先端が発光し、世界を白が塗り潰す。

 そも八咫烏とは、地獄(地の底)より出でし太陽《天》の化身。3本の足を持つ神の分霊。

 だから同じ鴉でも常闇くんの黒影(ダークシャドウ)とは対極であり、相性は最高!

 そしてぇ!

 

「【箒星】」

 

 世界に白の残像が残る中、私は一筋の流星と化す。

 『八咫烏』は、私側の設計上の都合(個人的な趣味)(っぱ足三本あるんだからさ! 蹴り技特化じゃない!?)と明ちゃん側の設計上の都合(個人的な趣味)(じゃあ速度以外は全て削ってもっと尖らせましょう! 両腕を機動力補助のためだけに捨てます!)により、圧倒的な機動力による遠距離からの超至近距離戦を繰り返すヒットアンドアウェイに特化した性能となっている。

 つまり……。

 

「くっ……かはっ!」

 

 轟の頭部に、蹴りが炸裂する。

 100mなんて、0距離も同然ってワケ!

 私の宣言で当たりをつけたのかブースターの駆動音で察知したのかギリギリで頭と脚の間に腕を潜り込ませてきたのはびっくりしたけど、その程度クッションにすらなりはしない!

 ガードの上から蹴りを叩き込み、轟が体勢を大きく崩す。

 

「1000万P、いただきます!」

「っ!? 発目!? 」

「させ……ないっ!」

 

 そこを狙い、元いた場所にジェットパックで浮遊する明ちゃんがBUN鳥餅銃を発射するも、飯田くんが全員を抱えてほんの僅かに位置をずらし、芦戸の酸が飛来する餅を溶かすことでそれを防ぐ。

 ……だが、ここまで想定内。

 

「そっち見てる余裕、あるのかなぁ!」

「なっ、しまっ!」

 

 両腕が塞がれている私にハチマキを取られることはないと、無意識に選択肢から外してしまったのかもしれないけど、残念でした!

 明ちゃんがあそこに居るということは、第3の足がフリーになるってこと!

 

『一瞬の攻防!! 1000万Pが、ついに王者轟の手から移動したァァァァァ!!!!』

 

 やっっったーーー!! 初見殺しの一発限りではあるけど、取ってやったぞーーーー!!

 っとと、早く脱出しないと。氷でドーム作られて出口塞がれたら困る。

 

「じゃ、みんな、こんなとこで負けないでよ。がんばれ」

「くそっ、待て!」

 

 誰が待つかとスラスターをフカし、明ちゃんの元へ戻る。ふふ、めっちゃ手ぶんぶん振ってて可愛い。

 あっやばい茨の蔓みたいなのが明ちゃんの死角から迫って……!

 

「見えてるんだよ! 物間くん(・・・・)!」

「ちぃっ」

 

 ま、余裕で間に合うんだけどね!

 明ちゃんに負荷がかからないギリギリの速度でキャッチし、高度を上げて避難する。

 

「さっきはナイスアシスト! 超好き大好き愛してる!」

「未来さんもいい暴れっぷりでした! ベイビーちゃんの喜ぶ声が聞こえてくるようです!」

 

 さて、イチャつくのもほどほどに眼科を見下ろすと……あははっ! どこ向いても誰かと目が合うじゃん! さっきまでは誰も見てなかった癖に!

 

 いいねいいねまだまだこれから!

 奪われた王冠は私の手に戻ってきた……さぁ! 第2ラウンド開始と行こうか!




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