無個性でヒーロー!? できらぁ!   作:にょわ

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でんじろはいいぞおじさん「でんじろはいいぞ」


親友と書いて!戦友と読む!!

「女子~ズでチア?」

 

 明ちゃんと2人でご飯を食べていると、やってきたA組バカ代表、電気&峰田がやってきてそんなことを宣った。

 氏曰く、相澤先生からの伝言で、A組女子はレクリエーションとしてチアリーディングをやるらしい。

 ……嘘過ぎるな。

 

「まず相澤先生がそんな大事な連絡を事前にしてない訳ないし、女子だけなのも意味わかんないし、本場アメリカからチアガールが来るのになんで私らが? って感じだし、あくまで学校行事なのに備品(チア衣装)がヤオモモ頼りなのもありえないし……突っ込みどころしかないけどそれ、本当?」

「マジだぜマジ! な! 上鳴!」

「あーいや、そのだな……」

 

 ふむ、あくまでシラを切るつもりの峰田(エロブドウ)は兎も角、電気は流石に苦しいだろやっぱみたいな顔をしている。これは電気のせられただけだな。

 

「正直に言ってくれたら、見逃してあげる」

「……すんませんっした!!」

「上鳴ぃぃぃ!?」

 

 ふふん、素直でよろしい。

 ちなみに明ちゃんは横でニコニコしながら成り行きを見守っている。サポート科の子たちはみんな1に発明2に改造、3,4が無くて5に破壊みたいな子ばっかりだから、こういう普通の学生っぽい人間が珍しいんだろう。

 

「よしよし、電気はいい子だねぇ」

「まっちょっばかっ」

「上鳴ぃ!?」

 

 頭をなでこなでことしてやると、峰田くんが物凄い形相で電気を睨み始める。

 あははっ、視線で人殺せそう。

 

「お前はこっち側だと思ってたのに……チャラいけど女に相手されない側だと思って優しくしてやってたのに……裏切者ぉぉぉぉぉぉ!!」

「おいっ! 待っっ!!」

 

 あ、行っちゃった。

 涙を流しながら目元を抑えて去っていくの、完全に少女漫画のヒロインの去り方だったな……そんなわけないのに。

 

「ぷっ、ふふ……あーー面白い」

「お前、絶対わざとやっただろ……」

「当たり前じゃん、峰田くんからかうと面白いんだもん」

「わっりぃ女ぁ……」

 

 なんてことを。からかい上手な架沙音ちゃん♡ って言って欲しいね。

 

「てことで明ちゃん、ちょっと行ってくるね」

「はーい、楽しんできてください! 見に行きますから~」

「ん! 任せといて! ほら電気行くよ」

「えっなにどこに?? ……もしかして出頭(職員室)……?」

 

 え~? わかんないの~?

 言葉を交わさずともお互いの思考を共有できるベストフレンドな私達に置いていかれている電気に仕方ないから説明してあげよう。

 

「ちっがーう! 女子~ズのとこに決まってんじゃん! やるよチア!」

「は!?!?!? なんで!?!?」

「だってそんな楽しそうなことやらないワケないじゃん! みんなのカワイイチア衣装見たいし!!」

「マジか、お前マジか」

 

 なんで発案者側がドン引きみたいな顔してるんだよ。泣いて喜んでよ。

 

「ん~、でも衣装の用意だけはなぁ……流石に用意しとかないとみんなを騙せなさそうな気が……」

「こんなこともあろうかと!」

「明ちゃん!!」

「てってれー! 着せ替えカメ」

「明ちゃん!?」

 

 それ以上はいけない!!!!!!!

 

□■□■□■□

 

 あの後、めっちゃチアリーディングした。

 

 やっぱりというか、だろうねというか。騙すとかせず正直にみんなでチアしたい! って言ったらみんなノリノリで応えてくれた。

 A組女子~ズのバイタリティを考えたら、私、三奈ちゃん、透ちゃんはノリノリ、ヤオモモは頼られたら喜んでやってくれるし、響香ちゃんは恥ずかしがるけどチョロ……優しい、ここまで参加が決まればお茶子ちゃんも梅雨ちゃんもみんながするならと参加確実となるのは自明の理なのだ。

 多分正解は初手土下座。それか発案者を女子ってことにすれば実施は間違いなかったと思う。

 まぁ唯一の懸念事項は峰田の案だから嫌(男子の性欲)だったんだけど、ヤツが私の手により葬り去られたことでそれも無くなり満場一致でチアることとなった。

 

 あ、ちゃんと相澤先生には許可取っておいたよ! 私発案ってことにして黒幕(アホ2人)は元から存在しないことにしたうえでね。ふふーん、私ってばやっさし~。

 

 そして! 時は移ろい雄英高校体育祭第二部!! 決勝トーナメントの時間がやってきた!!!

 

『さぁお前らぁ! 待ちわびたよなぁこの時を!! 個性アリ! 容赦ナシ! 血も涙もナシ! 昨日の友も今日の敵! ステゴロ上等決勝トーナメントの時間だァァァ!!』

「「「ワァァァァァ!!」」」

 

 また過激なこと言ってるあの人……減俸喰らって怖いものナシか。

 

『おっと勿論ルールはあるぜぇ! 雄英高校体育祭はコンプライアンスに基づいて運営しております!』

 

 あったわ、怖いもの。教育委員会とPTAは怖いらしい

 

『フィールドはスタジアム中央に設けられた50×50mの特設ステージ! このフィールドから一歩でも外に出る、若しくは戦闘続行不可能と主審のミッドナイト先生に判断された時点で敗北だ! 明らかに過剰火力であり対戦相手の生命を脅かすと判断された攻撃をした場合も失格になるから気をつけろよなぁ!』

 

 全然容赦あるな。

 血も涙もありそうだけど、流血的な意味で。

 

『そんじゃぁまずはトーナメントの発表だ! 気になる対戦相手は……はこいつらだぁ!!』

 

Aブロック

・緑谷 VS 心操

 

「あ、普通科の……」

「ふん」

 

・轟  VS 瀬呂

 

「よろしくな! 轟!」

「おう」

 

・耳郎 VS 上鳴

 

「わりぃけど、手加減ナシだぜ」

「はっ、舐めんなし」

 

・飯田 VS 発目

 

「よろしく頼む!」

「えぇ! ふっふっふ……」

 

Bブロック

・芦戸 VS 架沙音

 

「胸借りるよ! 未来ちゃん!」

「飛び込んでおいで」

 

・常闇 VS 八百万

 

「我が闇で、貫く……!」

「え、えっと……わ、わたしが照らして見せますわ!」

 

・切島 VS 物間

 

「最初の犠牲者はキミかぁ! よろしくA組ぃ!」

「うわなんだこいつ」

 

・麗日 VS 爆豪

 

「ちっ」

「ま、マジか……」

 

 

『以上16名! 第一種目は10分後に開始だぁ! 第一試合の選手と次の試合の選手は控室でレディだ! カモォン!』

 

 え、じゃあ明ちゃんの試合見れないじゃん!! 悲しい……。

 

 と、いうことで! 見どころ以外はダイジェクトでお送りします! スタート!!

 

□■□■□■□

『第一試合:緑谷VS心操』

 

「君は、ヒーローになれる!!」

 

 デク……どこまでカッコよくなれば気が済むんだよアンタ……!

 あともう個性の制御できるようになったのにあえて暴発させることで指ぶっ壊し、そのダメージで洗脳解くのはやっぱ覚悟キマり過ぎてると思う。自傷を当たり前にすな。

 

□■□■□■□

『第二試合:轟VS瀬呂』

 

「「「どんまい」」」

 

 これは、うん……どんまい。

 まぁかなり頑張ったとは思う。初手でテープ飛ばして地面から足を離させ、ぶん投げるって作戦自体はよかった。

 惜しむべくはテープを体から切り離すタイミングがあと2秒早ければそこを始点に凍結させられなかったかも……まぁたらればか。轟ならそん時はそん時でなんとかしてくるでしょ。あと気になった点と言えばなんか轟震えてた気が? くらい。まぁあんだけ氷出しちゃそりゃ寒いか。

 

□■□■□■□

『第三試合:上鳴VS耳郎』

 

 ここめっっっちゃ面白かった! からフルでどうぞ!

 

□■□■□■□

 

「さて、耳郎……USJん時はダセェとこ見せて悪かったな」

「いや、あんときはみんないっぱいいっぱいだったし、全員ができること全部やってたと思うよ」

 

 舞台に上がり、相対する二人がそんな言葉を交わす。

 あの時は響香ちゃんの言うとおり私もいっぱいいっぱいだった内の一人のため、二人……あとヤオモモも同じとこいたんだっけ? の間でなにがあったかはわからないが、なるほどね……だから特訓にあんな熱心だったんだ。

 ふふ、女の子の前でカッコつけたいなんて、電気らしい理由じゃん。

 

「今のオレはあん時とはちげぇぜ……上鳴電気、バージョン1.01だ!」

「パッチ当てただけじゃん!」

 

「ふふっ……それでは第三試合、スタート!」

 

 響香ちゃんの軽快なツッコみと共にスタートした第三試合は、開始早々衝撃を以て迎え入れられる。

 

「【神成(かみなり)】!」

 

 電気がおそらく技名を叫ぶと、自身に向けて(いかづち)が落ちる。閃光が晴れた後には、全身からビリビリとスパークが散る電気が立っていた。

 こ、これは……! ほわんほわんほわん(回想)。

 

『電気で力の強化な~、やりてぇんだけどできないんだよな~』

『絶対できる。まず上鳴はさ、どうやって筋肉が動いてるか知ってる?』

『どうやってって……こう、筋肉が縮んで動くんだろ? それぐらい知ってるって』

『ちーがーう! どうしてその収縮が起こるのかって話! 神経が筋肉に電気信号で"縮め"って命令してんの!』

「へぇ、知らんかった……あーそれで!」

『そう! 普通の人間がこの信号……生体電流を増幅するのは、そもそもこれは固定電流で増幅する手段がないとか、もしできても神経が誤発火してその部位が二度と動かなくなる危険性があったりするんだけど……』

『ヒエ……』

『上鳴の個性用にカスタマイズされた体なら耐えられる! ……多分』

『多分!?』

 

 ほわんほわんほわん(回想終了)。

 うそ! マジでできるようになったんだ! 生体電流の増幅による身体能力向上!

 (本人には言わないけど)こんなすぐできるなんて思わなかった!

 だって今まで考えていなかった筋肉を動かす電流を意識するなんて、存在しない尻尾を意図的に動かすようなものだし。

 

「2分だ」

「え?」

「完璧には習得できなくてさ、今のオレは後2分で脳がショート(うぇい)する。だから……速攻でケリつけるぞ!」

「言われなくても! 【心音共鳴(ハートビート・ギャザリング)】!」

 

『なんだぁ! 耳郎が自分の首筋にプラグブッ刺した途端、会場にビートが刻まれるぅ! ヒュゥ! ノッてきたぜェェ!』

 

 プレセンの実況通り、ズンズンズンズンと規則的に響く重低音(8ビート)

 こ、これは……! ほわんほわんほわん(回想)。

 

『響香ちゃんさ! 心音また体に戻して循環とかさせれないかな!』

『できるけど、無限増幅とかはしないよ。あくまでも振動が体を通り抜けるだけ。あーでも体をアンプに音はデカめに響くとは思う』

『最高! じゃあそのリズム(ビート)に合わせて体動かせばさ……』

『なるほど、たしかに……』

 

 ほわんほわんほわん(回想終了)。

 こっちもできたんだ! まぁ体の負荷って意味では電気に負けず劣らずだし、持って2分……え、ピッタシ一緒じゃん! 運命??

 

「なんだそれ! シビれんなぁ!」

 

 辺りに響く8ビートは勿論響香ちゃんの心音だ。

 リズムを刻む本人はというと、とん、とん、とん……と、リズムに合わせて軽く跳ねている。

 音による強烈な波は電気とは異なるアプローチで身体機能を増幅させ、その振動が体を通り抜ける一瞬のみではあるが……。

 

「リズムにノるよ!」

「なっ速っ……!」

 

『速攻! 目にも止まらぬ速さで踏み込み拳を放つが、上鳴なんとかガード! しかし大きく後退させられたァ!』

『あのジャンプは着地と同時に動き出すことで動作をスムーズに行う為のスプリットステップか』

 

 運動機能を、何倍にも強化する!

 

 うっわはやなにあれ、エンジンあったまりかけの飯田くんくらいは出てるんじゃないの?

 

「まだまだ行くよ!」

「はは! やるなぁ!」

 

『速攻速攻! ステージ中を振動が! 閃光が! 駆け巡るゥゥゥ! 凄まじい攻防だなぁオイ!』

『二人とも最近は同じA組の尾白との徒手空拳をやけに力入れて鍛えてるとは思っていたが、ここまで見据えてたのか。合理的だな』

『合理的いただきましたぁ!』

 

 響香ちゃんの【心音共鳴(ハートビート・ギャザリング)】は本人の豊富な楽器経験から来るリズム感によって成立する超高難度な音ゲーだ。

 その分強化幅も大きく、多分電気よりも倍率自体は高い。けどそのリズムが周囲にも聞こえるということは、攻撃が来る瞬間がバレてしまうため不利……。

 

「くっそ……なんでかわかんねぇけど戦いずれぇ!」

「アタシにノせられてるんじゃない?」

 

 わけじゃないんだなぁ。

 想像してみて欲しい。自分が戦っているすぐ近くで、爆音のメトロノームが一定のリズムで鳴り続けている状況を。

 ……私だったら絶対に嫌だ。だってそんなの、体が勝手につられちゃうに決まってる。

 人にはそれぞれ動きのリズムみたいなものがある。それを無理やり自分の得意なテンポで書き換え、上書きするリズムの押し付け(・・・・・・・・)。それこそが【心音共鳴(ハートビート・ギャザリング)】の真骨頂!

 

 え、やけに詳しいじゃんかって?

 ……だってそれの開発者、私だもん。

 

 まぁ私っていうか、私達だけど。

 ふふん、響香ちゃんと二人で一緒にねおちもちもちしながら夜通し考えたんだもんねー!

 

「さぁ、音量上げるよ!」

 

 響香ちゃんの全身から響くビートがより大きく、さらにより早くなる。それに伴い戦いのテンポも速くなっていく。

 上鳴も防いではいるが、防戦一方だ。それに間もなく2分(タイムリミット)、このまま押し込める!

 いけるよ響香ちゃん!! がんばれーー!!!

 

「ぐっ、しまっ」

 

 その時、足払いを防ぎきれなかった上鳴の姿勢が崩れる。

 

「これで終わり! 【心震穿孔(ハートビート・ピアッシング)】!」

 

 体制の崩れた上鳴目掛け、戦闘開始から疲労でさらに上がったビートによって目にも止まらぬ速さに加速されたイヤホンジャックによる突きが放たれる。

 これって……あぁ。

 

 響香ちゃんの、勝……。

 

「待ってたぜ! ソレ(イヤホンジャック)を攻撃に使うのをよぉ!」

「なっ!?」

 

 上鳴が、神速の攻撃を完璧に見切る(・・・)

 地面に片腕をつき、もう片方の腕で伸びきったイヤホンジャックの側面を叩く。

 突きの勢いを利用され、宙空に投げ出された響香ちゃんへピッと指を指す電気の顔に浮かぶのは、笑顔。

 

「電荷はもうとっくに溜まってたけど、イヤホンジャックで地面に逃がされちゃたまんねぇからさ」

「くっそ……負けたよ、上鳴」

「咬み付け、【雷狼】」

 

 パリッ。

 

 これまで響いていた心音と比べると聞こえるかもわからない程小さな音が、しかしハッキリと聞こえた。

 

 電気の指先から放たれた電流は、離れていく対象をまるで追いかけるように(・・・・・・・・)響香ちゃんに当たり、電流で筋肉が硬直した響香ちゃんは勢いを殺せずそのまま場外へ飛び出していった。

 

『耳郎響香、場外!! 勝者、上鳴電気ィィィィィィィ!!!』

「「「「ワァァァァ!!」」」」

 

 そんな~~! 響香ちゃーーーん!!!

 くそう、悔しい……私達の必殺技が……でも、最後のあの瞬間、響香ちゃんの満足そうな表情……あんなの見ちゃったらさ~~~~! もーーーーーーー!!!

 

 でも最後のあの突き、私でも見切れないくらい速かったのに、どうして電気は……ってそうか! 考えてみれば当然じゃん!

 だって電気がやってるのは生体電流の増幅! だったら視神経を通る信号も増幅される……つまりは動体視力の向上!

 そっかそっか、むしろ動かさなきゃいけない筋肉が無い分そっちの方が強化倍率は高いのか……対して響香ちゃんのはあくまで動きが増幅されるだけ……んな~~~~~!! く--やーーしーーーいーーーーー!!!

 

「耳郎」

「はぁ、完敗だわ。結構自身あったんだけどなぁ……やるじゃん、でん」

「うぇ~い」

「……ぷっ、ふふ……あはははは! 何その顔!」

 

 横から見ていた私達には、ハッキリと見えていた。

 顔に柔らかい笑顔を浮かべて手を差し伸べ、倒れる響香ちゃんに助け起こした電気だったが、かなり限界を超えて(プルトラって)たのかどんどん顔から知性が失われていき、照れて(私は認めないけどね!)顔を逸らしていた響香ちゃんが再び見つめ返すときには、完全にアホになってしまったのが。

 

 なんだよそれもーーー!! ズルいじゃーーーん! ほら見てよ横の透ちゃん(頭ピンク)三奈ちゃん(体ピンク)の2人を、キャーー! って黄色い悲鳴上げながら抱き合っちゃってるもん。

 

 感じる~~~~! 青春~~~~~~~~!!!

 

「はぁ、はぁ……じゅる……それでは第三試合、終了となります! 選手は控室へ移動してください! 二人でね!」

 

 ミッナイ先生(青春大好きお姉さん)も大興奮だ。

 

 悔しいけど、おめでとう電気、たしかにカッコよかったよ。

 

□■□■□■□

『第四試合:飯田VS発目』

 

 見たかった……ほんとに見たかった……悲しい……どうやら飯田くんが勝ったらしい。

 LINEで実況してくれたデク曰く、テレビショッピングを繰り広げた後全部のベイビーの紹介が終わった明ちゃんが満足してリタイアしたそうな。

 

 ぶ、ブレなすぎるよ明ちゃん……そこに痺れる憧れる……っっ!

 

□■□■□■□

『第五試合:芦戸VS架沙音』

 

 ひゅう! ついに私の試合だぁ!!

 しかも相手は三奈ちゃん! 楽しみだなぁ!

 でも……ふふ。

 

「ねぇ三奈ちゃん」

「な~に?」

「先に言っておくけど、私はアイテム使わないから」

「ふ~ん、なんで?」

 

 驚かないんだね、まるで言われるのをわかってたみたいに。

 だったら私も、予想通りであろう解を送ろう。とびっきりの笑顔を添えて。

 

「だって勝っちゃうじゃん♡」

「言ってなよ予選1位(プリンセス)! クイーンになるのはアタシだ!」

 

「第5試合! 開始!」

 

 まずは愚直に、まっすぐ突っ込……っ!?

 

「アンタに本気(アイテム)、出させてみせる!」

 

『芦戸がステージ中にやばい色の液体をぶちまける! まずは地の利を制した!』

 

「アタシは滑り、それ以外はひっつく酸だよ! 飛びなよ空を!」

「ははっ! いいねぇ!」

 

 遠くから「オイラの立つ瀬ぇ!」とうっすら聞こえてくるのを一旦無視し、跳んで跳ねて毒液を避けつつ距離を詰める。

 

「でも足りないなぁ! 塗りが荒いよ絵描きさん!」

 

 第一種目見てなかったのかな、私に障害物(ソレ)は効かないって!

 僅かな隙間に脚を通し、ほらもう目の前に……なっ!

 

「鬼さんこちら! 手の鳴る方へ!」

 

 手を閉じてこちらに向ける三奈ちゃんと目が合った。

 

「【アシッド・ランス】!」

「んがっ! ぶないっ!!」

 

 超速で撃ち出される酸の槍をギリッギリ上体反らし(マトリックス)で回避。そのままバク転を余儀なくされる。

 まだ頭上には酸が通ってるし、脚を広げて躱して、その後着地点の見極め……って違う! 酸が残ってる! てことはこの攻撃は点じゃなくて線! なら……っ!

 

「にゃあああ!!」

 

 次は落ちてくる(・・・・・・・)

 バク転に横の捻りを加え、無理やり真後ろから横へベクトルを変更する!

 

「あっつぅ……掠ったか」

 

 気付くのが遅れたせいで避けきれず、指先が焼け爛れた。痛い。

 

「三奈ちゃんこれ大丈夫!?」

「うん! 表面がちょっと溶けただけだから! 強めの洗剤と一緒!」

「ならよかった〜……ってなるかーーい!!」

 

 洗剤でこんながっつり指溶けたら大問題だわ!!! 肉が露出してるもん!!!!!

 ま、まぁ本人が大丈夫というなら大丈夫なんだろう……後でリカバリーガールのとこ行かなくちゃ。

 

 そんなことより!

 

「さっきの! めっちゃかっこいいじゃん!」

「でっしょーー! 全部躱されるとは思わなかったケド」

「いやいやいやちゃんと当たってるし! コンボ嫌らしすぎ!」

「ふふん、毒使いだからね! それに、とってもセクシーでしょ?」

「めちゃくちゃ!」

 

 言葉を返すと同時に改めて距離を詰める。

 再び毒の槍が飛んでくるが、たしかに速度はとんでもないけど分かってしまえばどうということは無い! 手の向きで方向が丸わかりだからね!

 

「だったら……これ!」

 

 これまで一定の位置に留まっていた三奈ちゃんが足から酸を出し地面を滑るように移動を始める。

 私を中心に円を描く様に動く三奈ちゃんがこちらに手を向け……1、2……3!

 

「ここかぁ!」

 

『あいつ後ろに目でもついてんのかぁ!? 背後から迫る酸のレーザーを華麗に回避ぃ!』

 

「適応速くない!?」

「2回もかかっちゃった♡」

 

 さっきのと合わせて2回目、どっちも同じ秒数……アシッドランスの発射に必要なタメは3秒!

 

 そうとわかれば!

 

『架沙音未来! 下を一切見ずに酸の地雷原を回避! ホップステップジャンプで逃げる芦戸に迫る!』

 

 トラップの場所はもう覚えた! 下を向かずとも目に入る酸との相対座標で予測&回避できる!

 そして……1,2,3!

 足元にとんできたレーザーを軽く跳んで躱し、着地。再びダッシュ!

 

「バック走なんて器用だね!」

「アンタに言われても嬉しくないよ一人雑技団!」

「そんなそんな〜〜〜」

「褒め……て、るな? 褒めてる!」

「わーい! 三奈ちゃん好き!」

「アタシ……もっ!」

 

 あぶな! またちょっと掠った! どんどん狙いが正確になってるな……。

 でも距離ももうちょっと……1,2,3! 1,2,3!

 あと1回躱せば……1,2……3、って来ない!?

 

「3秒で撃てるとは言ったけど、3秒でしか撃てないとは言ってないよ!」

 

 上体を逸らし、体勢が崩れた今絶対に躱せない死の光線が私の腿を貫……かない!

 

『架沙音が跳んだ! 絶死の攻撃をなんとか回避! ……いやにしては余裕ねぇか!?』

『あと一歩で届く、という油断を狙ってくる所まで読み切ってたか』

 

 勿論、そういうブラフは私もよくやる手口だから! さっきも上鳴が似たようなの見せてくれたしね!

 

「残念だったねぇ三奈ちゃん! これで終わり……」

 

 まて、なんで笑って……?

 

「アタシだって信じてたよ! アレくらいは躱してくれるってさぁ!」

 

 酸を圧縮するために閉じていた掌を、開く(・・)

 すると、細い線として発射されていた酸は一気に広がり……一瞬で地面を覆い尽くす。

 

「【アシッド・ウェーブ】!!」

 

 不味いな、私は空中、足元は大海原、しかも触れたら溶ける。

 後は落ちるだけの私に抵抗の術は、無い……。

 

「押し潰されてよ! 架沙音未来!」

「ああクソ! 悔しいなぁ(・・・・・)! 詰みじゃん!」

 

 …………そう、このままでは(・・・・・・)

 

「そんな笑顔で言われてもさぁ!」

「あはっ! わかる?」

 

 袖口に手を入れ、カプセルを取り出す(・・・・・・・・・)

 ラベルには、『大波』。

 

『ピンクの波と青い波が正面衝突! 水量は拮抗……いや、出し続けてるピンクが優勢かぁ!?』

 

 2つ目を投げる。

 

『僅かにピンク優勢! 青の領域を酸が犯していく!』

 

 3つ目を投げる。

 

『いや、互角! 完全に拮抗ォォォ!』

 

 4つ目を投げる。

 

『まじぃぜ! 今度は青が押し始めて……』

 

 5つ目を、投げる。

 

『今、完全に酸の大波を洗い流したァァァァ!! 足元に点在していたトラップも纏めてお掃除完了ゥゥゥ!!』

 

 青の津波がステージを完全に覆い尽くす。

 

 暫くすると大量の水が捌け、元の地面が露わになる。

 しかしそれでも舞台袖の一段低くなっているトラック部分は完全に水没し、舞台は水上ステージのようになっていた。

 そしてそのステージに立っているのは、私一人。

 対戦相手(芦戸三奈)は……ステージ脇に突如生まれたプールで大の字になりぷかぷかと浮いていた。

 

「ぷはぁ! し、死ぬかと思ったわ……」

 

 あ、ミッナイ先生上がってきた。

 

「えーと……なるほどね。芦戸三奈場外! 勝者、架沙音未来!!」

 

『決着ゥゥゥ! 最強のみずタイプ決定戦で軍配が下ったのは……架沙音、未来だァァァァ!!!』

『芦戸はどくタイプだし架沙音はノーマルかかくとうタイプだろ』

 

 違うイレセン、ツッコむとこそこじゃない。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 あーーーもう、疲れたぁぁぁ……身体もそうだし、神経すり減らした……結局アイテムも使わされたし、めっちゃびしょ濡れだし、寒いし……ていうかこれ絶対透けてるよね? 峰田(エロ葡萄)の荒い鼻息がここまで聞こえてくるもん……あぁ、もう……ほんっっっっと……。

 

「最ッッッ高!!!!!」

 

 気が付いたら、駆け出していた。

 綺麗になったステージの上を、三奈ちゃんの方へ全力ダッシュ。

 ステージの縁に辿り着くと、躊躇せず水へと飛び込んだ。

 

「三奈ぁぁぁぁぁぁ!!!」

「わぎゃあ!? ま、まって水中で抱きつかないで!! 溺れる!!」

「あはははは! 最高! ほんっとに楽しかった! 大好き! ありがとう!!」

 

 私からの猛烈なラブコールを受け取った三奈は1度目を点にすると、ぷっと1度笑い、大きく息を吸い込んだ。

 

「悔しいーーーーーーーー!!! アイテム使わせて、その上で勝つつもりだったのに! ちくしょーーーーーーーー!!!」

 

 あはは、なにそれ! なら私も!

 

「悔しいーーーーー!! 絶対使わず勝つつもりだったのに、舐めプしてピンチになって、使わされた!!! 悔しいってか恥ずかしーーーーーー!!!!! ほんっとにごめーーーーん!!」

 

 ああすればよかった、こうすればよかった……お互い、反省点の多い試合だったと思う。

 

「「……でも!」」

 

 当然のように、声が重なる。

 ならきっと、続く言葉も揃うだろう。

 そら、答え合わせだ。

 

「「楽しかった!」」

「……にししっ」

「あははっ!」

 

 ひとしきりわちゃわちゃと揉みあったあと、どちらからともなく手を繋ぎ、ぷかぷかと水面を漂う。

 うひゃ〜、空キレー……雲一つないし、太陽もあったかいし……澄み渡る快晴だ。

 

「ね、未来」

「なーに、三奈」

 

「次は、勝つから」

「……あは」

 

「次()、勝つよ」

 

こうして、1回戦第5試合、VS三奈ちゃん戦は心地よい満足感に包まれて終了した。

 

『架沙音未来、この後放送室に来るように』

 

「え"」

「あはははは! やーいやーい」

 

『芦戸三奈、お前もだ』

 

「え"」

「あっはっは! 道連れじゃーー!!」




感想、評価本当にありがとうございます、、、!とってもとっても励みになります、、、、!


……やめて、穿血じゃんとか言わないで。
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